『白銀世界の外』作者:夢幻焔 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 君は今生きているこの世界が本当だと思うか?

 こんな事を聞かれれば、誰もが「当たり前だ」と答えるであろう。
 だが、中には「分からない」と答えるものもいる。
 確かにそうだ、皆がもし、生きていないでこの世界を形成していたとしたら―――



「おはよう、今日も寒いね」
「あっ、おはよう。ほんと、困るよね」
 街は辺り一面白銀の世界と化し、吐く息は白い。
 そして空からは、純白の雪が舞い踊るように、深々と降っていた。
「そういえば、今日って雪祭りでしょ? 美香は行くの?」
「うーん、どうしよっかなぁって迷ってたとこ。優美は?」
「そうねぇ、美香が行くなら、一緒にいこうかな」
 雪祭りとは、この街で毎年この時期に行われるイベントのことで、雪で作った人形やお城などがずらりと並び、街のメインストリートでは屋台などが軒を連ね、この街で一番の大きな祭りである。
 この季節、この街では他の者も、この話題で持ちきりである。
 そんな楽しい話をしながら、二人は冷え込みの厳しい朝、学校へと普段の通学路を歩いていた。
 この後、奇妙な体験をするとも知らずに。



「起立、礼。」
「おはよーございまーす」
「着席。」
 クラス委員長が号令をかけ、教壇に立った担任の教師に、クラスメイト全員が間延びした挨拶をする。
「えー、今日は街で年に一度の雪祭りがある。みんな、ちゃんと学校で決められた門限を守るんだぞ」
 規律というものか。遊びたい年頃の生徒達に、つまらない校則を言う。
「門限たって、夜の八時までだぜ? 全然遊べねぇよなぁ」
「なんで学校って、こうも厳しいのかしら」
 教室のあちらこちらで、教師の言った『門限』について、文句が飛び交っている。
「いいかー、ちゃんと守るんだぞ。先生達も立ち番してるからな。では、一時間目の授業に入る」
 この辺りの学校は、雪祭りがあるということで、ほとんどが特別に午前中授業となっている。
「ねぇ、美香。やっぱり行こうよ、年に一度きりなんだしさ」
「うーん、そうね。それじゃ行きましょうか」
「そんじゃ決定〜。忘れないでよ?」
「はいはい、分かったわよ」
 今朝、道を歩いていた仲良し組の美香と優美が話していると、前から大きな声がした。
「こらぁ! そこの二人! ちゃんと授業を聞いてるのか!」
 ひそひそと笑いながら話をしていた二人に、授業をしていた教師が注意する。
「てへへ、怒られちゃった」
「もう、優美が話しかけてくるからでしょ」
 怒られたのにも関わらず、二人はまだ話をしていた。
「ったく、テストの点数が悪くなっても知らんぞ?」
 いつもの事なのか、諦めたように教師は黒板へと向き直った。
 そして、退屈な授業が四時間。午前中で学校は終わり、生徒達は雪祭りの話をしながら、各自の家へと帰ってゆく。
「ねぇ、美香。あたし達も帰るわよー」
「うん、ちょっと待ってて。今帰る用意してるからさ」
 二人は授業中うるさかった罰として、居残りで掃除をさせられていたのだった。
 時間はちょうどお昼過ぎ、お腹もかなり減っている時間帯である。
「ったく、あのハゲ教師! あたし達を飢え死にさせる気かっ!!」
「まぁまぁ、優美。そんな怒んないでよ」
 拳を握り締め、メラメラと怒りの炎を上げている優美を、美香がなだめる。
「まぁ仕方ないじゃない。さぁ、おまたせ。急いで帰って昼ご飯食べよ」
「むぅ… 仕方ないわね。それじゃ帰ろっか」
 二人は登校してきた時のように、並んで校門を出た。
 そしてしばらく歩いていると、道の真ん中に妙な格好をした、背の低い老人が立っていた。
 魔女がかぶっていそうな黒いとんがり帽子、それに黒いマントのようなものを纏っていた。
「ちょっとおじいさん、そんな格好で道の真ん中に立ってたら危ないわよ? それにその変な格好、雪祭りは夕方からなんだし」
 その老人に優美が話しかけるが、老人はまったく反応を見せずに、じっと立っている。
「ねぇ、ちょっと聞いてるの?」
 優美がいつまで経っても動かない老人の肩に触ろうとした瞬間、しわがれた声で老人が喋った。
「今生きているこの世界が本当だと思うか?」
 突然の老人からの問いに、二人は、きょとんとした顔をする。
「何言ってるの? おじいさん」
 美香がその問いの意味を聞くが、老人はそれに答えることなく、再び同じ問いを投げかけた。
「今一度聞く、今生きているこの世界が本当だと思うか?」
 老人は声を大きくした。
「うわっ、そんな大きな声で言わなくても…」
「そんなに答えて欲しいなら答えてあげるわ」
 老人に対する親切の気持ちなのか、驚いている美香を脇目に、優美は思い切って答えを言う。
「さぁね、そんなの分かるわけないじゃない」
 優美の答えを聞いた老人は、その皺だらけの顔で、濁った目を大きく見開いた。
「そうか。で、そちらの娘は?」
「えっ、あたし? うーん、そうね。あたしもやっぱり分からないわ」
 いきなり質問を振られたので、少々困惑しながらも、美香は答えた。
「そうか、ならば御主等には見せてやろう」
 そう言うと、老人が二人の目の前から一瞬で姿を消した。
「えっ!? おじいさん消えちゃった!!」
 優美があまりの突然な出来事に、そのままの声を上げる。
 すると次の瞬間、辺りの雪に昼の日光が反射し、眩しいくらいだった二人の周囲が、一瞬にして一切の光が届かない、真っ黒な空間へと変わった。
 そう、あの老人が纏っていたマントのように――



「キャァアア!!! ちょっと何よこれ!? 美香!? そこにいるの!?」
「うん、いるよ! 優美こそ大丈夫なの!?」
「ええ、あたしは大丈夫よ。あなたは!?」
「うん、なんとか私も大丈夫みたい」
 二人は見えないため、声だけでお互いの無事を確認する。
「ふぇふぇふぇ、突然すまぬことをした」
 何処からか、先ほどの老人の声がする。
「ちょっとぉ、ここは何処よ!」
 優美は姿が見えず、声しか聞こえない老人に腹を立て、怒鳴りつける。
「ここは、御主等がさっきまでいた世界の”外”の世界…」
 老人は、いきなり訳の分からないことを言い出す。
「正確に言えば、ここが本当の世界…」
「それって、つまりはアニメとかで言う『異世界』に来たってことですか?」
 老人の説明に、美香が尋ねる。
「そう… だが、本当は御主等が存在した世界が『異世界』なのだ。御主等の存在する世界は、我等がイメージした空想の世界…」
「なに? じゃあ私たちはおじいさん達の想像の中の住人って訳?」
 あまりに理不尽な話に、優美が荒い口調で尋ねた。
「そういうことだ… だが、御主等はわしの質問に『分からない』と答えた。だからこっちに来る機会を与えてやったのだ」
 つまり、この老人は「こちらの住人になれ」と言いたいらしい。
「ふーん、けどそれが何? あたし達はあたし達の世界でいいの。ねぇ、美香だってそうでしょ?」
 自信満々そうに答えながらも、美香に同意を求める。
「そうね… 私たちは、自分達の世界がいいわ。こんな暗くて、何もない世界なんか絶対に住みたくないし」
 事の重大さが分かっているのかいないのか、二人はあっさりと答えてしまう。
「そうかそれは残念だ。だがわしとて、理解のない者をこちらに連れてこようとは思わぬ」
 その言葉を聞いた瞬間、二人の目の前が真っ白になった――



「…きゃっ、冷たい!!」
「ちょっと、なんでこんな所でこけてるよ、あたしたちは」
 二人は校門を出て、すぐの所で倒れていた。
 先ほどまで起きていたことは、何も覚えてはいない。
「あぁ、お腹空いた。急いで帰ろっ!」
 二人は雪道の上をサクサクと音を立てながら駆けていった。
 今日の夕方行われる『雪祭り』を見に行くため、そしてお腹を満たすために。



 ―――今生きている世界が本当だと思うか?―――
 
 こんな問いかけをしてくる人には気をつけたほうがいい。
 もしかすると、この世界の外へ行ってしまい、帰って来れなくなるかも知れないから―――




〜〜〜終〜〜〜
2004-10-26 22:55:12公開 / 作者:夢幻焔
■この作品の著作権は夢幻焔さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも夢幻焔(旧紅蓮)です。やっちゃいました超長駄文(汗)自分で読んで「うわぁ、おもしろくねぇ」と思ってしまいました。書くたび書くたび、文章力が落ちているというか、退化しているというか、ほんとスミマセンm(_ _)m こんな私に喝を入れてもらいたく思い、あえて投稿させて頂きました。また感想や超酷評などを頂けると、非常にありがたいです。それではこの辺で(o_ _)ノ
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。冒頭文から受けた期待が大き過ぎたせいか、ラストのインパクトに弱さを感じてしまいました。(個人的嗜好ですが)謎の老人言うところの真の世界、つまりは主人公たちにとっての異世界を、もっとインパクトの強い世界として描いても良かったかもしれません。SFともホラーともつかないような、中途半端な読後感が残りました。文章自体はテンポ良く読みやすかったです。紅蓮さん改め夢幻焔さんの次回作を楽しみにお待ちしておりますので。
2004-10-26 23:29:57【☆☆☆☆☆】卍丸
読ませていただきました。<<君は今生きているこの世界が本当だと思うか?>>という冒頭の問いかけですが、「君はあの信号が本当だと思うか」と同じで、意味が正確に伝わりません。本当に存在すると思うか、とかもう一言足した方がわかると思います。<<この街では他の者も>>の部分は、街中の人達が、とした方が良いと思いました。二人は中学生ですか? 高校生ですか? セリフもどちらがどちらかわからないものがありました。全体的に物語に起伏が感じられず、淡々と終わった印象を受けました。物語自体で楽しませるならもっと臨場感を出す工夫をするのと、不思議な感じを出して終わりたいなら盛り上げどころの描写を増やして、読み手の印象に残る「絵」を想像させれば良いと思います。失礼します。
2004-10-27 02:35:05【☆☆☆☆☆】メイルマン
長編もののプロローグなのかな、と自分は思ってしまいました。私も冒頭で期待を抱いたので、終わり方は少し残念でした。老人の想像の中はどのような感じの場所なのか、情景描写が欲しかったかもしれません。「二人は見えないため、声だけでお互いの無事を確認する。」とか、「優美は姿が見えず、声しか聞こえない老人に腹を立て、怒鳴りつける。」などという文章だけでは、情景がよく分かりませんでした(多分真っ暗闇の中に二人はいるんじゃないのかなぁ、と私は思っているのですが)。彼女達は自分達の住む世界について色々議論を交わすわけですが、それだけではやはり何を伝えたいのかがはっきりと分からないかもしれません。自分はこの作品の長編化を希望(そして老人の世界を読者として旅したい)などと極めてぶしつけなことを思ってしまいました。これからも頑張ってください。
2004-10-27 18:37:10【☆☆☆☆☆】エテナ
えー、卍丸さん、メイルマンさん、エテナさん。どうもありがとうございます。やはり皆さんの感想を受けて「なるほど、そのとおり」というのを痛感しております。やはり、構想を無理に引き出しながら書くと、ダラダラとメリハリのない文章になってしまいました。 こんな奴ですが、今後とも、よろしくお願い致しますm(_ _)m
2004-10-27 20:21:59【☆☆☆☆☆】夢幻焔
計:0点
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