『〜World War〜 第一章』作者:しの / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 泥で汚れた軍事服を来た日本の代表者が議事堂の会談室で抗議した。
「世界の平和を維持するためにも戦争は必要ではないのか?!」
「皆もそう思うだろっ?!」
日本の代表者は立て続けに恐ろしい形相で各国の代表者一人一人に訴えかけるように怒鳴った。同時に同意も求めた。しかし、戦争反対派の国もあるのを忘れてはいないか。
「私たちもその意見に賛成だ」
日本の代表者の後ろから低い声がした。アメリカの代表者であった。その代表者はいかにも冷静沈着で話しを聞いていた。
 昔から日本とアメリカは仲が良かった。日本が戦争で負けて、食料難、ありとあらゆることで手を差し伸べ、助けてくれたのがこのアメリカだった。そして、今に至る。
「私たちも賛成です」
日本の代表者はアメリカの代表者の隣に目が移った。オーストラリアの代表者であった。しかも女性である。オーストラリアも堕ちたな、と戦争賛成派の日本もアメリカもそう心の中で思った。他にも賛成派はいるかもしれない。でも、今分かっているのはこの三ヶ国だけである。この部屋をどう見渡しても、女性の代表者はこの国だけであった。
「君たちの考えていることは、実に興味深い」
ロシアの代表者が主張した。
「だがな、うっ・・・」
ロシアの代表者が突然、吐血した。
「すまん、持病が発病した・・・お前らで話しを続けてくれ」
各国の代表者は吃驚した。しかし、まだ賛成か反対かを言っていなかった。部屋の片隅で待機していた医療班が別の部屋で休ませようと運ばれてきた、移動式のベッドに寝かせた。
「その前に、賛成か反対か言ってくれ」
「無論、反対だ」
患者はそう言い残し、医療班と共に看護室へ向かった。初めて、戦争反対派が現れた。理由は言わなかったが、立派な意見として採用された。一人の若い男が突然立ち上がり、
「賛成派に問う。戦争は人を殺し、無関係な人まで殺し、たかが戦争のために、食糧難になり、無駄にお金を使う。それのどこに、賛成の意図が見られる?是非、聞いてみたい」
その若い男は言葉で分かる通り、反対派の意見を主張していた。どの国も反対派と分かった。暗黙の了解とはこのことである。
「悪影響な所だけを主張するな、もちろん影響の良い所もある」
「ほぅ?どこにそんな影響が?」
賛成派と反対派は当たり前のように対立した。
「勝利することが出来れば、敗退した国の土地を頂戴することが出来る。その国の人々を奴隷として扱うことが出来る。そして、世界を支配するのに一歩全身出来る」
賛成派はどの国も納得している様子だ。でも、その若い男は不満を顔で表現してみせた。しかし、その賛成派にこれ以上言っても無駄だと思い、そこで会話を無理矢理打ち切った。
その後も他国の主張が次々に飛び交う。
そして、ようやく賛成派と反対派が決まったようだ。賛成派は、日本、アメリカ、オーストラリアの三ヶ国だけであった。余裕で反対派がこの場を勝利した。そこに、娘の場を仕切る議長が現れた。
「この場は反対派が勝利した。しかし、戦争は行うことにする」
議長が高々と声を上げて言い放った。反対派は耳を疑った。
「ちょっと待って下さいよ、議長!!」
多数の反対派の国が、幕を閉じようとする議長を止めにかかった。
「何だね?」
こちらに振り向きながら議長は返答してやった。議長には反対派の不満顔が見えた。反対派の隣で賛成派は小さく笑っていた。
「それではあまりにも反対派の私たちが納得いきません!」
「これは、上の者の命令だ、仕方なかろう」
「それじゃ私たちの意見はどうするのですかっ?!」
「お前らの意見だと?全ての決断は上の更に上の者が下すことになっている、お前たちの意見など所詮聞いてはくれない」
「くっ・・・」
反対派は悔しかったが、上の者に逆らうと殺されてしまう。反対派はそれが怖かった。血を見たくなかった。
「では、今から二年後、戦争を行う。二年経ったらどの国に攻撃を仕掛けても良いことにする」
反対派は諦め、嫌々、戦争の準備にとりかかろうとする。
会議の幕が完全に下りた。
それにも関わらず、賛成派はくすくすとまだ笑っていた。大声を出して笑っている者もいた。
2003-07-01 00:16:57公開 / 作者:しの
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