『虹色の世界(1)(登場人物を改めました)』 ... ジャンル:リアル・現代 恋愛小説
作者:未来貴公子                

     あらすじ・作品紹介
虹色の世界。未だかつてない空想物語。四つの小説を一つにまとめた長編小説。主人公の慎一とその仲間達は慎一の妹を助けるため、慎一が幼い日にみたあの虹色の空を妹に見せようとする。そして慎一たちは色々な観光地を周りに回る。そんな中色々な方たちとの交流や支えなどあり、虹色の空の情報を深く知り得ていく。果たして結末はいかに…? その他『虹桜』『虹色の海』『虹色の夢』を収録した長編物語。◆◇◆◇◆◇◆◇◆【登場人物】加藤 慎一|(カトウ シンイチ)リゾートホテル会社の社長の息子。だが少し前に両親は死去になり、今は叔母と暮らす。海鳴 渚|(ウミナリ ナギ)一度は死んだと噂されていたが、虹色に輝く空を見て、まさかの復活。このストーリーの鍵を握っている。(1)以降の登場。神楽 優輝|(カグラ ユウキ)家は豪邸で、アメリカの有名ブランドの社長の母と、日本で最も企業トップとされる会社に務める父がいる。父は、優輝にはそこまで望んではいなく、保育園、小学校、中学校は普通の高校に入れた。鬼才。金井 謙介|(カナイ ケンスケ)柔道日本代表断トツで一位の武術に関しては、才能が溢れているが勉強に関しては全く出来ない。一度誘拐に遭ったが返り討ちにしたとか。虎松 楽|(トラマツ ラク)海鳴渚に、崖から落ちそうな時に助けてもらった慎一達より二歳下の男。渚に好感を抱いており、いつか恩返しをしたいと思っている。韓国に住んでいた日本人。(1)以降の登場。

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『虹色の世界』

~素晴らしき虹色の空~

 十一月中旬を越し、少し寒くなった冬のできごと。
 僕は今、枯れ果てた紅葉の木近くの木でできた木製の椅子に座っている。
 そして僕は幼い頃、四人で夢見たできごとを自分なりに振り返っている。また、今年の十月に“誰にも手に負えない病”、裂傷病にかかってしまった。裂傷病とは、稀に針からできる裂傷がその病を生む。そして、そんな病気あるわけがない。そう信じたいが一人目の感染者が僕の妹、ハルカだった。
ハルカの名前は春の香りと書いて、“春香”と読む。
 春と言う言葉を強調する理由は四月二十日に産まれたのが原因だそうだ。
 そしてかつて僕は、妹の春香のように、“誰にも手に負えない病”にかかっていた。
 滅炎病。やる気が失せ、力を失う。名前の通り、自分に灯されていた炎が滅び、哀しむように。そんな病気を治したのは紛れもない事実。
 それは七色に輝く虹色の空だった。聞いただけでは理解不能な筈だ。そもそも虹とは一体どういう原理でできているのだろうか。そして本当に七色であるのだろうか。見方によっては色々な色に見えるかもだし、実は八色かもしれない。例えられている七色の種類として、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫が基本だと僕は思う。
 虹が見れるチャンスは、雨が止んだときか、まだ雨が止んでないときに日射がある場合に太陽のある方向とその逆側を見ることで見えるらしい。僕は専門家でも無いからそんなことはわからない。
 別にそこまで調べたいとも考えたいとも思わない。
 あの日見た虹色の空。虹の橋がかかっていた訳ではなく、七色に輝く空と言って良いほどだった。見間違いだろと疑う人も少なくはないだろう。だが現に僕は、その病をその見た直後克服している。
 だから僕は信じる。例え誰かが否定したとしても。

~仲間~

 僕が椅子に座って、少し考えて。もう一時間くらい経つだろう。だが、今のは考えたのではなく、今までの出来事を辿っていたまでだ。何も進歩などしていない。
 そんなことを考えていると、近くから何やら話し声が聞こえた。
「あとで三人でカフェいかねぇ? 俺と慎一とお前で。な、いいだろ」
「お前って本当趣味悪いよなぁ。俺は構わないけどよ、男三人でお茶ってよぅ」
「ま、お前が構わないなら、あとは慎一の判断に…って、ううん…? なぁ、あれ慎一じゃね? 」
「ああ、あれは確かに慎一だ」
 と何やら二人の男らが近くまで寄ってきた。どうやら僕の親友、優輝、謙介だった。確か話だと…。あれ、思い出せない。さっき聞いたばかりなのに全く思い出せなかった。
 そして、優輝と謙介がすぐ近くまで来る。そして僕の気持ちが急に変わり、自分では理解出来ないような行動に出た。
 逃げたのだ。何もかも納得できない。混乱というものはこれ程まで恐ろしいものなのか。僕はそう思った。
「お、おい、慎一。急にどうしたんだよ!? 」
 自分の行動に理解出来ないせいで、僕は立ち止まった。そして振り返り謙介と優輝の顔を見る。その顔は心配していた。この二人がそういうつもりでなくても、僕にはきちんと分かる。もうあんな思いはしたくない。そう思ったに決まっている…。
 そして、
「どうしたんだよ、急に走り出して。最近お前、なんか変だぞ? 」
 と謙介が心配して声を掛けてきた。 確かに僕は最近色々な可笑しい行動をしていたため、謙介の言葉を否定することが出来ない。妹である春香のことで頭がいっぱいなのもあるが、他にあるのではないか、そうも思ってしまった。
「良かったら話聞くぞ。カフェでも行くか? 新しく出来たって有名なところ」
優輝が心配して相談に聞いてくれると言ってくれた。だから僕は、内心は安定していなかったが、カフェに行くことにした。

* * * * *

 一昨日できたばかりのカフェ『男爵』は、一晩で口コミで高評価、人気のあまり人が絶えなかった。
 だが、今日はかなり空いていた。
「マスター、初めまして。こんにちは。此処って人気が絶えない場所じゃなかったんですか? 」
 と優輝は、礼儀をもって男爵のマスターに訊ねた。するとマスターは、
「おっ、高校生か。しかし珍しいな。ウチに高校生が来たのなんて初めてだぞ? 歓迎する。俺の名前は飯田友和。まず当店に来たことないだろうから、店内の説明をしてやろう。一、注文を頼むときは、机にある呼び出しを使う。一、当店には裏メニューがある。一、メニューにあるSPECIALは、マスターが判断して料理や珈琲を渡す。それだけは覚えておいてくれよ」
 優輝は、高校生が初めてというのに一番驚いた。そして、カウンターの近くにあったメニューを見ると英語でスペシャルと書かれた文字を見つける。
「マスター、特別を一つ。この元気無いのにお願いします」
 返事がない。
「あの、マスター? 」
 ワンテンポ遅れてやっと、
「お、おう、分かった。ちょいと料理しますぜ」
「俺たちは紅茶をお願いします」
「はいよ! 少し待っていろよ? 」
 元気のない、俺は今そう言った。するとあのマスターが同情したように見えた。何かあるな、俺はそう思った。
 約十五分後。
 マスターは、
「一丁上がりぃ」
と言い、皿を慎一の目の前においた。そしてそこには料理が置かれていなく、紙が置いてあった。
 紙には、『貴方の心の悩み、解消します。否定せず、不安をすっきり正常にしてみせます』と書かれていた。

~カフェ『男爵』はカフェ『グラデシア』に変わる~

 ちょっと待てよ。注文は?なんだこれ。僕の悩み?え、どういうこと?
 慎一は意味が分からず、おどおどしていた。
 そこで、マスターは、口を開いた。
「つまり、このオレがだな、お前の不安をスッキリさせてやるってことだ。妙にお前さっきから雰囲気悪くてよ」
「すみません」
 僕は悪気を感じ、男爵のマスターに謝った。
「うーん…。怒ってるんじゃなくて、気持ちよくカフェを利用していただきたいだろ?店のマスターとしては」
「お気持ちを察しなくすみません」
「いや、謝るのはいいんだ」
「すみません」
 という、謝罪の連鎖みたいなのが続いてしまった。
 十分ぐらい経ってから、マスターは、やっと口を開いた。
「じゃ、行くか? 」
 最初は意味がわからなかった。
だが、扉を指差してたのでよくわかった。外に出ろ、ということだ。
「君らはどうする? 」
咄嗟に、マスターは謙介と優輝に問い掛ける。
「行きます」
 と二人は同時に答えた。
僕は二人も来てくれるのが嬉しかった。そして謙介と優輝の顔を見るとニッコリと微笑んでいた。

* * * * *

 外に出ると、マスターは、店の路地に入った。そして裏に出た。
 と思いきや、そこにもカフェがあった。
「ここは裏の店。限られた人間のみが入ることの出来る異空間だ。ここから異世界にワープする。さぁ店に入った入った」
 異空間。異世界。ワープ。
アニメやドラマじゃないんだから。
 と思ったが、入った瞬間に草の生えた大地に着いた。
嘘だろと、思って目をパチクリさせた。だが、一向にその大地は頭の中から離れず、それを信じてしまった。
「やっぱりな」
「え? 」
謙介と優輝は訊ねる。
「あの子は。君の親友の子は。元説病だ」
「げんせつびょう? 」
「つまり、病気の一種。元説病は、最初に誰かから聞いたことを本当に信じ
それが彼の目には見えてしまっている。治療方法はあるが、治らなければ症状は悪化する。若年性アルツハイマーより出来の悪い病気だ」
 少しの間を開けてから、謙介と優輝は言った。
「…。それってつまり…。」
俺たちのことを忘れ、自分の世界に入ってしまうのかよ。と謙介と優輝は言おうとしたが、声や手が震え、言い切ることができなかった。

* * * * *

「マスター、慎一の様子は」
 慎一加唔市の県立の総合病院へ無理に連れていき、無理に検査を始めた。
 そしてまだ彼には意識が無く、まだファンタジーな世界のままだ。
「医師からの話を聞くところ、あと三時間で、回復するようだ。だが、治療のことに関してはまだ何も言えない」
「そうですか…」
 謙介と優輝は落ち込んだ。今まで彼らは一歳の頃から一緒だった。慎一と謙介と優輝。そして、渚こと海鳴渚。
 海鳴渚は、小学四年生のときに、フランスに父親の都合で連れていかれ、三人はそれきり会ってはいない。渚は死んだ。それも親の運転ミスで、家族三人共に手を繋いだまま死んだ。その情報が、彼らが中学一年生の頃出回った。
 彼女は本当に死んだのか。死んでいないのか。
 あなたは今どこにいるの?

 約三時間後に、慎一が回復した。
「…はっ!? ここは…? 病院…? 」
 やはり、今まで意識を失っていて、此処が病院だと言うことに初めて気が付いたようだ。
 そして豪快に横にいたマスターが言う。
「慎一君と言ったか? 君が此処にいる理由は教えてほしいか? 」
「はい…ってマスター? 」
 どうやら何が何だかわかっていなく、動揺を隠しきれないらしい。
「お前は元説病だ。この元説病は、お前の記憶を奪ったり、幻覚を見せてしまう最悪な病気だ。それは君もいやだろう? 」
「話がよくわかりません。まとめると、つまり自分が病気だということですか? 」
「そうだ」
 マスターはきっぱりと言った。物凄い剣幕を見せ、鋭く、真剣な目付きで。
「でも、マスター。もし、貴方の言うことが嘘…」
 今気が付いた。マスターの横には、謙介、優輝、医師の先生、看護士が真剣な目付きで寝ている自分を直視していた。
 僕は病気なのか?

 手術を初めてから二時間。赤く光るランプが消え、扉が開いた。
 中からは、晴れ晴れとした慎一の姿があった。謙介と優輝は、嬉しさを堪えきれずに泣いた。良かった、本当によかった。
「皆、ありがとう。そしてマスターも、ありがとうございます」
「マスター? 」
 医師達が、マスターと聞いて困惑する。はっきりマスターとしっかり言ったのは初めてだったため、驚いてるようだ。
「しっ。今はお前のパパな」
そこで慎一は、マスターが喋った言葉に動揺してしまった。
 慎一の父母は、三年前に事故にあって無くなった。それを思い出すことになってしまった。
「う、うん。そうなんだね。ありがとう、お父さん」
 慎一はニッコリと微笑んだ。だがその瞳と笑顔にはどこか寂しさがあった。

~今度こそグラデシアへ~

翌日の午前十時。今日も、あのカフェに寄った。今日は、悩みを打ち明ける日だ。
 慎一は話すことが難しいが、頑張ろうと決心して、店の路地を通り、裏へ出る。昨日はここまで来たのは覚えてる。だが、此処からの記憶はない。それもあの病気のせいであろう。
 今、足を踏み入れようと覚悟したとき。険しい山々の木々が鳴り響くような音がする。嘘だ。治ったのではなかったのか?
 だが、それは木々のざわついた音ではなく、草むらを走る謙介と優輝の音であった。
「ごめん、ごめん。待ったか? 」
 全くヒヤヒヤするぜ。
「あ、今来たばっかだから大丈夫」
「それでな聞いてくれよぉ。謙介がゴミ捨てるとか言ってのろかったからなんだよね、遅くなった理由」
 そう優輝は言ったが、謙介は逆に、
「は? それは優輝だろ? オレはお前ん家に迎えに行っただろう? 」
「はぁ? 意味わか…」
 いつもの優輝と謙介のコントが始まった。この二人を見ていると、昔の両親を思い出す。何処か寂しいようでなにか嬉しかった。
 そして少し時間が経過後、扉が開き、マスターが出てきた。
「おう、皆。やっぱ来てくれたのか。歓迎するぞぉ! 」
「じゃ、入ろっか」
 こうして、三人はグラデシアの中に入っていった。

虹色の世界(1.2)へ続く
※エラーのため次回までお待ちを。

2015/01/29(Thu)21:06:42 公開 / 未来貴公子
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■作者からのメッセージ
*お詫びと物語説明*

何度もスレッドを新規作成したことを心からお詫び致します。

こんにちは、こんばんは、未来貴公子と言います。
未来の王様という意味になっていますが言い方が気に入っただけですので、この名前で行きたいと思います。

本作品『虹色の世界』では、慎一、渚、謙介、優輝の四人の主人公の感情を踏まえて作っております。ですので、「ここは普通こうだろ」など思うところが沢山あるかもですが、それを踏まえてのことだと思っていただけたらなと思います。四人は個性的なキャラクターですが、結構設定が難しいです(慎一は標準)。

小説書き始めでわからないことが沢山あるかもですが、もし宜しければ教えていただけると嬉しいです。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
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2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。