『虹色の空(仮)part1』 ... ジャンル:リアル・現代 アクション
作者:マナブ                

     あらすじ・作品紹介
舞台は、高校の冬。主人公の「僕」は幼い頃に見た病が治る力を宿す、虹色の空を求めていた。だが、その日々は無に等しいほど遠いものだった。そして迫り来る妹の死。時間がない。時間は待ってくれなどしない。家族のことを思い、妹を必ず助けたいと思う一人の男と、それを支える仲間たちとの寒い寒い冬の物語。

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〜序章〜

『幼い頃見たあの空』

 人は、誰しも見たくても見れない何かがある。
そうは思わないか? 俺はそう思ってる。
俺が言ってるのは、お笑いのいいところを見逃して見れなかった時のことを話しているのではない。

 俺の言ってるのは、見たいのに見れないと同じでありそれが、わがままなことぐらい自分だって分かっている。

 話を変えよう。君が例えば宇宙人だったとしよう。そしたら宇宙人の君は宇宙から地球を眺めるとき、何が見える?

 そう、よくわかったな。広大に広がる海、雲など見えるだろうな。だが君はそこで普段より変わったものを見たとしよう。それが幻想的すぎて頭から離れないような現状だったら、君は俺と同じことを考えている。

 今から俺は、誰もが耳を傾けるような言葉をいい放つ。覚悟はいいかい? 僕は幼い頃、病にかかっていた。だが、ある日を境にあれは夢だったのかと思うかのように回復した。たった一瞬空を見上げたときからね。信じたくないなら信じなければいいんだよ。その空を見たとき俺は感動したよ。空は普通青だがそのときの空は虹色だったのさ! 君が疑っても、俺は信じるよ。

 なぜ、そこまで信じるかって? 二歳下の妹、江里(エリ)を助けるためさ。二歳下の妹は、十三の頃から誰も手に負えないような病にかかった。だからあの日僕が治ったようにきっと妹だって病気が治るはず、だと思ってね。そんなこんなで虹色の空を探している訳なんだが未だこれっぽっちも情報が無いのさ。

 正直、自分の愚かさに失望したね。妹に、虹色の空を見れば治るって言った直後。両親からの冷たい視線と、姉からは厨二病にも程があるとか言われ殴られたし。

 きっと、両親と姉は可哀想な子みたいになってしまったとか思っただろうね。でも、別に構わないんだ。それはつまり、君と同じ信じないってことだからね。

 君は俺の話を信じてくれる? まぁ別に信じて欲しいとかさえ思ってないからいいんだけど。

ところで、俺はさっきから誰に問いかけているんだろうか。

 そこまで来たとき、やっと俺は我に帰った。

今の__。だれ? 

第一章

『作戦前夜』

 俺はいつものように学校に登校した。そして授業を受けた。隣は一番後ろの席のため、誰も居ないはずであった。だが、確かに俺は今、十分ぐらい現状を語っていた。今のが誰なのか、全く分からない。

 さっきから、何故だろうか。ものすごい視線を感じる。顔を上げたら姉ちゃんがいるとか怖いことにはなりませんように。

 祈りつつ、顔を上げた。すると、
「慎一(シンイチ)。おい、慎一」
 俺は此処が学校の校内であることを確認し、
横に誰も居ないかを確認してから、声のする方向に顔を向けた。そこには、彼の担任の青山がヤクザのように睨んでいた、かのように見えた。

 だが、それとは逆に青山は涙を流していた。

「よっぽど辛いことがあったんだなぁ」

 青山は、こっちを見るなり慰めてくれた。ん?あれ?そういえば慰めるってなんのことだ?

「青山先生、辛いこと…とは? 」

 まさか。そんな筈はない。この俺が幻覚に惑わされ一人語っていたなんてあり得ない。最近の俺は何かが変だ。何かが違う。何かが足りなく、何かが惜しい。

 普通の人ではない何かと、普通の人にあるべき何かが足りない気がした。

「なに…って。慎一、お前は俺たちにスピーチをしてたんじゃなかったのか? 」

 スピーチ。スピーチ。スピーチ。俺は同じ言葉を心のなかで三回、繰り返してみる。うん、スピーチ。って…スピーチ!? スピーチとはなんだ。俺は此処で何を演説したんだ。今までになく、過剰的になった。

「妹さんが病気で大変なんだろう? それで幻想的な話をしたくなる気持ちは俺もわかるが…。それはかえって人を不幸にさせることにも繋がり兼ねないんだぞ。それだけは覚えておけよ。辛いだろうが治らない病気は仕方ないからな」

 なに偉そうに抜かしてんだ? 我コラあぁ?調子に乗ってるにも程があるじゃねぇか。そのイケメン口調やめろよ。ブスの癖に口だけは達者な教育界のゴミが。普段は大人しい俺。いつもの話口調は僕。

「幻想ねぇ。先生だからっていい気に乗んなよ。こっちはマジだぜ?からかってるのかよ。ブスの癖にイケメン口調で喋りやがって。口だけは達者な教育界のゴミが、今更何抜かしてる」

 ふと、気がつくと言葉で返していた。あぁぁ。今まで優等生の俺がこれで俺も晴れて成績の悪にランクアップ…ではなく、ランクがダウンするのか。

 教室の周りでは、「あいつ、言ったわ」とか「勇気いるよなぁ」などと言っている貧弱な腰抜け共が情けない言葉を口にしていた。

「そうか。俺はゴミか。生徒にそんなことを思われるなんて、俺はなんて馬鹿な奴なんだ」

 そうだよ。やっと自覚したか。その通りだ。少しは自覚したなら褒めて__。
 パリィィィン__。
 窓ガラスが割れ、青山は外へと身を投げた。

え__。そんな。此処まで脆いのか?担任とは此処まで脆い生き物だったのか。これでは俺が犯罪者ではないか…。
なんということだ。何より俺は心配してくれる人を傷付けてしまった。

 妹を助ける。その意思が強すぎて起きた事件がこれだ。多分この情報はマスコミ各社、教育委員会に情報が入り、明日からはこの学校は大混雑だろう。

 親になんて言ったらいいのか。その前に警察に出頭して罪を認めるというのも一つの案だ。

 放課後。

「おい、慎一。偉くやったなぁ」
 親友の謙介(ケンスケ)と、優輝(ユウキ)が声を掛けてきた。

「俺、どうしたらいいと思う? 」

 俺はとにかく、今日の事件についてどうしようか悩んでいた。

「そうだなぁ。お前が例えば俺らの手を借りたいとかなら手を差し延べてやってもいいけど」

 謙介と優輝は、慎一に出来るだけのことをしてやりたいと思っていた。何より幼馴染みであり、昔からの仲間だった。

「手を借りる?なんのこと? 」

 俺は普段より意味不明なことを言ってるコイツらがどうしたのかと心配になった。

「だからよ、俺らは。お前が自首するなら罪を分割してやれるし、虹色の空だっけ?それが実在するならそれを見つけるまで手伝ってやるか?ってことだよ。これで意味は分かるだろう? 」

 どうやら謙介と優輝は、俺に加勢してくれるらしい。

「いいのか? 」

 助けてもらいたい。そういう思いもあった。だが、俺と共に行動することで二人の罪が重くなったりしないか心配だった。

「ぶっ。何を今更言ってんだよ。小さい頃の約束を覚えてないのか? あのマジで仲良すぎてとんでもなく今考えれば気持ち悪い約束をな」

「ああ、そうだぜ。『僕たちはずっと一緒だからね。何があってもお互い助け合おうね! 』だぜ」

 小さい頃、俺たちは、この三人ともう一人。今は亡き親友唯一の女、渚(ナギ)と約束した。

 渚は、十歳の頃に韓国へと留学。その後事故に逢い亡くなった。俺たちは物凄くショックで一年間学校へ行かないぐらいだった。

「そうだったな。渚も、元気だといいな。謙介、優輝。ありがとう」

 俺は本当に嬉しかった。こういう親友こそピンチの時に頼りになるんだと心の底から思った。

 夕方。
この日、彼ら二人は慎一の家に寄った。三人は、今週にでも出発出来るように作戦をたて始めた。

「あのさ、虹色の空ってどんなところにあんの? 」

 謙介が訊ねた。

「そうだなぁ。小さい頃だったからよく覚えてないけど、宮本坂(ミヤモトザカ)の草原だったと思う」

 できる限り覚えていることは言った。だが伝わったかどうかはわからない。

「宮本坂の草原か…。まずは、情報収集だな。お前と俺は、宮本坂周辺を聞き込んで、優輝はこの辺で見た奴がいないか探してみよう」

 謙介がリーダーシップをとり、第一次作戦は決定した。

 此処は神甓(カミガワラ)県。宮本坂は、神甓の東にあり、近くには今住んでいる叶泉(カナイズミ)市がある。叶泉から宮本坂までは凡そ十五キロ程度ある。

 謙介は二人でいった方が情報を集めやすいと踏んだのだろう。

 わざわざこの叶泉町までやって来たのは、宮本坂には、保育園と小さい病院と温泉しかなく、田舎で叶泉市より天と地ほどの差がある。だから小学校からは、叶泉市に引っ越してくる人が多いからだ。

「なぁ、ある訳ないと思うけどいいか? 」

 どうしても聞きたそうに優輝が言った。

「どうした? 」

 謙介と慎一は口調を並べて言った。

「ネット。インターネットで検索したら出てくるんじゃないかなぁ…って。だって、同じ症状が出た人もいるかもじゃん」

 確かに正論だったが、流石に記載されているとも思わなかった。

カチカチカチ。
優輝がパソコンをいじっていた。

「あ」
「どうした? 」
「これ」

 優輝がパソコンを謙介と慎一の方へ傾けた。そこに写っていたのは、紛れもなく、虹色の空。写真まで撮られている。

 そこに書いてある言葉を俺は音読した。

「『私はこの空を見て、病が治りました! 』、『由美と申します。私も子供がこの空を見て、病が治りました。』って…。しかもこれ、最新更新日が一昨日になってるぞ!? 」

 実在した。虹色の空は実在したんだ。これでもっと希望が湧いてきた。

「俺も書いてみようかな…。『実は僕も、見たことがあります。そこで訊ねたいことがあります。その空は、患者(病にかかっている方)しか見れないのですか?妹の病を治してあげたく、今どうやったら見れるかを探しております。』っと」

 こんなものだろうと思った。書き込んだすぐに書き込みが来た。

「『管理人の渚です。私も実は韓国へ留学したときに、事故に逢ったの…』え?おい、これって…」

 それまで黙っていた謙介と優輝は涙を流して頷いた。

「ああ、間違いない。渚は生きてたんだ!」

歓喜。歓喜。歓喜。凄く嬉しかった。

「じゃぁ返信するぞ! 」
「ああ」

 コメント欄に、お返事ありがとうございます。管理人の渚様は、韓国へ留学する前は宮本坂で育った方でしょうか?もしかしたら貴方のことを知ってるかもしれません。と書き込みをした。

約二分後。
再びコメントが来た。

個人情報などで言えないこともあります。ですが、LUNAを使ってお話しましょう。私のLUNAのIDはnagi@fffです。失礼ですが、そちらのIDを教えてください。

 とサイトには表記されていた。

 LUNAとは、スマホ公認アプリの一つで今では人との連絡手段に欠かせないものだった。IDを交換することで、その人とチャットなどが出来たりする携帯のアプリである。
 再び俺は管理人にコメントをした。
 
是非、お願いします。LUNAのIDは、shinitikun_nakama@letsです。それではお待ちしています。

 とコメントを書き込んだ。するとLUNAのアプリに着信が入った。渚からだ。

 失礼ですが、貴方は慎一、謙介、優輝のどれかに当てはまる人物ですか? 嘘は付かなくていいので正直にお答えください。

 僕は加藤 慎一と言います。そちらの名前は海鳴 渚様で間違いないでしょうか?

 あなたは私の知ってる方だと思います。
下記にある電話番号におかけください。
000-1234-5678-9012

 こういったチャットを続けた末、連絡先まで入手した。

 俺はすぐに渚へ電話をかけた。
すると、『はい』と確かに女性の声がした。

「もしもし、渚か? 」
「やっぱり慎一だぁ! 会いたいなぁ」
「渚、それはそうとお前は今何処に居るんだよ」
「え? 神甓。そっちは? 」
「神甓だけど、お前は何市にいる? 」
「叶泉」
「どこ?」
「家」
「今から俺の家来い」
「嫌」
「は? 」
「嫌」
「え?」
「しつこい! 自分で来なさいよ! 」

 だめだこりゃ。渚は昔と変わらずわがままだった。昔、登山行こうとこの四人の家族で合宿に行ったとき山は嫌と言い張り、「海がいい」と言ったせいで結局

2014/12/18(Thu)20:42:47 公開 / マナブ
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■作者からのメッセージ
こんにちは。マナブと申します。
今回から、小説『虹色の空(仮)』を
書いていきたいと思います^^

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