『天空の曲芸 0〜1』作者:眼鉄 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約12.89枚
プロローグ


「ちっ、腐れ国家どもがぁ!」 
 伝説のガン・マン、リュート・エクスプレスは、人生の相棒である44口径マグナムを構える。
 彼は冒険者の中では『戦場の黒龍』と呼ばれていた。なぜなら彼が戦場に降り立つと、異常なまでの力で敵を倒していき、その姿が伝説上の動物、龍のようだったから、と言われている。
 だがその龍も、何十万という国家の軍勢には、勝てなかった。
「龍もしょせんは、人間には勝てねぇってことなのかねぇ」
 大量に腹部から、赤い液体が流れている。
 リュートは、もう命のと灯火が消えかかっていることを、悟った。
「へ、譲ちゃん。俺はもう駄目だ」
 今までずっと龍が守っていた、最愛の娘にそう言う。
 リュートの妻は、昔国家の兵によって殺された。その日からリュートは冒険者を捨てて、レジスタンスに入る。そのときも妻が残した娘を、命に代えてでも守ってきた。
 そして、今ここでも。
「やだよ。死なないで」
 娘がリュートに抱きつく。出来ることなら抱きとめてやりたいが、リュートの手は、綺麗な娘を抱けるほど綺麗じゃない。もう、血で汚れている。勿論自分の血もそうなのだが、今まで殺してきた人間の血もついている。
 戦いでなら何万語でも語れるのに、愛娘には簡単な言葉も思いつかない。リュート・エクスプレスという男は、不器用だったのだ。
「いいか、譲ちゃん。お前の母さんはな、俺なんかと全然つりあわねぇ、綺麗で優しい人だったんだ。そして俺は母さんと正反対で、戦いでしか何も言うことの出来ねえ親父だ。いいか、譲ちゃん。ここを南下したら、小さな川があるんだ。そこを下っていけば、村がある。そこまで逃げるんだ」
 手榴弾のピンを外して、敵軍に投げつける。けたたましい音がした。
「もし村に着いたら、忘れるんだ。お前は母さんのように純粋であって欲しいんだ。こんな戦いをして、死んで欲しくはない。もっとも、強制はしねぇ。譲ちゃんが戦いを望むのなら、戦えばいい。だが俺のようにはなるな」
 娘はリュートを放さない。
「お前は龍の娘だ。お前の中には龍の血が流れている。大丈夫、お前は武術の才能がある。ちょっとやそっとの敵なら、負けたりしない。行けよ」
 リュートはそっと、一つのペンダントを渡した。 
 それはもうすぐやってくる、彼女の誕生日に上げようと思っていた、龍をかたどったペンダント。
「お前は俺と母さんの娘だ! 行け!」
 娘は後ろを振り向くことなく、全力で走り抜けた。
 それを確認したら、リュートは銃に弾をつめる。
「甲斐・アズナよ、俺は間違っては居ないはずだ」
 今は亡き自分の妻に、語りかける。
 そして、もしものときにとセットされていた、起爆スイッチを入れた。




 その爆発は、天空に炎が上がっているように見えた。そしてその炎は、真っ黒で、そして龍のように見えたという。
 最強のレジスタンスであった『龍の亡骸』は、全滅し、国家には向かうレジスタンスの勢力は激減した。そのあとは独裁的な政治が続いていき、国民の生活は最悪の一途をたどって行く。

 たった一つだけ、人々は知らない希望が、大地には降りていた。
  
 龍の血を受け継ぐものは、鋭い眼光で、空を見上げる。
 
 それは戦いの序章に過ぎない






 一話


 今世界は、混沌時代というものになっていた。何百年か昔、世界大戦争というものが起こり、数あった世界は一つに併合された。その戦争で世界の人口は四分の三ほどになり、戦争による被害も尋常じゃなかった。
 北の聖地というところに『アナリス』という国家がある。今世界は『パンゲア』という名前で統一されているのだが、アナリスは昔のままでアナリスであった。
 このアナリスは、現在国王と国王の血縁者のみしか暮らすことの出来ない土地となっている。物資は豊富で、食べ物にも困らない。北いなるというのに温暖で、ほとんど災害もなかった。
 アナリスの国民は極上の生活を送っているのに、一歩外へ出れば、それは酷いものだった。
 酷いところでは、焼け地しかない場所もある。砂漠化は進み、ある大陸では全てが砂漠となってしまったという。それに戦争による打撃か作物は上手く育たず、動物達も弱っていた。
 さらに国民を苦しめたのは、税金である。税金は色々あるのだが、その中で一番許されないのは『存在税』である。
 なんと存在しているということに税を取るのである。人も物もアナリス王のものであり、それには絶対命令というのが常識だった。
 最悪なことに存在税が一番高く、これを払うのにいつも苦労している。払わなければ、無理やり炭鉱などへ連れて行かれ、無理にでも払わされる。
 何度かレジスタンスが攻撃に入ったのだが、何万もの兵力と、武器。そして錬術と呼ばれる魔法を前に、レジスタンスは敗れていった。 
 過去最大のレジスタンスと国家の戦争は『龍刻の戦い』呼ばれているものである。これは伝説のガン・マン率いるレジスタンスとの戦争で、国家にもそれなりのダメージを与えたらしい。だが、それだけだった。
 このレジスタンスの全滅という言葉は、人々に絶望をもたらした。このレジスタンスほど強力なものがなかったのである。つまり敗北=なすすべがない状態だった。
 人々は下を向いた。そして、独裁政治にも何も言えず、ただそれにしたがっていた。
 
 だがそれに納得のできない人は、まだ存在するのである。


 鋼龍・エクスプレスは、重石をつけた身体で、ずっと剣術練習を行っていた。
「せい、はっ、どりゃああ!」
 彼女は、伝説のガン・マン、リュート・エクスプレスの娘である。過去の戦争で命を落とした父の志を果たすべく、鋼龍は常に武術の稽古をしていた。
 ここ、ボッサムでは、緑の多い村だった。そのためか作物も充実しており、他と比べてばましなほうである。しかしそれでも、裕福というわけではないのである。
「はあああ!」
 木刀を、振り回す。だが我武者羅に無理まわしているのではなく、ちゃんと型にそって振っている。
 彼女は剣術が得意だった。それと錬術とコンビネーションさせた、彼女独特の武術は、村の中では随一だった。
 しかしどうにも銃を使うのは苦手だった。伝説のガン・マンの娘と聞いて呆れてしまう。だから村の人に銃を使わないのか、と聞かれても「愛称が合わない」と言ってはぐらかしている。
 そんな彼女なのだが、銃の腕を除けば、かなりの戦士であった。
「…気合一閃!」
 びゅっと岩に向けて切り込むと、岩が綺麗に真っ二つになる。これは錬術を利用した『居合い』という技だった。本来鞘に戻して、それを引き抜くようにして行う技らしい。だがどうにも面倒くさいので、鋼龍は独自で居合いを行っていた。
 黒龍もそうだったらしいのだが、彼女はこの世界の住人には珍しく、真っ黒な瞳と髪の毛をしていた。これは古来より気の力が強いという証なのだと利くが、昔の人の話などは信用できない。
 まあともかく、気の力が強いのはいいことだ、と鋼龍は思っている。
「おーい、いい加減もう止めてお昼にしたらどうー?」 
 彼女を今まで育ててきた、マリア・クラネスはそう提案する。小腹が減っていた鋼龍には、嬉しい提案であった。
 マリアの夫、ボックス・ワーリアは、武術の達人であった。いかに鋼龍が特訓しようとも、どうにも勝てない。彼曰く、もう少し気の流れを読み取れば、勝てるというのだが…。 
 ともかくこの二人は、戦乱から逃げ疲れて倒れていた鋼龍を手当てしてくれて、しかも今まで育ててくれた、恩人であった。
 二人は鋼龍が何者なのかも知っているし、彼女の志も知っていた。だから何も言わないし、指示もしない。だがいつも決まって言うのは「悔いの残らないようにしなさい」という事だけだった。
 彼ら夫婦には、子供が二人いた。だが存在税が払えず、見せしめのために二人とも殺された。五体はバラバラにされて、しかも一撃では殺さなかったらしい。助けを求める二人を助けれなかったことを、夫婦は一生涯かけて悔やむだろう。
 そんな辛さを分かっているからこそ、鋼龍は自分が今やるべきことを、しっかりと行っていた。
「鋼龍よ」
「なんですか?」
「お前はレジスタンスに入りたいと思っているのだろう?」
 鋼龍は肯く。すると、ボックスは一枚の紙を、見せた。
 それはひそかにまわされている、レジスタンスの募集チラシだった。
「これは…」
「お前が参加するかしないかは自由だ。これは気まぐれに見せたものにすぎぬのだからな」
 そういって、紙を差し出す。
 鋼龍はやっと、自分の志が達成できる、チャンスを掴んだのである。
「ありがとうございます」
「うむ」
 ボックスは、十八になった彼女の眼を見た。
「鋼龍よ。お前の眼は、昔のときのままだ」
 行き成りの発言に、鋼龍は顔を上げる。
「どういう…?」
「気がついておらぬのか。お前の眼は、漆黒のように深い黒色だ。だがその奥に見える信念の炎が上がっている。お前は一度だって、何かを諦めたことがないだろう。信念の炎をそこまで育てたお前は、これからの挫折で崩れたとき、二度と立ち上がれないかも知れぬ。そう思っていたのだ」
 ボックスは眼を瞑る。
「鋼龍よ。決して一人で何とかしようとは思うな。必ず自分を支えてくれる人間を作れ。お前の信念は、お前一人でどうにかなるレベルではないのだ」
「分かっております」
「そうか…ならばもう、わしがいえる事は何もない」
 優しい微笑みは、まるで本当の父のようだった。
 
 夜になる。
 鋼龍は考えていた。
「私の父は、どういう人だったのか」
 覚えているのは、最後に見せた不器用な笑み。そしてペンダントを渡すときの悲しげな顔。そして戦っているときの強い表情。
 なにぶん幼いときのことなので、あまりしっかり覚えては居ない。
「私は父が通った道は通りません。私は絶対にこの国をぶち壊します。あなたのようには死にません」
 それは侮辱ではない。
 決意だ。


 朝、さっそくもう、旅立つ準備をしていた。レジスタンスの参加希望者は、隣にある小さな町まで行かなければならない。日にちも迫っているし、急いでも損はなかった。
 だが準備というのもなにをすればいいのやら。
 困っている鋼龍に、マリアは一本の刀を手渡した。そして笑いながら「あの人、照れくさくて渡せなかったのよ」
 それはボックスが大事にしていた、長刀だった。これをくれるという事は、認めてくれたのだろうか。
 鋼龍は刀を受けとる。木刀とは違う重みに感激した。自慢じゃないが、いままで真剣を持ったことがないのだ。ほんとに。
 ありがとう、と言おうとした鋼龍だったが、けたたましい怒号にさえぎられてしまった。



































 
 

































































































 

























































 






















































 















































2004-03-30 16:26:56公開 / 作者:眼鉄
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■作者からのメッセージ
眼鉄です
 初めての投稿なのですが、意味不明です。文章能力が低いのですが、ビシビシと指導をお願いします
この作品に対する感想 - 昇順
ストーリーは一見深く見えるんですけどね・・・もうちょっと捻りを加えた方がいいと思います。それと、最後の異様に長い空白は直したほうがいいと思いますよ
2004-03-30 17:44:14【☆☆☆☆☆】ヤブサメ
厚みはありますけど、リアリティに欠けますかな?まぁ、パピーの情熱を勝って。
2004-03-30 18:25:45【★★★★☆】赫
空白気をつけます…。捻り…うーん。参考にします
2004-03-31 15:15:23【☆☆☆☆☆】眼鉄
計:4点
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