『願いが叶う時』 ... ジャンル:ミステリ ショート*2
作者:鍵 かなた                

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 突如光が空を覆った。太陽が炸裂したように、目を開けてはいられない様なすさまじい光が。光が覆っていた時間は数秒。
 各国に神様が降りてきた。これは、六日前の話である。


『皆さん、私は創造者です』
 声ではない。まるで頭に直接響くような意思伝達。光の中から出現し、上空に浮遊している何かは続けた。
『私は七日でこの星を創りました』

――アメリカ
『It is seven days which created this star. Let's wait for seven days』
(この星を創造した日数と同じ、七日待ちます)

――中国
『能实现举一个拜托吧』
(願いを一つ叶えて差し上げましょう)

 人々は困惑した。誰も、それがイタズラや夢だと疑わなかった。
 口を開けたまま動かない人間も居た。写真を撮っている人間も居た。膝をついて祈っている人間も居た。歓喜し騒いでいる人間も居た。救われたように涙を流した人間も居た。考えている人間も居た。

『七日後の午前零時に、この星で一番多く願われた願いを叶えます』
 肩を落とした人間が居た。うなだれた人間が居た。膝をついて祈っている人間が居た。怒っている人間が居た。頭を抱えている人間が居た。考える人間が居た。
 自分の願いが叶えられないことに、皆絶望した。


 それから世界は降りていた創造者、神様のことしか話題にならなかった。テレビやラジオ、携帯や新聞。あらゆる情報伝達で神様について意見された。どのように願いを叶えてもらうかについてだ。総理大臣や大統領、各国の権力者が集まり議論された。
 五日目の夕方、テレビやラジオで一つの結論が人々に伝えられた。
“皆さん、明後日の午前零時に願われる願いが決定致しました。それは、今後の世界の平和です。全人類が戦争や争い事や差別などを行わない様に。皆さん、『平和』をお望みください”
 人々は納得した。少なからず反対意見もあったが、権力者の強い説得によってそれらはなくなった。皆安心した。これで迷わなくて済む。これで、ただ明後日に『平和』を望めば全て済むことなのだから。


 そして今、六日目の11時58分。
 人々は外に出て、神様を見ていた。夜空に月の光よりも輝いている創造者を。時計の針はまた一つ進む。あと一分でこの騒動も収まる。今後の平和は約束されて、よりよい未来が人々を待っている。誰もがそう思っていた。
 零時。全ての人々は平和を願った。
『…そうですか。やはりそうなりましたか』
 世界にパチンと、指を鳴らしたような音が響いた。


 人間は地球から消滅した。





――00時01分
 強い風が吹き森の木々が葉を合わせながらさわさわと揺れる。
 まるで嘲笑っているかの様に。
 虫達が音を張り上げ、さまざまな音で鳴いている。
 まるで歓喜の声を上げているかの様に。
 動物はよく響く声で遠吠える。
 まるで勝利を勝ち取ったかの様に。
 地球は生気を取り戻す。
 まるで体から毒が抜けたように…
 
 




2012/10/08(Mon)01:19:57 公開 / 鍵 かなた
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■作者からのメッセージ
日曜日という休日に、暇を持て余してできた作品です。
前作の巡り橋が、何を言いたいのかわからない作品になってしまったために、意味のある小説を書いてみました!SSですが…(
そ、そろそろやめようよ!環境破壊!とまぁ誰に言ってるんだか…
初心者臭が激臭になってきてますが、あまにり酷かったら感想という形で苦情受け付けております。別に感想欲しいからとかではなくてですね、はい。
それでは皆さん次作で会ってください!
(次は長編にしたい…)

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2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。