『全ての神の空に』 ... ジャンル:ファンタジー 異世界
作者:かがみ☆                

     あらすじ・作品紹介
こんにちは。昔の小説のリメイクです。(内容ほぼ一緒だけど)宜しくお願いします!!(コメントは僕の心にしみます)

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この世界のどこかで、風が吹いた。
世界の『均衡』保つため。
しかしその風に逆らうように、一つの影が舞った。
それに続いて、二つの影が風を睨んだ。
それはまるで『一つ』に共鳴するように。
その後二つは四つを呼び、四つは八つを呼ぶのだ。
そして呼応の如く『悪』は瞬く間に広がった。
圧倒的に世界を埋め尽くすように。
しかし風は全ての影を何の躊躇もなく飲み込み、暫し世界を翔けた。
その後、誰にも知られることなくひっそりと消えた。

また世界のどこかで風が吹き、
また逆らいし『悪』も現る。
しかし風は常に『悪』を極々自然なカタチで滅す。
そして暫し舞い、やがて眠るように誰の気にも止まることなく消え去る。

世界はその風と影の交わる縄の上に成る。
そして均衡を保ちつつ、永遠に同じ色を見せ続ける。
誰もがそうと信じていた。
『あの』夜までは…。


1月20日 世界某所 PM9:03


無機質な絶叫が響き渡る。
紅き夜空の中で。
逃げ惑いし者。
眼前の骸に縋る者。
唯立ち尽くす者。
10人在らば10種の、100人在らば100種の
それぞれの叫び。
その叫びに割って入り、時折影に血塗られた風が舞う。
その風は暫しの沈黙、即ち『死』と尾を引くその後の『絶叫』を残し去り行く。
命の芽を摘むように…。

しかし其処に、ただただ安静を保つ2人の男女がいた…。

「全く、よくぶっ壊してくれてますなぁ。」
「…そろそろ…行かなきゃ。」
「ったく、まだいいだろ?面白れえじゃん、雑魚共が懸命に破壊行為??大いに結構。」
「…これ以上壊れたら…だめ…。…行って、ヨウイチ。」
「ち…わーったよ。ミナミ堅えなぁ…。ほらよ、っと。」

ヨウイチ、と呼ばれた少年は掛けていた眼鏡を投げ捨て、虚空に舞い刀にも見える橙の光を振り翳す。
すると影、骸、あらゆる存在消え去り、後には紅き虚空のみが残る。
ヨウイチはミナミ、と呼ばれた少女を向く。
そして、呟く。

「ったく、ミナミが行くのが筋だろ??ミナミのが強いくせに。」
ミナミの口からも言葉が。
「…こういう『削除』は…。ヨウイチのほうが…。」
またヨウイチは口を開く。
「はいはい、『適正』でしょ??それが俺たち『Black Luna Dial』だろ?」
こうしてキャッチボールは続いた。

『Black Luna Dial』。『黒き月時計』。
それはミナミとヨウイチの使命。
ただ世界に蔓延り殺劇繰る『影』を滅すための。
虹の7色からなる機関。命名理由は虹の7色混ざりし『漆黒』。ヨウイチは『橙』。
大規模破壊に長けた『イレイザー』。

そして、キャッチボールの後にて。
異形の怪物の群れ現れた。
ヨウイチ、ミナミに断つこと頼んだ。
ミナミはこれを承諾し、影なる刀より蒼の炎放つ。
その炎幾千幾万の刃と化し、異形を残らず断つ。
燃え落ちる。
姿残さず。

Black Luna Dialミナミ、『青』解き放った。

その後、清浄な風が吹いた…。



12月31日 PM9:21
世界のどこか別の場所で風が吹いた。
風は風を呼び、『影』を討たんと奔る。
影は影を呼び、風を討たんと忍び舞う。
闘いが起ころうとしている。
しかし、月、星、花、全ての存在がそれをその眼で視ていた。
そして、清浄なる風の勝利を信じる。
いや、正確には信じずともそうとなるはずだ。
しかし…。

あの風と影の対峙から…どれほど経っただろうか。
幾千幾万の瞬きが神々を形作っていた夜空は既に無く、
代わりに今在るのは捻じ曲げられた虚空。
風は黒炎と化し、虚空黒に染める。
生命は『影』の繰る刃と、闇色の風により暫し絶叫と化す。
そして絶叫が止みしとき、生命は骸と化す…。

やがて黒炎は焼き尽くすこと止め、『影』は刃以って切り裂くこと止める。
そして焼き尽くされ荒れ果てたその場に、一人の影が降り立った。

焼き尽くされた荒野の別の場所、一つの荒い息遣いが聞こえた。
しかし今にも耐えそうな、弱々しすぎるものであった。
それは眼前に在りしも永久に遠き、生命の光求めるように…。

影、程無く息遣いの元へ辿り着いた。
そして影に対し、妖艶な声で残忍に呟く。

「こんな事して ごめん。 でも 忘れないでね。
それでも 愛してたよ。 でも、私の中に貴方はもう居ない。
思い出なんて 無い。 有るのは 殺しの使命だけ。 『召還士』としての。
今 生かしているのは 言う事が 有るから。」

息の主は全てを絞り答えた。
「…なん…だ…よ…」
そして名も無き『影』の声を最後に、この殺戮は終わりを告げた。
「おやすみ なさい。」


次の瞬間影は左手の黒き帯剣持って、全くの躊躇なく息の主の眼前の経路を経つ。
そして骸に呟いた。

「もう一度だけど、愛してる。
そして ありがとう…」

『召還士』。『影』を操る選ばれし者『operate』即ち『操縦士』の称号。
その者現ること既に、『影』の勝利を雄弁に物語る。

これは『摂理』が崩れた、あの夜のこと…。



虚無な清浄の中。
正確にはそれを取り戻した世界にて。
そこの空に映りし『蒼』に照らされつつ、
二つの影の声が響く。

「さんきゅーな、ミナミ。やっぱ大量の雑魚にはミナミだな。ホント感謝だよ☆」
「…ありがと。ヨウイチ。」
その一言に『ミナミ』、と呼ばれた寡黙な少女は多少顔を赤らめ、うつむいて答える。
そして顔を上げ、黒髪の少年を見つめる。

ミナミ、本名は天樹 陽(あまき みなみ)。15歳。
『Black Luna Dial』の『青』である、という使命の元に生きている。
蒼炎の刃を放つ、冷静で物静かな性格の『スナイパー』。

Black Luna Dial。『黒き月時計』。
それは時の中の叛逆者、『影』を滅す光湛えし七闘士。
『摂理』崩れし夜の明朝に神により全くのランダムで選ばれた、無力なる神の代闘士だ。
虹の7色が世界の全てを示し、世界統べる。
『青』のミナミは冷静なる『スナイパー』であり、
『橙』のヨウイチは大規模破壊に長けた『イレイザー』であるように、
7人が7色の闘いの色を持つ。
『時』による影響すら受けない、永き闘いの参加者。
Black Luna Dial7人の死、又は『風』が『影』討ち果たすこと以って終結する…。

ミナミが顔を上げた蒼眼が見つめる、黒髪の『ヨウイチ』と呼ばれた少年は、
朝比奈 陽一(あさひな よういち)。『Black Luna Dial』の『橙』。
眼鏡の中の橙眼が常に燃え、炎湛える。
巨大な攻撃力で蹂躙する『イレイザー』。
ミナミの1歳年下で14歳。ミナミとは幼馴染。

そしてこの2人、今虚空に在る。
ただ2人、碧空を見つめる。

しかし、『影』は既に。
刻一刻と破壊の旋律を紡いでいた…。
何も見えない世界。
ただ、『一つ』が動く。

碧空に月が上った―。


世界のどこかで、またも風は吹く。
力強くも繊細に舞う。
しかしその風に真実は既に無く、有るのは邪にそれを喰われた代わりに植えつけられた『破壊欲』。
そう、古より続いた『影』による叛逆の終を物語る。
『影』の勝利を表す。そして敗北した風、即ち『正』を乗っ取る。
そしてその風次第に黒き『邪』の色に染まり、勢い増し、人里へと降り立つ。
風が通り抜けた大地には、横顔が微笑んだようにも見えた…

そもそも『影』とは、生命の悪意が具現化された『純粋なる殺意』。
怨念を持って死んだ生命たちが、『充填機隊』の異名を持つ太古の操縦士の隊により3分間の命を与えられた姿。
なので人間の形や獣の形など、様々な種が存在する。
その3分で別の『操縦士』と契約し、世界を破壊せんとばかりに暴れ、そして3分の経過又は呑まれることで死を迎える。
しかし影の自然死、即ち3分の経過による死は新たな影を生む。
そうして、影は世界を少しずつ蹂躙する。

古より『影』は永遠に均衡保つ風、即ち『正』に敗れ続けていた。
しかし敗れる度『操縦士』操りし『邪神』の怒りはただ強く、濃くなっていった。

そしてあの夜、戦闘能力を持たぬ運命の『操縦士』にそれを与えた。
怒りは、摂理すら裏返したのだ。
そのような『操縦士』により戦いは終結した…。
程無く、『邪神』の意思通り、殺劇の世を作り上げたのだ…。

その夜、滅されし運命の神は7人の代闘士『Black Luna Dial』を選び、力を与え、程無く滅界の牢へと閉ざされたのだ…。
『Black Luna Dial』勝利を信じ。

これにより、第2の乱戦が始まった―。

そして風は、ゆっくりと町から町へ、国から国へ吹きぬける。
吹きぬけた後に絶叫と骸を残しつつ。
紅く染まる瓦礫。風は何も躊躇もなく吹き去る。
数々の海越える。七海翔けるかの如く。
万丈の山越える。無視するかの如く。
千仞の谷越える。嘲笑するかの如く。
風に舞う一つの黒、『操縦士』を月は捉えた。
しかし、瞬く間に過ぎ去る。
同じ様に、存在が『操縦士』を捉える。
しかし、またも過ぎ去る。
その行い繰り返し、繰り返し…そしてなお翔ける。そして…。

『黒』は、ヨウイチとミナミの眼前に姿を消し忍んでいた。
そして―。

PM9:04:00

一人の『操縦士』、二人の『Black Luna Dial』の前に姿現した。
刹那、二丁拳銃を手にする。それはただ光る。
しかし標的は『Black Luna Dial』、ヨウイチとミナミでは無かった。
二人には目もくれず、ただ月へと翔ける。
銃弾を放つ。その月へと。
『Black Luna Dial』の前に姿現して、僅か0.3秒後の事。

PM9:04:00:5

『黒』の発砲より0.2秒遅れ、『Black Luna Dial』ヨウイチ、橙光放つ。
程無く橙光『黒』へと追いつき、『黒』をこちらへ向けさせる。
そこにミナミの姿は無い。しかしそこに疑心生じる者は無し。

理由は単純明快、『操縦士』と『Black Luna Dial』の闘いは1対1が原則。
他の存在は暫し『虚世界』に去る。『Black Luna Dial』とて『操縦士』とて例外は無し。

二人の世界、ヨウイチは『黒』と対峙する…。

しかし。

PM9:04:00:6

ヨウイチと『黒』を形作る『世界』が、壊れた。
ヨウイチの眼前に、ミナミが居た。

「…ミナミっ!!?なぜ?」

伝わる事無きヨウイチのミナミへの叫びの中、
ただ『黒』が静かに微笑んだ。


ヨウイチの眼前に、ミナミが居たように、
ミナミの眼前に、ヨウイチも居た。
刹那。
驚いたのだが。
ミナミは直ぐに状況を察した。
そして蒼炎をその身に宿す。
時間にして凡そ0.3秒ほど。
しかし。
『黒』はその猶予すら与えてはくれなかった―。

ミナミの腹部にて、重い衝撃が荒れ狂う。
『黒』の両手は、確かに銃のトリガーを轢いていた…。
次の瞬間ミナミ、音も無くその場に意識失い倒れる。
その様子、ヨウイチが見ていたのは言うまでも無かった…。

蒼炎宿し、消えるまでの0.1秒。
ミナミの腕時計の秒針、カチリと一刻を刻んだ。
『黒』現れて、1秒が経ったことを表す―。

PM9:04:01

ヨウイチ一人、絶望の淵に立つ…。
そして、『黒』はマントに隠れていた口を開く。
現れた老翁、話し始める。

「我が名は…操縦士『滅し手』アーロン。
全て滅すこと、我が能力。
我と貴様、戦う間『虚世界』滅した。
月の叛逆、操ることで。」

ヨウイチには一瞬で意味が分かった。
『操縦士』と『Black Luna Dial』1対1で闘う間『虚世界』。
それは月に住みし『邪神』、『煉獄界の楯』により張られる。
それが無くなれば、『虚世界』も無くなる。
しかし、決定的な不可解があった。

『操縦士』が『邪神』を…!?
信じることに時間を要した。
『操縦士』とは『邪神』より力与えられし人間。
『邪神』は実界に住む事は無い、完全なる『魔』。
「魔に人間が勝った、だと…!?」

しかし全く無視するように、
清き虚空に重みを持つ声が響く。
『滅し手』、再び口を開く。

「我…『召還士』…の片割れ…」
「かっ…片割れ?」
ヨウイチの放った疑問詞が、『滅し手』アーロンへと響く。
しかし。
前触れ無く。
その一言と共に。
閃光、虚空に放つ。
月、閃光に裂かれる。
虚空、まるでそれはパズルのピースの如く崩れ去り、『黒』を残す。
世界、『虚無』と成った。

その中、一つ光の足場形作られる。
ヨウイチと『滅し手』アーロン、その場に立つ。
刹那。
ヨウイチは直ちに彼は我が置かれし状況理解していた。
瞬間。
互いに、各々の成しうる『最強』ぶつけ合った。

漆黒の虚無に、光と力の粒が舞い散る。
二人何事も無かったかのごとく、再び力交える。
そのこと繰り返す。
そして繰り返す…。
そうするうち、ヨウイチは覚える。
『苦痛』を。
しかし討つと云う『使命』に操られるように、互いに『最強』ぶつけ合う。
苦痛、繰り返される。
また繰り返される…。

そして限界を超えたヨウイチ、泥のように『虚無』に倒れこむ。
『滅し手』アーロン拳銃以ってヨウイチ討とうとする…
トリガーを轢く…

しかしその手、一筋の蒼にて断たれた。

漆黒の虚無、二つの『蒼』光った。
ヨウイチは、確かに捉えていた。
「ミナミっ!!!」

衝動的に叫んだ。
後、彼はまさに泥のように眠った。


―――どれほどが、経っただろうか。
そして彼は、目を覚ました。
その眼には、数々の景色が映った。

「ヨウイチ…大丈夫?起きたみたいだね。」
自分気遣ってくれる優しきミナミ。
彼方に老翁の姿、捉えた。
ミナミの掌がそれに気付き蒼炎纏う。
そして。
放つ。
蒼炎、『滅し手』アーロン捉え、裂く。
刹那、彼は燃え落ちた…。

ミナミとヨウイチ、微かに微笑み無言で拳ぶつけ合い互いの健闘称えた…

しかし。

一度破壊されたものは、戻らない。
二人は、まざまざと知る…。

ヨウイチとミナミは、二人で見ていた。
月が、崩れ行く様を。
ミナミは彼女の腕時計に、目をやる。
針は高速で回転し、すでに時を刻まず。
携帯電話の時計機能はスロットのように意味なく回転した。
何もかもが壊れた世界。
上空は渦を巻き、全てが不可視であるように。

「どういう事だよ…」
「ごめん、判らない。」
その応酬、二人の世界に続く。
しかし、暗すぎる空に虚しく呑まれる。
そんな中、二人以外の声が聞こえた。
『ここより、壊天の世界へ行け。
召還士を滅して 現世を救え。』
次に、黒の狭間が姿を見せる。
そして、衝撃が荒れ狂った。
その衝撃に二人は目を閉じる。
そして再び目を開けた先に見えたものは、地平線と荒野だった…

2008/04/11(Fri)22:18:46 公開 / かがみ☆
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