『赤頭巾』 ... ジャンル:ショート*2 異世界
作者:mom                

     あらすじ・作品紹介
文章や文字を書く事は好きだったのですが、それを今まで「小説」という形にしてきたことはありませんでした。星新一のショートショートを見て今回の作品制作に踏み切りました至らない所もあるかも知れないですが、最後までお付き合いいただけると幸いです。

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1.長い長い一本道を歩いてるの。両足を揃えるとわたしのお気に入りの赤い靴の端が少しはみ出てしまうくらい細いのよ。只歩き続けるのみ、いつ終わるか分からないのだけれどいつか終わりがくるのかは分かる。最初は覚束なかった足取りも最近ではしっかり歩けている。スキップでさえできそうな気分。

もう何十年も歩いてきたけれどあんなものを見るのは初めてだった。
薄汚くて黒くにごったハイエナのような「あいつ」目はギラついていて口からは絶え間なく涎が垂れている。怖くて怖くて後ずさりしようとしたけれど、この道は後ろへは戻ることはできないの。なぜならそういう風にこの世界はできているから。
私にある選択肢は前に進むしか無かった。
 ゆっくり一歩踏み出すと彼も1歩前へ行く、私がもう1歩踏み出すと今度はこちらを見ながら彼はゆっくり2歩歩む。幸運なことに私に危害をくわえるつもりはないらしく、私は安心しながらも恐る恐る前へ足を動かし、「あいつ」の後ろを追いかける形で歩む。歩くペースが上がる。


「ねぇ、あなたは何故ここにいるの?」
「ねぇ、あなたは雄?雌?」
「わたしの見張り?」
「もしかして獣の服を着たにんげんかなぁ」
「こうやって道案内をするのがお仕事?」

何日も話続けたけどあまりお返事はない、そろそろ呆れてきた。


もうずいぶんと長いこと彼と一緒に歩いてきた。お気に入りだった深紅の靴も元の赤色が分からないくらい褪せている。途中の道のりは忘れたけど、あいつと初めてあった時の記憶は忘れない。でも私は彼が何者なのかいまだ把握していなかった。会話も私からの一方的なものしかなかった。

だめだ、もう歩けない。自らの体液で元の赤に戻った靴をみてそう思った。ゴールまでは行きたかったのだけどもう体が無理だと自分で感じた。
バランスを上手く取りつつ座り込む私をずっと見ているあいつ。心配してくれているのかしら。少しだけ心がはずむ。
 ごめんね、それでももう無理みたい、体が傾き始め力が抜ける。
覚悟を決めて全身の力を抜いた。最後に彼を一目見ようと視線を合わせる。
恥じめてあった時のような鋭い目つきで私を見ている。久しぶりに見た彼の目、そして口から滴り落ちる唾液。
「あぁ…」
私はそう言って深い闇に背中を預けた。同時に彼が首元に噛み付いてきた。

2011/08/30(Tue)00:41:12 公開 / mom
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