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『*虹色の空*短編[海鳴 渚の韓国留学物語]』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:マナブ
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あらすじ・作品紹介
父の転勤、父母の自分勝手な思いで渚は韓国へ留学することになった。慎一、謙介、優輝達には親が勝手に渚は勉強をすると言っていた。だが、親たちの思いはそんなつまらないことではなくただただ、渚の大切な親友たちと別れることが目的だった。だが、それを知っていた渚は、韓国の新築の家から失踪する。そんな親たちは、捕まえるように闇に手をつけ…。虹色の空。今明かされる渚の過去。短編シリーズ、渚の思いを描いた小説初心者の男が描く、物語。
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〜序章〜
『さらば永遠の親友』
飛行機の中。
それを私に何を意味するのか。
これは、私に与えられた親友と別れる試練、だと信じたい。
私をあんなにも可愛がり、優しくしてくれた母や父が鬼のように殴ったり怒鳴ったり。
そんなこと、思いたくもなかった。
けれどやはり思ってしまう。なぜ母は、私を育ててきたのか。父は育ててくれたのか。それが最近分かってしまった気がする。
母にとって、私は道具だ、と。
勿論そんなことは思いたくさえない。母はいつだって優しい。父はいつだって頼もしい。だが本人達自らがそう言ったんだ。親達にすればどうってことのないことかもしれないけど、私にとっては辛いこと。
そろそろ韓国に着いてしまう。飛行機から見る景色。そこには遠く離れた故郷が見え、泣いている親友がいた。私がもともと持っている力、それは千里眼。何百も先のことが全てわかる気がする。悪魔でも気がすることしか出来ないが…。
私のことを本当に泣いてくれてるだろうか。小学六年生の彼らが私なんかのために泣いているのだろうか。私は、小学六年生の女。彼らは泣かなくても私にとっては悲劇が連続で起きたてき以上に悲しい。
まもなく、韓国に着きます。機内から降りる際は必ずお忘れもののないようにお願いします。本日はご搭乗ありがとうございました。
と、韓国語でアナウンスが喋っている。この韓国語を覚えたのも母のおかげだ。
信じてたのに…。
ごめん、皆。今までありがとう、そしてさようなら。
第一章
『失踪、そして仲間』
韓国で暮らすことになってから、もう何日が経つのだろうか。
私はただ、何も知らないこの国で孤独に一人生きてくだろう。
そう思ったある日、一人の男がやってきた。彼は日本人であり、名は「雅人(マサト)」と言った。
彼は私の話すことを真剣に聞いてくれた。雅人は同い年ぐらいであり、一番韓国に来てから信用できた。
だが親からは不審に思われ、最終的には闇にまで手を出し、殺害までおいやった。
また、一人になった。
もう嫌だ。雅人や、慎一たちと一緒にいれない。唯一の仲間と楽しく暮らせない。そう思っていた。
だが、また一人、楽(ラク)という中学二年の先輩の男に出会った。事情を話し、私に近づくと巻き込まれると言ったところ、二人で逃げようと言ってくれた。
そして暫くが経ち、等々失踪の日がやって来た。私は家中の食料をできる限りリュックにつめ、家を出た。
最初は軽い気持ちだった。だが、現実はそこまで甘いものではなかった。
出ていけば、きつと迎えに来てくれる。きっとそうだ。そうに違いない、と信じたかった。だが楽は言った。
「渚! いい? よく聞けよ。お前は今から何処へ行くと思ってる!? そんな格好してたら走るにも走れないだろ! 」
これが私にとっては何を指しているのか。迎えに来るはずがない。愛していない。優しくもない。今までの全ての常識が覆された感覚だった。
「迎えに…来てくれないの…。私はずっと…一人…なの…? 」
私は自分の愚かさに精一杯泣けるだけ泣いた。騙されて悔しいとも思うが何よりもその現実が悲しく、とても辛かった。
だがそう思っているとき、彼はこう言ってくれた。
「渚、君は一人じゃない。僕は君の永遠の友であり、君を守ると約束しよう。君が辛いときは僕も泣こう。そして君が楽しいときは僕も一緒に楽しむ。不満は無いよな? 嘘なんかじゃない。だからもう一人なんて言うな」
これは私にとっての失踪のきっかけでもあり、好きになる切っ掛けでもあった。そんなことを思ってくれたのは唯一、昔慎一が言ってくれた言葉ぐらいだった。
『僕は君を愛してる。君が戦うときは僕が剣になってやる。守ってほしいときは僕が盾になってやる。だから、安心しろ』と、小五の時に言ってくれたことだった。なんとなくだったが楽と慎一を重ねていた。
「ありがとう…慎一、楽…」
「シンイチ? 」
「うん…前に話した日本に居た時の親友。楽と同じようなことを言ってたんだ…」
「そうなのか…。慎一…。それは僕の弟だね…。もし君が日本に帰っても、このことは<永遠>に内緒だからね」
つまり、加藤 楽。最初の話では『沖田 楽』と言っていた。慎一に兄がいるなど、この親友の私でさえ知らなかった。
「知ってて私に近付いたの? 」
私は知ってて近付いたのなら、少し恥ずかしいな、と思った。何よりも慎一のお兄さんだ。
「それはたまたま君が中学に進学してきて、日本人だったから声を掛けたんだ。君も明るそうな女の子って顔してたけど、いっつも廊下を通る度にしけた顔してたから声かけてみたんだよ」
なんでこんなことを軽く言えるのか。私には到底無理。そう思ったが、聞いてみたいことがあった。
「あの…さ」
「ん? 」
「わ、私の…こと…好き…? 」
「勿論。僕の宝石箱に入れたいぐらいだよ。空き箱の」
冗談でも宝石箱に入れたい、という言葉と勿論と言ってくれたことが凄く嬉しかった。
私はその夜出来る限り、楽と歩いた。とても楽しかった。一緒に話せて、とても嬉しかった。こんな夜がずっと続けば。
だが、そんな思いは一瞬で消えた。自分たちの走るる近くに、一つの明かりが見えた。
「隠れて! 」
「え!? 」
「早く! 」
と言い、渚の手首を引っ張り草むらに隠れた。すると、五人グループのような男性たちが来た。
「全く。あの叔母ぁも冗談キツいぜ。殺さない程度に縛り上げろってよ。逃げられたら殺すしかねぇっつの」
「まぁまぁかっかするなって。足狙えば大丈夫だろ」
そんな話し声が聞こえてきた。私はゾクっとした。それを感じた楽は、
「渚。悪いことは言わない。服を全て脱いでいろ」
「え!? 」
楽がそんなことを言うなんて思わなかった。理由はどうであれ、私は服を脱いだ。
「ちょっと寒いが我慢しろ。少し此処で待っていろ。あいつらが近くに来たら厄介だ、仕留める」
「待って! 行かないで! 」
「すぐ戻る」
と、行ってしまった。
また一人になった。見つかったらどうしよう…。
楽は所持していたエアガンを片手に掴み、頭を狙った。
パァン__。
「うおっ! 誰だ!? 」
「俺だ! 」
と言い、五人の前に立ちはだかった。
普段の話し言葉は僕だが、怒りを隠せなくなるとつい俺と言ってしまう。
相手は本物の銃を片手に装備していた。だが、俺だって負けない。全ては、渚のために。
「俺は負けない。勝って、渚に勝利を届ける」
だが__。背後に沢山の気配を感じた。包囲されたのだと思い後ろを向いた。その直後後ろの一人の男が銃を構える。そして構える音が鳴った直後、射撃された。
一回、二回、三回。全て楽は腕で受けた。
「貴様、首をよこさないとこの女の命はないぞ! 」
「な、渚!? くっ、どうしたら…」
渚が人質にとられ、どの選択が合っているか。一つはここから逆転。二つ目は潔く、首を差し出す。そしてもう一つは奥の手を使う。
俺は悩みに悩み、ようやく結論がでた。
「分かった。首ぐらい差し出そう」
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2014/12/21(Sun)08:03:43 公開 / マナブ
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■作者からのメッセージ
虹色の空、短編シリーズ『海鳴 渚の韓国留学物語』。短編の読みきりバージョンです。本編は、虹色の空part1、虹色の空part2を見てから読んだ方が分かりやすいと思います。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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