『ジュリエットなんて呼ばないで・・・。』 ... ジャンル:恋愛小説 リアル・現代
作者:のどか                

     あらすじ・作品紹介
ロミジュリをテーマに書きました。。ジュリエットがシンデレラに憧れる…みたいな。そんな感じを出してみました。後半はほとんど美穂の心情で埋めてしまいました…(汗ジュリエットなんて呼ばないで欲しい。ジュリエットのような結末は望んでないの。という美穂の思いを、切実につづったつもりです。

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私の恋を、悲劇のジュリエットにしないで…。
私のロミオ、ジュリエットと同じ結末なんて望んでないわ。
お願い、ここから連れ出して…?


私は松木美穂、高1。この辺では有名な松木財閥の娘。
両親は、私をきちんとした娘に育て、跡継ぎとなる立派なお婿さんをもらえるようにしたいらしい。
私も、両親のその思いに応えるべく、今まで必死に良い子を「演じて」きた。
もう、限界なのかな…。良い子ちゃんを「演じて」いくのは…。

私には、両親に隠れて付き合っている彼氏がいた。
大して良い環境で育ってきたというわけではなく、礼儀正しさとか、特別備わっているわけでもない。
でも、彼は、ちゃんと私のことを愛してくれてる。
叶わない恋愛だとしても、彼と一緒に居るときだけは凄くしあわせだった。
このしあわせを感じているだけで、十分だと思っていた。
あの日までは…。


彼とは、同じ高校に通っている。付き合っていることを知っているのは、私たちと私の親友だけ。
ばれないように、ひっそりと、静かに過ごしてきた。学校の中での禁句が大量に増えた。
だから、誰かが裏切らない限り、外に漏れることはないだろう。それくらい厳重にヒミツを隠していた。なのに…。
ばれた。親友が裏切った。あっけなく噂は広がり、両親にまで知れ渡った。
親友は、いつもふっくらとして血色の良い顔をげっそりと白くして、必死に謝ってきた。
しかし、私は親友をどうしても許せなかった。親友のせいで彼と別れるなんて事になるのなら、親友なんて要らない。
そのくらい彼を愛していたのだから。彼も、私をそのくらい愛していると言ってくれた。
それがどれだけ、どれだけ嬉しかったことか。噂で充満した校内も、なんとか乗り越えられたのは彼がいたからだ。
しかし、問題は両親だ。両親に隠れて彼と交際を続けて、今年で3年だ。
「3年間俺たちをだましていたのか、お前は。どうしてだ。ちゃんとした婿をもらうために尽くしてくれと言ったろう。」
「彼との今の時間はとても充実しているし、私に悪影響なんか一切与えてないわ。付き合い始める前の私と今の私、比べて も 大差はない、と思ってる。婚約したわけじゃないんだから、学生の間の恋愛くらい、大目に見てもらえないかな?」
「そういう甘い考え方じゃ、ちゃんとした婿をもらうことができないんだ、と言ってるんだよ。諦めなさい。
 本気の恋愛がしたいのなら、ちゃんとした彼氏を連れてきなさい。そうしたら、考えてやっても良いさ。」
そういって、父は彼との交際を認めてはくれなかった。認めてくれるはずがなかった。
それどころか、父は恋愛禁止とでも言うように、今まで以上に私を締め付けた。
やめて、放して!私を解放してよっ!私はあなたのかわいいかわいいお人形なんかじゃないわ!
子供の自由を奪ってそんなに楽しいの?やめてよ。これ以上私を締め付けないで…!!

私はジュリエットにはなりたくない。
私の恋を悲劇のジュリエットになんてしないで!
こんなことで彼との関係をお終いにしなきゃいけないなんて絶対に嫌だわ。
ねぇ、お願いよ、私のロミオ。
ジュリエットと同じ結末なんて望んでないわ?
ここから私を連れ出して…!


両親におやすみなさい。と静かに告げると、静かに自分のベッドにもぐりこんだ。
安心したのか、両親もやっとベッドに入った。緊張の糸が解けたのか、ベッドに入ってすぐに深い眠りに入ったらしい。
さぁ、ロミオが迎えにくるまで、なんて待ちきれないわ。これからは、両親じゃなくて私の時間。
お父さん、お母さん…。せいぜい良い夢を見なさい…。大人は寝る時間だわ…。


こっそりと玄関を出ると、彼が玄関の近くに座って背中を丸くしてうつむいていた。
突然、熱いものがこみ上げてくる気がした。ううん、気のせいじゃない。視界がナミダで微かにぼやけた。
彼に近付いてみても、気付かずにうつむいたままだった。もう少し近寄ってしゃがみこむと、彼の寝息が微かに聞こえた。
クスッと笑うと、私は彼を少しだけ揺り起こした。
「ねぇ?これからは、私たちの時間なのよ?ね?迎えに来てくれたんでしょう?私のロミオ。」
「ん…美穂…。ごめんな、俺のせいで…。」
「…ホントだよ。」
「え…。ご、ごめん…本当…。」
「悪いと思うんだったら、さっさと私を連れ出してっ。じゃないと…。」
私はシンデレラからジュリエットに戻ってしまうの…。
思い切り抱きしめた彼の体は、とても冷たくて、まるで氷のようだった。
「カラダ、暖めよっか。私と一緒に…。」


二人一緒に布団にもぐりこむ。彼の体は既にだんだんと暖まってきていた。
彼の体温を感じる。
咽返る疑惑のキャラメル…。
恥じらいの素足を絡める…。
今日はあなたとどこまでいけるのかな…?
でも、時が過ぎるのは早い。時が経てば、両親のために帰らなくちゃ。
だから…ねぇ…早く…!!

噛み付かないで、優しくして?ヴァージンのあたしにはまだ激しいわ。
苦いものはニガテなの。きっとママのお菓子ばかり食べたせいね。

彼については、知らないことがまだいっぱいある。ヴァージンだもん、3年間したこともないんだもん。
知らないことがあるのならば、知りたいと思う。それは普通のことでしょう?
ねぇ、私に全部見せてよ?私は…。あなたにならば見せてあげるわ、私の…

ずっと恋しかった。憧れのシンデレラにでもなったような気分。
この世に魔法があるのならば、ねぇ、お願い。時間を止めて…!!
じゃないと、時が過ぎるのは早すぎる。ほら、もうあと少ししか時間はない。
あと少ししたら、両親の元へ帰らなくちゃいけない。もっと付き合いづらくなった環境に戻らなくちゃいけない。
ほら、また今夜も…。悪い人にジャマされちゃう…。

もう逃げ出してしまいたい。叶わぬ恋はまるでロミジュリ。
だけど、ジュリエットのようなけつまつなんて望んでないわ。
叶わない、儚い恋愛をしたいわけじゃないのよ。ただあなたといっしょにいたいだけ…。
こんな恋はまるでロミジュリ。ってことは私はジュリエット?
その名前ではもう呼ばないで…。
そうよね。せっかくの恋愛ですもの。結ばれなくちゃね。
そうじゃないと、楽しくないわ。

ねぇ、私と生きてくれる?私のロミオ…。

出かける前に少しだけだけど、メイクをしたの。あなたは気付いてくれているかしら?
ちょっと背伸びした長いマスカラ。ちょっとでも大人な女に見えるかしら?
お父さん、お母さんへ。大丈夫、きっと、あなたたちの望んでるような良い子になるわ。

明日から、ね☆

今だけ、今だけで良いわ。
そうよ。明日からは、いい子にきっとなってあげる。だから…。
だから、こんな私を、どうか許して?今まで模範生徒のように過ごしてきたの。ご褒美を下さい…。

私を優しく脱がせる彼は、穏やかでやわらかな表情をしていた。
あなたがその手を今私の体に掛けたら…。
黒いレースの境界線。越えたらどこまでいけるのかなぁ…?
黒いレースが今…するりと剥ぎ取られた。

そうね。痛いのは嫌と言ったのは、私。
でも、あなたのことを手放せないほどに、噛み付くほどに、痛いほどに、
欲しているのは私の方だわ…。
でもね、おとうさんはあなたの事が嫌いなの…。

お父さんが、私のためと差し出すその手に握っているそれは、首輪でしょう?
私のため、といってするお父さんの行動は、みんな私を拘束するための鎖のついた首輪よね。

お願い、連れ出して?私のロミオ…。
親の目なんて気にして生きていくのは疲れるの。
いっそのこと、お父さんにしかられるくらい遠くへ連れてって欲しい…。
でもこんなの、叶いもしない願望に過ぎないのよね。
二人で駆け落ちでもしたら、この強い気持ち、お父さんにも気付いてもらえるのかな…?

そんなこと、できやしないんだけどね。

鐘が鳴り響く…。シンデレラのような気分も、けたたましく鳴り響くめざまし時計に消された。
時が過ぎるのは早すぎる…。

きっとあの子も。シンデレラだってそうだった。
落としただなんてウソをついたのよ。
きっとそうよね。私も同じよ。
ガラスの靴を置いていったのは、あなたの気を少しでも引くため。あなたに愛してもらうため…。
置いていくわね。あなたとまた会うために。愛してもらうために。
「口実」というガラスの靴を、今日も…。

私のロミオ。私の心をそっと覗いてみて?
私の心はきっと、欲しいモノばかり溢れかえっているのでしょうね…。
スイーツは別腹だわ。まだまだ満足とはいえないの。
もっともっと、ぎゅっと…詰め込んで?あなたの全てが手に入らなくて…
いっそ、私の心の中の「あなたの居場所」までも、他の何かで全部埋めてしまおうか…?
でも、それじゃあ意味がないの…。

大きな箱より、小さな箱にしあわせはあるんだって。
きっと、今の私は欲張りすぎているのよね…。
どうしよう、このままじゃ私、あなたに嫌われちゃうかもしれない…。

でも私より欲張りなお父さんとお母さんは、今日も変わらず二人ベッドの中…。
そうよね、素直でいいのよね?私だって…。
「そうです。私が落としたのは、金の斧でした。」

嘘つきすぎた、シンデレラ。赤ずきんのようにオオカミに食べられちゃったんだって。
どうしよう、このままじゃ私も、いつかは食べられちゃうかもね。

その前に、迎えに来てくれるかな?

私の愛しのロミオは。
愛しのロミオ、ジュリエットだなんて呼ばないで?
私は、ガラスの靴を忘れてったシンデレラ…

2011/03/19(Sat)19:49:48 公開 / のどか
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■作者からのメッセージ
私はまだ中学一年生で、まだまだ全然低レベルかもしれません。
しかも、ちゃんとしたこういう恋愛ってしたことがないので、イマイチよく心情をつかめていないところもあると思います。でも、一生懸命、女の子のシンデレラへの憧れを書きました。評価お願いします。

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