『月の使者』 ... ジャンル:ファンタジー 未分類
作者:香奈                

     あらすじ・作品紹介
自分を取り戻す。暗闇から取り戻してやる。そう心に誓ったマリナ。気分転換に散歩していると目の前に、小さな子猫がいて―――…。

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美しい星空に、怪しく、鮮やかな光を帯びた三日月があった。
人は、皆、綺麗な月。美しいものとしか見ていないだろう。
私以外の人間は、それしか考える脳がないのだから。
脳みそが腐っている。熟し、それでも我慢できずに熟しきって、内から腐ってしまったのだ。
だから、他愛もない戦を起こし、政治などという暗闇に埋もれた物を作りだした。
人間というのは、神から生み出された悲惨な畜産物よ。
もしかしたら、私は人間として生まれた異生物かもしれない。
この世は正さねばならない。
一度、全てを滅ぼすのだ。
そのために我は今、ここに君臨する―――。


第一章 【目的】
第一話 「運命とも言える出会い」

二×××年 四月七日
クレセント高校。

校内は、いつもの通り荒れ果てていた。
ある者は、弱者を虐め、またある者は、屋上から投身自殺を試みようとしていた。
誰も投身自殺を止めない。
すでに日常と化しているのだ。
―――投身自殺。
自らの身体を投げ捨てることと同じこと。
投身自殺を試みている少女は、頬に涙の跡がうかんでいた。
彼女は、澄んだ青色の眼をしていた。
一寸の曇りもない、澄みきった目。
その眼に映るのは、荒れ果てた校舎と弱者と強者。そして、宙(そら)。
飛び降りると思われた瞬間、彼女は、一歩、一歩と後ろに下がっていく。
怯えた目をしながら、自分はなんてことをしたんだろうと罪悪感を心に焼きつけながら、一歩一歩と校内へ戻って行った。
彼女を待っていたのは、虐め。それと暗闇だけだったが、死ぬことはどうしてもできなかった。
自分の弱さを思い知らされた。
「どうして私なのよ…。」
少女は、鈴の鳴るような声で頭の中、心に焼きついた少年を思い浮かべ、宙に向かって訴えた。
暗く、生気が感じられない体で、ゆっくりと階段を降り、教室に入りそして、死ね。ウザい。消えろ。等と好き勝手に暴言を吐き捨てられた机を強く叩いた。
力の抜け切った拳で、力いっぱいに叩いた。
頭の中が真っ白。心の中は真っ黒。
不意に少女の目から涙があふれ出た。
(なんで!?)
口をそう動かしただけで、辺りは静まり返っている。
(あ、あれ?)
また、口を動かしただけで声は出ていない。
息がでる。口が動く。
だけど声が、出ない。
いつも暗い教室が、いつもより暗く見えた。
少女の心のように。
彼女は諦めたように、暗く悲しげな顔を見せると、鞄に教科書を入れ教室を出た。
暗く、なんだか鼻を突くような臭いのする階段を、ゆっくりと下りて行く。
そして靴箱を開けると、無数の紙が入っていた。
少女はすべて無視し、上履きと靴を入れ替えた。
校庭に出ると、「なんで飛び降りなかったんだよ」「飛び降りたほうがよかったのに」という声が漂ってくる。
しかし少女は無言で歩いた。無言といっても声は出ないわけだが。
早歩きで進み、声を振り切ってもうすぐ高校の外に出る。
というところで、金色の綺麗な髪をした少年が、少女の透き通るようなオレンジ色の髪を引っ張った。
(い、いたいっ!)
「お前、あん時死ねばよかったじゃん」
軽い気持ちで彼は言ったが、少女にとって、それはとても辛い言葉だった。
少女は彼の手を振り切って走って行った。
その姿を見て、少年は、声を上げて笑った。
笑って、お腹が痛くなるまで笑い続けた。
彼に不評を言う者は、この学校に誰もいなかった。
少女はただただ、追ってくるような影から逃げていった。
目の前は真っ暗なままで…。




2008/03/02(Sun)17:37:18 公開 / 香奈
■この作品の著作権は香奈さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして!
香奈と申します。
初心者なもので、可笑しいところ多しと思いますが
楽しんで読んでいただければ…(ぉぃ
いや〜、難しいです。
コメ、アドバイスいただけたら嬉しいです。
では!

ちなみにこれ、私の体験談だったりするのです。
ちょっとだけですが。
金髪も、オレンジもありませんけど…。

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