『宇宙大戦記1話』 ... ジャンル:SF アクション
作者:有                

     あらすじ・作品紹介
 宇宙開拓がはじまっておよそ50年、人類が太陽系に7つのスペースシティを建設し、地球から約20億人もの人々が宇宙に移民した。 しかし、すべてが順調にすすんでいたわけではない。 地球と宇宙では生活のリズムも違うし、宇宙では地球のルールは通用しない。宇宙で暮らしていくためには宇宙でのルールが必要だったのだ。 だが、スペースシティは地球連邦政府の支配下にあり、地球連邦政府は宇宙でのルールを認めようとせず、宇宙に住む人々を巨大な軍事力で支配して抑えつけていたのだ。 宇宙でのルールが認められず、あいかわらず地球のルールを押し付けられていては宇宙で暮らしていくことはできなくなってしまう。 この強引な地球連邦政府のやり方に宇宙移民者たちは怒った。「地球の奴らのやり方にしばられたままじゃ俺たちは生きていけない。こうなったら戦争だ!」  やがて、宇宙に住む人々はガマンできなくなり、太陽系にある7つのスペースシティは地球連邦政府にたいして宣戦を布告したのだ。 ーーーー第1次宇宙大戦の始まりである。

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 "第1次宇宙大戦"といわれた大戦の時。

 スペースシティ連合のいっかくであるサイドAを本拠地にもつテトラ宇宙国軍のひきいる夏村部隊が中立宇宙都市であるスペースシティ・サイドFに侵入した。
 
 スペースシティ連合に参加しなかった見せしめのためにサイドFを攻撃したのだ。


 しかし、夏村部隊の作戦は失敗に終わった。

 サイドFで暮らしていた17歳の少年・桑田ジョウジが、軍の開発していたスーパースーツ ”コールドアウト” を装着し、生き延びるためにテトラのスーパースーツ部隊と戦い、これを撃破したのだ。

 スーパースーツとは宇宙服を戦闘用にカスタマイズしたもので、ガトリング砲にも耐えられる戦車のような硬い装甲に、ジェット機のように高速で移動できるバーニアを背中に固定装備した宇宙大戦時代がうみだした近代兵器である。

 スーパースーツの威力はすさまじく、宇宙空間での戦闘ではスーパースーツなしではありえないレベルにまであった。

 じじつ、これまで地球連邦軍は宇宙空間戦闘ではスペースシティ連合のスーパースーツ部隊を相手に一回も勝つことができなかった。

 もともと、スーパースーツはスペースシティ連合の得意とする技術だったが、戦況をくつがえすために地球連邦軍が独自の技術力で中立宇宙都市であるスペースシティ・サイドFで、スペースシティ連合にも勝てる強力なスーパースーツを開発したのだ。

 この事件はまたたくまに宇宙全土に広まり衝撃を与えた。なんせなにんも訓練を受けていない、一般人の17歳の少年が本職の軍人のスーパースーツを倒してしまったのだ。

 ーーーーいったい、地球連邦軍が開発したスーパースーツは、一般人の少年が着ても本職の軍人に勝てるほど強力な高性能なものなのか?

 ーーーーそれとも、この桑田という少年が特別な才能をもった逸材だったのか?

 真相は不明だが、とにかく、この事件は敵味方とわずにインパクトを残した。

 サイドFの人々とともに、連邦軍の新型宇宙戦艦ベーコンに逃げ込んだ桑田は生き残るために否応なしに戦争の渦中に巻き込まれてゆく。

 このできごとが地球連邦軍の反撃のはじまりでもあり、また、夏村と桑田の因縁の戦いの始まりでもあった……



 ……第1次宇宙大戦末期。
 かつて宇宙空間戦闘で優位だったスペースシティ連合の優勢は覆されていた。それは地球連邦軍が開発したスーパースーツと、いまや伝説の兵士となった桑田の活躍によるものだった。

 ここは宇宙要塞アバロン、ここはテトラ宇宙国軍の本拠地であるスペースシティ・サイドAを守るテトラの最後の砦でもあった。

 ここを突破されればテトラ宇宙国軍は丸裸の状態になり、これ以上の戦闘は絶望的となる。

 一方の連邦軍もこの戦いで大々的な戦力を投入したので万一ここでの戦いで敗れることがあれば再びスペースシティ連合に優勢を許すこととなる。双方ともにあとには引けない戦いなのだ。

 そして、永くに続いた桑田と夏村の戦いも終焉を迎えようとしていた。

 二人の第1次宇宙大戦の最後の戦場となったのは宇宙要塞アバロンのポント778。この空域でもっとも戦力が集中している激しい戦闘区域であった。

 桑田が敵の攻撃を避けながら敵のスーパースーツ2機をビームライフルで同時に撃ち落とすと、ほぼ同時に、味方のスーツをビーム砲で撃ち落とした敵のスーツを発見した。

「あの黄色いスーパースーツはもしや……夏村の”サマーギャング”か?」
 
 桑田が通信回線を敵にも聞こえるようにオープンチャンネルに設置して交信した。

「おう、そういうお前は、地球連邦軍の桑田か?」

 桑田の音声をひろった夏村が通信に応答した。
 二人はおたがいに向き合うとそのまま、戦闘に移行した。
 
 桑田のスーパースーツ "コールドアウト"の背中に固定装備されている最新式の高性能バーニアが火をふき、夏村のスーパースーツ"サマーギャング"の真下に高速移動した。

「堕とさせてもらうぜ!!!!」

 桑田が手にするビームライフルが真下から夏村を狙い打つ。狙われる側からすれば避けにくい角度だ。
 かろうじて避ける夏村。

「ちいっ!奴め、最新式のバーニアを用意してきたか。 このままでは勝てない。こうなったら“すけべ力 (すけべちから)”を使うか!」


 “すけべ力”とは覚醒能力の一種で「あの女とやりてえ」「たまんねえぇ体だなぁ」といった男のスケベな本能を人間の意識の極限にまで高める高度な技術である。

 覚醒能力者はこの技法により至福の興奮をえることができ。とんでもない集中力により通常の倍以上の気力、回避率、命中力を上げることができる。

 なお覚醒者なら誰でも使えるというわけでもなく、人並み外れたスケベな欲望が要求される。

―――マキエ……俺にちからをかしてくれ……

 マキエとは夏村の部下だった女で、若年であるにもかかわらず、軍人としての素質をテトラ宇宙国軍上層部に認められ、スーパースーツをくしし、おおくの敵スーパースーツ部隊を撃墜させた戦士としても優秀な部下だった。

 そして、プライベートでは夏村の恋人だった。最高の女だった。しかもHな体をしていて、いつも夏村を悶々させていた。夏村の“すけべ力”はマキエによって鍛えられたのだ。

 しかし……マキエはもうこの世にはいない。
 前の戦闘中に敵のスーパースーツのビームサーベルにエンジン部を刺されて。爆死してしまったのだ。

 マキエをやったスーパースーツはコールドアウト。そう、桑田のスーパースーツ、コールドアウトだったのだ。

 桑田のスーパースーツの攻撃が夏村につぎつぎとよけられてゆく。

「回避運動が早い!?よけられたってのか!最新式のバーニアのスピードとやりあうとは、さすが、覚醒者の特殊能力だな」

「見える、見えるぞ。マキエの水着シーンが見えるっ!」

 なんと、夏村は戦闘中にもかかわらずマキエの水着すがたをナマナマと肉眼に焼き付けていた。

 実は夏村はマキエの水着すがたを見たことがなかった。なのになぜ、見たこともないのに、マキエの水着すがたが見れたのかといえば、それは夏村の脳ミソが腐ってきていたからだ ……

 しかも、これで敵の攻撃をよけれるというのだから驚きだ。しかも、敵はスペースシティ連合軍のスーパースーツを100機撃墜したという桑田である。

 桑田はビームライフルの弾がなくなったのを知ると、ビームサーベルを抜き接近戦で勝負にでた。

「てええい!!」

 接近してきた桑田の振りかざすサーベルを夏村がよける。

「甘いな」

 今度は夏村の着ているスーパースーツの両腕に固定装備されていた有線コントロール式のビーム砲がはずれた。

 すると桑田の左右方向にビーム砲があらわれ、銃口からビームが発射される。

 ズウュウウウン!!
 と高速で宇宙に走るビーム音が鳴り響く。

「うわあああ!!」

 左の攻撃はかわしたが、右の攻撃はくらってしまった。が、桑田はかろうじてスーパースーツの右腕に固定装備されていた収納式のシールドで攻撃を防いでいた。

 並の兵士なら、今の攻撃でとっくにオダブツだったに違いない。

「夏村め、俺に当てたなあ」

 桑田は体勢をたて直すと、夏村の猛攻に恐怖を覚えた。普通、こんな高速で戦闘しているときにビーム砲をコントロールして当てることなどできるわけがない。

 それくらい夏村の戦闘力は尋常ではなかった。これもスケベ力によるところが大きい。


「奴め、まだペースを上げるのか! だが “すけべ力” は精神とチ●コに負担をかける。死ぬ気か。夏村!!」


「死なぬよ。いや! 死ねぬよ。マキエを殺したおまえを倒すまではな」
「マキエ?」
「おまえが前の戦闘でエンジン部を刺して爆死したスーパースーツの兵士のことさ。おれの女だった!」

「ああ〜、彼女なら殺してないよ」
「え?」

 この桑田の意外な言葉を聞いて夏村の動きが止まった。

「彼女とはマクドルナルドで偶然知り合ってさ、その時に、軍を抜けたいから偽装殉死を手伝ってくれって言ってきてさ。仕方なくOKして、みんなが見てる前で誰も乗っていないスーパースーツを破壊したのさ」

「マキエが生きてる? いや、嘘だ。だいたいなぜ、そんな手の込んだことをする必要があったのだ?」

「なんでも、彼女の上司がとんでもないすけべで変態で、勝手に彼女が自分に気があると思い込んでいるらしいんだ」

 どうやら桑田はその“上司”が夏村だとは気ずいていないようだ。

「……」

「そいつと一緒にいるのが嫌だから上層部に異動を頼んだんだけど拒否されてさ。軍を抜けたら軍閥会議にかけられて銃殺刑じゃん。だから、軍を抜けるには自分を死んだ事にする以外に無かったらしくてね」

 桑田が軽快にトークを進めるのを夏村はただボー然と聞いていた。

「おれ一回断ったんだよ。大金くれたけどさ。だけど彼女『あのキモぉい奴から逃げれるならなんでもする』っていろいろサービスしてくれてさ。
知り合って初めての女とデートに行っちゃったよ♪
うふふふ。しかも彼女のおごりで。
あっ! きみ彼女と付き合ってたんだよね。ごめ〜ん」

 戦闘中のムダ話の最中に信号弾の強烈な光が戦場を照らした。

「戦闘中止?!!」

 信号弾の識別は戦闘中止を意味していた。
 しかし、決着がついていないまま戦闘が中止するのはあり得ないことだ。いったい何がおこっているのだろう。

 桑田と夏村の元へ、スペースシティ連合軍のスーパースーツを着た男と、地球連邦軍のスーパースーツを着た男が、敵同士であるにも関わらず仲良くお手々をつないでやってきた。

 彼らが二人の前でとまるとが敵味方に聞こえるようにオープンチャンネルで通信してきた。

「おい、戦争は中止だ」

 とスペースシティ連合の兵士がいうと驚いた桑田は、

「どうしたんですか?」

 とたずねた。
 だれだって今さっき命のうばいあいをしてきた相手から親しげに戦闘中止をきかされたら驚く。

 驚いた桑田に、今度は地球連邦軍の兵士が、

「革命がおきたんだよ。スペースシティ・サイドAの始めたこの戦争に、他のスペースシティ同盟国であるサイドCとDが同盟離脱をして、反旗をひるがえしたんだ。これでサイドAの首脳陣はやる気がなくなって、この戦争は中止になったんだ。この戦争に意味はなくなったんだよ。おれたちは地球に帰れるんだ」

 そういうイキサツが告げられると、桑田は飛び上がるように喜んだ。

「やったーーー!!家に帰ってPS4(プレイ・サターン4)ができるぞ!!」

 プレイ・サターンとは家庭用ゲーム機の事である。戦場ではゆっくりゲームを楽しむ時間がなかったので、これから家に帰ってゲームを楽しむ事ができるようになったので桑田の喜びようはこのうえなかった。

 喜んでいた桑田に、スペースシティ連合の兵士は気さくな声でこう言った。

「俺達はこれから皆で集まってサイドAの吉之家で並盛パーティを開くんだ。よかったら君たちも来る? 女の子も数人くるよ (ブスばっかだけど)」

 
「並盛? 女の子? 行きます。行きます!!」

 “並盛” “女の子”と聞いて桑田はうれしくなった。

 吉之家といえば、有名なステーキ丼のチェーン店で、特に並盛りは食べやすいサイズで老若男女に人気がある。それに、サイドAといえば美人が多いことで有名だ。
 そんなわけねーんだけど。
 
 今までは戦争中で物資がない状況だったからここの所ロクなものを食べていない。これでコップヌードルからおさらばできるぞ、とまいあがった。そして女の子と聞くと絶対カワイ子ちゃんを想像してしまうのだ。バカなやつだ。

「よし決まりだ。地球連邦軍の英雄を連れていけば皆喜ぶぞ」

 こうして、桑田は地球連邦軍の兵士とスペースシティ連合の兵士に連れられてサイドAへと行ってしまった。

 残された夏村はスーパースーツのヘルメットの中で目に涙を浮かべた。
 そして、数時分後たまったものを吐き出すように夏村は吠えた。

「ままままああああああああああぁぁぁぁぁ〜〜〜きいいいいいいぃぃぃぃいいぃ……ええええええええええっっ!!!!%R&*+L<&%$$“!&()=―――」

 気が狂うほど吠えた。
 荒れ狂うほど吠えた。
 女を忘れようと吠えた。
 彼には吠え続けるしかなかった……
 ちょっと見苦しかったけど。

「うぉぉおおおおおおおおおおおお!! 」

 吠えるたびに惚れた女が自分を捨てた(逃げた)苦い真実が夏村をえぐり、突き刺す。

 おもえば、人々に戦争がもたらしたつめ跡は大きかった。
 命を奪い、友人を失い、家も焼かれ、家族も離ればなれになってしまった。
 いったい、この戦争が人類に何をもたらしたといえるのだろう。
 この戦争はこれで終わる。
 一時は平和な時間が約束されるだろう。
 そう、一時は、
 なぜ人は平和を嫌うのだろう…… 
―――戦争がすべてを奪うと知っているのに。

 その後、夏村は廃人になり市民骨折病院に入院することとなった。
 いっぽう連邦軍の英雄となった桑田は危険人物として軟禁される運命をたどるのだった。



2017/02/05(Sun)20:30:58 公開 /
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