『マリオネット』 ... ジャンル:リアル・現代 未分類
作者:キャップ                

     あらすじ・作品紹介
至って平凡な毎日を送っていた私こと、美鈴がお送りする現代が舞台のこのお話。一度動き出した運命という名の歯車は二度と歯止めが効かない。けど絶対に止まらない歯車は存在しない。一体、誰がこの運命に歯止めをかけてくれるのでしょうか……。

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 第一章 小さな少年 

 私は美鈴。普通の高校に通って平凡な高校生活を送ってた。勿論友達百人とは言わないけど、そこそこの友達はいた。高校生活は中学生生活とは違って毎日が心踊る様な気分だった。とにかく毎日が待ち遠しかった。
 ある日、私が登校していると校門前に眼鏡を掛けたショートカットで背が低い女子学生が壁によっかかっていた。すると私に気がついたのか大きく手を振ってくれた。私は少し駆け足で女子学生に近づいて、
「おはよう、智子」
 と挨拶をすると
「おはよう、美鈴」
 同じように挨拶を返してきてくれた。
「ねぇ今日のニュースみた?」
 智子との会話はいつの朝のニュースから始まる。智子は元々新聞やニュースなどの報道系を見るのが趣味なのだ。趣味といっても性格の様な物で、文字を見ていないと落ち着かない性格の持ち主。その為、朝などは新聞を読んだり、報道番組で表示される文字を見てたりするらしい。
「今日は見てないね〜。面白いニュースでもあったの?」
 私がそう訊くと、智子は嬉しそうに目を輝かせた。
「当ったり前じゃない! 実はね。ついにあの映画が近日公開されるんだって!」
「え、本当に?」
「嘘じゃないよ、ほんとだって」
「じゃあ、公開されたら一緒に見に行きましょうよ」
「うん!」
 智子は元気よく頷いた。その時の笑顔がとてもかわいくて、素敵な笑顔、絵にでもしたいぐらいの笑顔だった。何故だか私はこの笑顔を忘れないように脳が保存していった。まるでストロボ写真のようにほんの一瞬の動きを見逃さない様に勢いよく何十枚も記憶の中に保存されていった様な感じだった。
 その後、またたわいも無い会話をしながら、玄関へと進んでいった。

 後日、私はあの時約束をした映画が公開された初日から見に行くことにした。幸いにも二人とも部活などの用事が無くてあいていた日だった。
 映画の入り口前で智子を待っていた。私はお気に入りの暖かい服装をし、もふもふ感を楽しんで暇潰しをしていると、後ろからトンと叩かれ、振り返ってみれば同じくお気に入りと見れるかわいい装をしていた。眼鏡が何となくだけど浮いている気がする。
「遅いじゃん、智子〜」
「時間的にはまだ余裕があるから大丈夫よ。さて、何買う? ポップコーンならLサイズでね。ジュースはコーラかオレンジジュース以外禁止、後全てLサイズ。これだけは公約として守ってね」
 私は呆れたような感じで、顔には苦笑いを浮かべ
「智子も好きだね〜。少しはカロリー考えたら? 毎回映画に行く度にそんなに食べてたら、徐々に蓄積されていつのまにか、なんじゃこりゃー! 的な感じになっちゃうよ?」
「いいのよ、あたし太らない体質だし」
 今の発言で、大半の女性を敵にまわしたなと思いつつ、男子の方も敵にまわしたなと思っていると、智子はさっさと売り場に向かってしまった。私も無言のまま追いかけた。
 結局、ポップコーンLサイズが二つ、コーラLサイズが二つとなってしまった。定番といったら定番かもしれないけど、私的にカロリーが多すぎるような気がしてならない。ポテチだって三日ぐらいに分けて食べるのに、たったの二時間程度でポップコーンしかもLサイズはかなりきついと思う。これは私なりの考えであって実際そうであるかは知らない。ただ、かなり脂っこいと思う。

 黒いスーツを着た男性と特殊部隊のような動きやすく光沢を放っている黒い服、黒いサングラスを掛け、平然とした立ち振る舞いを見せている女性が小さなテーブルを境目に立っていると、
『ある人はこんな言葉を残してくれた。全ての運命は二択で出来ている、やるか、やらないか』
 男性がズボンのポケットから拳銃を取り出し、テーブルの上に置いた。その拳銃は六発の弾が装填できるリボルバー型。それと隣に一発の弾を転がす。
『やるにしても、やらないにしてもそれなりのリスクはある。そしてこの場ではやるほうがリスクは高いと思うが……やるかね? やらなければ、お前は何も出来ずに死ぬよ。十年前のタイムカプセルを掘り起こすんじゃないんだぞ、命を掛けるぐらいのリスクが無くて、あの国が探せるもんか』
 私が見ているこの映画はロストヘブンと言い、女性の冒険家、ジャルス・クーンが太古の昔に栄え天国の国さえ言われた伝説の国を見つけ出す映画。なんでも、映画監督が言うには、此処は見所の一つだそうだ。
 女性は拳銃を持ち上げ、シリンダーに弾を一発込めると女性はシリンダーを回転させた。
『で、やっぱその肝試しはこうやって極めろって事でしょ?』
 シリンダーを勢いよく押し込むと、すぐさま自分のこめかみに銃口を突きつけた。
『よくわかってるじゃないか。さて、当たる確立は六分の一。当たっても、当たらなくても、文句無しだ。当たったのはお前に運が無かったからだ。時には運も必要だからね。さぁ引き金を引けるかね?』
 男性と女性は数秒間睨み合うかのように瞳をあわしつづけ女性は引き金を――引いた。
 部屋中にカチンと響いたが銃口からは銃弾が飛び出さず、男性は呆れたように肩をすくめた。
『はい、お前の勝ち。お前は運命にも運にも好かれたみたいだな。まぁ精々がんばるこった』
 そう言い男性は女性に背を向け部屋から立ち去っていく。
『あんたは結局、何がさせたかったんだ。たったこれだけならあんたが撃てばよかったんじゃないのか。殺人犯とか言う理由じゃないだろ』
 男性はドアノブに手を掛けた状態で静止する。
『そうだな、確かにそんな理由じゃない。まぁ俺の考えてることを言語的に表現するのは非常に難しいんだ。でも簡単にならお前でも理解できるかもな』
 ドアノブから手を外し女性の方を振り向き、面と向き合う。
『動かされるな。全て自分の意志で動け。リスクを恐れるな、恐れた者は何事を失敗に終わる。って事さ、じゃあな。今度合うときは運命が決めてくれるに違いない』
 そう言うと再びドアノブに手を掛け、ぐるりと回した。ガチャと音と共に扉が開き、外の世界が見える。
『あんた自分で言ってることが矛盾してるわよ。自分の意志で動けとか言っておきながら、運命が決めてくれるってどういう事よ』
『自分の意志で動いているからこそさ。自分の意志で動くからこそ、結果として運命がやってくるんだよ。ただ流される奴の運命なんて結局そんなに大したことがないのさ』
 男性は外の世界へ出るとゆっくりと扉を閉めた。

「いや〜実に面白い映画でしたな〜」
 出口からでてくるなり智子は背伸びをしながら言った。ついでに私もする。
「しっかし、まさか最後は引かないが正解だったとは……私あの場にいたら、絶対にリスクを考えずに引き金を引いてたわ」
 私の頭の中でたった数分前の様子を回想する。

 実は最後の最後、ジャルス・クーンが天国の国を発見し、終わりかと思われた矢先にあの黒いスーツの男性が出てきたのよ。そして、拳銃を投げ渡したの、あの時と全く同じリボルバーを。すると男性は
『まったく……大した奴だよ、お前は。さて、これが最後の運命の分かれ道だ』
 と言い、懐から携帯を取り出すと、ジャルス・クーンに画面を見せつけた。画面には送信しますか? と問う文字が書かれていた。
『ベネット側に付かなくてよかったよ。ベネットに付いていた今頃御陀仏ってところだろうね。それにベネットよりもあっちの依頼者の方が分け前もよかったしね。これで大体俺の事情が把握できたかな。俺が送信ボタンを押せば、すぐさま依頼者の方に在処を示した地図が送られるようになってる。そこでだ。このままではあまりにも面白みが欠けるだろ? だからあの時の様にして決めてやろうって思ったのさ。お前が死ななければお前の勝ち。この携帯を踏みつぶしてやるよ。この場所を好きなようにさせてやるよ』
 ベネットはジャルス・クーンの敵のような存在で、同じ様に天国の国の財宝を狙っていたトレジャーハンター。金で仲間を集めたり、色んな卑怯な事をして妨害したりしていた。けど最終的に天国の国に着く前に、罠で体中を太い針で刺され死んでしまった。
 ジャルス・クーンはあの時と同じように平然とした立ち振る舞いで、シリンダーをスライドさせ銃弾が一発であることを確認すると、回転させ勢いよくシリンダーを入れると、こめかみに銃口を突きつけた。
 ぐっと力を加え引き金を引こうとしたが、引かなかった。
『どうしたのかな? もしかして今となってリスクに負けたのかな?』
 少し侮辱したような笑みを浮かべながら、男性が見せつけていた携帯を下に降ろした刹那。こめかみに当てていた銃口は男性の方へ場所を変え、引き金を引いた。
 銃口からは白い煙が立ちこめ、男性の携帯の画面は粉々に砕けていた。
『あんたは確か死ななければいいって条件だったよな。何勝手に引き金を引くか引かないかに変わってるんだよ。それにあんた元々依頼者なんかいないんでしょ?』
 男性はあの時のように肩をすくめ、壊れた携帯をその場に落とした。
『その根拠はどこからくるんでしょうねぇ』
『簡単よ、こんな秘境のような所に電波があるわけが無いじゃない』
 男性はお手上げだと言うと両手をあげた。

 これがあの映画のラストシーンである。
 ね? 誰しもあの瞬間の事がフラッシュバックしてついつい引き金を引きそうでしょ? 現に私があの場にいたら引いてたって断言できるんだから。
「まぁ、フィクションだから大丈夫でしょ」
 私は少し笑い顔を浮かべ、
「そりゃそうか」
 と言うとしばらくの間私達の話題はその映画で持ちきりだった。智子とあ〜だこ〜だと色々と意見を交わしていくと、急にお腹が空いた。近くの料理屋に行こうと駄々をこね始めた。たまに子供っぽくなるから嫌とまでは行かないけど、ちょっと何とかして欲しい。ほらちょっと智子……皆さん注目しちゃってますから……。
 結局私は、周りの恥ずかしい視線を一杯浴び、ジョイライフへと足を運んだ。入るなり定員の挨拶が響き渡り、店内は良い匂いで充満していた。智子とは言うと、さっきまで駄々をこねていたとは別人のように元気になり、さっそく料理を選んでいるところである。
「どれがいいかしら? やっぱピザがいいかな〜」
 別にどれだけ迷っても構わないけど、自腹でお願いね。
「私、ドリンクバーだけでいいや」
「え〜やっぱ何か食べようよ〜せっかく来たのに、失礼だよ〜」
 ゴメン、智子が行きたいっていったからじゃない。私はあんまり関係のない様な。
 まぁいいかと、呼び出しボタンを押す。慌ただしくなる智子。料理がなかなか決まらないようだ。
 少しすると店員がやって来る。今回は女性店員だ。と言うよりも毎回女性店員のような気がする。もしかして女性が接客のような役目なのだろうか。少し興味がわいてくる。
「ご注文は?」
「私、ドリンクバーで。智子は?」
「え〜っとねぇ。う〜んとねぇ」
 ページを何回も捲っていくと
「じゃあ、このスペシャルステーキをお願いします」
 なんと! スペシャルステーキを選ぶとは! スペシャルステーキはただでさえ、値段が千円を超えている高級品で、時間的にもかなり掛かる料理。それだけ手間暇かけていると言うことで大変美味しいらしい。
「ご飯とパンがございますが、どちらになさいますか?」
「ご飯でお願いします、あ、後ドリンクバーお願いします」
 店員は紙に言われた料理名を書いていく。
「では、ご確認させていただきます。スペシャルステーキがお一人様、ドリンクバーがお二人様でよろしいですね?」
 私は軽く会釈をする。
「ではどうぞ、ごゆっくりと」
 店員はその場から歩き出し、厨房へと姿を消していった。
 私はそれを確認すると立ち上がり、ドリンクバーへと向かった。智子も立ち上がりドリンクバーへと足を運んだ。
 その時、玄関の方でいらっしゃいませと聞こえた。
 ドリンクバーでガラスコップを取り、用意されてある四角い綺麗で透き通った氷を二つほど入れると、オレンジジュースを入れる。正直、オレンジジュースよりも林檎ジュースがあってほしい。智子は氷が入る限界値、つまり四つを入れコーラを入れている。智子にとっては定番のコーラ、体に悪いからやめさせたいけど、なかなかやめてくれない。この調子で行くと、来年か再来年ぐらいにはイタイタイ病みたいに骨がボキボキ折れるんじゃないだろうかと心配になる。
 その後、自分たちが座っていたテーブルに向かっていると、さっきまで誰も座っていなかった後ろの席にやや小柄で黒いジャンパーを着ている中学生ぐらいの子が一人座っていた。多分、私と同格の背丈だと思う。
 その子はずっとガラス越しの外を見て、何かを待っているような雰囲気が漂っている。私の女の勘だと彼女を待っていると見た。中学生程度で彼女なんて……高校生でも彼氏が出来たことが……いや、それ以前に誰からも告白されてないししてないからね……。
 勝手にとほほ〜とした顔をしていると、智子が心配そうに見てきたからとっさに作り笑顔を作りながら、あの子と顔を合わせないようにあの子から見て私の背中が見えるように座った。それも窓越しに。智子は私と反対方向に座り、早速コーラを飲み始めた。私もつられるようにオレンジジュースを少し飲んだ。
 すると私の横をがメイド服のような可愛い服を着た人が通っていく。顔を見ていないから女性かどうかは判断できないけど、ちょっと香水の香りが匂ったから多分、女性だと思う。するとその女性は私の後ろに座った。まさか……この女性があの子の彼女になるわけ? ちょっとどう見ても歳が離れすぎのような気がする。
 私の後ろって事もあるだけか、周りガチャガチャした雑音で完璧に声が聞こえないわけでもなかった。けど何を喋っているかは不明だった。
 智子は何故かうっとりとした瞳で後ろを眺めている。
「ちょっと、智子? どうしたの? そんなうっとりとした目で見て」
「いやねぇ……美鈴の後ろの席に座っている男の子が、私の好みにピッタリでね……それでついつい……」
 そう言えば、智子の好みは出きるだけ普通だったような。私は失礼に当たると思われる行為である振り向きをしてしまった。あんなに自分から食わず嫌いのように嫌がってたのに、智子があんなにうっとりとした目で見ていると、ついつい見たくなってしまったのだ。
 確かに、顔はイケメンともブサイクとも言えない中間地点。だがややイケメンに見える。するとその子は私に気が付いたのか、女性から目を離し、私と目を合わせた。
 その時、私の脳裏に違和感が趨った。見たことあるようで無いような。会ったことがあるような無いようなそんな違和感が私の脳内で渦巻きだした。どこだろう……どっかにあった事があるような……。
 私は彼の黒瞳に吸い込まれているように離さなかった。これを一目惚れと言うのだろうかと私の中で問い掛けた。でも、結局その答えは出てこずじまいだった。
 何分たっただろうか、いや数十秒だったかもかもしれないけど、私はあの子の瞳をじっと見続けていた。まるでそれしかできない人形のように体が動かなかった。するとあの子はクスリと笑った。右手で口を隠し、髪の毛で瞳が隠れると私はようやく目を離すことが出来た。
 私はすぐに智子の方を向き、話題を持ちかけた。智子はうっとりとした目をやめ、コーラを少し飲むと、話題に食いついてきた。
 その後、出てきたスペシャルステーキをつまみ食いしながら、時間が過ぎていくのを待った。
 この時、私には予想も付かなかった自体になるとは、思っても見なかったのは言うまでもない。

 

2008/11/16(Sun)18:14:44 公開 / キャップ
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■作者からのメッセージ
どうも初めまして、キャップです。
一応言っておきますがこの物語は、フィクションです。
出きれば批評をバンバンして欲しいです。
まだ未熟なので、よろしくお願いします。

11/16 ちょっと修正

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