『先生、話があります』 ... ジャンル:リアル・現代 恋愛小説
作者:11月の男                

     あらすじ・作品紹介
__あのとき奪われた真実。彼女の瞳は美しく、宝石(ダイヤ)のようだった。眩しいその陽(ひだまり)の下で、彼女は起きることなく、その美しい瞳を見せず、密かに眠っていた。ちょっと切ない、少女の物語。

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第一章『囚われの少女』

「先生っ」
 授業中、プリントを渡したあと、すぐに寝てしまった加藤先生。私のクラスではこういう寝ぼけた先生がいる。そしてなによりも、ユーモアのある優しい先生で毎日が楽しい。そんな先生や生徒のいるこの学校は、前いた学校よりも遥かに好きだ。
「ん、明日香か。どうした? 」
「もう、先生。『どうした? 』じゃないですよー。しっかり時計見てくださいよー」
 加藤先生は、なんなんだとばかりに時計を見る。すると、すぐに顔が変わり、何かを言おうとする。
「な…」
「な? 」
「もうとうじじゅっぷんっだとー! 」
私は今更ですか、と思う。そしてクラスの皆はそんなことよりも、十時五十分を『とうじじゅっぷん』と言ったことを笑っていた。
「先生のせいで草が生えたじゃないですかー。どうしてくれるんです? 笑いが止まらないんですけど」
 一部では先生をからかう言葉がクラス中を飛び交う。でもその言葉に悪意はない。
「くだらねぇ。授業やんねーなら帰んぞ」
 でもまた一部では、そんな先生を白い目で見る者もいる。彼は佐藤和輝、このクラスの嫌われ者。私は別に嫌いじゃないんだけど、態度が少し気に入らないかな。なんていうか、短気でおっとり性格とは釣り合わないっていうのかな。
「お。佐藤帰るか、帰っていいぞ」
今度は隣の席の近藤陽一が佐藤君を茶化す。
「なんだとこのデブがっ!」
 近藤君は大人しいし、少しポッチャリしてて普段はあまり喋らないんだけど、佐藤君とは相性が悪くてよく茶化したりする。
「え? 自分が帰るって言ったんじゃねーの? なに、オレの難聴だったの? ちょっとオレ耳鼻科言ってくるわ」
 この戦いに終わりは無さそう。
「お前はそんなとこより、病院でカロリー低めの食品でももらってこい」
「じゃお前は精神安定剤でももらってこい」
「なんだとっ!」
 勢いよく佐藤君が近藤君にとびかかったそのとき、縛られた新聞が宙をとんだ。
 ドスッ。新聞はそのまま落ちていった。そして私はその新聞よりも先に加藤先生に目がいった。
「いい加減にしろ! 」
突然の加藤先生の言葉に、それまでざわついていたクラスが葬式のときみたいに静まり返る。
「お前らはまだそんな低レベルの喧嘩をする年か! どいつもこいつも止める奴もいない。本当にお前らは受験を控えてる中学生なのか? もう小学生の頃とは違うんだ。もう少し自覚しないか! 」
 確かに正論だった。そしてそのとき、一つ引っ掛かることがあった。私は今まで何をやっていたのだろうか。私は今まで檻に閉じ込められた囚われの女だった。
 教室中が静けさで覆い尽くされてくのを見ながら、私は声を発した。
「こんなときにすみませんが…」
なんだ? 明日香」
私はため息を吐いて次の言葉を発した。
「先生、話があります」

今回はデモ用です。

2015/05/16(Sat)21:33:16 公開 / 11月の男
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■作者からのメッセージ
自分には学園ものしか書けませんな、やはり。前回の投稿作品は打ちきりになりました。コメントをしてくださった方、すみませんでした。そして小説を書いてる一人として、打ち切りは非常に恥です。今回は、前回のものを踏まえ、新しく作りました。

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