『僕は夜の学校へ行く。』作者:KR / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 僕は小学生だ。家から歩いて10分もかからない小学校に、5年前から通ってる。
父さんと母さんが仕事で7時半には朝ご飯を食べ終わるから、学校に遅刻したことは
1度もない。
 ただしそれは、朝の話だ。
 夜は違う。父さんはともかく、母さんはたいていの場合6時前には帰ってきて、
一緒に夕飯を食べるけど、そのあと僕は宿題をすると言って部屋に入る。兄弟のいない
僕の1人部屋。母さんは宿題なんて毎日そんなわけはない、と思ってるけど、どうせ
ゲームだろう、ぐらいにしか思っていない。それは大きな間違いだ。
 夜も僕は、学校へ行く。本当は行きたくない。だけど行く。何でかって?それは、
クラブ活動があるからなんだ。

 部屋の窓からコッソリ出て、はしごを使って一階に下りる。バーゲンで500円で
買ったスニーカーを履いて、ダッシュする。いつも歩く通行路は、街灯の明かりで
ぼんやりしてる。僕はそれがたまらなく嫌いだ。
 先に言うと、僕は恐がりだ。遊園地だってジェットコースターは大丈夫だけど、
お化け屋敷はダメ。お祭りのコーラ早飲み大会は喜んで出るけど、肝試しはイヤ。
友達も皆それは知ってるけど、たまに弱虫だなってからかうけど、怖いものは怖い。
 そんな僕が、夜の学校へ行く。しかも何をするかって、オバケ探しだ。

「……今日もいませんように」
 探しに来ておきながら、僕はいつも校門の前でそう呟く。だってオバケなんかに
会いたいなんて絶対思わない。思うのは僕じゃない。僕じゃないんだ。
 空を見上げたらベガが見えた。ひときわ目立つ一等星。オバケなんかよりよっぽど
見つけやすいし、キレイだ。僕は星が好きで、学校じゃ天文クラブに入ってた。所が
だ。クラブ活動の一環というやつで、1週間前、僕たちは夜の学校に星を見に来た。
もちろん先生も一緒に、天体望遠鏡を使って。その頃から僕は恐がりだったけど、
望遠鏡で星は見てみたかったし、先生も友達もいたから夜の学校も平気で来れた。
 星は光ってた。夜だけど怖くないどころか、ワクワクした。
 それなのに。それなのに。

「おう、来たな」
 やっぱりいた。
 オバケじゃない。僕の友達だ。懐中電灯を持って、やっぱり親に内緒で。
「来たよ」
 僕は答える。
「よし。じゃ、行こう。隊長が奥で待ってるんだ」
 おー、と力無く言った。これを言わないと、やる気が足りないなんて怒られる。
オバケ探しにやる気なんか出るもんか。でも、そんな事は言えない。
 奥に進むと、他の友達と一緒に、隊長がいた。
「今日こそ、オバケを見つけましょう」
 そう言って楽しみにしてるんだから。僕の好きな女の子が。

 僕の好きな子は僕と同じ天文クラブにいて、やっぱり同じように天体望遠鏡の星を
見た。だけどその時、一緒にいた他の友達が言ったんだ。
『大変だ!教室の窓に、オバケがいた!』
 消えて無くならない星より、皆オバケの方を気にし出した。オバケなんかって思った
のは、どうやら僕だけだったみたいだ。
 その日から天文クラブは名前を変えた。改名・オバケ探検隊だ。主な活動内容は、
夜の学校に来てオバケを探すこと・見つけたら捕まえること。
 その探検隊隊長に自分から名乗りを上げたのは、何と僕の片思いしてる女の子だった。

 怖いものは怖い。夜の学校だって来たくない。だけど僕は毎日こうして探検隊に
参加する。なぜって?そんなこと、もう聞くなよ。
 恐がりだって、小学生だって、僕は男の子なんだ。だからだよ。



 end.
2003-10-07 23:33:23公開 / 作者:KR
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■作者からのメッセージ
とりとめのない話(汗)思いつきで書くもんじゃないなぁ。やっぱり;
夜の小学校、この前お祭りのノリで友達と行きました。
昔よりなんか小さく感じたけど、やっぱりオバケが出そうでした(笑)
この作品に対する感想 - 昇順
短い話だったけど、ちゃんと内容がつまっていてよかった
2003-10-12 22:36:05【★★★★☆】かまきり
計:4点
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