『俺の力は神の元に』 ... ジャンル:ファンタジー 異世界
作者:神聖夜                

     あらすじ・作品紹介
ファンタジーです!かなり久しぶりのファンタジーになるので大丈夫か心配です。あらすじは川上裕樹が天使になり悪魔と戦うというどこにでもあるものですが、ただそれだけではありません。そこについては、お読みになればわかります。

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第一章天使になるために
 俺は岩上 裕樹。今日は、変な夢を見た。変な夢とはペガサス、ペガサスが俺の体の中に入り込む。よく言葉では説明できないけど変な夢だった。俺は、未知の力を呼び起こしてしまった。俺の中に眠っていた力を。霊能力という未知の力を。原因は分からない。昔は霊能力ががあったらな、なんて思っていたけれどそんなに良い代物じゃあないと俺は思う。まず、俺の今使える、霊能力は、洞察眼(相手の心が分かる力)、これをすると、俺の全ての感覚が消える。二つ目の力は、これは、前世を調べることが出来る力だ。今はこれだけだが練習するうちに増えていくのだろう。俺は今こう思っている。朝見た夢はただの夢では無いのでは無いかと。俺の霊能力のこと、未だ誰にも話してはいない。だが今日、その事を俺の親友に話そうと思っている。悠貴……龍田 悠貴に。きっと、最初は信じないと思う。でも洞察眼の力を間近で見たら信じると思う。今、俺は学校にいる。
「おはよう! 裕樹!」
 こいつが、悠貴である。
「ああ、おはよう。悠貴……話したいことがあるんだ。来てくれ」
「あ、ああ。分かった」            
 俺は屋上に向かった。
「ここなら大丈夫だろう」
「話したい事って何だ?」
 悠貴の長い髪が風に吹かれて後ろで舞っている。
「実は俺は……霊能力者なんだ」
「は、はあ? 霊能力者? 信じられるわけねえだろ。証拠に何かやってみろよ!」
「ああ。お前の考えていることを、言う」
 俺の感覚が無くなり、目から光が消えて赤くなったようだ。どうやらこれは目が赤くなるようだ。
「おい、裕樹!大丈夫か?」
悠貴が何か言っているが、感覚を失っているから聞こえない。やがて俺の洞察が終わった。
「お前がさっき考えていたこと、それは、裕樹がもしも本当に、霊能力者だとしたら……俺はどうしたらいいのだろう。何をしてあげられるだろう……と考えていたんだろう」
 俺はまだこれをやるのが二回目だから当っている自信があまり無かった。
「……そ、そうだ。全く同じだ……。裕樹ごめんな!」
 悠貴は去ってしまった。それから、風が強くなってきたため俺も教室に戻った。授業中も休み時間も、違和感のある時間だった。放課後になっても、一言もしゃべることは無かった。俺はこれからも悠貴とはしゃべることは出来ないのかな? 霊能力は永遠に続くのかな? とさまざまな疑問がわいてきた。俺の生活は今日のあの言葉から崩れようとしていた。

 今俺は家にいる。二階の自分の部屋に。
「裕樹、ご飯よ。下りてきて」
「うん。今下りる」
 この自然な会話が、俺の生活から消えようとしていた。
 今日の夕食はチャーハンだった。味はやはりお気に入りで、ご飯の味付けはケチャップではなく醤油での味付けだ。俺の家では、チャーハンだけでサラダの栄養も取れるほどの野菜チャーハンだ。だが野菜と醤油のご飯が絡み合い、実に美味しい。
「うん! いつも通り美味しい」
 俺はこのチャーハンを食べて元気が出てきた。
 俺はチャーハンをほおばった。
 数分すると全て食べ終わり、お腹も満腹だ。

 その後俺は部屋に戻った。
「霊能力か……この力のせいで俺は……」
「岩上裕樹君ですね?」
 何者かが言った。その男には翼が生えていた。
「お前は誰だ?」
「僕の名はジャー。天使だよ。君のその力は霊能力では無く天使の力。霊能力者か天使かに決まるのは夢に狐とペガサスどちらが出てくるかで決まるんだ。君もそして天使の力を持つ者さ。僕ら天使は天界に住んでいる。そして、どこからどうやって誕生するかも分かっていない。悪魔を倒すのが仕事さ。天界の天使にもレベルがあってね、一番上が闇これは天界を治める神のような存在、君らの言葉では総理大臣と言ったかな。そして次が光、空、氷、太陽と来るのさ。僕は光だよ。天使になって丸一日すれば、魔法が使えるようになる。羽も生えて飛べるよ。だけど羽は普通の人間には見えない。その本人が人間に見えるようにすれば見えるけどね」
「つまり俺が……。天使になったということか?」
「うん。天使の力を得た人間には、天界から使者が来るよ。僕はその使者役。そして、君に魔法を教えるんだ。よろしくね」
「天使になったらもう直らないのか?」
「うん」
「俺は悪魔と戦わなきゃいけないのか?」
「そりゃあ、魔法が完全に使えるようになったらね」
「そうか」
「珍しいね。人間はいつも嫌だと言ってやろうともしないのに。じゃあ、早速君のレベルつまり翼の色が何色か測定するよ。目をつぶって」
 俺はあきらめて言われたとおりに目をつぶった。ジャーが俺の何かに近づいているのが分かる。
「すばらしいよ! 裕樹君。君のレベルは光。僕と同じだよ。光の翼を持つ者は光の魔法を使う。光を自由に使うことができるんだ」
「そうか。ま、いいか。暗くなってても仕方がない! やってやろうじゃねーか!」
「うん。頑張ってみよう!」
 この時、ジャーの第一印象は『幼い』だった。
 そのせいか俺は甘く見ていたんだ、『天使』という名の試練を。






第二章友達
 ジャーの修行はかなり厳しい。土日とはいえ天界での修行だから、母さんには友達と一緒に旅行に行くと言ってきた。
「裕樹君、翼を広げて、ジャンプ!」
「分かった!」
 風のヒューンという音がする。
「光の棒をイメージして。ムーンフラッシュと言って」
「うん。ムーンフラッシュ!」
 この呪文はイメージした光の個体を作るらしい。
 今イメージした棒が出てきた。
「裕樹君、光魔法以外の魔法、つまり符術はイメージするだけだよ」
 俺は言葉には出さずうなずいた。
「じゃ、練習用悪魔とバトルしてね。……あともうバトルは始まってるよ」
 本当に後ろに悪魔はいた。何とか上空に飛び立って悪魔の攻撃をかわした。
(これで練習用か!だけどこいつなら未だ倒せる)
「ムーンフラッシュ!」
 俺は光の槍をイメージした。
 そして上空に悪魔がやってきているところに、槍を投げた。すると光の槍は命中して突き刺さった。
 だが未だ生きているみたいだ。光の槍から長い光の針が出てくるのをイメージした。その瞬間悪魔の中から緑色の物体が飛び出て来た。それを羽を一本抜いて突き刺すと悪魔は浄化された。天使の羽を指すことによって、悪魔は浄化されるのだ、とは言ってもこれもジャーから習った物だが。
「すばらしいよ。裕樹君。やはり君には才能があるよ。未だ練習用だけどここまでできるとは。これなら光の三から光の二まであがれるかもしれないよ。おっといけない。これを説明していなかったね、光の中にもさらに三、二、一と分かれていて裕樹君は今は三だよ。それがここまでできるなら二まであがれるかもしれないということだよ」
「そうか。ところでジャー、一回人間界に戻っていいか?」
「いいけれど何で?」
 俺たちはゆっくりと舞い降りていった。
 無論人間に羽が見えないようにしてからだが。
「ジャー俺が最初使えた洞察眼と前世を調べる力、あれは無くなったのか?」
「無くなった訳じゃないと思うけど……そう言うことは神に聞かないと分からない。もう、そろそろ着くよ。人間界に」
 今思ったけれど、羽が見えなくても俺は飛んでる所を見られるんじゃないか。
 それでも完全に人間に見えていないジャーは飛んでいる。そして俺が向かっているのは悠貴の家。悠貴に話したいことがあるから。
 悠貴の家に行くのは容易だった。
 俺はインターホンを鳴らした。
「はい。どなたで……裕樹? そ、その羽は何だ。そのもう一人も誰だ?」
「見えるのか?」
「ああ」
「俺は霊能力者でなく天使なんだ。天使は悪魔を倒すために存在している。天使は魔法も使える。もちろん俺も。そしてこの人は俺の師だ。ジャーという。ジャー、悠貴にお前が見えているのは何故だ?」
「おそらくこの子は霊能力者だ。霊能力者は筆に霊力を込めて、札に霊力の字を書いて投げつけると、悪魔を倒せると聞くよ」
「神に聞けば分かるんじゃないかな?」
「この子を天界に連れて行かなくちゃいけないけど、いいと思う。連れて行くのは裕樹君がよろしく」
「分かった」
「じゃ先に行ってるから」
ヒューンとまた音を立てて天界に飛び立っていった。
「裕樹……その昨日のこと、ごめん」
「気にしてないよ」
「ありがとう」
「ムーンフラッシュ!」
 俺は空を飛ぶほうきをイメージした。すると、光のほうきが出てきた。悠貴はとても驚いていた。「俺も昨日まではこんな感じだったんだっけ」と心の中で呟いた。
「悠貴これに乗って。どちらの方向に行くか思うだけで飛べるからね」
 俺は翼を広げて準備していた。上空を見上げると、悠貴は九百メートルくらいにいた。俺も負けずにかなりのスピードをだして何とか追いついた。
「気持ちいい!」
 悠貴はかなり興奮していた。
「あの雲が天界だよ。あの雲自体人間は見えていないんだ」
 俺は言った
「人間って俺たちも人間だろ!」
「俺たちは人間じゃない俺は天使、悠貴は霊能力者だ」
「……」
「さ、行くぞ」
「ああ」
 俺たちは天界の中に入っていった。

「おい。ジャー、何処にいるの?」
「ごめん。裕樹君。僕はここだよ。今神に会う手続きをしている所なんだ」
 俺と悠貴もそこに向かった。
 係員の天使が悠貴にこう言った。
「あなたは霊能力者……ですね。霊力をもらいますね」
「はい」
 悠貴はどう言えばいいのか分からずに返答した。係員が紫色の光を出し悠貴の中から何かを取りだした。
「それでは、どうぞ」
 係員の天使は門を開けた。広い廊下が何十メートルも続き、十五分程度で到着した。
 ジャーがノックをしてドアを開けた。
「神、任務が完了しました。彼は裕樹君はかなりの素質があります。現時点では光の翼です。魔法の潜在的能力は僕を超えています。神、一つお聞きします。人間が霊能力者になった場合はどうすればよろしいのですか?」
「ふむ。質問にお答えしよう。その場合は同じ霊能力者の使者がその者の所に訪れるであろう。それよりジャー。ラリーの事は知っておるな?そのラリーとこの世界の穴が完全に開こうとしているのじゃ。おそらくあと半年か一年で完全に開きこの世界は消滅してしまうだろう。今は私が闇の力で閉じているが、私の力にも限界が、ある。その間にこの者を強くするのじゃ」
「はい!」
「今の話は何?」
「何でも無いことだよ。じゃあ、いくよ。そして、悠貴君家でしばらく待機していてくれ。家には天界から飛び降りて。この羽を握りながら」と言って羽を取った。すると取った部分に新しい羽が生えてきた。おそらくあの羽には光の飛ぶほうきと同じ能力があるのだろう。
「裕樹、じゃあ、俺は先に帰るからな」
悠貴は羽を持って天界を飛び立った。
「裕樹君、僕たちも修行するよ」
「はい!」
その後俺たちは修行していた場所に戻った。
「裕樹君とうしたの?そんなにやる気だして」
「なんか悠貴にも負けてられないなぁと思って」
「そう。次の魔法は光魔法じゃなくて、羽で攻撃する技だよ羽で風を起こすことによって、風の刃で攻撃する技だ」
 俺は風の刃を吹き荒らした。











第三章     家族……そして愛 
 今俺は家にいる。本当は修行をしているはずなのだがジャーは用があって来られないらしい。天使の力は一度覚醒すると、衰えることはないという。修行すれば強くなるが、しなくても弱くはならないということだ。裏を返せば、二度と普通の人間には戻れないと言うことだ。

 ジャーの話では悪魔は人間界に滅多に来ないらしい。天界にはよく来るが人間界には大昔の神が闇のバリアを張ったらしい。そのバリアこそが宇宙なのだ。天界は人間界の雲から入れるが実際は人間界とは別空間にあるという。
 だが俺は悪魔が来ても倒せる自信がある。今なら光魔術も羽も使える。光魔術では未だ基礎の中の基礎しかやっていないがそれでも結構強いと思う。俺は未だ完全な天使ではないが、完全な天使になったら、お母さんにもお父さんにも見えなくなってしまう。

「それが恐い」

 ――家族
 ――愛
 そういう大切な物が俺から消えようとしている。
 一番大切な物が。
 そして………友達も

 三日が過ぎた……。俺はどんどん完全な天使になってきている。まず、お腹が減らなくなった。次に、空を見上げると、天界の場所が分かる……。

 そして、事件が起こった。

 ――悠貴、失踪事件
 悠貴は家に一枚に札と服を残していった。その後の行方は警察が二十四時間体制で捜索したが結局見つからなかった。おそらく、霊能力者の使者と一緒だろうけど、何も家族に言っていかなかったのは変だ。
 この時俺がもっと心配していれば良かった……そう思ったのは何ヶ月か先の事。悠貴ごめんな?お前はずっと苦しんでたんだよな?助けを待ってたんだよな?本当にごめん。
 そして俺はあいつのことを憎む……。悠貴のことを、あれだけ苦しませたお前をな。裏切り者のお前を……。


 美しき羽を持った、女性と誰かが戦っている。
 すごく小さい天使だ。
 女性は杖を持ち呪文を唱えている。
 でも小さい天使に何らかの攻撃を受けて死にそうだ。
「おやめなさい!! ジャー フェニックス!!」
 ジャー?
「っは!」
 夢を見ていた。
 最近、ジャーの姿を見ない。1人で天界に行ってもジャーの居場所を知っている天使はいない。俺はとりあえず戦闘服を買った。その服はとにかく動きやすく結構気に入っているのだ。
「岩上裕樹、今すぐ、神の間に来なさい」
 何らかの魔法で、みんなに神の言葉を聞くことが出来る。
 そして今、俺も聞こえた。
 何だろう?
 とりあえず、行ってみることにした。神の間に行く門で受付をすませ、長い廊下を猛スピードで飛んでいった。
 一応ノックをして神の間に入った。
「失礼します。いったい何のご用でしょうか?」
「うむ。お主に聞きたいことがあるのでの。いきなりですまぬな」
「いえ。大丈夫です」
「では話そう。ジャーのことを」
「ジャーのこと……ですか?」
「そうじゃ」
「ジャーに何かあったのですか?」
「話すとずいぶん前のことになるが聞いてくれ」
「はい」
「天界が出来たのは数兆年前のことじゃ。実際、天使が出来たのはその数千年後の事じゃがな。その当時の神が、人間界を守るためにバリアとして宇宙を張ったのは知っておるな? だがそのバリアに当時の神は『光の穴』を付けた。その理由はバリアを何らかの理由で破壊せざるを得なかった場合に破壊するために作られた物じゃ。その穴は、数世代後の神によって、大きくされた。それが『ラリー』じゃ。何故なのかは分からないが、なんらかの理由があったのじゃろう。その扉が今ある物の手によって、さらに、大きくされようとしている。それ以上大きくなったら、悪魔の大群が攻めてくるだろう。そしたら、人間界、天界、共に消滅されるだろう。それを食い止めようとしているのが、天使と霊能力者だ。霊能力者の存在はほとんど分かっていない。文献によると、昔、天使も霊能力者も天界に住んでいた。しかし、意見が違い、戦争が起こったのじゃ。そして、勝ったのは天使。負けた霊能力者は人間界に下りていったのじゃ。それくらいしか霊能力者のことは分かっている事はない」
「……破壊しようとしているのは誰なんですか?」
 答えは分かっていたが、おそるおそる聞いた。
「ジャー……じゃ」
 恐るべき事実に驚きはあったが恐怖はなかった。と言うより、話が良く飲み込めていない。凄く話が長くて、いや、それ以上の何かがあったのかもしれない。
「ジャーは何のためにそんなことを?」
「わからん。あやつは何を考えておるのか…世界を滅ぼしたら、やつも死ぬのじゃ。それを知っての上でなのか」
「手だてはあるのですか?」
「……ラリーを完全にふさいでしまえばよい。しかし、そんな力はわしにはないのじゃ。今までの神もそれはできん。しかし、一つだけ手だてはある」
「その手だてとは?」
「守護者を集めるのじゃ。七人の守護者を。『闇の守護者』『光の守護者』『空の守護者』『氷の守護者』『太陽の守護者』そして『虹の守護者』。この六人はそれぞれ、闇、光、空、氷、太陽、虹の翼を持っている。お主は虹の事をしらんだろう。虹の翼を持つ者は千年に1人しかいない。それが分かったのじゃ、お主じゃよ。裕樹」
「俺ですか!? 俺は光じゃないんですか?」
「そうじゃ。ジャーのやつは、何らかの理由で、光だと嘘をついたのじゃろう。…ゆるせん」
「じゃあ、俺は……ねらわれたりするんじゃないですか?」
「おそらくねらわれるじゃろう。それにお主は虹の守護者じゃ。だが、虹の羽を持っておるなら、立ち向かえるじゃろう」
「戦うのですか?」  
「そうじゃ。前の神が残していった、この杖をお主にさずけけよう」
すると闇の光から、杖が出てきた。一番上に、虹色に輝く丸い宝石がついている。ここから魔法をくりだすのだろう。
「これを俺に……?」
「そうじゃ。この杖と共に、守護者を集め、ここに来なさい。半年…半年で頼むぞ。世界はお前と守護者に託されたのじゃ。生きなさい。虹色の翼と共に世界を救うのじゃ!!」
そう神が言うと、今まで、光で出来ていた翼が、本物の白い翼に変化した。
そして、その後翼が虹色に輝きだした。
虹色の翼と共に、六人の守護者を集める…世界は俺の肩にかかっている。
悠貴、母さん、父さん、みんな、世界の人や天使、そしてジャー、みんなの未来を虹色に変えてみせる!


























第四章太陽の守護者……ルル
 あれから、二日ほど過ぎた。俺は天使達に色々聞き回ったのだが、手がかりが全くない。ただ分かっているのは太陽の守護者は女で、ジャーよりも小さいという。他の守護者のことは全然分からないので、太陽の守護者を捜すことにした。
 魔法は前より結構使えるようになった。神が俺に魔法の本をくれた。虹の翼を持つ者は全ての属性の魔法が使えるらしい。でも魔法は「フェニックス イノセンス」という、イメージした魔法が使えるという便利な魔法しかつかわない。でもこの魔法は、魔法より符術に近いらしい。
「フェニックス イノセンス!!」
 今俺がイメージした魔法は守護者の場所が分かるようにする、現在の場所を調べる魔法だ。昨日からずっとやっているのだが、何回やっても塔なのだ。赤く光るとてもでかい塔、これがなんなのか全く分からない。
「はあ……」
「ファイヤーウェーブ!」
 誰かが攻撃してきた。
 とてつもなく、熱い炎の波が押し寄せてくる。
 ここは、天使があまり来ない場所……今も誰もいない。
 戦うしかない。
 相手は女で凄く小さい。
「……もしかして太陽の守護者?」
 波に飲み込まれそうだ。
「フェニックス イノセンス!」
 光の盾をイメージした。
 何とか炎の波は防ぐことが出来た。
「ファイヤーランス」
 背後から太陽の守護者が襲いかかってきた。
「ぐあああ!」
 背後から来たのは炎の槍だった。
 炎の槍は見事に貫通した。
 熱く固い槍はどうあがいても取れない。
「……フェニックス………イノ……セン……ス」
 意識がなくなる直前で俺は体が治療される魔法をかけた。そして、杖の宝石が輝き始めた。どんどん痛みが取れてゆく。 そしてついには炎の槍を破壊した。次で相手を気絶させる…出来なければ俺は終わりだ。
 本に書いてあった……剣からの光と剣圧で相手を倒す技…ライトソード。
「は、は……ムーンフラッシュ!」
「そして、フェニックス イノセンス!」
ムーンフラッシュで光の剣を作りその剣をフェニックス イノセンスで本物の剣に固定させた。
「はぁ……ライトソード!」
 剣から虹色の光が輝きだす。
「きゃああああ!!」
 太陽の守護者は大きな声で叫んだ。
 虹色の光が太陽の守護者の体にどんどん傷を入れていく。
 光だけで、もうぼろぼろだ。
 そして俺は走り出した。
「はあ! せいやっ!」
 太陽の守護者の体に剣を切り刻む。
 すると太陽の守護者が倒れた。
「はあ、はあ……やった……」
 だが太陽の守護者の体がどんどん燃えていく。そして、一枚の紙が出てくる。それを俺は読み上げた。
「私の名前はルル。太陽の守護者よ。君の倒したのはルルの十分の一の力しか持たないコピー人形だよ。ジャーの事は知っているよ。ルルを仲間にしたければ、あなたのいるところから、北に四○○メートルほど進んだところにある塔だよ。ルルは待ってるからね」

 衝撃の事実……俺が太陽の守護者の十分の一の力しか持たないやつに負けそうだったと言うこと。己の無力さをこの時に俺は知った。

 塔に向かって歩き続けて1時間が経った。だが何故か未だに塔には着かない。というか近づいた気すらしないのはなぜだろうか。俺には1つの最悪のパターンが頭によぎった。それは俺は実は全く進んでいないで幻覚に惑わされているというものだ。もしもこれが本当だったとしたら最悪だ。何故ならそれが本当だったら俺の体力だけが奪われてしまい俺は疲れた状態でルルと闘うことになるかも知れないからだ。現に俺は現在凄く疲れている。この状態で闘ったら俺に勝ち目などあるわけがない。ただでさえ俺はやつのコピーに負けそうになったのに……。
「ホーリーイノセンス」
 俺は幻覚で俺の脳を騙して、疲れを抑えた。
「アクアフェザー!!」
 鋭く尖った水が俺の方に向かってくる。
「ムーンフラッシュ!」
 俺は光の盾を作った。
「フェニックス イノセンス」
 俺は光の盾を固体化させた。
 なんとか攻撃は防ぐことが出来た。
 俺は空に舞い上がった。
「はあ!!」
 羽を大きく羽ばたかせて風を作り個体化させた。
 強靱な風の刃が俺の近く以外の物を全て切り刻んだ。
 林が全てなくなり一人の少年が出てきた。
「ジャー……」
「バイバイ。岩上裕樹くん」
 ジャーはそう言って笑い出した。
 それと同時に俺は闇に包まれた。

 夢を見ていた。悲しい夢を。みんな泣いていた。悠貴もお袋も親父も。そんなに悲しい顔しないでくれよ。俺どうしたらいいか分からなくなっちまうじゃねーかよ。そこに一人の女がやって来た。誰……? 俺に手を差し伸べている。これは夢なんかじゃない。現実なんだ。変わりようがない現実なんだ。




















第五章差し伸べられた手
 差し伸べられた手の主が誰だか最初分からなかった。だけどだんだん誰が手を出してるのかが分かった。
「……お袋?」
 なんで母さんがここにいるのか分からない。
「裕樹……」
 美しい羽が生えた母さんがそこには居た。
「ホーリージャベリン」
 光で俺は包まれた。
 懐かしいぬくもりだ。
 俺は涙を止めることが出来なかった。
 これが母さんの温もりなんだ。
 長い間忘れていた。
 母さんなんだ。
 この人が世界に一人しかいない。
「なんで、泣いてるの? ……裕樹。よく一人で頑張ったわね」
「お袋……。俺……」
「裕樹はよく頑張ったわ。でも安心して。母さんは空の守護者よ。7人の守護者の一人。そして、お父さんは闇の守護者。お父さんは今、氷の守護者であるリーを捜しに行ったわ。みんなあなたの味方よ」
 母さんと父さんが天使?
 しかも二人とも守護者だって?
 これには俺も驚愕した。
「…………」
 俺は呆然とするしかなかった。それ以外にどういう事をすればいいのかは俺には分からなかった。俺は天使。人間ではない。そう思っていた。しかしそうではない。俺は生まれたときから天使だった。その運命は決まっていたのだ。
「さあ裕樹休んでいる暇はないわ。ルルの所に行きましょう」
「でもルルはどこに?」
「もう気づいていると思うけど、ここは幻覚で出来ている。いくら歩いても無駄なのよ。だからこうするの。……ホーリー!」
 母さんは符術を使った。
 すると一面に光が出てきて、目の前には塔が出現した。
「ここが、ルルのいる……」
「そうよ」
 俺たちは塔へと入っていった。

 塔の中は螺旋階段になっていて時々部屋が現れる。それくらいだ。そして俺たちは、7つ目の部屋のドアを開けた。するとそこにいたのは赤毛の少女……ルルだった。
「ルル……久しぶりね」
 最初に口を開いたのは母さんだった。
「お袋……久しぶりってどういう事だ? 前にも会ったことがあるのか?」
「ええ、とは言っても最後にあったのは十三年前、そうあなたが生まれた時よ」
「瑠璃さん……お久しぶりです。まさか岩上裕樹が瑠璃さんのお子さんだったなんてね」
「それよりラリーの話は聞いた?」
「いえ……ラリーに何かあったのですか?」
「ええ……ジャーがラリーをこじ開けようとしているようです」
「そんな馬鹿な! そんなことをしたら……ジャー自身どうなるのか分からないのに」
「そう、悪魔に感情なんてない。全て破壊し尽くす。それが、悪魔なのですからね。行きましょう」
 俺たちは羽を広げて向かっていった。
 父さんの場所へと……羽ばたいていった。

 父さんを目指し始めてから軽く一週間は経ったと思う。俺たちは今人間界にいる。魔術で完全な人間の姿になっているのだ。俺たちの記憶は全ての人々から消えている。俺たちは人間界にいてしかも人間の姿をしているので、今までの空腹が襲ってきた。俺と母さんはまだ一ヶ月くらいだから何とかなったが、ルルは何十年分の空腹のようで、辛そうだ。だから俺たちはレストランに向かっている。
「ここよ。裕樹、ルル」
 懐かしい場所だった。
 小学生の時にはよく来たのだが今となってはほとんど来ることもないのだ。
「じゃあ、ふんわり卵のオムライスの大盛りが三つと、モッツアレラチーズのポモドーロの大盛りが四つ、それにカルボナーラの大盛りが二つでお願いします」
 料理が運ばれて来ると、もの凄い量だった。
 机を埋め尽くす料理の中で俺は、オムライスとスパゲッティ二つをもらった。
 口に運ぶ久しぶりの食事と懐かしい味に俺は感動した。
「美味しい……」
 自然とその言葉が出てきた。
「美味しいです」
 ルルもそう言った。ルルは実は結構おてんばで面白い。俺たちの会話を盛り上げてくれる。
 ――何故俺たちは人間界にいるか――
 父さんは人間界で氷の守護者を捜しているらしい。
 だから父さんと合流するためにここにいるのだ。
 あと俺は数時間で一端ルルと共に天界にもどる。
 神に報告がてら修行をしてくるのだ。
 母さんには俺の符術で居場所が分かるようにした。
 俺たちは料理を綺麗に食べた。
「お袋……俺たちそろそろ天界に戻らなきゃ……」
「そうね。そろそろ戻らなければね……」
「お袋……気をつけろよ。くれぐれも無理はするなよ」
「分かってるわ。勝てないと思ったらすぐに逃げる。約束するわ」
「なら、いいけど……」
「祐くん。そろそろ行こう」
 祐くんとは、俺のことでルルがそう呼んでいるのだ。
「ああ……。じゃあな母さん」
 俺たちは店を出た。
 店を出るとすぐに魔術を解放して天使の姿になった。
 そしてそのまま天界にとんだ。
「ルル……ところで俺の修行って誰が担当するんだ? まさかお前じゃないだろう? お前は太陽の守護者だもんな?」
「うん。あたしじゃないよ。あなたに教えるのは、セシリアという女天使。あとで紹介する。でもその前に神のところに行かなくてはね。」
 話している間にあっという間に天界についた。
 そしてそのまま神の間に向かった。
 凄く長い通路を俺たちは猛スピードで飛んでいった。
 そして神の間に着いた。
「失礼します」
「神……岩上裕樹でございます。守護者を集める任務のご報告に参りました」
「おう。お主であったか。では聞こう」
「はい。俺はまず太陽の守護者ルルを探そうと考え森に出ました。しかし何者かの幻覚によってそれは困難になりました。そこをジャーによる攻撃を受け気絶したところに俺の母である空の守護者が俺を助けルルの元に向かったのです。現在母は人間界で父の事を捜索中です。また、父は氷の守護者を捜しております。俺は修行をすべく天界に戻りました。」
「そうであったか。捜索は空の守護者達に任せてじっくり修行することじゃのう。それとルル……三十年たらずの任務ご苦労であった」
「光栄にございます」
「では失礼致しました」
 俺たちは神の間を後にした。












第六章修行
「ルル? ところでセシリアとか言うヤツはどこにいるんだ?」
 俺の修行に付き合ってくれるというセシリアという女天使にはまだ会ったことがないのでどういう人なのか見当もつかない。
「セシリアは今頃、天湖にいるんじゃないの?」
 天湖とは天界にある湖のことでよく修行などに使われると聞いたが俺もよく知らない。
「とりあえずその天湖とかいう場所に行けば良いんだな?」
「うん。じゃあ、あたしの手を握って。符術で天湖に飛ばすから」
 符術で瞬間的に移動することは、移動場所に別の天使に符術をかけていてもらわなければいけない。つまりセシリアに符術をかけてもらうのだ。
「リディアリューゼント」
 すると俺たちは光に包まれた。その光がだんだん戻ると景色が変わっていた。そこには輝くほどに澄んだ美しい湖があった。そしてその隣にはピンク色の目と髪で雪のような肌の女性がいた。
「私はセシリア=スプリング。あなたの修行をさせていただきます」
「俺は岩上裕樹です。よろしくおねがいします」
「もう修行は始めていいんですよね? ルル」
「ええ」
「では裕樹くん、修行を始めます。では、まずは魔力を放出してください」
「魔力を放出……」
 俺は言われるままに魔力を流した。前にジャーに習った通りにやった。集中をして、心にペガサスをイメージする……。すると杖から莫大な力が出るのを感じた。
「うわっ!」
羽を開いていないのに俺の体は浮かんだ。これも魔力のせいなのだろうか。
「それでよいのです。ではその魔力を杖の先端の魔石に流してください」
 体中にわき上がってくる魔力を杖に注ぐようにイメージした。だがなかなか杖にまとまらない。
「魔力のコントロールが出来なければ魔術など何も出来ません。光魔法とは、自然のあらゆる物を創造し、それを攻撃に使う。すなわち自然を作り出すだけの魔力と集中力が必要なのです」
俺は杖に集中して、魔力を注いだ。すると浮き上がっていた体は元に戻り魔石が輝きだした。
「お見事です。裕樹くん。では魔術に入ります。杖に集中させた魔力はそのまま留めておいてください。魔術はイメージが大切です。その上光魔法は呪文の正確さと集中力が必要です。では呪文を正確に聞き取ってください。リアンルーゼル!サンダーランス!」
 目の前には巨大な雷をまとった槍が出現した。そこにルルがやって来た。そしてルルの周りには魔法陣と言う名の巨大な陣が出現した。そしてルルの頭の直前まで迫った。
「レラトリックスレストレンジ!」
 ルルが叫ぶとルルの頭上に巨大な炎の盾が出現し槍は落ちた。しかし槍が落ちた瞬間に地面に電撃が走り地割れが起きた。俺は、危ないので空に上がり、上から見ていた。
「裕樹くん降りてきて」
 セシリアがそう叫んだ。
「どうだった。天使同士の戦いを見た感想は?」
「ただ驚くしかなかった。それに近くにいた俺も巻き沿いを食らいそうになるくらい……」
「そう……。でもこんな戦いはまだ序の口よ。これくらいの魔法しか知らなかったら悪魔やジャーとは戦えないわ」
 ジャーやルルはあれでも未だ力を秘めているというのだ。やはり俺なんかじゃジャーには勝てないのではないか。そう思い始めてしまった。
「今のままじゃ勝てないの。だから修行して強くなるのよ。さあ、呪文を」
「ああ。…………リアンルーゼル!! サンダーランス!!」
すると目の前に巨大な魔方陣が出現した。そこに先ほどと同じ巨大な雷をまとった槍が出現した。
「意識を集中して。サンダーランスを動かすようにイメージして」
サンダーランスは少しずつ上に動き出した。
「あの大きい岩にぶつけなさい!」
 サンダーランスは少しずつだが大きな岩の方に動き出した。サンダーランスにさらに魔力を流し込むとスピードが増し、遠くにあった大きな岩の方へあっという間に行った。サンダーランスは岩にぶつかる前に雷が放出されて岩は粉々に砕け散った。
「そうよ。そのイメージを忘れてはいけないわ!」
 俺は自分でも驚いた。まさか自分があんな魔法を使えるなんて。
「この魔術書を渡すわ。杖が無くてもある程度まではこの魔術書で使える。魔術書に書かれている魔法を徹底的に覚えるのよ。それとその杖邪魔でしょ? 呪文で消したり出したりできるから一応教えておくわね。クリアエアー!」
 すると俺の杖は一瞬で消えてしまった。
「出現させようと思えばいつでも出現させることは出来るわ」
 俺は杖を出現させた。
「クリアエアー!」
 すると杖は消えた。
「じゃあ今日はこの辺で終わりにしましょうか。お風呂に入りましょう」
「でもお風呂なんてどこに?」
「無いなら作るのよ。じゃあちょっと上に上がってて」
「ダストホール!」
 大地が割れて穴が出現した。
「グローリーレイン! エルファイヤー!」
 穴に水が溜まり上から炎の塊が水に落ちた。すると一瞬で程よい湯気の出るお湯になった。
「魔術もうまく使えばこんなことも出来るのよ」
「クリアエアー!」
 俺は唱えた。なぜかというと、体を隠すためだ。クリアエアーで腹から下を隠した。そして穴に堂々と入った。セシリアは魔術で猫になり、ルルは体は子供なのでそのまま入った。
「痛い! ここのお湯痛いよ。セシリア」
「ここのお湯は傷を治してくれるの。グローリンレインはその名の通り恵みの雨なのよ。痛いのは傷が治ってる証拠」
 本当に細かい傷しか付いていなかったが、傷が治ってくれるというのはやはりいい。

 悠貴……今お前はどこで何をして、何を思ってる? やっぱり、お前がいないとつまらないよ。このお風呂のこと話したいよ。今どこにいるんだよ。悠貴。悠貴はあの日突然失踪してから姿を現していない。悠貴は霊能力者だ。だから霊能力者としての任務を果たしているのだろうか。

「龍田悠貴」
 ――場所と時間は移り悠貴が失踪した夜まで遡る。
「裕樹。お前これからどうしようとしてるんだ? お前このまま人を捨てるのか?」
「そうだよ。悠貴くん。彼はこのまま人じゃなくなる。そして悠貴くん。君も人じゃなく、僕の玩具になるんだ」
 幼い声だった。その声は忘れない。
「ジャー……。お前裕樹を、」
「そうだよ。裕樹君もこの世界もみんな壊すんだよ。でも、ただ壊すんじゃ面白くないでしょ? だからね、裕樹君のことは君に殺してもらうんだ。より面白いゲームにするためにね。ディクトーリオ セプレント」
悠貴は光の縄で縛り付けられた。
「じゃあ始めよう。僕の可愛いお人形さん」
「お前の好きにはさせ、」
「霊能力者の端くれでもない君に何が出来るんだい?」
 ジャーは悠貴の額に人差指を当てて魔力を流し込んだ。
「じゃあ行こう。悠貴」
「……はい。親方様」
 雨の夜だった。ジャーは苦笑した。
「これからは僕の世界になる」
 ジャーの笑いは最高潮に達した。
 そして世界は崩壊へとカウントダウンを始める。
 世界崩壊まであと365日。

 そして時は移り再び天湖に移る。俺たちはお風呂から出て再び修行を始めていた。修行と言っても既に実戦練習だ。魔術書を読みながら魔術を使うのだ。しかし杖を使わないと大幅に魔力が弱まってしまう。でも魔術を知らないから仕方がないのだ。
「マグネット! ライトニングボルッテクス!」
 天湖の水を大量に引き寄せてそこに雷を流し込んだ。なんだかんだ言って俺は雷系の魔法が得意なようだ。水の水圧と雷の電圧で一気に押しつぶす。
「ユーラフィーリング!」
 セシリアの光魔法によって攻撃が吸収された。そして吸収された水は俺の方へと戻ってきた。とりあえず俺は空高くまで飛んだ。「さて、どうするか」と考えている間に攻撃は迫ってきた。俺は攻撃から逃げながら魔術書の中から使えそうな魔法を探した。
「……攻撃の消滅。あった」
 攻撃ごと消滅させる魔法を俺は見つけた。しかしその魔法は呪文が長い上に魔力をかなり消費する、いわば諸刃の剣のような魔法だった
「だけど仕方がないか。天界に君臨する神よ。闇に光を与え、光に闇を。創造主の成すべき光を我が力の源に変え我が身を守らんとするべし。ホーリースレラリガクト!」
呪文を唱えた瞬間に空間に裂け目が出来、巨大な魔法陣が空中に現れた。攻撃はその裂け目の中に入り裂け目が魔法陣によって封印された。
「やったぞ……」
「裕樹君……。ホーリースレラリガクトを使うとはね。でもその呪文はあまり使わない方が良いと思う。その呪文を使ったら最後、魔力を回復させるには1日はかかる。だからその呪文はね、何か大切な物を守りたいときに使う呪文なの」
「大切な物……。世界とか?」
「そう。ジャーからこの世界を守るのよ。でも裕樹君。この世界には絶対の魔法と言う物があるの。例えばそう。絶対に相手に当る攻撃とか。でもそういう魔法の中でも最強の魔法があるの」
「…………。絶対に人を殺める魔法とか?」
「そう。その通りよ。裕樹君。でもその魔法を使ったら最後、術者は幸せにはなれない。そういう魔法があるの。その他にも、絶対服従の魔法とかね」
「ジャーはそういう魔法を……」
「でもね、当然リスクは伴うわ。絶対魔法を使ったら、使うたびに寿命は半分になっていくの」
「ジャーが使う可能性低いって事か?」
 セシリアは首を横に振った。
「過去に一人、不死の天使がいた。彼は天使と霊能力者のハーフだったの。基本的に種族の違う物同士の妊娠は流産に終わる。でもね、たまに生き残る赤ちゃんがいるの」
「それがジャー?」
「その通り。でもハーフは強大な魔力を手にする異形種よ。ジャーのように狂ったね」
「じゃあ、ジャーはいくらでもその魔法を使えるって事か?」
「確定はしてないけど。ジャーの経歴を詳しく調べると大体の事は分かるわ」
「じゃあ、ジャーには勝てないんじゃないか?」
 冷静な口調だったが俺の心の中は乱れていた。
「いえ。絶対に何か勝てる方法があるはずです。それが何であっても私たちはそれを見つけなければならない。そして…………そろそろ時です」
「時?」
「そう。裕樹君。あなたはこの数ヶ月でかなり強くなったわ。自分では分からないかも知れないけど。そこら辺の悪魔は余裕で倒せるはずよ」
「…………」
「明日の朝にはここを出ましょう。瑠璃たちの所に戻るのです」
「母さん達はいま何をしているのだろう」
「おそらくは闇の守護者を発見したでしょう」
「そうか」
「心配では無いのですか?」
「ああ。母さん達が負ける訳がない」
「たしかに彼女たちは最強の天使たち。でもね、ジャーはその上を行くの」
「だったら俺たちが力を合わせれば、ジャーにも勝てるかも知れないだろ。俺たちは勝たなきゃいけないんだ。勝ってみんなを守らなきゃいけないんだ」

 ――ねえ瑠璃さん。あなたの息子は立派に育ってるよ。だから瑠璃。負けちゃ駄目。絶対に――









第七章友達との戦い
 俺たちは修行を終えて、とりあえず王都に戻ろうとしていた。王都というのは俺たちのよく行く、神の間などがある天界の中心部のことだ。俺たちは王都に戻ってから魔術で母さんの場所を特定して人間界に戻るのだ。天湖に来たときは転移の符術で来たため瞬間で来れたがあの時とは訳が違う。そもそもあの符術は移動場所で仲間が魔法陣を張っておいてくれないと駄目なのだ。
 というわけで俺たちは今王都に向かっている。王都に行くには数々の山や森、それに谷を越えなければ行けない。来れること自体は天使だからなんら問題ないがその距離に問題がある。時速二六〇キロで進んだとしても丸七日はかかるらしい。休みを取りながら少しずつ進んできたのだ。
「セシリア。瑠璃さんについての情報は全く入ってないの?」
 これはルルだ。
「ええ。人間界との通信は膨大なノイズが入るから無理なのよ。そもそも天界は人間界の空に入り口があるだけで別世界に存在するの。お互いに通信の限度は居場所の特定くらいだわ」
「そう。何か無ければいいけどね」
「大丈夫よ。瑠璃さんなら。でもジャーもどう手を打ってくるか分からないわ。そもそもはっきりとした彼の目的も分かっていないもの」
 裕樹はその会話を平然と聞いていたが、彼の心の中では、すごく心配だった。事実裕樹は、ルルを探す途中にジャーに奇襲を受けているのだ。
「とにかく急ぎましょう」
 俺たちは更にスピードを上げて飛行を続けた。
「風が痛いよ。セシリア」
 これは俺だ。風は強く吹けばある意味の凶器と化すのだ。天使の攻撃にも羽を思いっきり羽ばたかせて風の斬撃を作る技があるくらいだ。
「急いでいるのだから仕方がないわ。我慢しなさい」
 そうセシリアは言っていたが俺は我慢する気などさらさら無かった。俺は魔術書を開いた。だが風でなかなか安定しない。
「スピアルスルティア!」
 俺はなんとか開き呪文を唱えた。すると俺の目の前には透明な光の膜が出現した。それによって何とか風が俺に当るのは防ぐことが出来た。
「裕樹くん。こんな所で無駄な魔術を使ったら魔力が足りなくなるわよ?」
「大丈夫だよ。まだ十分に残ってる」
「ならいいけど」
「…………。もうすぐで王都に着くよ」
 ルルが言った。
「もうそんな所まで来たの? まだ六日よ。結構なペースで来たようね」
「なんか魔術を使った意味が無かったような気がする」
「まあいいわ。とりあえず着いたら戦闘の準備をすぐにしてね」
「もしかしてセシリアも一緒に闘うのか?」
「当たり前じゃない! 何のためにここまで来たのよ」
「…………」
 俺は杖を出現させた。
「クリアエアー!」
 そして魔術書を俺は消した。
「戦闘準備万端って訳ね」
 
 王都に着くとまずセシリアは魔法剣を出現させた。そしてルルはそのままの格好だ。どうやらそれがルルの戦闘スタイルらしい。俺は張り切って人間界に向かおうとしていたらセシリアに止められた。なんとセシリアはまずは体を休めるのに寝ろと言われた。まあセシリアの言うことにも一理あると思う。というわけで俺たちは天界の旅館に行くことにした。旅館といってもこれから戦闘に行く天使の休憩所みたいな物だ。
「ここはこれから任務に出る天使のために最高のおもてなしをいたします。何なりとお申し付けください」
旅館に入るとそう言われた。だけど俺は食事を済ませるとすぐに自分の部屋に行った。一人になりたかった。
「……天使か」
 そう呟いた。つい数ヶ月前まではみんなと平凡だけど充実した生活を送っていた。でももう俺がその生活を取り戻すことはない。天使になったら最後人間に戻ることは不可能だ。だからこの戦いが終わっても普通の生活を送ることは出来ない。 そう思うと自然と涙が溢れてきた。
――悲しいのですか? 裕樹。
 頭の中に誰かの声が響いてきた。
「誰だ!」
 俺は杖を持った。
――私はあなたの魔力そのもの。
「魔力そのものだと? 魔力には独自の意志があるのか?」
――そうです。ですが魔力との交信ができる天使など本当に一部の天使。今まで私は幾度となく裕樹に話しかけた。でもね、今まで私の声があなたに届くことは無かった。
「…………」
――あなたはこの瞬間から真の天使となった。ルルやあなたの母のようにね。裕樹くん。あなたはね選ばれた天使。天界があなたに戦えと言ってるのです。だからあなたにはこの力が授けられたのです。
「この力?」
――魔力との通信が出来る天使は誰かを強く守りたいと思ったときに魔力が大幅に増大するのです。
「魔力が増大……」
――では裕樹。またいつか。
「待て! おい!」
 そう言っても返事は無かった。そしてこれが俺の魔力との始めての交信をした夜だった。
 「勝手なやつ」と思ったが俺は明日に備えてベッドに横になった。するとあっという間に夢の世界へ旅立った。
 目が覚めた。まず起きて俺は顔を洗った。そして長い髪をばっさりと切って何処にでもいそうな普通の男の子の髪になった。前髪はまだ長かったがこの際もう気にしない。だいたい闘うのに邪魔だから切っただけだ。部屋の隅に置いてあった杖を持った。試しに魔力を放出すると体が浮き上がった。そして魔力の放出を止めるとそれは元に戻った。力は十分に回復していた。俺は天使の戦闘服に着替えた。そして俺はセシリアの部屋に行った。
「入るぞ」
 一応ノックをしてセシリアの部屋に入った。
「ルル。それと……どちら様ですか? その髪、もしかしてセシリア?」
 セシリアは背後から見たら分からないような格好をしていた。背中に魔法剣が掛かっていて鎧を着ている。鎧と言っても簡易的な物で重装備ではないが。
「そうよ。さて、じゃあみんな行きましょう」
 そう言ってから俺たちは旅館をあとにした。そして人間界と繋がっている場所まで行った。行く途中誰も、話さなかった。その場所にはすぐに着いた。
「じゃあ、これから母さんを捜すからちょっと待って」
 俺はそういうとすぐに符術で母さんを探した。
「フェニックス イノセンス!」
 人間界に向かって魔力を放出した。母さんは思わぬ場所にいた。
「瑠璃さんはどこにいるの?」
「何故か、俺の家」
 俺は笑ってしまった。探すまでも無かったのだ。
「裕くんの家にいるの?」
「そうみたい」
「じゃあ行こう」
 俺たちは時間短縮のために飛ぶのではなく、天界からそのまま人間界に落ちていった。馬鹿にならないスピードだ。でも相当距離があるから、三分くらいは経った。すると地上が見えてきた。
「羽を開いて!」
 これはセシリアだ。俺はすぐに羽を開いてぶつかる直前で空中に浮かんでゆっくり降りた。
「裕樹君の家に急ぎましょう」
 そこから俺の家までは飛んでいくことにした。飛んだら一分も掛からずに家に着いた。俺の家は何も変わらずにそこにあった。
「なんか変な感じ。ここが俺の家って感じがしない」
 誰もその言葉には反応しなかった。俺たちはそのまま家の中に入るとたくさんの人の会話が聞こえた。
「母さん? ……父さん?」
 そこにいたのは父さんと母さんだけではない。俺とルル、それに母さん、父さんを含めた六人の守護者が全員揃っている。
「裕樹か。お前も天使になったんだな」
 黒色の天使は俺にそう言った。彼は他でもない、裕樹の父親である岩上陸斗だ。父さんは笑顔で俺を出迎えてくれた。でも俺はその言葉に返す言葉がなかった。
「もしかしてセシリアか?」
「ええ。その顔は忘れないわよ。陸斗」
「裕樹のことありがとう」
「いえいえ」
「ルルもありがとう」
「陸斗かあ……何十年ぶりだろ?」
「覚えてないよ。そんなこと」
「ちょいちょい待ってくれよ! なんか俺たちの事忘れてないか?」
 彼は氷の守護者であるレスベック D リーだ。
「あなたは?」
 これは俺だ。
「俺はレスベック D リー。氷の守護者だ。よろしく。虹の守護者さん」
「リーでいいかな。俺は岩上裕樹。裕樹でいいから」
「ちなみに私はセレナ。光の守護者。よろしくね」
「よろしく。セレナ」
「要はこれで守護者が揃ったってことだろ?」
リーが言った。そうこれで守護者が全員揃ったんだ。
「さて、じゃあ神の所に行きましょう。魔法使うからいったんみんな外出て」
 全員が外に出たことを確認してセレナは魔法を使った。
「スピアルスティア!」
 地面に巨大な光の膜が出来た。
「ディガクト!」
 一気に光の膜が上に上がっていった。かなりのスピードだ。二、三秒で天界まで着いた。セレナはにやりと笑った。
「どんなもんよ」
 そう言ったセレナが凄く格好良く見えた。
 天界に着くとすぐに俺たちは神の間に行った。相変わらず長い通路がそこにはあった。俺が羽を開くとセレナが止めた。
「まさか……」
「スピルアスティア!」
 俺たちの後ろに光の膜が現れた。
「レスティー!」
 光の膜は一気に神のいる方に進んだ。今回は一秒も掛からなかっただろうに神の間の目の前に俺たちはいた。セレナはまたにやりと笑ってこっちに向かって親指を立てている。
「失礼します」
 父さんがそう言ってドアを開けた。
「守護者の召集、完了致しました」
「陸斗か。おう! 皆、よう集まってくれた。礼を言うぞ。そして裕樹、ご苦労様」
 俺は軽くお辞儀をした。
「さて早速じゃが、皆にはラリーに行ってもらおう。皆の力でラリーを塞ぐのじゃ」
 神はそう言うとすぐに準備を始めた。隅に置いてあった杖を持ってきて呪文を唱え始めた。
「陰想蓮日童賛美惚け講義可否受名輪雛寝美白奏死場品子川柳。空間よ、開け!」
 神がそう言って膨大な量の魔力を杖に集め巨大な魔法陣を空中に出現させた。今まで見た中で最大の魔法陣だ。その魔法陣は空間をねじ曲げて、空間そのものを開いた。
「さあ、皆ラリーを塞ぎに行こう。もちろん私も同行する」
「……そうはさせませんよ。神様」
 声の主はジャーではない。この声の主は……。
「セシリア? 何を言っているの?」
 俺は苦笑してそうセシリアに言った。
「あんた達って本当に馬鹿ね。私はねジャー様のスパイ。あなた達をここまで導くのが役目だったのさ。守護者全員と神のいるこの状況を作り出してね。さてさて、では登場して頂きましょうか。転移!」
 セシリアがそう叫ぶとそこに魔法陣が出現し人影が現れた。そこにいたのはジャー。そして。
「悠貴!! なんでお前ジャーと一緒に居るんだ」
「ジャー……この裏切り者目が! 私がここで殺してやる!」
 神が叫んだ。
「神さまあ。ずいぶんお怒りになられているようで」
「セルディア!!」
 神はそう叫んだ。すると空間から二匹の龍が出現した。
「行くのじゃ!」
「神様。そんなことしても無駄だよ? 天界に君臨する神よ。闇に光を与え、光に闇を。創造主の成すべき光を我が力の源に変え我が身を守らんとするべし。ホーリースレラリガクト!」
 二匹の龍は魔法陣によって消滅した。
「さてさて、じゃあ、死んでいただきましょうか。孤独の中に光る希望を闇に変え、全ての者をこの世から消し、在るべき姿の世界へと変化させよ。エルベラス!!」
「エルベラスだと? 貴様!!」
「ベルディア!」
 母さんがそう叫んだ。すると母さんの前に巨大な魔法陣が現れ俺たちの周りにバリアが張られた。
「瑠璃……。お前」
「一体どうしたって言うんだ?」
「お前の母ちゃんは結合魔法を使ったんだ」
 リーが言った。
「結合魔法?」
「いくつかの魔法を組み合わせて使う魔法のことだ。しかもお前の母ちゃんは絶対消滅の魔法それに言霊省略の魔法と魔法の立体変化を結合させた。絶対魔法と何かを組み合わせるなんて命に係る」
「母さんは大丈夫なのか?」
「おそらく。魔力は当分回復しないだろうが大丈夫だ」
「さっきの魔法の結合で何が起こったんだ?」
「まずジャーの使ったエルベラスは絶対相手を殺す魔法だ。絶対魔法同士の結合は不可能だからエルベラスと絶対当たる魔法の結合は出来なかった。そこで絶対消滅の魔法で消すことが出来るが間に合わないから言霊省略の魔法を使った。そして絶対消滅の魔法を立体変化させて俺たちを守ったんだ」
――続く――


2009/05/05(Tue)08:57:52 公開 / 神聖夜
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3月3日文頭の字下げ終了
5月5日更新

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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