『銀空!!』作者: / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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〜第1話〜
「気味の悪い子だったけど最後に大金になってくれたんだから育てた甲斐があったわ」
これが、母親が5歳の少女に言った最後の言葉だった。ぼろぼろの服を着た母親はにたにた笑いながら、娘を売った金を懐に大事にしまい、さよならもいわずにその場を去っていった。
追いかける気にもならなかった。鎖で縛られた上にオリに入れられていて、追いかけることが出来なかったこともあるが、少女は売られた方がまだましだと思った。中傷の言葉を毎日散々言われ、こき使われ、食事をまともに取る事もほとんどなかった。暴力を振るわれたことがなかったのが不思議なくらいだった。だが母親が娘を1人置いていったここは奴隷市場。お金持ちの貴族などが奴隷を買っていくところだ。だから少女の生活は母親と暮らしていた時とほとんど変わらないか、今まで以上に酷くなるかだった。だが少女はそれでもよかった。実の母親に愛されていないということを嫌というほど感じて生きていくよりは、知らない人に酷くされて生きていく方がまだよかった。少女はそう考えて、鎖で縛られていることも気にせず静かに待った。
少女は奴隷市場の中心のオークション会場にこれから出品されるのだ。
少女がいるのはオークション会場のステージのすぐ後ろ、カーテンで周りを囲まれているオリの中だった。この少女の他にも、5歳〜15歳くらいの女の子が8人、6歳〜16歳くらいの男の子が10人いた。この計19人が狭い折の中に鎖で繋がれて入れられていた。
誰もが泣いていた。ただ1人、この少女を除いては。
泣きたい気分ではあったが、涙が出てこなかった。なにもしたくなかった。ただぼーっと、このまま時間が止まってしまえばいいと思った。


すると誰かが2人、オリの周りのカーテンに近づいてくる気配がした。少女が思った通り2人、このオークションを主催する、見るからに趣味の悪そうな太ったおっさんと、その部下だった。
「これが今日の商品か?」
「さようでございます」
「・・・・臭いな、水を汲んできて洗え。少しでも高く売れるように綺麗に磨いてやれ」
太ったおっさんが、持っていたピンクと黄色の杖でオリの中の10歳くらいの少女を突付きながらいった。
「かしこまりました」
「逃がさんよう気をつけろよ」
「は、それで出品する順はいかがされますか?」
「そうだな・・・いつも通りまずは男からだ。最初がこれ、次があれだ・・・・」
おっさんがいうと部下の男が、用意していた番号札のついた鎖をオリの外から、おっさんに言われた順に呼んで首につけていった。
10番まで終えて次は11番、女の子の方に入った。
「次は・・・・・」
おっさんは女の子の方をずーっと見渡した。そして1人、目にとまったのが唯一泣いていない、強い眼で睨みつけている1人の少女だった。
「ほぅ、いいのがあるじゃないか。おい、あれだ、あれが19番、今日の目玉商品だ」
そういうとおっさんは、あとの子は適当に番号をつけさせてさっさとその場を去っていった。



2004-03-25 08:58:51公開 / 作者:銀
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■作者からのメッセージ
一応ファンタジー物のつもりです。
題名の『銀空!!』は、話の中にちょっと違う形で出てくる言葉なんで一応意味はありますよっ!
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