『恋する少女』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:もげきち                

     あらすじ・作品紹介
恋する少女はいつだって盲目なんです!

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 見上げるとそこに見えるは筒のような陰の先に見える綺麗な瞳。
「あ、神様だ」
 少女は、その大きな瞳を見つけると嬉しそうに顔をほころばせ両手を結んで祈りを捧げた。
 いつもいつも絶対に同じ時間に決まって見える優しそうな瞳。
 誰かに言ったら、神様が来なくなってしまいそうで言えないけれど、あの空から見える瞳が自分達の世界を守ってくれているのを少女は知っていた。
 4−5日くらい日照りがつづき、作物が育たなくて困っていると神様があの瞳でその状況を知ってくれたのだろう、次の日には雨を降らしてくれた。大きな謎の生物が突然降って湧いたように現れ大地を汚し、壊し始めた時も、あの神様の瞳がその危険に気付いてくれて、次の瞬間には空から何か大きな二本の棒が現れ、巨大な生物を挟み連れ去ってくれた。
 その時少女は気がついた。
 何もかも、あの優しい瞳の神様が私達を助けてくれているんだ――と。
 少女はその事に気がついてから、毎日毎日あの瞳を眺めてはお祈りをするようになっていた。誰よりも神様を大事に思い、祈っていた。
 神様の瞳も、そんな少女を優しく見守っているように映った。

 数年経って、少女も15になり、大変美しく育った。
 求婚する男の数も、優に20を越える程、少女は村一番の器量良しだ。
 しかし、少女は唯の一人も受け入れようとはしなかった。
 少女は既に心に決めて、愛しているものがあったからだ。
 今日もいつもの時間に見上げると、空に見える優しそうな綺麗な瞳。
 そう、少女は神様に恋をしていたのだ。
 少女は村の誰とも結ばれる気など、更々無かった。

 ――そんな少女の頑なな祈りが報われる時が来た。
 村の男達のやっかみ、そして誰とも結婚しようとしない両親の娘への落胆。そして少女の神への異常なまでの固執に、村長が全てにより良き方向へ――と、日ごろの神への感謝として、それまでは動物や食物を捧げていたが、今年は少女を生贄として神に捧げるという決定が下されたのだ。
 その決定に
「私はいよいよ神様の下に行けるのだ」
 少女は純粋に喜んだ。
 相変わらず優しく見つめる神様の瞳も、それを祝福しているように少女の目には映った。
 
 当日、心臓を抉り神に捧げるための台座に昇る少女の目は晴れやかだった。
 相手にされなかった、男達の怨嗟の声も聞こえるがまったく気にならなかった。生贄として捧げられ、魂が神の下へと向かい、一緒になれるのだ。
 そう思うだけで幸せだった。今まで生きてきた中で最高の幸福だった。
 しかし、いよいよ心臓が抉り出される――という時に奇跡が起こった。
 空から巨大な針のようなものが降ってきたのだ。その天まで届く針のようなものは少女の周辺を破壊しはじめ、村人たちを恐怖に落としいれ、生贄の儀式は中断せざるを得ない状況に追い込まれ、少女は心臓を抉り出してもらうことが出来なかったのだった。
「ああ、神様は私を拒絶なさった」
 少女は、その奇跡を見てそう痛感した。
「私は神に捨てられたんだ」
 少女はそうとも思った。苦しいくらい胸のうちからこみ上げる絶望。
 そして、少女はその絶望を抱いたまま自分の胸を刃物で一突きし、死んでしまった。
 少女の死に村人は誰も悲しむ事無く、寧ろ神の怒りをかったと、嘲りや冒涜の言葉放つ。そのまま少女は野ざらしにされ、村の人々は戻って行った。
 が、その後すぐに、まるで海が空から降ってきたような、大きな大きな水の塊が何度も何度も少女の世界を襲い――少女の存在したその世界は全て水没し、あっと言う間に滅んでしまった。

 優しく見守る神様の瞳も、それ以来見えなくなったのだった。



2009/11/01(Sun)16:08:08 公開 / もげきち
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■作者からのメッセージ
なんだか、凄い勢いで「〜〜少女」という作品が並んでいるのを拝見し、拝読し自分も何か書いてみよう! と、未熟ながら参加させて頂きました。えへえへ。思ったことを、そのまま書いただけで短編の才能の欠片も無い自分ですが読んでいただけたら幸いです。その事実だけで自分亜高速移動で、未来に一人旅立って帰ってこれないくらい喜びます! ではでは、本当に読んでくださった皆様ありがとうございましたー^^

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