『INATOMI』 ... ジャンル:時代・歴史 アクション
作者:レボリューション Y 田中                

     あらすじ・作品紹介
戦国時代。織田信長や羽柴秀吉などが戦いに血と汗を流した時代。同じように稲富祐直という一人の鉄砲の名手も戦っていた。戦国を舞台に筆者の発明による新感覚伝記小説。

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 時は戦国時代。群雄割拠する時代の中一人の天才が生まれた。稲富祐直。1552年のことである。一色氏の侍大将稲富祐秀を祖父に持つ。

 木は地面と垂直に立つ。それは太陽に向かって伸びるからである。それゆえに木はもう一つ別の木と平行に並ぶ。その男は幾何学的なものへと抽象化した的に向かって銃を持ち上げた。寸分狂いもなく、木と木の真ん中にいた鹿に銃声がとどろいた。
 木々に羽を休めていた鳥たちが一斉に大空へと飛び立った。
 「見事じゃ」
 そういったのは近くにいた老人である。浅黒い肌に白い口ひげをはやし、麻でできた着物を身にまとっていた。その老人の片手には木製の鉄砲。老人が撃ち倒した鹿のほうへ寄って行った。
 「おぬしの成長のおかげでわしは安心して隠居できる」
 祐直の鉄砲の腕は幼いころより群を抜くものであった。祖父の祐秀の手ほどきでさらに腕を上げたのである。
 「わたくしにはこの鉄砲が自分にしっくりきてなりません。これからももっと精進します」
 一色氏は丹後の国の弱小国であった。周りには若狭の武田氏や山名氏、細川氏などがいて、絶えず国に侵入される中、祖父の祐秀が懸命に主君一色義道を支えていた。
 鉄砲。それは鉛玉を円形の筒に装備し火薬を使って、鉛玉を飛ばす武器である。稲富祐秀はその鉄砲の名手でった。
 「明日は初陣だ。心しておるな」
 「はい」
 そして二人は自らの陣に帰って行った。
 
 林が深い雑木林を全速力で追いかける四人の兵士。二人は刀。もう二人は槍を持っている。
 「はあ、はあ、はあ、はあ」
 その前を走るのは稲富祐直。手には一丁の鉄砲。
 一色氏は武田氏の軍勢に敗れて城に引き返しているところであった。
 「鉄砲ってのはなあ。一発撃てば数十秒待たなきゃ、使えねーよな」
 後ろから兵士の罵倒にも似た叫び声が聞こえた。そうである。火縄銃の発射間隔は20秒から30秒なのである。
 手には汗がびっしょり。鉄砲が濡れて撃てなくなっては、という思いが脳裏をかすめた。心臓がバクバクと鼓動する。足がだるくなってきたと思うと足を止めた。
 敵四人との距離は40メートル。いつものように鉄砲を撃つ姿勢がよみがえる。恐怖が腹の底でうねるのを感じたが、無視をした。木が平行に並ぶ3,4メートル横に狙うべき敵はいる。鉄砲が持ち上がると同時に、火を噴いた。
 「ダーン」
 一人の槍を持った兵士の腹に当たり、そこに転がるようにして倒れた。残りの3人は構わずに猛然と迫る。そこで腰にある袋から三枚の灰色の色紙を出した。それを鉄砲の火薬庫に差し込むと、弾丸を素早く鉄砲に入れると、
 「ダーン」
 またもや鉄砲が火を噴いた。もう一人の槍を持った兵士のかぶとが激しく砕けて、後ろのめりに倒れていった。
 「!?」
 鉄砲は一回撃つごとに弾丸を込めたり、弾薬を込めたりしなければならない。30秒はかかってっもおかしくはない。なのになぜか3,4秒でやってのけた。
 二人の兵士は今の驚くべきことに戸惑いながらも走ってきた勢いでそのまま猛進した。
 祐直は、灰色の色紙をもう一度鉄砲に差し込むと弾丸を詰めて、砲撃した。次は刀を持った兵士の頭に当たり、血しぶきとともに倒れた。
 「クソーッ」
 残りの一人は祐直の近くまでやってきたところで、
 「ダーン」
 またもや銃声とともに崩れ落ちるようにして地面に倒れた。
 硝煙のにおいが立ち込める中、稲富祐直は4人を相手に一丁の鉄砲で片を付けたのである。
 そこには祐直の発明があった。弾薬を水に溶かして、わしに浸して乾かしたのである。それゆえに祐直は連続撃ちを可能とした。
 稲富は初陣を苦い敗走で飾ったものの引き際には花を咲かせたといえよう。
 静寂に包まれた雑木林の中、稲富はある種の虚脱感を感じ、残った死体を静かに眺めていた。
 
 一色氏は立てこもることがこれ以降増えていった。若狭の武田氏が侵入を繰り返す中、味方の士気は下がりに下がっていた。
 
 

2014/12/24(Wed)18:24:54 公開 / レボリューション Y 田中
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