『非日常に生きる人々』 ... ジャンル:リアル・現代 ショート*2
作者:悪霊                

     あらすじ・作品紹介
非日常に生きる。それは非常に険しく過酷な道を歩むという事。

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『非日常に生きる青年』

片付いていない狭い部屋。
耳元の携帯が鳴る。
「ウ…ん…朝かぁ…」
それによって目覚める青年。
その青年は時刻を確認すると
「まだこんな時間か…もちょっと寝よ…」
そういってもう一度寝るかと思うと布団を思い切り蹴り上げた。
「って!!マジでか!?遅刻しちまうじゃねえか!!」
即行で着替えを済ますと
「だー! 何やってんだよ俺はよ!!」
時計の短針は既に十の数字を示そうとしていた。
「今日、通勤初日だぞッ!? どーすんだよ! 俺!」
誰も居ないのに一人で騒ぐ青年…端から見れば気持ち悪いだろう。
騒ぎつつも準備をすると
「あー!! この不景気に初日から遅刻! 絶対クビじゃねえか!!」
一人で首を切るマネをする。
「クソ!! このアホ時計! なんで起こしやがらねえ!!」
時計を床に思い切り叩きつけようと思ったが昨日買ったばかりの時計で布団の上に優しく投げた。
「こんなことしてる場合じゃねーだろが!!」
急いで家を出るとそのままダッシュで駅に向かった。
息を切らせて三分。
家からは結構近いが全力疾走したため息が持たない。
そうやって走ってるうちにとうとう駅。
「電車あるか!?」
駅の時刻表を見る。
「十時七分に一つ…それ以降は半まで無いかッ!!」
自分の時計(腕時計ではなく小型の置時計)の時刻は十時四分丁度。
「タイムリミットはあと二分! 間に合え!!」
などと叫びつつ切符を買い改札をくぐった。
遊園地のコースター顔負けの勢いで階段を下りる。
「もう電車は着いてる! ラストスパートだ!!」
更に勢いを増すジェットコースター。
最後の二、三段を飛ぶと一気にホームを疾走した。
「駆け込み乗車はおやめください」
「マズい! あのアナウンスが来たら!」
ピーッ!!
笛が鳴り響いた。
プシューと音をたてながら閉まる扉。
走り出した電車。
「タイム…オーバー…」
あと大体三メートルだった。
「仕方ない…解雇覚悟で次の電車待つか…」
絶望しつつ携帯を開く。
そしてテレビを見始めた。
「はぁ…不況の中やっとありついた職業なのに…」
特に見る番組も無かったのでニュースにチャンネルを変えた。
「え…? これ…ウチの会社の近くじゃないか?」
「こちらは現場です!」
若い女性アナウンサーがリポートしている。
「警察の話によるとあちらの燃えているビルに爆弾が仕掛けられていた様です」
「これは!!」
紛れも無い自分の勤め先。
「明朝に爆弾が一つ爆発し今もなお火災が続いております!」
「以上、現場からでした」
そして青年はふと思い出した。
自分を起こした携帯の着信音を。
「まさかッ!!」
青年の携帯は待ち受け画面にそういうものは一切表示されない様に設定されている。
というよりそういう仕様なのだ。
なので朝は気付かなかったが…
「なんてこったい! オーマイゴッド!!」
それは会社の配属先からのメール。
『朝から会社が火災で今日は休み』
それを見た瞬間青年はホッとした。
同時にゾッとした。
「この不景気に会社が燃えたりしちゃ修理とかで金無くなるから俺解雇されんじゃねーの…?」
翌日、予感は的中していた。

2009/01/08(Thu)10:03:55 公開 / 悪霊
■この作品の著作権は悪霊さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
うあ、これで4作目になります。
他3作は別サイトで作ったんですが・・・
時折思うのです。
自分は安全だなと。
もっと危険でも良いのでは?
そう思ってもいざそうなれば自分は動けなくなりますが・・・
と言うわけです。
それでは・・・

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