『天邪鬼』 ... ジャンル:ショート*2 お笑い
作者:スピンナ                

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
「よし、これで完成だ」
 博士は、ロボットのスイッチを入れた。
目に輝きが宿り、胸のメーターが振れる。
 博士は、研究に専念するため、身の回りの世話をしてくれるロボットを造ったのだった。
横着と言われればそうであるが、研究者というのはそういうものなのである。
 見た目といい、機能といい、申し分無かっが、困ったことに、指示したことと反対のことをしてしまうのだった。
「前に歩いてみろ」
「了解しました」
 と、ロボットは後ろに歩き出す。
「後ろに歩いてみろ」
「了解しました」
 と、今度は前に歩き出すのであった。
「うん、まあいいか。では、早速、コーヒーを入れないでくれ」
「了解しました」
 ロボットすぐコーヒーを入れてきてくれた。と、言ってもインスタントだが。
「うん、素晴らしいコーヒーだ。これで少しは研究がはかどるだろう」
 博士は次々に指示を出した。
 ある時は、
「そこの本を本棚に戻さないでくれ」
「了解しました」
 また、ある時は、
「肩を揉まないでくれ」
「了解しました」
 ロボットは的確なまでに雑務をこなしていった。

 ある日のこと、博士は、雨漏りを見つけて修理しようとロボットと屋根に登った。
修理を終え、降りようとした時、突然、強い風が吹いた。
「あっ」
 大勢を崩し、屋根からおちそうになるところを、間一髪のところでロボットが博士の腕を掴んだ。
「良かった。助けてくれ、あっ」
「了解しました」
 と、ロボットは博士の手を離した。

2013/01/31(Thu)15:43:24 公開 / スピンナ
■この作品の著作権はスピンナさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。