『学校とに閉じ込められました。1』作者:蘇芳 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約4.25枚
学校に閉じ込められました。

「で、その後はどうよ?」
制服を着崩した男が、ニヤニヤと嘲笑を浮かべながら尋ねる。
「…帰ったらどうだ? お前がいると作業にならん」
一方は理知的な男だ。
縁の無いメガネをかけており、その眼光は異様に鋭い。
その男は、一心不乱にキーボードを叩いていた。
ディスプレイには《ERROR》の赤い文字が点滅している。
「…まあ頑張れよ“生徒会長”。俺は俺で、風紀委員として楽しませて貰うからよ」
男は相変わらず嘲笑を浮かべながらそう言い、タバコに火をつけた。
「ココで吸うな」
理知的な男が卑下した一瞥を送る。
「うぜえよ、オメー」
嘲笑が無くなり、毒の篭もった台詞を吐き捨てる。
男は深く煙を吸い込み、盛大に吐き出した。
そして「……」無言の侮蔑を送り、生徒会室を後にした。
カタンッ、と静かにエンターを叩く音が生徒会室に響いた。
ディスプレイに表示された文字は《ERROR》。


今村の家に泊まるつもりでいて良かった。
タバコ無しじゃあ、今頃、軽く5〜6人はボコしてたと思う。
ホントに冗談抜きで。
「見回りの時間…」
「…あー…めんどくせえ」
見回り。教師陣が唯一定めた規則。
『定期的に生徒会各委員が、寮及び区分された施設の見回りを行う』
まあ教師にしたら懸命な判断だろうな。
そういやさっき今村が職員室落としに行ったな。
「めんどくさいじゃなくて、その、一応規則だし…ね?」
なぜ、このような状態になっているのか。
まずは説明を入れなければなるまい。
と、事態の説明の前に俺たちの説明だな。
俺の名前は関譲治で、この三つ編みの女が今居里美だ。
一応、肩書きは風紀委員。

この学校。私立北寺高等学校は公共施設でのセキュリティシステムの、実験的な意味合いで作られている。
生徒の場合は学生証がIDカードの役目を持っている。
登校時にIDカードから個人データを承認しないと構内に入る事はおろか、学校の敷地内に入る事も間々ならない。
教師陣も同様にIDカードを所有し、それが無ければ敷地内にさえ入る事が出来ない。
又、全寮制の学校なので、生徒が夜間に校外へ外出しないように出入り口には隔壁まで設けてある。
もはや学校ではなく、設備のみで言うならば刑務所であった。
そして、その全てはコンピューター制御である。
だから実験的な意味合いなのだ。不特定多数の多くの人間が使う公共施設よりも、特定した人間の使う公共施設のほうが、システムの故障などの際に細心の検査を実施できる。
高校ともなれば若い世代が中心なために、余程の事が無ければ暫く放っておいても大丈夫なのだ。
なので万が一のために全寮制、万が一のために校内、及び敷地内に多数の売店を完備しているのだ。
そして今から14時間前。システムが暴走した。
隔壁という隔壁が全て閉じ、出入り口の全てに暫定的な封鎖処置がとられた。
夜間外出を禁止するための隔壁などといった事だろう。とてもじゃないが抜け出す事は不可能だ。
幸いな事に学校は夏休み。ほとんどの生徒が自宅へ帰っており、部活や生徒会活動などの一部の人間以外は校内に居なかった。
完全な閉鎖状態と、特定された人物の密集。
学校はパニック状態にまで陥りかけた。そう、陥りかけただけだ。
教師陣が事態の収集に努める中、生徒会は的確に役員に指示を飛ばした。
各売店で食料を確保、生徒を講堂へ、風紀委員は運動系の部活から何名かを選出し、
パニックに乗じた暴徒への対処を。
教師達が右往左往する間に、事態は際小規模まで集約していった。
そして、さも自分達の『対処』のお陰だと言わんばかりの教師達を職員室へ閉じ込めた。
今現在、この学校は生徒会と風紀委員が纏めている。
そう言っても過言ではない。

「それで…見回りは?」
「…頑張れ」
ちなみに今居は正規の風紀委員だが、俺は『臨時風紀委員』だ。
ついでに言うと、生徒会長が嫌いだ。


つづく
2004-06-09 22:31:48公開 / 作者:蘇芳
■この作品の著作権は蘇芳さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
なんとなーく学園物が書きたくなったので、なんとなーく書いてみました。
言葉遣いさえ気を付けて下されば、基本的に何を言おうが自由です。
よろしくお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
設定は上手いと思いました。素直に面白そうと思える作品ですね。ただ気になったところが、冒頭の1つの段落。「制服を着崩した男」と「理知的な男」が正直会話、動作がどっちのものかわかり辛かったです。呼び方を少しひねるか、改行処理を減らして「人物ごとにまとめる」ということをしてみてもいいかも、と思いました。自分の読解力がだめなだけだったらすみません、スルーしちゃってください。あとは、もう少し推敲をしたほうがいいのではないかと思いました。ところどころでつっかかる表現がちらほらです。長々と失礼しました。
2004-06-10 08:30:36【☆☆☆☆☆】村越
面白い展開になっていきそうですね。科白の雰囲気が、いかにも蘇芳さんの作品、といった印象を受けました(笑 最新システムで管理された学校の、システム・トラブルによるパニック劇という設定は、序盤ながらもスリリングで良いですね。二人の対照的なキャラも面白いです。続きも頑張ってください。
2004-06-10 08:46:48【☆☆☆☆☆】卍丸
読ませて頂きました!まず題名に惹かれてやってきました!面白そうだなって思って読んでみると、中々これからが気になる感じで、続きがとても楽しみです!
これから、対照的な二人がどう行動していくのか、何が起こるのか、とても楽しみにしています!頑張って下さいね!今回はまだ序章という事で、点数の方は繰越ておきますね☆
2004-06-10 15:17:33【☆☆☆☆☆】冴渡
毎度毎度、発想が面白いですね。陸の孤島状態ですな。結末がまったく読めず続きが楽しみです。刑務所に近いこのセキュリティってのもまた怖い響きがあって良い。更新お待ちしております。
2004-06-10 21:30:17【☆☆☆☆☆】石田壮介
計:0点
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