『あおぞらのものがたり。』作者:夏炉冬扇 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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プロローグ 「転校生」
   ―sky of prologue―


季節は真夏、夏休みまで後一歩。
朝だというのに、日差しが容赦なく照らしかかる。日ごろは、風流だと楽しんでいたせみの鳴き声も冷房器具のない校舎の中ではただの雑音にしか過ぎない。築五年の校舎は、飾り気のない風潮に清潔感のある白い壁塗りがされている。
まぁ、どこにでもある私立の高校だ。
さて、ホームルームの時間まであと少し、生徒は各自、席に着くものの常に会話は途絶えない、そんな二年E組の教室前廊下を、どたどた音を立てながら走る生徒がいた。
足音がやんだかと思うと、ドアが勢いよく音を立てた。
「みんなみんな! ビックニュース!」
生徒一同の視線は、彼に集まる。
「三丁目の駄菓子屋が、遂に閉店になったとか?」
「バーカ、四丁目だろ」
教室の前の方に座っていた生徒が笑いながら言った。
そこへ、大人しそうな生徒が、ふいに口を挟む。
「あ…、あそこなら、半年前につぶれてたけど」
「げ、いつの間に」
「つうか、この年であそこへ行ったのか?」
 四丁目だろ、と突っ込んだ生徒が、大人しそうな生徒に質問を入れた。
「ちょっと懐かしくなってね」
「俺も小学生の頃はよく行ったなぁ」
生徒は椅子に寄りかかりながら笑った。
そこで、やっと話は本題へ戻る。
「じゃあさ、ビックニュースってなんなの?」
やっと来たかといわんばかりに、走り出してきた生徒が胸を張った。
「転校生だよ、このクラスに転校生が来るんだ!」


季節は真夏、夏休みまで後一歩。
彼は、突然やってきた。















第一章「青い髪」
   ―pretend friend―
 

「おい、来たぞ」
廊下から聞える二つの足跡が、重なり合って耳に届く。ひとつはきっと先生だ、となるともうひとつの足音は…。生徒達は、思い思いに転校生の顔を頭に描く。男か女、それすらも知らない、それぞれ理想の生徒像を描いているのだ。
ガラガラ。
ドアが開き、まずは先生から教室に入った。ひとつ段差の上にある教壇に先生が立つと、一人の生徒が「起立」と号令をかける。同時に、生徒は一斉に立ち上がり、礼をした。
ここでようやく、先生が話を始めだした
「おはようみんな、実は今日」
「知ってます、転校生が来るんですよね!」
先生が言い終わる前に、一人の生徒が勢い良く立ち上がる。いち早く、教室に騒ぎを持ち出したあの少年だ。
彼のような、人前でふざけることのできる性格が、自分にはうらやましく思える…。僕、内田瀬名はすごい特技とかも無く、勉強ができるわけでもありません。人見知りがある、どこにでもいそうな高校二年生です。
「またお前か…、成績下げるぞ」
やれやれ…と、担任の先生は頭をかいた。この緊張感のないやり取りに場の空気は少し軽くなった。
「どんな人なんだろう…」
そう、僕はつぶやいた。
いや、それは僕だけではないようで、周りのみんなもなにやら落ち着かない様子である。
「さて…長谷君、入ってきなさい」
コツ…コツ…。
あたりが静まり返り、近づいてくる足音さえも大きく聞える。やがてそれは立ち止まり、教室のドアがゆっくりと開いた。
「東京から来ました。 長谷空哉です…よろしく」
男子にしては長めの髪、それは、鮮やかな青に染まって、地味な自分とは対極、派手一色な姿が、その日僕の頭から離れなかった。


昼休み、朝から照らしかかっていた太陽はいまだに容赦がない、快晴に喜びを感じ取れる季節がなんとも懐かしい…。
 この時間になれば、運動場へ出て遊びに出ている生徒もいるが、僕は当たり前のように教室でじっとしていた…。この日はさすがに暑すぎるせいか、いつもより教室にいる生徒が多い気がした。
「おい、あの転校生…髪、染めてるよな」
ふと、誰かの声が耳に届く。
「いや、ていうか青? 地毛の後すら残ってないというか…」
「う〜ん、派手すぎて近づきがたい転校生だな」
男子生徒が転校生の話をしている。女子生徒もそこへ混ざり話は続いた。
「でもかっこいいよね〜、長谷君」
「そうそう! あれで性格も良かったら文句なしだよ」
「背も高かったしね!」
男子陣とは反対で、女子にはあの転校生は好評なようであった。
「フッフッフ…あんなのより俺の方が…」
身を乗り出した男子生徒を、みなは冷たい視線で見た。
そこへ、眼鏡をかけた頭のよさそうな生徒が口を挟んでくる。
「僕の情報網によりますと…、前の学校では喧嘩はしょっちゅう、そして負けなしだとか…」
「げ、やっぱりそういう奴かよ」
なんかすごいひとだなあ…、期待と裏腹もいいところ、とても気の合う人ではなさそうだ。
一日中続いていた蒸し暑さがなくなった頃には、もう日が暮れて下校する時間になっていた。僕も、荷物をまとめて帰宅の準備を整え、下校する事にした。
そして帰り道、僕の後ろにはあの転校生、空哉君がいた。後ろといっても、三十メートル位は離れている。
「はぁ…、なんだかなぁー」
転校生がなにやらぶつぶつ言っているのが聞える。転校一日目なのに遠慮が無いのは正直すごい
「おーい、そこのちっさいの」
転校生が後ろで誰かを呼んでいるのに気づいた、誰を呼んでいるのか気にはなったが、あえて振り向かない。 振り向いたら何か言われそう、 そう思う自分はやっぱり小心者だ。
「君だよー君、おーい」
一体、誰を呼んでいるのかと探究心がうずく、やっぱり僕も人間なんだなと実感する。
…いい加減誰が呼ばれているのか気になりだす。とりあえず振り向いてみて確認することにした。
「あ、やっと気づいた」
驚きのあまり四肢が固まる。いつのまにか、転校生は僕のすぐ後ろにいたのだ。
「あのさ、一緒に帰らないか?」
結局、僕はこの転校生に捕まり、一緒に帰ることになった。


「転校早々話しかけてくる人ゼロでさ、気まずいのなんのって」
「あはは…」
仕方なく、といった感じの笑いをしてみる。それにしてもいまだに信じられない、クラスで一位二位を争うほど『地味』な僕が、こんな派手な転校生に突然声をかけられるなんて…。
「んでさ、このままだと地味な学校生活になりそうだから…友達になってよ、頼む!」
両手を合わせ、軽く頭を下げる転校生。そこにいる彼と自分の予測していた彼は全く違っていた。それがなんだかとても嬉しくて、思わず笑ってしまった。
「もちろんいいよ」
「ぉお! これからはよろしくな、瀬名」
「うん!」
僕は髪の色ばかりに気をとられ、彼の人格を勝手に予想して一人で怖がっていたのだ。嬉しい反面ちょっと恥ずかしい気持ちにもなった。
でも、喧嘩で負け無しというのは…、まぁきっと偽の情報なんだなと思い、深く考えないでいた。

季節は真夏、夏休みまで後一歩。
せみの鳴き声がまた風流。
空に写る、夕焼けも、なんだか涼しく広大で、そこを背景に、僕らは打ち解けていった。
「なぁなぁ、今日うち来ないか?」
「え?空哉くんの家に?」
「おう、何にも無いけどさ、来て%
2004-10-10 01:26:07公開 / 作者:夏炉冬扇
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