『きっと誰かが魔法使い 』 ... ジャンル:ミステリ 未分類
作者:コーヒーCUP                

     あらすじ・作品紹介
文化祭前日に届いた脅迫状。中止せよという警告を無視して文化祭は開催されたが、予想外のことが多々起こり出す……。

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「はい、よく見ててくださいね」
 彼がそういって机の上に乗せたトランプの束の一番上のカードを取って、それを表に向けてみんなに見せた。ダイヤの三のカード。
「はい、確認した?」
 机の周りにいた複数名の生徒がこくこくと頷くのを確認すると、彼は笑顔でそのカードを束に戻し、その束を手にとって素早く、そしてきれいにシャッフルしていく。
 そしてきり終わった束を机の上に置いて、裏を向けたままのカードを扇形に広げた。見事な手際の良さに、思わず見とれてしまう。
「じゃあ、君」
 彼に指さされたのは、囲んでいた生徒の中の一人の女子だった。
「私?」
「そう、好きなカードを取って」
 彼女はそう言われてるとしばらく迷った後、扇の真ん中あたりのカードを手にした。
「見ていい?」
「どうぞ」
 彼女は期待した瞳でカードを表に向けたが、その瞬間に首を傾げた。そして周りの生徒も彼女の持ったカードをのぞき込むと、意外そうな顔をした。
「ねえ、これさっきのじゃないよ」
 彼女が彼に手にしたカードを見せた。彼女の持っていたカードはハートのエース。私を含めて、この場にいた生徒は全てダイヤの三がでるものだと思っていたので、少し期待はずれだった。
「えっ? うそ?」
 彼は予想外のことだったのか、彼女からカードをとるとそれを見つめて「あれれ」と声を裏返した。どうやら失敗したらしいと思った男子生徒の一人がひやかすと、急に彼が「あっ」と声を出した。
「うん、やっぱりこれで合ってるね」
 彼はさっきのカードをまたテーブルの上に裏返しておくと、その上で指をパチンッと鳴らして、また表に向けた。
 周りにいた生徒が一斉に「おおっ」と声をあげた。さっきまでハートのエースだったはずのカードが、表を向けると見事にダイヤの三になっていた。
「すごい!」
 そう声をあげたのはさっきの女子。しかし彼女はすぐに「あれ?」と声をあげた。
「じゃあ、さっきのカードは?」
「ああ、それならね……」
 彼はそういうと彼女の胸ポケットを指さした。彼女は意味がわからないという様子で胸ポケットに手を入れて、目を見開いて、感嘆の声をあげた。
 彼女のポケットからさっきのハートのエースが出てきた。周りにいた生徒も次々に声をあげていく中、彼が彼女に笑ったまま、澄まして言った。
「そのカードは、僕の気持ちだから持っといてね」
 彼女は顔を赤らめて、ゆっくりと頷いた。

 2

「顔、顔」
 彼のマジックショーの様子を離れて見ていた私の隣に着た日菜が、無遠慮に私のほっぺをつねってくる。
「ちょっ、いたいっ!」
「バカみたいな顔してたわ、バカだけど」
「どういう意味!?」
「あんたの頭が単純だって意味」
 日菜は指を放すと赤くなった私のほっぺをみて「もう少し強くやってやればよかった」と小声で、けど明らかに私に聞こえるほどの声量で、悔しがって見せた。
「誰が単純なのよ」
「あんたほどの単純娘、ほかにいないわ。ザ・単純よ。ていうか、仕事」
 彼女がはんこを差し出してくるので、それを受け取る。これは生徒会のはんこで押すと「許可」と印字される。明日からの文化祭には必要不可欠なアイテム。
 はんこを持って、喝采を浴びている彼、藤原君に近づいていく。彼はトランプを直しながら、さっきのマジックの仕掛けを聞いてくる生徒たちを何とか受け流していた。
「藤原君」
 私がそう声をかけると、顔をあげて「やあ」と挨拶してくる。憎らしいほど、さわやかな笑顔だ。先生たちに注意されない程度に染めている茶髪が、室内に入ってきた風になびく。
「花井じゃん、どうしたの?」
 私と藤原君はこのクラス数の多い高校で、奇跡的に(そして何より運命的に!)三年連続で同じクラスになっているので当然お互いのことは知っている。知っている……だけ。いやいやでも、たまに喋るし、仲も悪くない。これはもう「仲良し」って言っても良いんじゃないかな。
「どうしたのじゃないよ。許可書、出してないでしょ」
 私がつけている腕章を彼に見せつける。そこには「実行役員」と堂々と刺繍されている。
「ああ、そういえば花井は生徒会だったもんな」
 この学校では生徒会はこのシーズンになると「文化祭実行役員」にもなる。もちろん、本当の文化祭実行委員も存在するが、それだけじゃ人手が足りないので私たちがかり出される。
 なにせ千人を超えるマンモス校なのだから。
 ていうか……私が生徒会だって、覚えてなかったんだ。同じクラスなのに……。
「出してくれなきゃ、見せ物できないよ」
 藤原君はこの学校で唯一のマジック研究会の部員で、明日の文化祭でマジックショーを披露することになっている。ただ、発表会をするにしても、屋台を出すにしても、許可書が必要になってくる。それを提出してもらって、私たち実行委員がそれにはんこを押して、それを先生が受理するというのが流れになっている。
 藤原君はマジックショーをすると公言し、空き教室を一つだけレンタルしてるのに、まだ許可書をだしていなかったので、こうやって私たちが足を運ぶことになった。
「うげっ、それはまずいな。ちょっと待ってよ」
 彼は最初自分の制服のポケットを探ったのに見つからなくて、今度は足下においてあった鞄の中を探し始めた。許可書は基本的に一グループに一枚しか与えられないので、なくしたら大変だったりする。
「見つからないの?」
 しゃがみこんで鞄の中を漁る彼は本当に焦っている様に見えた。私もしゃがんで、失礼かもと思いつつ、けど彼の鞄の中を覗けるなんていう興奮を覚えながら、鞄の中を見ようとした。
 けど、そうはできなった。なんでかっていうと、気がつけば彼が笑顔で私を見ていたからだ。思わず動きを、あろうことか呼吸さえ、止めてしまいそうになる。
 どきっとしている私を差し置いて、彼は「ああ、見つかったよ」などと言いながら、驚いたことに私の胸ポケットに右手を入れてきた。
 ええ、ちょっと大胆すぎない!?
 胸ポケットには委員の資料や、ほかの生徒から預かった許可書が入っていたけれど、彼はその中から一枚抜き取ると、それをすっと差し出してきた。
 ちょっと混乱してしまった頭のまま、それを受け取ってみると、確かにそれは彼の許可書だった。思わず「はぁ?」と声をもらしてしまうと、彼の許可書をのぞき込んだ周りの生徒が「おおっ」と驚いて見せた。
「じゃあ、処理のほう頼むよ」
 あたかもなにも無かったかのように振る舞う彼に、私はマジックの感想や、いきなり胸ポケットには手を入れるのはセクハラではないかという苦情(まあ彼ならちょっとぐらいいいけど)、などをすっとばして「うんわかった」と純朴に頷いていた。
 えっ、嘘どうやったの、なんて問い詰める余裕無い。もう、なんていうか……やばい。
 彼は笑顔でまた周りにいた生徒たちのアンコールに応えて、再びマジックの準備に入る。私はそんな姿を「かっこいい」なんて思いながらと見つめていた。
 そんな私のお尻に、誰かがけりを入れて、思わず頭からこけそうになるのを何とか踏ん張って耐えることになった。
「あらら、こけなかった、珍しい。ていうか、惜しい。つうか、こけてよ」
 謝ることも悪びれることもなく日菜が、非難の視線を向ける私の手から許可書を奪い取る。ちゃんと必要記入箇所が書かれているのを確認すると、興味をなくしたように四つ折りにして私に返してきた。
「よかったわね、愛しの藤原君のマジックの餌食になれてね」
「だ、誰が愛しよ!」
 思わず声を大きくしてしまったため、口元を両手で覆ったまま彼に聞こえてしまったんじゃないとか心配になって視線を向けるが、彼はこっちを見ずにまたマジックをしていた。ほっと安心の吐息をつく。
「やっぱり、あんたは単純よ」
 日菜が呆れた様な声を出すので、今度は小声で「そんなことない」と反論したのだが、あまりも小さかったため、聞こえなかったみたい。
「まあ、これでとりあえず許可書はだいたい集まったわ。去年みたいにならないなら、とにかくいいことだわ」
 日菜は今年初めて生徒会に入り実行委員になった私と違って、去年から生徒会に入っているので実行委員も二回目。去年は許可書が当日まで出されていないケースが多発したため、ずいぶんと苦労したらしい。(そんな苦労話を聞いて、聞こえないように「ざまあみろ」と言ったら、この地獄耳は私の頬が真っ赤になるまで引っ張った)
 ちょうどチャイムが鳴る。部活をしない生徒たちの下校時間を告げる五時の合図だが、今日はほとんどの生徒が居残って明日の準備に明け暮れるので無意味だと思う。
「さて、一応最後の確認会議があるし、生徒会室に戻りましょう」
 明日の打ち合わせのための最終会議だ。

 3

「うん、許可証は集まったみたいで、一安心?」
 生徒会長の真田君が、首をかしげながら横にいる辺見さんに訪ねると素っ気なく「私は知りません」と返されて、見るも無惨にへこんだ。秋の稲穂も今の会長ほど頭を垂れないだろう。
 真田会長は生徒会会長の男子で、人望とか人気ではなく、押しの弱さで生徒会長になった(ならされた?)人で、それでも仕事だけは結構がんばる、辛辣な日菜から言わせれば「いなきゃ困るけど、いなくなるまで存在価値に気づかない」という、報われない性質の持ち主。
 辺見さんは文化祭実行委員の委員長。三年生で、一部の女子生徒から強い人気のある人だけど、本人は一切そんなことは気にしないクールな性格の女子生徒。そんな素っ気なさ、あるいは冷たさが、人気をあげる一因なのだけど。大人っぽい雰囲気をまとっているものだから、同い年なのに自然とさんづけをしてしまう。
 ちなみに真田会長は辺見さんに惚れている。ただ、手応えはまるでない。気の毒なくらいに、ない。
 真田会長が沈んだところで、辺見さんが「会議を始めます」と号令をかけた。すでに会議室に並んだ二十名ほどの生徒たちは、はいと答える。
「会議といっても、ほとんど事前に打ち合わせたので、今日特別することはありません。みなさんの方から報告はありますか」
 辺見さんが私たちを見渡しながら確認するが、返答はない。どうやらどこの担当も問題はなく、仕事も残っていないようだ。さすがに、一学期の終わりから準備してきたことだけはある。
 その結果をわかっていたのか、辺見さんは特に表情を変えることもなく、そうですかとつぶやいた。
「文化祭は明日の十時から始まり、夜の八時半に花火を打ち上げて終わります。十時間超、みなさんはクラスの出し物、クラブの発表会、そしてこの実行委員の仕事をしなければなりません。忙しくなるのは、覚悟の上だと思います」
 辺見さんが落ち着いた声で、明日の私たちのおかれる状況を淡々と述べていく。今更言われるまでもないことだけど、やっぱり大変そうだ。
 けど、最初は文句を言っていたメンバーも今は充実感を覚えたのか、今じゃ浮き足立っている。だから、今の辺見さんの言葉を顔色を変えずに聞いている。
「三年生にとっては最後の文化祭にもなります。一年生にとっては最初の文化祭。もちろん、二年生にとっても大切な文化祭です。そんな中、みなさんはみんなを楽しませるため、大変な目にあいます。ですからみなさん」
 辺見さんが言葉を区切って、そして次の瞬間にその澄んだ声を教室にしみこませるように、静かに、それでいて力強く告げた。
「我々も、盛大に楽しみましょう」
 てっきり「がんばりましょう」という言葉をかけられると思っていたメンバーは意外な言葉に意表をつかれたし、それ以上に、そう告げた辺見さんが微笑を浮かべていたので、さらに驚くことになった。あの辺見さんが笑った! 私が新聞部なら号外を出す。
「以上、今日の会議は終了です」
 とうの本人はすぐに無表情に戻り、いつものクールフェイスで会議を終了させた。役員のメンバーがぞくぞくと席を立ち始めて、私と日菜もそれに続こうと腰を上げた時だった。
「あ、ちょっとストップ」
 暢気で気の抜けた声をかけたのは、辺見さんの横で忘れられた様に沈んでいた会長だった。せっかく彼女がいい感じに会議を終わらせたのに、それで台無しだ。
「なんですか、会長」
 メンバーがもはや苦情に近い声をあげる。
「いやあのね、どうでもいいことなんだけどさ」
「どうでもいいことは会議でしないでください」
 辺見さんの的確で、それでいて容赦のない指摘に会長はまた沈んだけど、すぐに浮上する。もはや慣れっこなのだろう。
「先生から一応報告しておくよう言われていたのを思い出したんだ。これなんだけどさ」
 会長はA4サイズの二つ折りにされた紙を鞄から取り出して、それを机に広げて見せた。私を含めたすべてのメンバーがその紙を見るため、会長のもとへ集う。辺見さんだけは会長の横の席だったので、動かずさめた視線を送っていた。
 紙にはサイズの割に少ない文章しか書かれていなかったが、内容は紙に収まらないくらい大げさだった。

『祭りに浮かれている諸君へ告ぐ
 文化祭を中止せよ。さもなくば、多くの犠牲と、あまたの悲しさを生むことになるだろう。これをただの脅しと思われぬように、色々と準備はしている。しかし、それさえ一部のものに被害がでることになってしまっている。
 諸君が賢明な判断すれば、誰も傷つかずに済む。
 再度警告する。文化祭を中止せよ。これは警告であり、命令でもある。
                ウィザードより』

「……ええっと」
 本文を読んだ感想をそのまま言っていいのかどうかわからず、思わず言いよどんでしまうが、率直で素直な日菜はそんなことはなく、戸惑う私の横で言い放った。
「ここは高校よ。中学二年生はいないはずだけど」
 何人かのメンバーがそれに笑い声をあげた。うん、私もそれを言おうとしていたところだっただけに、笑いをこらえられない。
「うんまあ、そうなっちゃうよ。ねぇ?」
「私は知りません」
 会長の同意が再び押し退けられる。辺見さんはそんなこと意に介すことなく、会長にこれの説明を促した。会長は本日三回目の傷をいやしながら、ゆっくりと話していく。
「どうも今朝職員室の机の上に置いてあったんだって。まあ、こんないたずら毎年あるから相手にしてたらキリがないんだけど、報告してないっていうのはだめな気がしたみたいだね」
「別に私たちに何かしろって話じゃないんだよね?」
 私が確認すると、会長は困ったような笑顔を浮かべる。
「こんなの、どうもできないでしょ」
 うん、聞いた私が悪かったみたい。確かにどうにもできない。
「なんてことはないよ。一応こういう手紙が来てる以上、明日は何かおかしなことがないかよくチェックしておいて。なにもないと思うけどね」
 会長は楽天家でこんなことは気にしてないようだ。そして会長とは違い、慎重家の辺見さんでさえ今回の件に関してはほとんど無視に近い態度をとっている。実行委員二年目の彼らにしたら、いちいち相手にしてられないということだろう。
 私も、こんないたずらにつきあってやれるほど暇じゃない。そしてそれはここにいる誰もがだ。
「変に時間をとらせたね。これで今日はおしまい」
 会長のくせに辺見さんほどしまった終了の合図は出せない。期待してもいないからいいけど。
 私と日菜はこの後、クラスの出し物(クレープ屋さん!)の手伝いに大忙しになった。役員の仕事でクラスの手伝いを抜けることが多いので、たまにもどってくると、あれをやれ、これをやれとうるさく言われてしまう。
 私たちだって言い分はあるんだけど、そんなことは一切認められない。数の暴力だと文句を言うと、本当の暴力にてあげようかとバレー部のエースのクラス会長に脅された。
 けど、なんだかんだと言って、ずっと笑顔で、楽しくて仕方なかった。気がつけば夜の八時前になっていて、そのころには疲労がたっぷりたまっていたけど、何とか準備を終わらせた達成感の方が勝っていた。
 帰りにコンビニによって、みんなでジュースで乾杯をして軽い前夜祭をした。そんな楽しい時間を過ごしていたら、きれいさっぱりあの脅迫状のことなんて忘れてしまっていた。

 4

 祭りは本番よりも準備の方が楽しいと聞く。それは、決して感じたことはないが理解はできる理屈だ。今日、いや今日だけじゃなく、文化祭の話題があがるたびに、みんな非常に楽しんでいた。バカみたいに、バカみたいに、バカみたいに。
 けどいいことだろう。彼らは今、「今以外」では絶対に楽しめないことに全身全霊になっている。それを悪いことだなんて、そんな理不尽なことを言うつもりはない。
 けど、こちらを巻き込むのはやめてもらいたかった。
 祭りがだれでも楽しめると思っているのなら、それはエゴだろう。傲慢? 欺瞞? ほとんど一緒だが、どちらかだし、どちらもだ。
 そういうのは面倒だし、煩わしいし、うざったいし、虫唾がはしる。だから今日まではつきあってやった。それが限界だ。祭りよりも準備が楽しいなら、明日はいらないだろう。
 だから中止を求めたのに、返答は無かった。
 なら、こちらもそちらを「巻き込む」。かまわないだろう、それがこちらの受けてきた仕打ちだ。それを否定するなら、今までの自分たちを否定するのと同じだ。
 明日はとっておきの魔法を見せてやろう。
 とっておきの、黒魔法を。

 5

 昔から遠足の前日は寝付けないくせ、予定よりずっと早く目覚めてしまい、しまいにはそんな日に限って二度寝ができない。少し長くなったが私はそういうタイプの乙女だ。
「つまり、ガキなのよ」
 私のかわいらしい特性を話したのに、日菜の下した評価はそれ。素っ気ないとかそんなんじゃなく、一人の友人として、愛がない!
 「実行委員」の腕章をつけて、校内を歩いていく。一つ一つの教室に顔を出していき、おかしなことはないか、困っていることはないかと声をかけていく。本番が始まってから騒がれては迷惑なのだ。
 しかし、そんな困ったさんは今のところいない。みんなテンションが高くて「心配すんな!」とまるで酔っぱらったような大声で返事をしてくる(負けてたまるかと「わかったぁ!」と応戦したら、うるさいと日菜に頭を叩かれた)。
 さて開始の十分前。十時になれば、放送で会長が始まりをつげるはずだ。それまでに勝手に店を開店させたり、お客さんを入れたりしないようにしないといけないのが私たちの役目でもある。
 今のところ、そんな不届きものもいないし、学外のお客さんからは十時からしか校内に入れない。そうなるとお客さんは生徒たちだけになるけど、ほとんどの生徒はまだクラスのなかではしゃいでいる。
 学校全体がすごく波に乗っている。高揚感があふれかえっていて、爆発しそう。そういう私も同じなのだけど……。
「そういえば何ともないわね」
 日菜が何か思い出したようで、前後の脈絡無くつぶやいた。
「何が?」
「あのウィザートの脅迫状。やっぱりいたずらだったみたいね」
 ああ、そういえばそんなものがあったなと今になって思い出した。
「うん、イタズラだよ。こういうお祭りにのれない人って絶対にいるんだよね」
「そうね。そういう奴に限って当日はしゃいだりするんだけどね」
「ああ、あるある」
 そんな雑談をしていたら、校内のスピーカーから音声が聞こえてきた。私と日菜は自然に立ち止まり、耳を傾ける。さっきまで騒がしかった校内も、息を合わせたように静まり返った。
『あーぁー、こちらは文化祭実行役員です。たった今、十時になりましたので――』
 会長のいつもの暢気な声はここで途切れ、少し息を吸う音が混じった後、らしくない明るい声が校内に響いた。
『文化祭、スタートです!』
 それが引き金になった。静まり返っていた生徒たちはさっきよりも騒ぎ始めた。
「日菜、私たちも!」
 まず私たちの最初の仕事は、クラスの手伝い。役員の仕事は今はほかのメンバーで回してもらう。正直、忙しいことは忙しいが、役員なんて本番が始まれば空気だと聞く。なら空気は空気なりに楽しまなくちゃ。
 私たちはクレープ屋さんでウェイトレスをする。この日のために可愛い衣装を用意しているのだ。楽しみで仕方なく、日菜をせかす。
「あんた、ちゃんと痩せてきた?」
「失礼な! 余裕よ!」
「……だといいけど」
 衣装合わせのときに少し乙女らしからぬ数字を出してしまった私にたいする嫌みだ。あのときは前日の夕飯がごちそうだったから、ちょっと油断してただけだもん。
 教室に戻って、衣装を持ってトイレで着替えた。かわいいフリフリな、白と黒が基調としている。とっても気に入っているのだ……。
「うぅ」
 ちょっと、本当にちょっと、ほんのちょっと、きついかも……。
「バァカ」
 鏡の前で苦笑いをする私を、見事に衣装を着こなした日菜が同性としての同情もなくバカにしてくる。悔しいけど、彼女の見事なスタイルを見ると言葉が出ない。 ああ、なんて屈辱!
「うるさい! この……のっぽ!」
 何とか見つけだした言葉は、もはや死語に近いものだった。けど彼女は身長が高い(それがスタイルの良さに直結していることは言うな)。だから、もうそれしかなかった。
 日菜は余裕しゃくしゃくの笑みを浮かべている。ただ、どうやら少しは怒ったらしく、昨日に引き続きほっぺを引っ張られることになった(力加減は絶対に昨日の方が上だったけど)。
 さて、そんな感じで私たちの文化祭は始まった。


「ひし形?」
「違うわよ、平方四辺形」
「私はペンタゴンに見えるけど」
 ほっとプレートの前で悪戦苦闘する私を中心にできたクラスメイトの円。円の構成員たちである女子たちが、私の作ったクレープの生地を見ながら、そんな感想を口々に漏らす。
 確かに、自分から見ても円には見えないけど……もっと、言葉ってものがあるじゃないの。
「そんなにひどくないわよ」
 私が反論しても、彼女たちはしらけた目を向けてくるだけ。なによ、かける言葉もないってわけ?
「練習したのにこれはないわ」
 となりのホットプレートで同じく生地を焼いている日菜がとどめをさしてくる。彼女の生地は満月かと思うほど丸い。おいしそう。
「だって私にはほかにも仕事が」
「私もだけど」
 うぅ……。
「というか、日頃乙女乙女と自称してるなら生地くらい綺麗に焼きなさいよ」
 うぅぅ………。
「不器用にもほどがあるわ」
 うぅぅぃ…………。
「日菜、ハナが泣きそうな顔してるからそろそろやめてあげたら」
 クラス委員長が助け船を出してくれたけど、泣きそうになんてなってないもん。
「それとハナ、生地はもういいわ」
 優しく笑ってそんなことを言ってくる。スポーツニュースなんてほとんど見ないけど、こういうのをきっと「戦力外通告」っていうんだろうな。
 やけになった私が円になれなかった生地を口に放り込んだところで、おぉーいという声をあげながら、クラスの男子がこちらに寄ってきた。
「実行委員、向かいの茶道部が呼んでるぞ」
 私たちのクラスの向かいの教室では、茶道部が出し物をしている。確か、簡単な茶道レッスンだったはず。レッスンと言っても、抹茶と和菓子を楽しむというだけのものだけど。
「なんか変なことがあったらしいぞ。行ってやれよ」
 日菜の方を見ると、すでにエプロンをはずしていた。私もそれに倣い、いったいなにがあったのかなと心配しながら向かいの教室へ入った。
 茶道部の部員は全員女子で、今日は和服を着こなしていた。いいな、私も着たい。
「何かありましたか?」
 茶道部部長の金川さんに訊くと、不機嫌な声でええと返された。
「これを見て」
 金川さんは教室の真ん中に、今日のために茶道部の部室から持ってきて敷いた、四畳の畳を指さした。その上には座布団が八枚と、そしてその前に茶碗がおかれていた。
 しかし、茶碗は五つしかない。
「本当はちょっと予行演習をしてたの」
 茶道部の出し物は午後の一時から。本番までは部員たちが和服のまま校内を歩き、宣伝する。宣伝っていっても遊ぶのがメインだ。服装が服装だけに勝手に宣伝になる。
一応、本番に備えて一度練習しようと準備したところ、茶碗が三つ消えていたという。
「盗られたってこと?」
「わからないよ。とにかく今朝はあったの、それは確か」
 予想外のことに金川さんはいらついている。怒りのせいで髪をかきたいんだろうけど、髪型もセットしているからそれもできない様子だ。
「盗られたとしたら、いつかわかる?」
 日菜がそんな彼女に冷静に質問する。
「多分、そんなに前じゃないはずよ。九時台でしょうね、鍵を締めてなかったみたいだから」
 金川さんが攻めるような視線で下級生と思われる子を睨んで、その子が縮んでいった。
「あけたまま、全員で外にでたの?」
「着替えよ。更衣室で着替えてたの、時間かかるのよ、これ」
 彼女はそういいながら着ていた和服の袖を広げて見せた。
「で、その間にここの鍵は閉めなかったの?」
「貴重品は持っていってたからね、気を抜いちゃったみたい」
 金川さんはため息をついて、頭を軽く振った。
「それで、出し物はできるの?」
 一番肝心なことはそれだ。それができないとなると、大事だから。
 私の質問に金川さんはバカにしないでと返してきた。
「今日は両親が来る予定だったから、家から持ってきてもらうわよ。なにが何でも出し物はする。とにかく、こういうことがあったって報告しなきゃダメなんでしょ?」
 そう、何かトラブルがあれば先生か実行委員に報告することが決められている。たいてい先生に言うのは気が引けるので、同じ生徒の私たちに報告されるそうだ。事態がよほどのことでないかぎり、実行委員も黙殺する。生徒たちの中の暗黙の了解。
「わかった、実行委員でもちょっと探してみるわ、先生への報告はしない方がいい?」
 日菜が確認すると金川さんは当然だと言わんばかりに頷いた。
「たかが茶碗が三つ消えただけ、大げさにしたくないわ。それに」
 彼女はその場を移動して、さっき睨んだ下級生のこの前にたった。見ない顔だから、多分一年生だと思う。その子は先輩を見上げて、青くした顔でごめんなさいと謝った。
 そんな彼女に金川さんがため息をついて、ぽんと頭の上に手をおいた。そして私たちに目を向ける。
「妙に責任感じちゃってる子がいるの。大したことない、あんたのせいじゃないって教えてあげないといけないのよ」
 おそらく、この子が鍵の管理を任されていたんだろう。それでこんなことになって、小さくなってしまっているに違いない。初めての文化祭なのに、そんな暗い気持ちになるなんてかわいそう。
「わかった、見つかったら報告するわ」
「うん、お願いね」
 教室を出た私たちは小声で話し合い、とにかく辺見さんと会長にだけ報告しようという結論を出した。私は会長に、日菜は辺見さんに電話をかけた。今日だけは校内で堂々と携帯が使えるので助かる。
 会長はいつも通り気の抜けた声で電話にでた。そんな彼に私は茶道部のことを報告した。すると彼は、ああまたかぁと嘆いた。
「また?」
『そういうの毎年あるんだよ。鍵の締め忘れって多いんだよね、みんな浮かれちゃっててさ。いつもなら荒らされるとか、財布とかiPodとかが盗まれるんだけど、茶碗というのはレアケースだね』
 会長は実行委員会二年目で去年もそういうことがあったし、その前もあったということは散々聞かされたと教えてくれた。だから緊張感のない声が続けられるわけだ。あっ、いやこれはたぶん生まれつきだ。
『まあ、先生に報告しないでって依頼もあるし、問題なく出し物ができるなら何の心配もないね。一応実行委員に知らせて、手があいたときに探させよう』
「わかった」
 会長との通話を終えると、短く報告をすませた日菜が辺見さんのリアクションを教えてくれた。
「そうですかの一言だったわ。さすがクール」
 辺見さんは実行委員委員長ということもあって、私たちより忙しい。かまってられないのかと思っていたら、すぐに携帯がふるえだした。メールを受信したらしい。
 日菜の携帯も同時にふるえ出す。二人とも届いたメールは同じで、辺見さんからだった。私たちが報告した内容が的確に書かれていて、文末に『口外禁止。手が空いた人は捜索にあたってください』と添えられていた。
「メール打つの早っ」
 ていうか会長がしようとしていたことを先にやっちゃった、これはまた会長がへこんでいるに違いない。想像すると……ごめん会長、笑えちゃった。
「さあ、私たちの教室に戻りましょ」
 教室に戻ると、もうすでに何人かのお客さんが入っていた。
「商売繁盛だろ」
 教室に戻ってきた私たちに真っ先に話しかけてきたのは、クラスのメンバーなのに堂々と売り物のコーラを飲んでいる男子生徒、石垣君だった。
 ワックスで固めたトゲトゲ頭が今日は一段ときまっている。たぶん、文化祭だからって手入れは丹念にしたんだろう。
「ちょっとあんた、それは売り物でしょう」
 日菜が彼の手からコーラを奪い取ると、彼は「けちくさいこと言うなよ」と笑ったが日菜がぎろりと睨むと、ホールドアップして見せた。
 ちなみにこの二人は元恋人同士。九月に入って急に別れちゃった。日菜曰く「大した理由はない、冷めただけ」ということ。いい感じで端から見ていてほほえましかっただけに残念だった。
「日菜、クレープ焼くの手伝って」
 教室の前で料理班が日菜を呼び、彼女が私に笑顔を向けてそちらに行った。なんだあの笑顔は! 私はお呼びじゃないってか、この野郎!
 地団太を踏んで悔しがった後、すねて教室からでようとすると「外に行くなら宣伝してきてよ」と言付けをされてしまった。
「宣伝って何すればいいの?」
「はいこれ」
 私の質問にクラスメイトの一人が行動で答えてくれた。「3年8組 クレープ喫茶営業中!」とカラフルに書かれた四角い段ボールにひもを通したものを首からぶら下げた。えっ、かっこ悪い……。
「はずしたらダメだから。もし外したら村八分だからね」
 む、村八分って何? なんでそんなに目が本気なの?
 結局、嫌々ながら私はそれをぶら下げながら校内の探索へと出かけた。さっきの茶碗を探したいし、なにより……ちょっと覗いてみたい場所があった。
 校内ではなぜだかカボチャのかぶりものをした男子生徒や、クラス全員の名前が背中にプリンとされたTシャツを着ている女子生徒、セーラー服を着て異常にハイテンションになっている男子と、いろんな生徒がはしゃいでいた。
 それぞれのクラスの出し物も繁盛しているようで、各教室出入りが激しい。窓から外を見れば校門からはぞくぞくと学外のお客さんが来場しているし、運動場では運動部が小さい子と一緒にスポーツを楽しんでいた。
 校内の高揚した雰囲気にさらされていると、こっちまで何もしてないのに笑顔になる。やっぱりお祭りって楽しい。
 いろんな教室に顔を出しながら、店の宣伝をしていった。それと茶碗を見なかったとさりげなく訊いてみたけど、みんな知らないとしか答えなかった。
 見回りながらいろんなものを食べて、幸せな気分になっていたころ、私は本当の目的地へ行くことにした。
 携帯で時間を確認すると十一時半になっていた。楽しくて時間がすぎていくのがすごく早く感じてしまう。
 三階にある教室に覗いてみる。教室の中には一人しかいない。藤原君が教卓の上で何かトランプを使って練習していた。彼のマジック研究会の発表会が一時にある。
 ああ、練習してる姿もかっこいい……。ビデオかなにか持ってくればよかったかな。あっ、携帯で撮ればいいのか。でもシャッター音がでると邪魔になる。あっ、動画にすればいいだ!
 私がポケットから携帯を取り出そうとしていたら、ぽんぽんと肩をたたかれた。
「誰よっ、この大事な時に!」
 思わず声を荒らげてしまった。そのせいで肩をたたいた相手、ほかの誰でもない藤原君が目を丸くする事態に陥った。えっ? な、なんで藤原君が私の後ろにいるの? ていうか私、今何しちゃったの? 
「び、びっくりさせないでよ」
 どう考えてもビックリしたのは藤原君の方なのに、混乱した私はなぜか抗議していた。
「ビックリしたのはこっちだよ。教室出たら花井がいるんだから。何してるの?」
 どうやら私が下心を爆発させている間に教室から出て、覗いていた私を見つけたらしい。……めちゃくちゃかっこ悪いじゃん、私。
「えっ、ほ、ほら! 宣伝だよ、宣伝! 私たちのクラスの宣伝!」
 私は段ボールを掲げてそれを強調する。そう、宣伝。決して覗きなんてまねをしていたわけじゃないの。
「宣伝って俺にしても仕方ないじゃんか」
 藤原君はそうつっこんで笑い声をあげた。その通り、クラスメイトに宣伝なんかするわけない。私のバカ、死んじまえこの野郎。
「どう、繁盛してる?」
「うん、結構お客さんも入ってるよ。藤原君はどう?」
「宣伝はしてるけど実際どれくらいのお客さんが入るかは微妙だね」
 藤原君のマジックがすごいことは彼と親交があれば知っているけど、そうじゃないとそもそもマジック研究会の発表会さえ知らない。こんなにすごいのに見てもらえないのは、きっと残念だろう。
「あ、あのさ、私は見に来るからね!」
 勇気を振り絞ってそう宣言すると、彼はきょとんとした後、少しだけはにかんで「ありがとう」と言ってくれた。
 あっ、誰か今の彼の表情撮ってませんか? その写真なら何万円でも出すんですけど。
 私がそんな人がいないかと周りを見渡していたとき、急に校舎の外から鋭い音が聞こえてきた。何かが落ちて割れる音。結構大きくて、その後すぐに小さな悲鳴が聞こえてきた。
「え、何?」
 なんだか分からなかった私と違って、藤原君の行動は早かった。すぐに教室に入っていき、教室の窓を開けてそこから顔を出した。私も彼を追いかけてそうすると、眼下に尻餅をついている女子生徒がいた。そして彼女の目には何かの破片が散らばっている。
「大変!」
 私は急いで教室から出ていき、階段を下りて彼女の元へ向かった。
 現場にかけつけると、すでに何人かの生徒が集まっていた。尻餅をついていた女子生徒に駆け寄って「怪我はない?」と確認すると、彼女は頷いた。
 すぐに音を聞きつけた実行委員のメンバーが数名集まってきて、その中に辺見さんがいた。
「どうしましたか?」
「さあ、私も今到着したところだから」
辺見さんが女子生徒の前で砕け散っている何かの破片を一つつまみ上げた。
「陶器です……」
 そうつぶやいた後、首を真上に向けた。そしてそのまま何か考え込んだ後、ようやく立ち上がった女子生徒に質問する。
「これが上から降ってきたんですね?」
「は、はい」
 彼女の説明曰く、ただ歩いていただけなのに急に上から何かが落ちてきて、目の前で割れたという。あまりに突然のことで驚いて悲鳴をあげた。
「何階から落ちてきたかわかりませんか」
辺見さんの質問に彼女は首を左右に振った。そうですかと落胆した後、辺見さんは集まっていた生徒たちを見渡した。
「解散してください。そしてこのことは口外しないでください、間違っても先生方の耳には入れないように。わかりませしたか。下手をすると文化祭の中止などに関わります。これは生徒たちの間での極秘事項です」
 文化祭の中止なんて誰も望まない。集まっていた生徒はみんな辺見さんの命令にうなずいた後、解散していった。残ったのは私と辺見さん、被害者とあと複数名の実行委員。みんな、神妙な顔をしてる。
「陶器が落ちてきました。もし事故で落ちたのならすぐにでも犯人が名乗り出るでしょう。しかし、その様子もない……。そして陶器が消えたという連絡をすでに受けています。どうやら何かしらの悪意が働いたようですね」
 辺見が独り言のようにぶつぶつと冷静に分析していく。
「とにかく何階から落とされたか調べようよ」
 私の発案に辺見さんはこくりと小さくうなずくと、実行委員たちをすぐにその場で班分けしていき、何階担当か決めていった。すぐにそれぞれの階へとみんなが消えていく。
「けがなどがないんでしたら、あなたも戻っていいですよ」
 被害者に辺見さんが勧めると彼女はそうしますと答えた。辺見さんは彼女の学年とクラスと名前を聞いて、何かあれば協力をするかもしれない、あと何度も言うようだけど内密に、という二つのことだけ告げて彼女を帰した。
「さて、屋上に行きましょう」

 6

 この異様な高揚感はなんだろうか。全く楽しくないのに、校内全域がそんな雰囲気だからまるで楽しめない自分が悪いように思えてくる。楽しませてくれないのは、そちらじゃないか。
 しかし、みんなと理由は違うにしろ、自分も今日は楽しむつもりだ。さっき、小さいながら始まりのベルは鳴らした。けが人は出ていない。そもそも出す気がなかった。最初は小さなものでいいのだ。徐々に盛り上げていくのが、祭りの基本だから。
 実行委員たちがどうやら何か始めたようだが、なんの問題もないだろう。あそこはただの暇人の集団。変な組織意識や、責任感が備わっているのが非常に気持ち悪いが、しょせんはガキの集まりだ。
 驚異といえる驚異は辺見。しかしもしものときのことを考えて、彼女を封殺する方法も準備している。実行するかどうかはわからないが、念には念をこめないといけない。
 さあ、皆さん、学校は脅迫状を無視して祭りを始めた。それがあなたがたの意思だ。ならばこちらもそれに答えてあげよう。
「……カーニバルを始めようか」

2012/02/25(Sat)04:13:11 公開 / コーヒーCUP
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■作者からのメッセージ
 どうも、おひさしぶりです、あるいははじめまして、コーヒーCUPです。
 二回目の更新となり、今回の更新分は「5」からになります。物語がようやく動いた感じがします、短い話にする予定ですし、ちゃちゃっと歯車を回して最高速度を出さないといけない。
 なんか卒業、ないしには入学シーズンに文化祭の話を書くのはひどく違和感がします。
 この作品、犯人のパートを書くのが好きです。いかにも悪者ぶってる感じが厨二で、書いていながらいうのもなんですがツボなんですよね。愛着がわいてきます。
 では、読んでいただきありがとうございました。よければ次回もおつきあいください。
 感想・アドバイス・苦情などお待ちしています。

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