『奇跡の国ジャパ国の誕生』 ... ジャンル:ファンタジー 異世界
作者:matsu                

     あらすじ・作品紹介
 宇宙全体が法治国家に向かっていた頃、ジャパ国という原始的な国家に無限天皇が出現。 そして、キングランド王国星とオロス共産星群の指導によりジャパ国を短期間のうちに工業国家、法治国家、平和国家へと変身させた。 しかし、本当の指導の結果は、それから長時間を経て現われて来た。「指導」には、繁栄と滅亡が詰まっていたのである。

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1.

宇宙全体が法治国家に向かっていた頃、年代は定かではない。
 ジャパ国は、宇宙惑星史上、あるいは宇宙人類史上において原始的な国家という位置づけだった。
 そんなジャパ国を短期間のうちに工業国家、法治国家、平和国家へと変身させたのは、無限天皇の出現と
キングランド王国星とオロス共産星群の指導による賜物(たまもの)であった。
 ジャパ国では、先住民族であるスパイダー民族出身の無限初代天皇が「宇宙王道楽土(公平で思いやりの
ある政治が行われる平和で楽しいジャパ国)」に向かって国創りを始めかけていた。
 その当時、宇宙極東の東端に位置する小さな島国のようなジャパ国という名の荒蕪(こうぶ)な小惑星は、宇宙全体から見向きもされていなかった。
 その頃、軍隊も警察も整備されていないこの原始的国家は、宇宙海賊の標的になっていた。
 そして、流れて来た逃亡兵や敗残兵がジャパ国に住み着いた。
 住み着いた彼らは宇宙匪賊となり、その数は年々増加し、略奪と虐殺が横行していた。
 その当時の宇宙は、キングランド王国星(立憲君主主義下の資本主義・自由主義)とオロス共産星群(共
産主義・社会主義)陣営の二大勢力による対立構造の図式を明確にしていた。
 この二大超大国は、冷戦という名の下に、軍備を正当化し増強して、国家を拡大していったのである。
 当時、キングメリカ星群は、キングランド王国星の植民惑星であった。
 一国に頼ることを嫌った無限天皇は、ジャパ国の平定と経済に問題を絞っていた。
 ジャパ国の平定については、ジャパ国の平和を乱したり、氾濫を起こしたりするような理由で、宇宙海賊
や宇宙匪賊を武力で負かし、服従させる以外、方法は見当たらない。
 将来の経済については、時間をかけて、ジャパ国のあらゆる角度から経済の可能性を検討していた。
 キングランド王国星は、宇宙最多の植民惑星を保有・殖民を成功させてた実績を持っている。
 キングランド王国星の経済の特徴は、キングメリカ植民惑星中心に、宇宙重商主義政策によるスター保護
貿易、宇宙新教による絆の強化の3点である。
 独自の宇宙航海法の整備や各殖民惑星のスター特許会社の独占など、宇宙重商主義政策によるスター保護
貿易のシステムは、脆弱なキングランド王国星経済と各植民惑星の経済を守り、関係をより緊密にしていた。
 そういう点では、時代の変遷に応じた王国星としての実体を備えるための植民惑星の経営には精通してい
たのである。
 以後、キングメリカ独立戦争を経て、キングランド王国星はダインド惑星やアシアン星群へ植民惑星の重
心を移し始めるのである。
 一方では、キングランド王国星内において、宇宙規模でのスター産業革命を進展させている。
 無限天皇は、熟慮の結果、キングランド王国星に法治国家および工業国家設立、オロス共産星群にジャパ
国平定の助力を求めた。
 宇宙匪賊による虐殺・略奪の増加により、当時のジャパ国の住民は、泥にまみれ炭火で焼かれるような苦
しみに喘いでいたのである。
 ジャパ国の無限天皇からキングランド王国星への立憲君主制確立嘆願に対して、アドミラルネルソンと法
律制定の精鋭部隊をジャパ国に派遣した。
 アドミラルネルソンは、先ず、宇宙版法の支配という概念をジャパ国に植えつけていったのである。
 彼の植えつけた法の支配とは、専断的な国家権力の支配を排し、権力を法で拘束するというキングランド
王国星系の基本的原理であった。
 アドミラルネルソンは、ジャパ国を絶対君主制から徐々に立憲君主制へと移行させていった。
そして、国民主権、象徴天皇制などを採用した。
形式的だが、天皇をジャパ国の象徴天皇制として残している。
 アドミラルネルソンが、ジャパ国誕生には天皇というシンボルが必須条件だと考えたからなのである。
 しかし、ジャパ国天皇が、有していた統帥権や勅令などの強力な権限を一切排除してしまった。
 そして、二院制の導入、総選挙実施の準備をした。
 経済面では、コストのようにある人が支払ってもいいと思う個々人に関する情報(私的情報)を正確に収
集することは、如何に、中央政権制であっても不可能であった。
 そのうえ、ジャパ国のあらゆる財の需給というような大量の情報を正確に迅速に処理することも非現実的
であるという理由から、スター市場経済の導入を画策していた。
 スター市場機能を利用すれば、価格が宇宙規模のシグナルとなって反応し、多くの場合、そのシグナルに
よって需給がうまく調整されるという理由からである。


2.

 一方、平定に向けては、合法的にスムーズにジャパ国の平定・治安対策の強化を行うことが可能なように
「追放法」を制定した。
「追放法」という新しい法律は、ジャパ国国籍あるいはビザを有しない者のジャパ国居住および入国を禁止
している。
「追放法」に違反した者に対しては、ジャパ国政府が強制的追放および排除できる権限を有しているのである。
 そして、「追放法」が、オロス共産星群の軍隊の合法的なジャパ国への進駐を可能にしたのである。
 冷戦中の二大超大国は、ジャパ国の嘆願に対しては連携して行動した。
 オロス共産星群は、ジャパ国の嘆願に対して、有能なデジニフを司令官とする最強軍団を派遣して来た。
 デジニフは、先ず、ジャパ国軍隊から再建し始めたのである。
そして、ジャパ国警察を新設していった。
 ジャパ国は、宇宙匪賊の略奪と虐殺の横行で、住民が塗炭の苦しみに喘いでいたことはすでに述べた通り
だが、ジャパ国が正式に樹立されると、デジニフの再建した軍隊と新設した警察システムが功を奏して、ジ
ャパ国の治安が確立したのである。
 当時の宇宙匪賊は、宇宙の極西部から流れ込んで来た逃亡兵と敗残兵が軍備を充実させながら10万人規
模の宇宙匪賊に膨れ上がっていたが、これをデジニフの再建新設した軍警が一体となって一掃してしまった。
 ジャパ国が、キングランド王国星とオロス共産星群の内面指導を受けて樹立すると、宇宙各国から「偽国
家」と、非難の声が高まった。
 この時点で、無限天皇は「非難」という言葉の中に含まれている重要な要素(element)を把握できていなかったようである。
そして、「指導」の最終目標も不透明であった。
「非難」に対して、
「一人歩きできない子供を、親が面倒を見るのは当たり前のことです。宇宙の歴史上、虚弱な独り立ちでき
ない国家を、他国が全面的に指導したという例はいくらでも存在したことで、取り立てて問題にするような
ことではない」と、無限天皇は言った。
「それよりも両国が、全面的にジャパ国の指導を行ったことで、宇宙匪賊の消滅というジャパ国史上最大の
奇跡がもたらされたことに着目して欲しい」と、無限天皇は付け加えたのである。
 治安が確立されたジャパ国には、法体系が定着し、ジャパ国史上初の法治社会が生まれ、ジャパ国社会は
安定へと向かったのである。
 そして、それまでの紊乱(ぶんらん)しきった政府財政も再編確立された。
 併せて、徴税機関の整備、専売機関の設置、年度予算制を採用、旧金融機関の整理と「ジャパ国中央銀行
(JCB)」の設立、貨幣の改善に関する法律など、当時としては、最も近代的な法的措置が確立されると
同時にジャパ国に大きな成果をもたらした。
 ジャパ国経済史の観点から鑑みて、最も困難と考えられていた「ジャパ貨幣の改善」という目標は、キン
グランド王国星の指導と「ジャパ国中央銀行」の並外れた尽力によって、僅か1年弱で達成されたのである。
 改善された質の高い「ジャパ貨幣」は、宇宙全域で使用された。
 宇宙大戦争bTの終戦後、キングメリカ星群によって「ジャパ国中央銀行」が廃止された後も流通してい
たことが、ジャパ銀行券の宇宙金融史上、稀に見る信用度の高さを備えていたことを証明している。
 ジャパ国の総面積は、3億3000万km2で、現在の日本の総面積の約900倍の広さがあった。
 この荒蕪な国土に、キングランド王国星の指導を仰ぎつつ、ミルキーウエイ高速鉄道、アンダーパス高速
道路、ハーバーポート(港湾)、スペースエアポート(空港)、スターメトロ(地下鉄)などの交通網の充
実および上下水道、治山治水、電力供給事業にまで及ぶ国土開発事業計画を立てインフラの整備を行ったの
である。
 無限天皇が出現するまでは、ジャパ国の財政予算のほとんどが軍備や内戦に費やされていた。
 その当時のインフラ整備と言えば、3軒の倶楽部が建てられた程度であった。
 特筆すべきは産業の面で、それまで鍋、釜、金槌しか製造ができなかったジャパ国が、キングランド王国
星の優秀な人材と指導によって、自家用スペース自動車や宇宙船(スペースクラフト)まで製造できる産業
国家に転換したことである。
 民生の面では、教育の普及と共に高等教育の場を増やした。
 宇宙伝染病に対しても、保健所、病院を増設し、最新の宇宙レベルの検疫体制を整えたのである。
 無限天皇の出現により、ジャパ国国民は、それまで想像もしなかった宇宙規模の文明に浴することができ
たのである。
 そして、宇宙匪賊の恐怖からも解放された。
 無限天皇が、正式に初代天皇として即位し、ジャパ国が君主制に移行すると同時に、組織法を根拠とした
各行政機関の設置法が制定され、設置されていった。
 ジャパ国へ法体系を持ち込んだキングランド王国星は、対オロス共産星群からの国家防衛の必要性から、
次から次へと法律を制定していった。
 持ち込んだ法体系で、人治社会の前近代的な法律をジャパ国の根本から廃止した。
 そして、オロス共産星群に対する国家防衛の必要性から、次から次へと関連する法律を制定したのである。
 しかし、オロス共産星群、は自国の財政的な問題からジャパ国に、まったく興味を示さなかったのである。
 ジャパ国の国家防衛の必要性から次から次へと制定した法律は、後に、キングランド王国星から独立した
キングメリカ星群に対しては有効であった。
 キングランド王国星の内的指導により制定されたこれらの国家防衛の法律が、宇宙大戦争bTまで暗にジ
ャパ国を導いていたのかもしれない。
 そして、キングメリカ独立戦争に負けたキングランド王国星の代理のような形で、ジャパ国は宇宙大戦争
bTに突入したのである。
 最終的に、、ジャパ国は、宇宙大戦争bTでキングメリカ星群に負けた。
 ジャパ国は、国自体が辛うじて存続するような憂き目に遭ったのである。
「指導」により、時には大きな収穫も得ることができる。
 しかし、「指導」が最大の武器になることもある。
 ジャパ国は、奇跡の誕生と呼べる国家だったのだろうか。
 単に、宇宙大戦争bTに向かって突っ走っただけなのか。
 人間の予知画策能力は無限である。
 しかし、無限天皇は、「指導」により大きな収穫を得ることを予知したが、「指導」が最大の武器になり、悲惨な結果をもたらすことを予知できなかった。
「指導」には、繁栄と滅亡が背中合わせで詰まっていたのである。      了









2011/10/15(Sat)12:57:03 公開 / matsu
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■作者からのメッセージ
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