『ルームメイトと僕』 ... ジャンル:ショート*2 未分類
作者:土砂降り                

     あらすじ・作品紹介
癖のある男の子とその男の子を見守るルームメイトの物語です。

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気がつくといつもアルバムを開いて君を思い出そうとしている僕が居た。
忘れるはずもないのに君を色濃く自分の中で残しておきたいとこの行為が日常生活の一部になっていた。
何度も何度も僕は君の写真を見つめながら記憶を集めて再生を繰り返していた、虚しさに溺れながらも僕は掴めないものを掴もうとする。


「お前さ、女々しいよな」
ルームメイトの斉藤はいつものようにアルバムを見ている僕に呆れたように呟く、僕はそんな斉藤に生返事をして集中する。アルバムの中で僕も彼女も笑っていた、きっと心から幸せだったと思う。ふと浮かんだその思いが頭の中で広がるたびに虚しくなり、憂鬱になる。そうなることを知りながらも僕はいつもアルバムを開くのだ。


「おい、広瀬。何してるんだよ」
時々、現実と思い出が交差する。自分がわからなくなって気づけば手首を切ってしまっている。


「広瀬、あまり他人の干渉したらだめだと思ってたから聞かなかったけどお前何考えてるんだよ。俺がお前のこと見張ってないとお前死ぬよ。そのアルバム捨てなよ」
斉藤の声が聞こえているのに理解できなかった。切った手首に斉藤がタオルを当てる、涙が出た。切った手首が痛かったんじゃない、斉藤の優しさが嬉しかったわけでもない。どうしてか止まらなかった。

「お前は思い出に依存しているんだよ。女が愛しいんじゃないだろう、お前見てたら解るよ」
「わかったようなこと言うなよ」


思い出が逆再生される、そしてモノクロになる。


「思い出すたびにお前は思い出をいいものと思おうとしてるんだろ。だからそんな自分が憎くて」


気づけばさっき自分の手首を切る時に使った剃刀を斉藤に向けていた。
斉藤は僕の腕を掴んで「弱いくせにどうして自分を強いと勘違いしようと努力するんだよ。自分で一番わかってるだろう」と優しく抱きしめる。温もりがつたわってくる。

「ごめん」我に返って何度も謝る僕に斉藤は「いいよ、友達だろ」とどこか寂しそうに笑った。

その後、何もなかったようにいつも通りの生活を送っている。
まだアルバムを見ながら放心状態になってしまう癖は治らずにいる、時々斉藤を傷つけてしまう。
もう少しの間、斉藤にお世話になりそうだというかルームメイトの間はお世話になるだろう。




end



2011/02/23(Wed)19:45:15 公開 / 土砂降り
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■作者からのメッセージ
こちらで小説を書くのは初めてです、何作品か読ませていただきましたが
とても読みやすくいいなあと思う作品がありました。
まだまだ至らないところもありますが読んで貰えると嬉しいです。



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