『ドクロ眼鏡(仮)』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:華月                

     あらすじ・作品紹介
海辺の荒れ果てた洋館に集まったチャット仲間の少年少女達。彼らは表向き、親睦を深めるオフ会の為に集まったが、実際は不審な死を遂げたユーザーの青年の死を暴く為の会合だった。しかし彼の素性を探る内に、それぞれのユーザーが抱える心の闇が明らかになって行く。

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第一章
東京から特急で3時間。更に駅からバスを乗り継いで2時間。
「ここからC県です」という看板が見えたかと思ったら、あっという間に海岸が見えた。
運転手は僕みたいな子供の一人旅が珍しいのか、運転しながらもチラチラこっちを気にしてる。
僕は慌ててケータイをしまうと、降車ボタンを押してリュックを背負った。
「はい、繭浜海岸到着だよ」
「あ、はい…」
僕がもたもたしていると、運転手さんが親切に「料金は210円。料金箱は此処」と指し示してくれた。
「お客さん、10月に海水浴かい?」
「いえ…そこの迎賓館に泊まるんです、三日間」
「何、穹生館に?あんた命が惜しくないのかい?」
「へっ…?命?」
「あの館にはねえ、良い噂は聞かないよ。『幽霊屋敷』なんて子供らは呼んでるけどね、有名な怪奇スポットで、
都会からよく面白半分で泊まりに来る人がいるんだよ。…まあ、その人達が無事帰った事は無いね」
「どうなったんでうか?…その人達は」すると運転手は、にいっと口をピエロみたいに歪めて笑い、こう言った。
「喰われちまったのさ、屋敷にね」
僕は小さな悲鳴をあげ、バスから転げる様に飛び出した。
停留所のベンチで青くなっている僕を、運転手はかかかと笑って見た。
「なんてな、喰われちまう訳無いだろ」その一言で、へなへなと力が抜けた僕は、その場にへたり込んでしまった。
「お…おどかさないで下さいよ」
「ははは」運転手は防止を深々と被り直し、もう一度低い声で呟いた。
「穹生館には、鬼が棲む…」その言葉を聞き逃した僕は「え、何て?」と聞き返したが、運転手はくるりと前を向き、
バスを発車させてしまった。遠ざかって行くバスを見つめながら、僕は改めて、不気味な赤煉瓦の洋館に眼を留めた。
オフ会のお知らせが届いたのはつい先月の事。僕の行きつけのチャットが開設されてそろそろ1年になるから、これを期に
リアルでも会って親睦を深めよう、という内容の物だった。勿論最初は反対もあった。このチャットの中での自分達のイメージを壊したくない。
現実世界でなんて、そんなの無理に決まってる。僕もその反対派の一人だった。しかし、管理人のルヲさんの必死の説得により、どうにか常連の
4人で会って話をする事が決まった。ルヲさんはその為の場所や其処に向かう地図まで丁寧に用意してチャットにリンクを張った。僕らはどうして
彼女が其処まで必死なのかを機構としたが、「会ったら話す」の一点張りだったのでとうとう聞けずじまいだった。
そしてとうとう今日、此処に僕は立っている。
約束の時間は4時。まだ30分ほど時間があるな。僕はリュックを浜辺に置き、少し海岸線を散歩してみる事にした。
小さい頃、両親と3人で江ノ島に行った事が有るけど、其処の海の匂いとはまた違った潮の香りが鼻腔を刺して、僕は深く息を吸い込んだ。
海岸をずっと西へ進んで行くと崖が有る。其の崖の脇に人工的に造られた階段が有る。園階段を昇って行くと、洋館の玄関前に着く、という設計だ。
建てられたのはおそらく明治初期。何処かの伯爵の別荘だったらしいが、その伯爵が落ちぶれてこの洋館を手放してからは、繭浜市の議会が管理している。と言ってもこんな大きな洋館の隅々まで管理の手が行き届く筈は無いので、庭園も内装も荒れ果てているらしい。まあ人が住めないレベルでは無い
ので、こうして県外からの宿泊客を迎える事で管理費の足しにしていると言う。まあ明治だから、そこまで耐震工事も発達してないだろうし、この三日間で津波でも来たら一発でアウトだな、とぼんやり考えた。
海猫が一羽、群れからはぐれて浜辺の砂をつついている。僕は腕時計を確認すると、大理石の階段に一歩足をかけた。

2009/12/29(Tue)09:54:51 公開 / 華月
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■作者からのメッセージ
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
ここまで読んで下さってありがとうございました。

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