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『海賊船とローレライ』 ... ジャンル:恋愛小説 時代・歴史
作者:えふえるじー
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あらすじ・作品紹介
昔、船乗りの男に裏切られ、ライン川に身を投げた女性がいた。その女性は水の精となり、美しい歌で人々を惑わし、船乗りだった男への復讐として通りがかる船を次々と沈没させているという。その女性の名はローレライ。ある下っ端海賊は、ローレライに船を沈没させられてしまう。
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〜人物紹介〜
【ベンジャミン・ホーニシルバー】 ♂
海賊団の下っ端として生活している15歳の少年。
7歳の頃に両親を亡くし、海賊団に引き取られた。
何も考えずに突っ走る無鉄砲な性格でデリカシーもないが、人一倍思いやりがある。
【ローレライ】 ♀
不毛な恋に苦しんでライン川に身を投げた後、水の精霊となった女性。
年齢不詳だが16歳ほどの少女の姿をしており、ライン川に棲みついている。
美しい声で歌を歌って惑わせ、通りがかる船を次々と遭難させているらしい。
【クロム・シェイス】 ♂
海軍に属する18歳の少年。
海賊の取り締まりと共に、ローレライによる難破事件の捜査をしている。
冷静沈着で真面目だが融通が利かない。
【ジレーネ】 ♀
ライン川に迷い込んできた人魚。
仲間の人魚とはぐれてしまい、しばらく川で過ごす。
〜0章〜
俺の人生には音がない。
耳は聞こえるし、口もきけるし、なんなら五体満足障害無しの健康優良児だ。
それでも俺の人生は真夜中の地中海ど真ん中みたいに静まり返っていて、たびたび寂寥感の念に駆られてしまう。
いや、真夜中の地中海だって、波の音や虫の声くらいするはずだ。
でも俺にはそれがない。
鼓膜を震わせるものが何一つなく、生きとし生ける者が存在しない世界と呼べるほど静寂。
無味乾燥、萎靡沈滞、孤影悄然!
毎日同じことの繰り返し。
葉っぱが生い茂る樹木から一枚葉が抜け落ちたところで誰も気づかないように、俺がいなくたって日々何事もなく今日は進んでいく。
俺の人生には音が無いから、いなくなったところで誰も気が付かないんだ。
〜1章〜
「おい、ベン! 酒持ってこいや、酒ぇ!」
「はい! すぐ持ってきます!」
ベンジャミン・ホーニシルバー、今年でようやく15歳。
7歳の頃に事故で両親を亡くして彷徨していたところ、通りがかった海賊団の船長に目を付けられて身柄を引き取られた。
純粋で短絡的な思考しかできなかった7歳の俺は、船長が神みたいに思えたんだ。
けれど、俺を引き取った理由なんか10歳の頃にはもう察しがついた。
身寄りがなく幼い少年は、下っ端の雑用係として実に使い勝手が良いのである。
彼らにとっては俺なんか犬や家畜なんかと同じで、餌を与えればなんでもしてくれると思っているのだ。
もちろん俺とて衣食住の提供をしてもらっているしタダで住まわせてもらうつもりなんてさらさらないけれど、うんざりするような扱いを受けて不服だった。
いつまで経っても海賊らしいことはできないし、やることと言えば家事ばかり。
いつか俺も戦えるようにと剣術を磨いてきたものの、これから先も使う機会はないとみた。
この海賊団には俺以外の雑用係はいないため、20人分の食事や世話などは全て俺一人で行っている。
分担して行うという概念が彼らにはなく、面倒な汚れ仕事は全て俺にまわってきた。
その中でも一番キツい仕事が排便後の汚物処理という汚れ仕事(物理)だが、ほぼ毎日やっていると、感覚が麻痺したのか今では何とも思わなくなってきている。
恐らくこの海賊団のメンバーの中で、平気な顔をしてうんこを掴めるのは俺だけだろう。
それだけが唯一の誇りだ。
俺はそんなくだらないことを思いつつ、船の蔵から一等良い葡萄酒の酒樽を一つ引っ張り出した。
イタリア産辛口ワイン、製造年は10年前。
汚れ仕事(物理)が多い僕だけど、一つだけ好きな仕事がある。
それがワインの管理だ。
船長は無類の酒好きで、敵船を壊滅させたら真っ先に奪うのは金品宝石ではなく酒樽なのだ。
いくら大きなダイヤがあろうと金塊があろうと、わき目もふらず酒樽へ直行する。
そして飲んだことのない種類の酒があれば、嬉しそうに持ち帰って酒蔵のコレクションへと追加するのだ。
彼は世界の酒のために海賊をやっているといってもいいだろう。
そんな酒蔵部屋での酒を管理する仕事を任されているのは、他でもないこの俺。
適切な温度、湿度を管理し、酒の種類を覚え、それに合ったつまみを研究。
俺はあまり飲まないが、管理をするのは楽しい。
前に一度だけワインをブショネ(バクテリアに汚染された状態)させてしまったことがあり、その時は海に投げ捨てられる勢いで怒られた。
まぁそんな理由もあって、酒の管理は手を抜くことができなかった。
続く
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2018/09/22(Sat)00:57:55 公開 / えふえるじー
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■作者からのメッセージ
閲覧して頂き誠にありがとうございます!
こちらの掲示板では初投稿となります。
普段から妄想を綴ることはあるのですが、真剣に一文一文考えて書いたものはこれが初めてです。
といっても下調べも浅はかで史実と異なる点も多々ありますが……。
主人公のベンジャミン・ホーニシルバーは、実在した海賊を基に考えました。
もしよければ彼の……ベンジャミン・ホーニゴールドのWikipediaをご覧くださいませ!
連載お付き合いください!
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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