『後継者]』 ... ジャンル:サスペンス 未分類
作者:壊れたマリオネット                

     あらすじ・作品紹介
裏会社「シースター」は多くの有力人材を世に送り出している裏会最高峰の会社だ。国家公務員も犯罪者のカリスマをも作り出すこの社のボス、]の座を求め繰り広げられるサイキックサスペンス

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 正式名「シースター」という会社は、世に多くの優秀な人材を送っている人材育成社だ。国家公務員や大企業の社長はもちろんの事、裏の社会の人材をも作り育てている。そんな「シースター」には社長と呼ぶ人間は存在しないのだが、代わりに]と呼ばれるボスが存在する。顔は一部の社員にしか知られていない謎多き人物だ。]に逢うには「シースター」特別試験に合格しなければならない。その試験内容は筆記などではない。サバイバルだ。
 この試験に勝った者が後継者]になれるのだ。]になると「シースター」全体を動かせるし、その気になれば国全体をも動かせる。そのため、毎回参加者は「シースター」社員の八割を超える。だが、後継者になれるのはその中の五人だけ、つまり参加者5000人中4995人は死ぬのだ。この試験は十年の歳月をかける。十年経っても五人に絞られなければ「シースター」工作員に削除される。前回の試験から15年。遂に試験が始まろうとしていた。





 林 和彦も「シースター」社員で試験も受ける。林は元々]の座を取ろうと「シースター」に入社した。「シースター」は無論裏会社のため日本国家には極秘の会社なのだ。そのため「シースター」の事を口外すると入社時に体内に埋め込まれた盗聴器兼小型爆弾でばれてしまい、その場で爆死する。軽い気持ちで入社した不良のほとんどは「シースター」の恐怖で退職しようとする。退職するともちろん口封じとして爆死させられる。そんな人間達を林は多く見てきた。
 試験は日常で始まっている。試験期間中は「シースター」では働かず、日常を普通に過ごすのだが、もし「シースター」の社員だと別の社員にばれれば殺される。「シースター」は基本個人作業なので周りも人の顔など覚えていない。自分で調べ、推理し殺すのだ。まさに日常生活でのサバイバル。
 ただ、「シースター」社員を割り出すのには相当な手間隙がかかる。一般人を間違えて殺してしまい、逮捕でもされたらその場で爆死だ。なので「シースター」社員には手のひらに目の形の紋章が刻まれている。これで区別するのだ。
『ニュースです。昨夜また、手のひらに目玉の刺青のある人物が死体で発見されました。死体の顔はバーナーのようなもので焼かれており、警察は被害者の特定に困っているようです』
 試験開始から一週間で五人脱落した。顔を焼かれたのは顔を隠す為ではなく、ただの快楽殺人の為だろう。「シースター」にはそんな奴等ばかりだ。
「なぁ和彦。お前はこの事件どう見る?」
 不意に声をかけられた林は思わず肩を震わせた。声をかけてきたのは山岡 信二だ。日常生活では林は刑事として過ごしている。これは「シースター」からの命令だ。この山岡はただの刑事だが勘が鋭く頭がいい為林は傍において置いている。
「うーんそうだな……多分宗教がらみの殺人じゃないかな?」
「あの目は宗教の紋章って事か?」
「多分な」
 嘘をつくのは苦手だが林は必死にこの場を流した。山岡も怪しんではいないようだ。
「宗教……か、確かにその考えが普通だが俺はそう思わない」
「と言うと?」
「林、お前はシースターという裏会社を知っているか?」
 「シースター」と言う単語が出てきた瞬間全身から嫌な汗が出てきた。警察は少しは掴んでいる。それは林も知っている事だ。]もその事を知っているらしいが巧みに誤魔化してきている。さすがだ。
「シースター……か。噂でなら聞いた事がある」
 これならおかしくはないだろうと林は自分が「シースター」と関連がないような発言を心がけた。
「噂ではない。実在している」
「そうなのか?噂だと裏で総理を脅して国を動かしているとか」
「そうらしいな。そこで警視総監が動いた」
「何故知っているんだ?」
「シースター特別本部が設立したんだよ。俺もそこに所属している」
「おいおい初耳だぞ?」
「当たり前だ。極秘だからな」
「じゃあ何で俺におしえたんだ」
 そう言うと山岡は一泊おいて言った。
「優秀なお前にも特別本部に入ってほしいんだよ」
 あまりに唐突な依頼に一瞬固まった。「シースター」社員が「シースター」を追う。こんな馬鹿げた事があるだろうか。しかしよく考えて見ると特別本部に所属すれば「シースター」社員を見つけて殺す事が出来るかもしれない。
 林は特別捜査本部に行く事を決意した。

「ここが本部の場所だ」
 翌日山岡に連れられて警視庁の地下室に向かった。その中で「倉庫B」と書かれてある部屋が捜査本部らしい。中に入るととても倉庫にはみえない本格的な捜査本部の部署が広がる。広い部屋とは不具合な少人数が部屋にはいた。林と山岡を合わせて六人しかいない。林は怪しいと思いながらも渋々部屋の中に足を踏み入れた。
「君が林 和彦か?」
 顎鬚を生やした見覚えのある顔の人物が目の前に立っていた。天下の警視総監、小山内 裕次郎だ。
「お、お願いします。林です」
 わざと緊張したように見せたが逆に不自然な感じもした。
「はは、ここでは上下関係はないさ。この六人でシースターを潰していこう」
「は、はい」
「じゃあ山岡、色々教えてやれ」
「了解しました」
 山岡は林の下に行き、様々な機材の操作方法を教えた。無論林はそんな事を教えてもらわなくても分かっていた。「シースター」で嫌と言うほど訓練してきた。
 その後は、残りの三人の自己紹介。いかにもヤンチャいていそうな今村 征耶。逆にいかにも真面目そうな村井 修。紅一点と言えばいいのか、唯一女性の大鹿 美香。一番驚いたのは今村の事だ。こんなヤンチャっ子が、なんとキャリア組みなのだ。もちろんここにいるので実力もすごいのだろう。
「では林、君は今日からここで寝泊まりしてもらう」
「え?」
 小山内の言葉に驚いた。寝泊まりすると言う事は。
「実は手のひらに目の紋章がある人物を見つけてな、24時間監視しているのだよ」
 やはりそうか。モニターを見るとその人物に見覚えがないが確かに右手にはマークがある。少しは隠せと心で思った。林は特殊メイクで隠している。
「じゃあこの人が殺されるかもしれないのでは?早く保護しなくては!」
 必死に演技をするのは本当につらいが、ここは心配しなくてはならない。でなければ林が「シースター」に関連している事がばれる可能性がある。
「確かに危険かもしれないがこの男がシースターに関連している事は確実なのだ」
「そうですよね、これ以上犠牲を出さない為にも……」
「小山内さん!松尾が怪しい男性と何か話しています!」
 突如村井が叫んだ。モニターを見ると松尾という男性ともう一人、真っ黒な服で顔も隠している男性が立っていた。この格好と雰囲気、林はこの男を知っていた。「シースター」の中でも危ないとマークされていた一人、西園 輝だ。
「あっ!松雄を刺た!」
 山岡はモニターを指差した。そこには腹を押さえる松尾の姿があった。
「今村と大鹿!至急松尾の場所へ向かえ!もちろん救急車もな!」
「いえ、もう遅いです」
「……!!」
 モニターには松尾をメッタ刺しする西園の姿が映っていた。大量の血が松尾の部屋に飛び散っている。大鹿は目を覆って小さく叫んだ。
「あれでは松尾の生存は不可能でしょう」
「ちっ!あの黒男もシースターかよ!」
 今村は近くにあった椅子を軽く蹴った。

 松尾が殺されてから一週間が過ぎようとしていた。それまでの間に松尾を合わせ13人のシースターが殺されている。全て近辺で殺されている事から林は全て西園の仕業だと考えている。西園は要注意人物だろう。林自身が西園を殺す手もあるがそれには警察という檻にいる林では限度がある。それに西園がどのようにシースター社員を探しているのかも気になる。
「林君休んでいいわよ」
「すみません大鹿さん」
 毛布を渡され林は軽くお礼を言った。今は休んで入られない。どうにかして自身の脅威になるであろう西園を殺す、それしか考えていなかった。
「おっさん!こいつ見ろ!」
 今村は小山内を呼んだ。キャリアにしては口が悪すぎる。
「こいつは」
「副総理の鈴木 勇気だよ!手を見ろ」
「……!?」
「紋章……紋章がありますね」
 村井はマウスを動かしながら言った。
 シースター社員が総理をしたこともある。副総理がシースター等こっちじゃ珍しくもない。
「どういう事よ」
「副総理もシースターって事だろ?ったく日本は人材選ぶの下手だな」
 今村はイライラしながら愚痴をもらしている。林は副総理を見てあることを考えた。西園を消す方法だ。
「しかし副総理が相手だと動きにくいな」
「そうですね小山内さん。鈴木副総理はおそらくそれが狙いでしょう」
 いや、鈴木の狙いは他のシースター社員を探す為だろう。国家は日本最強の探偵組織ともいえる。個人情報などたやすく手に入るだろう。つまりこの鈴木を上手く利用すれば西園を殺れる。いや、それどころかそのほかのシースター社員も暴き、殺せるはずだ。
───プルルルルル
 突然林の携帯がなる。非通知設定だった。
「もしもし」
『あ、林 和彦?どーも西園でーす』
 電話相手は西園だった。まさか既にこっちの情報を得ていたとは……。
「すみません、ちょっと急用で」
「こっちは大丈夫だ行って来い」 
「おい林」
 行こうとした矢先、山岡に呼び止められた。
「何だ?」
「気をつけろ」
 意味が分からなかった。気をつけろ?何にだ。

 林は自分のマンションに戻った。
「もしもし?俺だ」
『キャハハハハあんた刑事なんだって?笑えるな林 和彦』
「で?あんた本当に西園 輝か?」
『うーんじゃあ会うか?今夜』
「お前に会ったら殺すぜ?」
『それは俺もだよ。なーんかお前は危ないんだよ』
「携帯は何で分かった?」
『ん?それはなぁ?あんたの周りに俺の仲間がいるからだよーん』
 西園は衝撃な事を言い出した。林の携帯番号を知っている奴は特別捜査本部の小山内たちしかいない。
「捜査本部の人間だな?」
『さぁ?』
「何故そいつに俺を殺させない」
『これはゲームだ。俺とあんたのな』
「俺が危ないんだろ?後継者]になるには俺は邪魔じゃねえのか?」
『]?俺はシースターの人間じゃねぇからな』
 西園はシースター社員じゃない?ならば何故『シースター』は西園を危険視するんだ?
『じゃあまたねー』
 携帯はそこで切れた。多くのなぞを残して。
「くそ!」 
 林は携帯をベッドに投げ捨てた。全く意味が分からない。シースター社員でもない西園がシースター社員を殺す理由に林を危険視する理由、さらには本部に西園の仲間もいると言う。全くと言っていいほど意味が分からなかった。それは本部にも立ってから多大な影響を及ぼす。誰が西園の仲間、仮にZとしよう、Zを探すのに目が回り他人に怪しまれるかもしれないし、逆に目を離せば何をしでかすか分からない。この謎は西園を殺すまできっと続くのであろう。

2010/04/07(Wed)02:15:47 公開 / 壊れたマリオネット
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■作者からのメッセージ
現在第一章までです。前回の作品は最悪だったので今回は不定期更新ですがちょっと長編を書こうと思います。文章力は相変わらず下手ですがどうかお願いします。

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