『奇跡(ショート)』作者:樂大和 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約2.12枚
「妻は…妻は生きてるんですか!?」
 男は手術室から出てきた看護士に詰め寄った。看護士は顔をしかめながら答えた。
「今は、なんとも言えません…ですが、奥さんはきっと助かります!そう、信じてください!」
 看護士は早足で廊下を駆け抜けていく。男は疲れきった表情でその後姿を見送った。
何時間、ここに座っているのだろう。妻が手術室に入ったのが何年も前のことのように思える。男は神に祈るように呟いた。
「どうして、どうして、こんなことに…」
 男の額から汗が噴きだす。握り締めた両手はもう解けないのではないかと言うくらい固まっている。男の前に真っ暗な闇が広がっていた。
 手術室からまた一人看護士が飛び出てくる。男は居ても立ってもいられず看護士を捕まえる。
「ご主人!!奥さんは今、頑張ってます!奇跡を信じましょう!」
 そう言い残し看護士はまた、廊下に消えていく。男は自分の心臓がいつもより数倍早く打つのを感じた。
「奇跡…」
 奥歯をかみ締め、息を殺す。こうしてないとこの「待つ」という行為に神経を壊されてしまいそうだった。
 気が狂いそうになりながら、男は誰もいない廊下で耐え続けた。そして…

 無限にも思われる時間が過ぎ、ついに手術室の扉が開いた。手術が終わった。男は初老の医師に組みついた。
「妻は…妻は…!!」
 言葉が上手く出てこない男の両肩に手をおいて初老の医師は微笑んだ。
「手術は成功です。奥さんは奇跡を起こされたんですよ。しかし、全身をあれだけ切りつけられてたのに、自ら救急車を呼び、さらに助かるなんて…まさに奇跡です」
 医師の「奇跡です」の言葉を聞き終わる前に男は嗚咽を漏らし始めた。顔をくしゃくしゃにしながら涙を流す男の姿に医師も看護士たちも涙を浮かべた。
 男は泣きじゃくりながら、小さく、蚊の鳴くような声で呟いた。

「…失敗だ、どうして、どうして…助かるんだよ、あのクソ女…あんなに切り刻んでやったのに…」
 
 
2004-10-14 12:58:26公開 / 作者:樂大和
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■作者からのメッセージ
オチが読めるかも…(汗)しれませんが。感想、酷評ありましたら、よろしくお願いします!!
この作品に対する感想 - 昇順
短かったですが、意外な結末でしたね!!
もう少し、細かく話を作っても、たのしめたかなぁ?と思います!
次回も、ファイトでがんばってください!!
2004-10-14 13:53:04【☆☆☆☆☆】ニラ
あやぁ。そういうふうにきましたか。正直オチが読めるとか以前に、読もうとする前に結末がきてしまった、そういう感じでしょうか? なんていうか、ショートだなあっていう感覚が物凄く強いです。しかし、面白いかと言われると首を傾げてしまうというのも否めない……。もう少しなんかのトリックを混ぜてもよかったような気がしてなりません。
2004-10-14 14:39:17【☆☆☆☆☆】村越
樂大和さんのショート作品は歯切れ良く読み易いのですが、今回のオチはちょっと衝撃度に欠けるかなぁと感じました。被害者(あるいは被害者にごく近い者)が実は加害者だった、というオチは比較的多く見受けられるネタなのです。前作のネタが斬新だっただけに、こちらの期待値が高すぎたのかも知れませんね(汗 次回作を楽しみにお待ちしておりますっ。
2004-10-14 15:00:26【☆☆☆☆☆】卍丸
むぅ。オチを読もうとしても、たぶんそこに行く前に終ってしまう、と言う感じでしょうか。って、村越さんの同じですが(苦笑  もう少し捻り、最後の衝撃をもっと増やしても良いのではないか、と。 樂大和さんの次回作をまたお待ちしております。
2004-10-14 15:19:15【☆☆☆☆☆】神夜
読んでいただいた皆さん、ありがとうございます。この「奇跡」は前作「声」より前に仕上がってたんですけど、作者自体、捻りの無さから忘れてました…(笑)投稿するのも躊躇われたんですけど、この際、ズバっと切って貰おうと思い投稿しました。皆さんのご指摘で作品も作者もすっきりした感じです。また、1から練り直します!!ありがとうございました!
2004-10-14 16:27:46【☆☆☆☆☆】樂大和
読ませていただきました。余り楽しめなかったのですが、短すぎて読み手に対する「引き」が弱いのではないでしょうか。主人公の焦りというか、緊迫感を出してみればもっと良いかと思いました。失礼致します。
2004-10-14 17:27:56【☆☆☆☆☆】メイルマン
確かに短いですねー。でもこのネタ、もっと練れば面白い作品に仕上がると思います!
リトラにとっては充分意外な結末でした。
2004-10-14 18:13:58【☆☆☆☆☆】リトラ
こんにちは、ささら、という者です。
私も、やはりどっかで聞いた話だな……と感じてしまいました。
私も最近小説を書き始め、(まだ二作ですが)しかもショート書きですので、樂大和様の前作の作品の着眼点に驚き感嘆しました。今作はやはり前作に比べると……、と感じてしまいます。失礼なことを言ってすみません。次回作も期待しております。では。
2004-10-16 12:52:57【☆☆☆☆☆】ささら
計:0点
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