『ここで造られた   読みきり』作者:風間 リン / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約6.32枚
  ピピピピッ ピピピピッ  パシ
 機械的な目覚ましの音が布団の隙間から出てきた手によって消される。
「ふぁぁぁ〜。ねむー。もう朝ぁ?早すぎぃ…。」
 女子中学生、柳瀬メグミ。かわいいといえばかわいい。家も裕福。

 階段を降り、リビングに入ると母の裕美が朝食を作っていた。
「メグ、おはよう。」
その言葉にまったく反応せず、おいてあったトーストをかじった。
 朝の電車登校。もっと反対していれば金で入ったお嬢様学校に行かずに近くの公立中学校にいけたのに、毎日こんな満員電車にのらずにすんだのに、と入学当初家で嘆いていたがもう慣れた様子だった。
 メグミは有名な私立女子中学に通っていた。
 学校に着くとまずすること、それはあるクラスメイトの靴の中に画鋲と砂を入れること。
典型的ないじめ。メグミはいわゆるいじめっ子。
「柳瀬さん、どうしてこんなことするの?」
集団でサユという子を殴っているとき、虫のような声で言われた。
「何でって?ストレス解消。あんたムカツク。暇つぶし。わかった?」
その言葉に唖然し気力を無くしたサユのことなんてメグミは忘れていた。
 今の標的(ターゲット)は学校でもずば抜けてかわいいと他校の男子がもてはやす平山麻衣。
 父が有名な会社の社長らしく、教師達からも気に入られていた。持って生まれた美貌と権力がやるせなかった。
おとなしい性格で臆病なのでいじめやすかった。あくまでこれはメグミの頭の中の麻衣の性格だが。
 学校にばれないように地味ないじめが続く。
殴るときもばれないように見られたら恥ずかしいようなところを殴る。顔は絶対に汚さない。

「平山様ぁ、あんたすっごいお嬢様なんだってねぇ。」
メグミが麻衣の髪の毛を引っ張っていやみったらしくささやく。
ギロリと一瞬麻衣がにらんだ。
「なんだよっ!その目は!!死にたい?」
メグミのポケットから小さなナイフが出てきた。
「え、ナイフじゃん。メグそれヤバイって。」
回りにいた女達がナイフを見て顔を青くした。
「麻衣、死にたくなかったら私をご主人さまって呼びな。」
「ご、ご主人様…。」
麻衣が小さな声で言った。
「ぎゃははは!!ホントに言ったよ!この馬鹿!!あははは!!」
メグミや回りにいる女達がゲラゲラ笑った。
麻衣は走ってその場を去った。

 麻衣が学校にこなくなって3日。
「あいつ、今日もこないよぉ。どうするメグぅ。」
ひとつの机に何人もの女が群がる。
「ほっとけほっとけ。あいつん家は名家だから責任感じて学校来るからぁ。」
メグミがそういった瞬間、教室に女が一人走ってやってきた。
「メグっ!あいつきたよ!」
「ほらきやがった。今日は何しようか。」
メグミが立ち上がった瞬間、放送が鳴った。

 『1年5組柳瀬メグミ、阿藤由加、長谷啓子、西園寺あさみ、山下沙希、斎藤みゆき、北川理恵、至急職員室に来なさい。』

 そのメンバーは麻衣をいじめていたメンバー。丁度机の周りに集まっていた7人だ。
「え、もしかしてバレた?」
「でも何で!」
「ヤバイよっ!」
「どうする!?」
そんな会話が続く。
「し、至急って言ってるし…職員室行こう。」
メグミは努力で成績首位をとり、教師の前では優等生でいた。世間にばれるのが本当に嫌だった。親にばれて今の裕福な生活ができなくなったら…。

 「「「「「「「し、失礼します。」」」」」」」
7人同時に職員室に入る。
「遅いわよ、もう少し早くこれなかったのですか?」
学年主任の教師がいた。
「何か御用ですか?森先生。」
軽く微笑を漂わせメグミが言った。6人はメグミの後ろにぴったり張り付く。
「柳瀬さん、平山さんからある話を伺ったのだけど、あなた達にに質問してもよろしいですか?」
メモのようなものを見ながら言った。
「何でしょう。」
「平山さんが、あなた達にいじめられているというの。本当かしら?」
「そんな、私達と平山さんはとても仲がいいのですよ。一緒にいるところ、先生は見たことありますよね?」
「ええ、あなた達が一緒にいるところは何度も見たことがあります。だから心配になって。」
よし、これできっと大丈夫だ、と7人は確信した。

「失礼します。」
麻衣が入ってきた。後ろにはスーツ姿をした男が二人立っていた。
「お嬢様の弁護士の村田と申します。」
「お嬢様護衛の黒川です。」
「メグ、やばいよ。」
メグミのすぐ横にいた由加が小声で言った。
 メグミは真っ青な顔をしていた。
「ここ一ヶ月、お嬢様に命じられお嬢様のあとを追っていました。この娘らにお嬢様が殴られているときの写真です。」
一枚の写真が出された。写真は一枚だけでは終わらなかった。
 次々と写真が出てきた。
「これをお聞きください。」
麻衣が紙袋からカセットテープを取り出した。
    平山様ぁ、あんたすっごいお嬢様なんだってねぇ
    なんだよっ!その目は!!死にたい?
    え、ナイフじゃん。メグそれヤバイって
    麻衣、死にたくなかったら私をご主人さまって呼びな
    
聞こえてくるのはあのときのメグミたちの会話。
「証拠は十分です。お嬢様はあなた方を訴えたいと申しております。」
「いまさら謝っても無駄だからね。 敗者ども。」
メグミに顔を近づかせ悪魔のような笑みを浮かばせながら麻衣が囁いた。
 そのまま泣きじゃくりながらメグミ達はその場に座り込んだ。
麻衣の顔は達成感に満ちていた、とメグミは思った。

 その後、その7人が追放となりその中学には通えなくなった。
メグミは親に見離され、家での立場が狭くなった。
全寮制の学園に入り監禁されるような日々を送るのが、メグミのその後。
 麻衣はというと、あの学校の人気者になっていた。

その後、麻衣がとんでもないことをすると薄々きずくのはメグミだけであった…。





END
2004-08-09 01:00:29公開 / 作者:風間 リン
■この作品の著作権は風間 リンさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回、前作の番外編を書かせていただきました

麻衣の中学生の時の話です。
楽しんでもらえたら光栄です

感想お待ちしております
この作品に対する感想 - 昇順
読みきりだけ先に読んでしまいました……。基本的に読みやすく、すらすら行けました。点数は……本編を読ませていただいてから、という形を取らせていただきます。ああもう。失敗失敗です。しかし、麻衣。とんでもないことって何をやらかすのやら……。
2004-08-09 07:05:37【☆☆☆☆☆】村越
すみません、重複感想です。本編を読ませていただいたので、改めて読み直しました。人間ここまで変わるものか、と思いつつ。それもそれであるのかもなあとしみじみ考えさせられながら読んでいました。ただ、最後の『達成感』という言葉。これは、泣いて座り込んでいるという状況、さらには『敗者』という言葉からしても、“明らかに人を見下したような優越感”等の方が個人的にはしっくりくるかなあ、と。達成感っていうと、どうしても『いい顔』っていうイメージがあるので、個人的にここで感じたい“ダークな部分”が中々現しきれてないような感があるんですよ。って、こういうツッコミはものを感じる個人差がありますので、あんまり作者さんにはよろしくないかとは思うのですが、「なんか言ってるやつがいるな」程度でよろしいです。あと、最後に。今更って感じですが、会話中の最後の「。」は不要です。次回からはなくした方がよいですよ。なにやら変な批評ばかりになっていましたが、次回も頑張ってください!!
2004-08-09 07:34:38【☆☆☆☆☆】村越
読ませていただきました。麻衣の過去のストーリーと言う事でしたが、本編の連載作品に比べてこちらのほうが、読後感がすっきりしていて安心しました(笑 あちらは、とことんブラックでしたからね(汗 今作は、麻衣の狡猾な計略が働いていたとしても、基本的にはスカっとした復讐談に仕上がっていて、この作品単体でも楽しめる仕上がりであったと思います。これからも、風間さんの作品に期待しておりますので。
2004-08-09 09:30:11【☆☆☆☆☆】卍丸
どうも、読ませていただきました。先の連載と合わせて見てもどうも、救いようのない主人公の人生ですね。人間の嫌な部分のみを書き連ねる徹底ぶりがいいと思います。中途半端に優しさを描いたりすると、そこで作品自体が萎えてしまう可能性があるからです。でもこの徹底ぶりは、作品のインパクトをとても引き立てていて良いと思います。
2004-08-09 18:19:56【★★★★☆】オレンジ
番外編ということで、読ませていただきました。本編を読みたくなるようないい引き込み方だと思います。
2004-08-13 01:17:00【★★★★☆】ねやふみ
計:8点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。