『BlackHumor:笑えない冗談』作者:凹凸 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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〜片道切符〜

誰かに突き飛ばされた時、疎外感ってものを感じないかい?


フッと気が付く。線路を走る音、中吊り広告。電車の中のようだ。
良く覚えていない、電車に乗ったんだよな・・・・?
これから出勤だ。仕事の開始は九時。これなら間に合う。
・・・・出勤時間にしては人の少ない電車だ。
五、六人しかこの車両に乗っていない。
時間は・・・八時半。通勤ラッシュは終わっていない。
人も・・・変だ。疲れきった顔のサラリーマンはいない。
安らかな表情か絶望の表情。それしかないのだ。

可笑しい・・・あきらかに可笑しい。
何かが違うんだ。変だ・・・ココは変だ。

不安な気持ちを乗せて列車はひとつめの駅へ到着する。
ドアが開く。

ドアの開く音と共に入ってきたのは老人。そして・・・一六歳ほどの青年。

ドアが閉まる。

二人は私の横に座った。
何やら会話をしている。
・・・こんなときに聞き耳を立てるのが人の悪い癖だ。
「いやあ、本当に良い人生だったよ。息子娘、孫に看取られて本当に最高だった。八十四年の人生、もう悔いは無い・・・・」
「それは良かった。ところで、逝き先の件ですが・・・」

・・・・どういう事だ・・・・あの老人は死んだのか?
ボケているだけ・・・いや、違う。とてもボケ老人の言っている言葉ではない。ハキハキと、しっかりした口調。これは・・・本当だ。
ということは・・・・まさか・・・・・俺は・・・
逝き先・・・・まさか・・・
いや・・・そんな・・・・

車内に一人の男が入ってくる。車掌だろうか?
温和そうな顔をしている。
車掌らしき男はこちらを向いた。
「おや、あなたには担当者がおらっしゃらないのですな。おい、君!」
向かいの席に座っていた商社マン風の男が近寄ってくる。
「担当者が不在みたいなんだ。プランの方の話し合いを彼と行なってくれ。」
「かしこまりました。」
私の横に商社マン風の男が座る。
「私、プランナーの鈴木でございます。以後おみしきりを。」

「・・・・・ざけるな」
「・・・はい?」
「ふざけるな!!何だここは、何の真似だ!!」
「ああ、状況の方がまだ良くわからないのですね。ではご説明いたします。」

鈴木の説明は、私を落胆させる、いや、信じ難い物だった。

「ご説明致します。あなた様は死んだのです。午前八時二十五分、白線の外側に落下しそうになった初老の男性を助けた際――――」

あのとき・・・・私は・・・・
「・・・・そんなバカな!ありえない!夢だ・・・これは夢だ!」
「いえ、これは現実ですよ。あなた様の手を御覧なさい。」

・・・透けているのだよ。私の手は、透けていたのだ。

思い出した。全てを思い出した。
私は線路に落下しそうになった男性を助け―――線路に落ちた。線路に上ろうとした私は何者かに再び突き落とされ・・・・電車に・・・・

「――――様?大丈夫ですか?」

「あ・・・ああ。では、私は死んで・・・天界行きのこの列車にいる、と。」
「ええ。そういう事です。次にあなた様の逝き先ですが・・・」

まだ信じられない。信じることができない。

ドアが開く。駅のようだ。
無理矢理連れ出されていく男を私は覚えていた。
「・・・彼は・・・」
「先日死刑になった新宿連続爆破事件の犯人です。彼は地獄駅で下車、裁きを受けるのです。」

・・・・なんてこった。これは現実だ。

「・・・・わ・・・私はどうなる!?地獄に落ちてしまうのか!?」
「いえ、ご安心下さい。」
鈴木によると、私は現世で特に目だった悪行は行なっておらず、これなら天国に逝ける、だそうだ。

そして頭をよぎるもう一つの不安。
「・・・妻は・・妻と子供たちは!?」
「ご安心下さい。我々の方で資金の遠隔的バックアップを行なっております。どうぞ、ご心配なさらずに。」
「・・・そうか・・・私が現世にいる必要は・・・もう無いのか?」
「・・・・仕方の無いことですが、そういうことです。現実を受け入れてください。」


「・・・見えてまいりました。あちらが天国駅でございます。」
減速する車両、開くドア。降りるのは私と・・・先ほどの老人。
「おや、あなたもこちらですか。」老人が問う。
「ええ。」私が答える。
「時代を作るのは新しい人間なのです。古い人間はこうして、違った世界で生き、再び現世に戻る。輪廻転生の意味がやっとわかった気がしますよ。」
「ええ・・・死後の世界も、捨てたものじゃないでしょう。私達にはどんな未来があるのでしょう?」
「さあ・・・行ってみれば、わかるんじゃないでしょうか、ね。」

死とは、人間が新しく生まれ変わるための新しい第一歩である。これは、終わりではなく始まりなのだ。











「・・・・鈴木君」
「なんでしょうか、車掌さん。」
「本当のことを言わなくてよかったのかい?突き落としたのは彼の奥さんの使いで、保険金が目当てだった、という事。これは全て仕組まれた計画殺人だった、ということ。」
「まあ・・・・・『知らぬが仏』という言葉もあるでしょう。」


〜fin〜



















〜拡大する〜

誰かに感化されて何かを行なうことは悪いことじゃないよ。いいことでもないけど。

「じゃあ、ものもらいが酷くなって目が見えなくなったの?」
「まあ・・・・うん。でも、主治医の先生はすぐに良くなるって言ってたよ?だからそんなに心配しないで?」
消毒の匂い、白い壁。待合室の人々に、杖で歩いている僕。
横にはクラスメイトの女の子。
「なら・・・いいけど。」
「あ、それとさ。」
「ん、何?」
「退院したらノート、見せてよ。もうすぐ高校受験だしさ、期末も近いし――――」

「ふざけるな!!」
待合室に響く低い声。目を向けると・・・何かあったのだろうか。
若い男と医者が話をしている。
「ただの捻挫だろ、どういうことだよ、緊急入院って!!」
「ですから、捻挫の部分が悪化していて・・・」
「御託を並べるな!!もういい、帰るぞ!」
「お待ち下さい、お話だけでも!!」

「・・・・びっくりしちゃった。いきなりあんな声で怒鳴るんだもの・・」
「確かに。あそこまで怒鳴ること無いんじゃないかな・・・・?」
・・・男の人はしぶしぶ診察室へと連れていかれていた。
・・・その時はまだ気づいてもいなかったのだ。

こ れ が 悪 夢 の 始 ま り だ っ た 。    

翌日。
朝から病院は慌しく、いつもの巡回も無かった。
昼ごろ・・・・だろうか。昨日の彼女がノートを届に来てくれた。
これはその時の会話。

「慌しいけど・・・何かあったのかな?」
「んっと・・・それがね・・・」
「・・・??」
「昨日待合室で騒いでいた人が・・・・死んだって。」
「・・・・・え?」
「全身の血を抜かれて・・・・死んでたって。刑事さんたちが話してたの・・・聞こえたんだ。」
「・・・そんな・・・」
「それと・・・」
「ん?」
「遺書が可笑しかったって話もしてた。『地下1回には近づくな』っていう内容だったらしいの・・・」


この病院は全七階。
1〜6階・・・そして、地下1階。
たしか地下1階は立ち入り禁止。
・・・・地下1階にあるのはなんなのだろう。
屍と化した彼は誰に殺されたのだろう?
・・・何のために殺されたのだろう。
2004-06-27 11:07:42公開 / 作者:凹凸
■この作品の著作権は凹凸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、凹凸(おうとつ)です。
この作品が処女作、ということになりますが、うーん・・・小説とはなかなか難しい物ですね。
さて、この「片道切符」ですが、『BlackHumor:笑えない冗談』という大きなカテゴリのなかの一作品、という形で理解していただけたら幸いです。ご指摘を元に、多少修正してみました。


そして、第2話『拡大する』を書き始めました。『心情変化を書き入れた方がいい』『短すぎる』などのご指摘がございましたので、今回は長めに、スケールの大きなBlackHumorをお楽しみ頂きたいと思います。
以上、凹凸でした。
この作品に対する感想 - 昇順
拝読させて戴きました。まず地の文の中に主人公の容姿が記されていなく、イメージが浮かびませんでした。それに心情を重視しながら最後までもっていきましたが、心の葛藤がなくスムーズに話を運び過ぎているな。という印象も抱きました。普通ならば「嘘だ! そんなはずがない!」等と喚き嘆くと思います。ですが主人公は剰りにも物事について頷きすぎ。という感じがしてますよね?
それに、もう少し設定を煮詰めてみては如何でしょうか? 設定が曖昧でよく分からない場所が多々在りましたので。あと注意書きを読みましたでしょうか? 擬声語等を使うと地の文が見窄らしく見えてしまうので……。
では執筆頑張って下さい。(この感想は個人解釈なので流しても良いです)
2004-06-13 15:11:48【☆☆☆☆☆】8/over
読ませていただきました。率直に言って、短すぎると思いました。ブラックユーモア、特にこのような最後に展開をひっくり返すようなブラックユーモアの作品では、終盤まで読者をいかに騙すかが重要になってくると思いますが、短すぎるため読者への引きつけが足りなくなっているのではないでしょうか。もっと車内での話や説明、描写を濃く書いてみたらいかがでしょう。個人的に、ですが初めの主人公がホームで待っている部分はいらないのでは、と思いました。いきなり天界行きの電車の中から始まり、「あれ。ここは?」と主人公に思い出させるほうが、より効果的かな、と思いました。最後に、文章の初めの一マスは空けた方が見やすくなって良いと思います。指摘ばかりして申し訳ありません。不快な思いをさせましたら、お詫び申し上げます。
2004-06-13 15:18:19【☆☆☆☆☆】メイルマン
ネタは面白いんだけどなあ……っていうのが感想でしょうか。メイルマンさんもおっしゃっているとおり、『惹きこみ』っていうのが足りなかった気がします。もっと主人公に感情移入できるような工夫を凝らしてからの『オチ』でないと、読者は「へえー」で終わってしまいます。情景描写(例えば、車窓から見える景色や、車内の雰囲気など)をもっと加えて『間』のようなものをもたせるとよろしかと。ちなみに、私は人物描写はそんなに必要ないかと思います。この手のSSだと、人物は発言くらいで“なんとなくの像”みたいなのが想像できるかと思うんですよね。まあ、これも個人的意見なのですが……(汗  これからもがんばってくださいね。
2004-06-13 15:31:26【☆☆☆☆☆】村越
皆様、ありがとうございました。
皆様のご意見を参考にいたしまして二作目の方、作らせていただきます。
2004-06-13 19:21:46【☆☆☆☆☆】凹凸
最初の辺りがちょっとできすぎてるかな〜と思いました。いくらハキハキしていても……ねえ? 自分なら絶対にたわごとだと思います。ある程度の展開が無い限りは。もうちょっと後のほうで老人の言っていたことが本当だったと気づく方が自然かと。
次に、主人公が社会人だというのは分かりましたが、それだけじゃ少なすぎると思います。自分の印象は通勤でちょっとなれた程度の若者でした。当たっているかは分かりませんが、読んだ人はそれぞれの姿形を思い浮かべると思います。ある程度の、主人公を形作る情報は必要かと。髪型とか、身長とか、そういうのは入れなくてもいいのでせめて年齢ぐらいは分かると良いなあ。といった感じです。
2004-06-13 21:34:54【☆☆☆☆☆】霜
計:0点
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