『仮面少女』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:有馬 頼家                

     あらすじ・作品紹介
平岡氏に捧ぐ

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 私は夢を見る

 記号化された社会の複雑なテクスチャー。私はその中で“自分”という存在自体をその溢れ、記号化された渦の中に埋没させ、融けさせる。
 私の『少女』はいつの間にか……しかし確実に存在し、時と共にその存在を私に認識させる。私は無論その存在から目をそむける事も出来ずに、唯否定する。
 私は“私”という存在を、一種の社会的な規範の中に置き、周囲に溶け込ませる事で「ああ、これが“正常”なのだ」と不思議な色をしたタン壷の底で安心する。しかし少女はそんな私を嘲るようにこちらを眺める。「それがお前なのか」と。

“それ”は一体何なのか? いつの間にか自分の判断の根拠といった物にですら、そこに“自分”というものを見失い。他人の作ったテキストやルールに従い、私は“私”を社会の中の『無個性の個性』に委ね、安堵する。

 そんな私を見て、少女は笑う。
「あなたは知らないだけ、“自由”といってもそれは誰かの掌の上で踊っているだけ。誰かの受け売りの自由」
「違う!!」私は少女の言葉に言い返す。しかしその後に続く言葉は浮かばない
「あなたは目をそむけているだけ、“自分”なんていうものがとっくに無くなっている事とっくに判っているんでしょう?」
「違う!!」私は全力で言い返す。そしてその答えは、しかし私の中では言い返せない。無邪気で屈託の無い笑顔でカラカラと少女は笑う。

 幼少の頃より頭の中に蟠っていた、一抹の不安……そして焦燥。声高に叫んでいた言葉はしかし己の中の不安をかき消すための欺瞞に過ぎない。
 道徳、道義、友愛、常識……そんな既製の鎖で己を縛り、しかしそれが“自分”というものを構成しているのだと、空っぽの虚勢を張り上げる。
 知っていた。それがあくまで私を縛る物であって、少女は既にその鎖では縛る事は出来ないという事を……。知っていた。それが唯一の“私”であるという事を……。

「“それ”を知れば、あなたの世界はきっと変わるよ。大丈夫“みんな一緒”だよ」
 その少女の言葉が私の頭の中に響き渡る……。委ねる事は快楽に似ている。
 少女は何時しか“私”となり、私は“規範”の鎖を解く。家族や友人、それら私を取り巻く多くの規範をかなぐり捨て、唯一の“私”を取り戻す。
 記号はその瞬間“意味”をとりもどし、私はその中で埋没した“自分”という物を取り戻した!
 なんということだ。少女を解放し、そして受け入れた時。鬱々としていた自責の念は、いかにも取るに足らない物であったかの様に、霧散する!

 私は夢を見る……いつかそのような日が訪れる事を。
 そう思いながらも新しい日を迎え、やはり少女はそんな私に嘲りの笑いを向ける。
 「また逢いましょう……その虚像が剥がれ落ちた時に」

2009/11/01(Sun)22:26:14 公開 / 有馬 頼家
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■作者からのメッセージ
こんにちは!永遠の教習生頼家と申します!
参戦させていただきました……っとは言うものの、こはちゃんと小説になっているのか? 大変不安で御座いますw情景描写も特になし、登場人物名も特になしっといった(私にとって初の)トッリキーな作品になって、ビクビクで御座います。
ある種詩のような話になっているかも知れませんが、そこはそれ、見ていただいた方のご判断にお任せししようかと……
それでは今後とも宜しくお願いいたします!

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