『死んだ赤鬼』 ... ジャンル:ショート*2 童話
作者:あおぼたん                

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 あるところに、赤鬼がいました。
 赤鬼は、人々を苦しめていました。

 ある時は畑をあらし、作物を持ち帰りました。
 またある時は、村人の家を壊し、家のものを持ち帰りました。

 とくに頻繁に行われたのは、村人に暴力を振るうことです。
 そのため死者はたくさんになってしまいました。

 だんだんと村人の食べ物が少なくなってきました。
 それを見計らってか、赤鬼は村まで降りてきてこう言いました。

「毎週1回食べ物を備えれば村人に手は出さない
 しかし半年に1人は生贄に差し出せ」

 これ以上怪我人を出したくなかった村長は、その条件を飲んでしまったのです。
 そこから村人の生活はさらに苦しくなりました。

 村人は、赤鬼の言ったとおり、毎週1回、指定の場所に食べ物を備えました。
 村人は自分たちが食べる分も惜しみながら食べ物を備えました。

 そして、ついに来てしまったのです。
 生贄を供える日が。
 村人たちは集まりました。赤鬼は村人をすべて集め、その中から一人つれて帰るといったのです。
 赤鬼がやってきました。
 そして、ある男を選びました。しかし、村人たちは男を赤鬼が連れ去るのを断固否定しました。
 男がみなに好かれていたわけではなく、赤鬼に反対していたのです。

「なぜ生贄は俺についてこない」
 しかし、こればかりは村人も怒りました。
「こんなのおかしい!だったらお前が生贄になれ!」
 どこからともなくそんな声が上がりました。
 すると村人はその言葉に便乗し、そうだと赤鬼に迫りました。
「お前のせいで妻が死んだ!」
 いきなりそんな声があがり、その男は赤鬼を刺してしまいました。
 すると赤鬼は、
「この村は滅びるぞ
 俺の……」
 そんな言葉を残し、死んでいってしまいました。

 村人は喜びました。
 男は赤鬼を殺してしまいましたが、赤鬼がいなくなったことに歓声をあげていました。

 こうして、村に無事平和が訪れたように思えましたが、村はその数年後、謎の病が流行りました。
 村人は、この病を「赤鬼の祟り」と呼び、最後には村人はいなくなり朽ちた姿となってしまいました。

* * *

 赤鬼は、村の秘密に気がつきました。
 代々赤鬼の家に継がれる書に書いてあったのです。
 <×××××年、冠と野菜と痣のある村人が揃えば村は滅びる>
 赤鬼は、いそいで村へ行きました。

 しかし、赤鬼は思いました。
 俺が行っても、みんなは怖がるだけだと。
 だったら自ら悪役になり自分だけ恨まれればいいのではないか、と。

 赤鬼は早速実行しました。
 まず、冠と呼ばれる道具がある家を探し、壊し、できる限り住処にもって行きました。
 これで盗みだと思われ、自分は嫌われます。
 次に、野菜を持って帰りました。
 すべて特定のものです。これでも、村人に嫌われることができます。
 しかし、ひとつだけ考えていないものがありました。
 それは、村人についてです。
 赤鬼は村人を自分の住処に連れて行っても、村人に作戦がバレてしまえば、村は恐怖にあふれてしまうと。
 赤鬼は村人が嫌いなわけではありませんでした。だから、村人を殺す、というのはとてもいやでした。
 しかし、すべての村人を殺すわけには、と思い仕方なく殺しました。

 生贄を授かる日、赤鬼は早速痣のある村人を見つけました。
 しかし、村人がこないのです。
「なぜ生贄は俺についてこない」
 赤鬼はたずねました。
「こんなのおかしい!だったらお前が生贄になれ!」
 どこからか、こんな声が聞こえてきました。
 すると村人はその言葉に便乗し、そうだと赤鬼に迫りました。
 そんな、俺はお前たちのために……
 赤鬼は今までのことを思い出しました。
 そうだ、結局俺は村人に恐怖を与えていたじゃないか……!
「お前のせいで妻が死んだ!」
 いきなりそんな声があがり、赤鬼は男に刺されました。
 俺が犠牲になってもいい、だがこの旨を村人に伝えなければ
 必死に言葉を搾り出しました。
「この村は滅びるぞ
 俺の……」
 “俺の住処にある書を読んでくれ”
 そう続くはずだった言葉は、空に入り混じり、溶け、誰にも伝わることなく消えてしまいました。


 村人は、最後まで何も知らず赤鬼をせめ、
 赤鬼は、最後まで村人のために尽くしました。

 行き違ってしまったお話です。  ――おわり――

2008/02/12(Tue)20:03:13 公開 / あおぼたん
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■作者からのメッセージ
こんにちは、あおぼたんです。
初投稿で、しかも結構低い年の癖に作品を出したプラス規約とにらめっこしながら書いた作品です。そのためかなり指摘する部分があると思います。でも勝手ですが、結構傷つきやすいのでやわらかく指摘してくれるとうれしいです。
最後に、読みづらかったと思いますがここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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