『獣の証拠』 ... ジャンル:リアル・現代 未分類
作者:山名春秋                

     あらすじ・作品紹介
突然奇病に襲われ、腕が「獣化」した男の物語。愛とは何か、を真面目に考察した作品です。

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ダスティー・パープルの夕暮れに背を向けて、ぼくは緩やかに歩き始めた。
あてもなく、単調なステップを刻み。
そのこつこつとした音色が背後から遅れて響いてきて、ぼくは身震いをするのだ。
……コンクリートの道は見渡す限りまっすぐに伸びている。
家々は暗く長い影を落とし、僕の行く手に闇を見せていた。静かで悲しい街通り。
そして際限なく渦巻く苛立ち……。
不可解な激情に苛まれて、ぼくはダウンを探り、煙草に火をつける。細くたなびく煙は、ぼくの気持ちを代弁するかのように夜空に霞んで消えていった。それをじっと見つめながらぼくはまた右腕の律動を感じ取る。
……すれ違うひとびとは、わなわな体を震わせるぼくを見て何と思うだろうか?
随分奇妙な風景に違いない。そうして彼らは、かかわらないよう大股に道を開けるのだ。しかし、……なんのこったい。ぼくはこれからそんな視線をはばかる必要もないじゃないか……。ぼくは……もうすぐこの世のものじゃなくなるんだから……。
不意に頭に差し込まれた思考の断片。自分ははもうすぐこの世から喪失する……だって?
その触感の不可解さに、ぼくはいささかぎょっとした。自分はいったい何を、考えているのだろう。
頭の奥がかっと熱くなる。ぼくは自分の歩みを、まるで未知の生物でも眺めるかのように観察する。
これは、諦めなのだろうか。
それとも、考え続けることでまだ抗おうとしているのだろうか。
しかし、目的のない歩行はわだかまった気持ちを解きほぐすには十分だった。静かな風に後を押され、ぼくはいささか足早に進んでゆく。
行く先には、細い街灯がぽつんと一つあるだけだ。それが未来を暗示しているような気がして、ぼくは生暖かい泥を胸に抱いたような気持ちになった。
やがて目に入る見慣れた風景。
ああ、冷蔵庫にビールは冷えているだろうか。


果てしない家々の列の一つに、ぼくは足を踏み入れた。
ずいぶん古びた、静かなアパルトマン。白色の壁がひどく煤けているところを見ると、建ってずいぶん時間が経っているに違いない。
糸くずが寂しく床に舞い、それを踏みつけるようにしてぶちの猫が漫然と歩む。
何とも静かだった。虫の声一つしない濃い闇を、階段から吹き込む風が通り抜けていく。
そうしたさびれた廊下を突っきり、一番奥のドアの前でぼくはゆっくりと息を吐いた。
雑念が消え去ると、嘘のようにあたりは澄み渡っていく。緩やかな呼吸。心地よい微風。
そうすると頭をゆったりとした旋律が流れ始めるのだ。気持ちが落ち着いてくるのを感じて、ぼくは煙草の火を消し、あわてないよう気をつけてドアを叩く……。
静かであることは実に重要だった。
今のぼくの精神はひどく脆弱で、物音にすら耐えれない。
……ぼくは、たとえるならば闇から突然出てきた囚人。
いきなりのことに戸惑って、ふらふらさまようしかない矮小な存在。
世界に対するおびえはある。
しかし日の光への憧憬が、どうしようもなくぼくを抉っていて。
眼を閉じたい。
この美しい世界から消え去ってしまいたい。
そうすれば苦しまずにすむのだ。
自分の不整合を直視せずにすむから。
……だけれど、ぼくは踏み出す。
その一歩さえ苦しいというのに、それでも尚、ただ奪うだけのために。
……奪うだけのために。
右手を、律動する右手を握りしめ、静かに戸を叩く。こつこつと、快いノック音と共に心臓の不随意筋が時を刻みだす。
「……はあい」
少し湿気を含んだ声が、柔らかな暖気となって心地よく僕の耳を包み込んだ。
「ぼく、だけど」
静かに言うと、中ではしばらくがたがた物を動かす音がした。片付けているのだろう。
ぼくは何もいわずに、ただじっとドアの前で待つ。待つ……。
ドアの木目を見つめながら足をとんとん床に打ちならして、ぼくは待ち続ける。
片付け。
思考の始点から、無意味な連想があふれ出す。
ぼくは彼女の部屋に残してあった小さな白乳色の置物を思い浮かべていた。
小さな鳥であるようだった。しかしあんまりずんぐりして不格好だったので、まるで達磨のように見える。
あれはぼくのお気に入りだった。時々。机の上にあるそれをなんとなく触っていることにはっと気付くような。埋没した日常の風景。
そうしたものに囲まれながら彼女は今片付けをしているのだろう。
片付け。小さな雑巾。伸びやかな彼女の背中。
ぼくはそこまで考えていささかどきりとした。
日常、木漏れ日。そうしたものを思い出している自分に気がついたから。
生活、夕暮れ。そうしたものを思い出している自分に気がついたから。
これを最後にぼくは、人間ではなくなるというのに。
今更過去を懐かしむなど愚かしい。
ぼくは今を生きている。
それでも、このときぼくは迷っていた。
立ち去ろうか、それともさらに踏み出してしまおうか。

ややあって、緩慢にドアが開いた。ふわりと生暖かい風が吹き込み、そうしてぼくは静かで落ちついた部屋へと案内される。
部屋の中央にこじんまりとした机が一つ。それからまわりに棚がいくつか。
彼女が趣味でやっているトールペイントが、部屋の隅のめだたないところをひっそりと飾っている。フローリングの床には埃ひとつ積もっていない。
色彩にとぼしく、しかしひどく愛着の湧く部屋。
……体の毛がじわりと立ち上がってくる。
最初にこの部屋に来た時の、あのぴんとした緊張。
ある意味、今の気持ちはそれと同じなのだ。
ぼくはこれから最後の仕事を片づけなければならない。
ぼく自身のために、踏み出さなければならないのだ。だがそれには随分な決心と勇気が要った。それでも、
一生懸命生きる。
彼女が教えてくれたそのことを、ぼくは忠実に続けるだけ。
緊張の中でぼくは静かに拳を握り、何か得体の知れないものに耐える。それだけでは内臓を這いまわる感情に耐えれないから、ぼくはきょろきょろ辺りを見回した。
彼女の部屋には、いつもと特に変わった様子もなかった。ただ、どこかくすんで見えるのはぼくの思いすごしなのだろうか?いつもこの部屋にあったひょうきんな明るさは、今のぼくには感じられなかった。それはぼくの気持ちに起因しているのか、それとも。
彼女は、本心から悲しんでくれているのだろうか?
そう思うとなんだかひどく嬉しかった。
ぼくはまだこの世界に住んでいるのだから。
彼女の世界に。
でも、それがほんとうなのか確証は持てていなかった。
そんなのぼくの思いすごしなのかもしれないじゃないか。
漠然とした不安と喜びとが重なって結局ぼくはただ陰鬱になっただけだった。
「どうぞ。座って」
いつの間にか彼女が僕の後ろに立っていた。ぼくは生返事をして、片付いた薄緑のソファに腰をかけ、彼女と向き合う。
いつものくだけた様子はなく、ぼくはただ出された紅茶を飲むしかできなかった。紅茶は甘く苦く、さらりとぼくの体に浸透する。それでも、この気詰まりな感情は去ってくれそうもない……。
彼女の着ている服の、明るい青がぼくの眼を射す。下界の光がぼくの眼を射すように。
彼女におびえている自分を嘲りつつ、ぼくはただ黙って彼女から視線をはずし、ゆっくり部屋を眺めまわした。
部屋はすっかり片づいている。ここの床にはいつ来ても塵が一切見当たらないのだ。
……こうしてふと考えてみると、ぼくは未だに乱雑な部屋を見せられたことがない。それは悲しむべきことなのだろうか。ぼくでは結局彼女の内側に入っていけなくて、それもまた今の激情を構成しているというのか。
だけれど、ぼくにはもう時間はない。
でも、それなら彼女からも時間を奪えばいいだけの話で。
入れなかったのなら、これから入っていけばいいじゃないか。
今のぼくにはそれができるのだ。
このときぼくはためらいをなくしたのかも知れなかった。

無言の中、何度か彼女は席を外した。それは実際、お茶請けを持ってくるような些細なことだったけれど、そのたびにぼくはあの身を締め付けるような緊張に苛まれた。
どうしてぼくはここに来てしまったのか、という深い裂傷がぼくを静かに埋め尽くす。
傷つくことが許されるかは別として……。
ぼくはそこで、恐ろしくなって思考を止めた。
象の歩みのような長い時が通り過ぎる……。
それは時間のない今のぼくにとって苦痛だった。
いつものような軽口が叩けないと、この空間はここまで気づまりになるものだったのだ。けれど、そんなことはもう気にはならなくなっていた。
奪えばいいのだ。拘束してしまえばそれで済むのだ。
それでも律動する右腕に耐えられなくて、ぼくは無意識にあの鳥の置物を探していた。
でもそれはいつもの位置から消えていて。
ぼくはさまよう視線を彼女にあてるしかなかった。
彼女はうつむいて黙っている。
何を考えているのだろうか……。
知りたい。
でもぼくにはもう知ることができない。
聞いてあげたい。
でもぼくにはもう聞いてあげることができない。
ぼくにできるのは、ただ奪うことだけだった。
そのことを考えるのに、ためらいはもはやない。
愛は惜しみなく奪う。

……紅茶がなくなり外がすっかり暗くなると、彼女は憂いを帯びた瞳をようやくぼくに向けた。
「……それで、あれはどういうことなの。もう会えないかもしれないって」
静かで、落ち着いていて、はっきりとした意思がかすれた音から見え隠れするような声……。そのあまりに悲しい声にうたれて、ぼくはしばし呆然としてしまった。
彼女が、あのいつも朗らかな彼女がこれほどに悲しんでいる……。
自分と会えなくなる。
ただそれだけのことのためにこんなにも悲しんでくれている。
それは素直に喜んでいいことなのかもしれない。
ずっと疑問を抱いていた自分の存在価値が多少なりとも認められたのだから。
でも。
あまりに遅すぎるんだ……。
右腕の律動。囲まれ、変えられ、ぼくは何もかもの根拠を失った。
あまりに遅すぎるんだよ……!
だとしたら。
ぼくはやはり奪うより他ないのだ。
それしか、ぼくがぼくのまま生きる方法はない。
致し方のないことだった。
あらゆる道徳規準はぼくの前から消え去り、代わりに本能とも言うべき堕落がぼくを突き動かす。
我々は所詮盲目的に生きるより他ない。
一瞬の冷静な感想も、激情の渦に押し流されてしまう。もう戻れなかった。
悲しいのならずっと傍にいてほしい。
どこか知らない遠くの彼方へ、君を攫っていこう。
「ぼくは……」
静かに口を開く。しわがれ声が出るかと思ったら、予想外にくっきりとした声が出てぼくはいささか面喰った。
「ぼくは、獣になります。」
彼女はゆっくり大きく目を見開く。
そんなに驚くこともないのに、と思いながらぼくは静かに腕を膝の上に置いた。
だが、彼女にもこれが冗談の類でないことくらいわかっているのだろう。
「何、それ」
彼女は声を震わせた。それがどの感情から来るものなのか、ぼくにはわからない。
「それって、どういうこと?夜に二人きりでいることを揶揄してるわけ?」
ぼくは静かにかぶりを振った。そのような確かめは意味のないことなのだ。
……彼女が信じないのも無理はない。
何せぼくもまだ、完全に信じることができていないのだ。けれど、ぼくの手元には、はっきりとした証拠が厳然と存在するのである。
……右手の律動は激しさを増す。肉を食い破りそうな勢いで、何かが蠕動する。
まるで自分の存在を示すかのように、じくじくと蠢く。
それには気付かないのか、目をそらして彼女はふうとため息をついた。
「……それで、そんなばかげたことが、あなたが去ってゆく理由なのね」
ぼくはこくんとうなずいた。
「あなた電話でも言ってたわよね。自分が黒い毛むくじゃらの、獣になるって」
ぼくはこくんとうなずいた。
「……私を、馬鹿にしてるの?」
ぼくは……。
そんな風に疑われるのが悲しかったのではない。ただ、どうしようもない衝動が胸を衝いて出た。
いつぼくが君を馬鹿にしたというのか。
あれほど真を囁いてきたのに。
目の前が暗くなり、ぼくは衝動を吐きだす。あたかも、獣の如く。
「そういうことなら、証拠を見せるよ!ぼくは、」
ぼくは……今まで隠していた右腕を明るみにさらす。
ここ数日忌み嫌い封印してきたそれを、彼女の目の前にさしだす。
真正面に突き出されたそれを見て、彼女は思わずひっと叫んだ。短く鋭い、はじめて聞くような叫び。
なんという恥部……。
美しい彼女との不均衡。ぼくはすでに、この右腕をさらしたことを後悔していた。
それは、最初の一瞬黒い塊に見える。だがよく見たまえ!それには黒く長い獣毛が波打っている。縮こまった指の先には長く汚らわしい爪が生えてるのだ。それらのもとにある薄汚い皮膚。そして、すべてを覆うゆっくりとした律動。
世界がその黒色に収斂していくさまをぼくは見つめる。
そうして、その異常な塊を、ぼくは改めて名付ける。見たままの形で、あるいは何かを象徴しながら、自嘲気味にその腕を名付ける。
獣の、腕。
ぼくが人間でない何よりの証拠。
ぼくがもっとも憎むべきもの。
しかしそれは、皮肉にもぼくの一部であるのだ。
一部であるが故に、切られれば痛みを伴うしそんなことはしたくない。
切って落としたとしても、運命を変えられるわけではないから。
一部が全体を表す、ということを信じるのならぼくは獣だった。
……つまりこの腕を憎むことは、ぼく自身を憎むことだった。
人間であることが自己嫌悪を生む、愚かしい二律背反。それでも、ぼくは這いずりまわって生きていきたかった。
人間のまま死ぬ、などという発想は不毛だ。獣であってもぼくはぼくだし、過去一切を諦めるには自己保存の欲望が強すぎた。
だからぼくは泥にまみれて生きていく。
人間社会の中の自分を捨てて、同時に自分への憎しみを捨てて、ただの「ぼく」として生きるのだ。
自分と社会をはかりにかける。
……そうしてぼくは、二人だけの世界を選ぶ。
彼女がいれば、人間などいらない。闇の中で抱き合うことが、ぼくの生きる唯一の方法だった。
己の気持ちを確認して、ぼくはじっと彼女を見つめた。
しかし、この腕は彼女に相当なショックを与えたらしかった。
彼女は何度もかぶりを振る。ありえない、と何度もつぶやきながら……。
まずは安心させないといけない、と思った。
ぼくは静かに右腕を長袖に隠す。そうして、彼女が落ち着くのをただじっと待った。
「……大丈夫かい」
彼女は首を振りながら、疲れたようにどっとソファに身を預けた。
「なんなの、それ。どういうことなの」
その声を聞いて、ぼくは現実を語らねばならない、と思う。知ってもらわねば奪うこともできないのだ。
ちょっと長い話になるけど、とぼくは前置きして話し出した。
思い出したくもない記憶が蘇るけれど、話をやめるわけにいかなかった。
「この前Tの別荘に泊まりに行ったのは知っているだろう?長野の奥の方にある、静かなところさ」
彼女は少し思い出すようにして、それからああ、と低くうなずいた。
「ぼくとTと、Tの細君と子供さんでね。秋のあそこは景色が素晴らしいんだ。といっても、ぼくはずっと閉じこもって原稿と格闘するために行ったから、それほど外には出ていないんだけれど……。ほら、覚えているかい?君をモデルにした小説さ。可愛いショップ店員が大きな陰謀を食い止めるやつ」
彼女はそこでやっと少し笑った。
「なんだ、あなたほんとに書いてたの。私と黒い陰謀なんて、釣り合わないにもほどがある」
「書きたかったんだよ。なかなかいい風にできてるんだ。正直今までで最高のやつかも知れない」
それは本当だ。あれほどスムーズに書けたのは久しぶりだった。あんなことに、なるまでは。
「……話を戻すと、ぼくが異変を感じたのは4日目のことだった」
彼女は再び真剣な顔になった。それを見て、ぼくは何かが胸の奥でうずくのを感じる。しかし、それを無視して旅行話でもするような調子で話を続ける。
「ぼくはほら、原稿は直筆で書くようにしているだろ。万年筆を狭い一室で走らせ続けていてね。ちょうどインクが切れたから、マホガニーの机を漁っていたところだった。
……その時、急に右腕がびくんって大きく跳ねたんだよ。そのおかげでインク壺を床にぶちまけちゃったんだけれど、まあちょっと腕を酷使しすぎたのかな、なんて思って、ぼくは仕方なく後片付けを始めたんだ。右腕はすっかり黒いインクで汚れてしまってたから、ぼくは洗面所でそれを洗い流した。ところがね、……。」
ぼくはそこで一旦話を止めた。思い出したくない光景だったから……。
「その、黒が……黒い染みが全然取れないんだよ。それどころか、どこまでもどこまでも広がっていく。熱を帯びて、びくびく蠢きながら」
彼女はわずかに息をのんだ。だが、彼女にもあの時の言いようのない恐怖はわかってもらえないだろう。自分の存在を侵食される、恐怖。
ぼくがぼくでなくなる。
こんな恐ろしい冗談はないだろ?
叫びたくなるような恐怖がよみがえる。
ぼくはそれでも無理に普通の声を出すよう心がけていた。
「……必死に水をかけていたらその染みはだんだんうっすらとしてきて、よく見ないとわからないようになったんだ。だからぼくは、疲れのせいで幻覚を見たんだ、と思った。ところが……それから毎夜、右腕が勝手に動くようになっていったんだよ。悪夢にうなされてふっと起きると、右腕がぼくから離れるようにずずずっと……鋭い痛みが走って……」
彼女は目を覆ってしまっていた。これではできの悪い怪談みたいじゃないか。だけれど、これは実際にぼくに起こった出来事なのだ。
「あんまり怖いもんだから、ぼくはTに相談してね。Tは自分のことのように心配して、すぐ病院に行けと言った。腕の染みを見て思わず眼をそらしてたけどね。その時は、もう腕のほとんどが黒くなっていたから……。
ぼくは近くの病院に行った。すぐに大病院への紹介状を書かれたよ。医者まで目を覆ってね、これはひょっとして腐ってるんじゃありませんかって。ぼくはひどく納得したもんだけど。……それで腕を隠しながら電車に乗り、ぼくはK市民病院に行ったんだ。それからあっという間に入院でね……君に連絡したかったけど、ちょうど君のお父さんが危ないときだっただろう?それで、余計な心配かけないように黙ってた」
彼女は眉をひそめて僕の話に聞き入っていた。ぼくは煙草に火をつけ、ふーっと大きく吐き出してから話を続ける。
「検査結果が出たのは1週間後くらいだったかな。狭い診察室に通されて、一枚のレントゲンを見せられた。医者……若くてやり手そうな、ほらYに似ている感じの……は、それをいちいち指さして、丁寧に説明してくれた。素人目にも分かったよ……これは、人間の腕じゃあない。骨の形とかがおかしいし、あるべき場所にないんだ。それで、医者は静かにため息をついて言ったんだよ。
『**さん、あなたはウンベルド氏病にかかっています。』
『ウンベルド氏病?』ぼくは驚いてたずねた。『そんな病気、聞いたことありませんよ』
医者は勿体づけるようにくびを振って、『これは一般の人には知られていない病気なんです。滅多に患者は出ないし、出ても……』
そこで医者は言葉を切った。ぼくは空恐ろしくなって、下を向いて震えていた。
『……残念ながらこの病気の治療法は確立していません。いや、進行を遅らせる手段すら見つかっていないのです。』
『進行すると、どうなるんですか』ぼくは愚かにもがたがた震えながら聞いていた。藁にもすがるような思いってのを、はじめて経験したよ。
『単刀直入に申し上げて、あなたの体は重度に変形します。全身に黒い毛が生え、爪や歯が異常発達し、最後には尾てい骨が成長してくるでしょう』
『それって……』
『その時までに正常な意識が残っているかもわかりません。この病気の末期患者には、食欲と性欲しか残らないという記録があります』
ぼくは場違いにも、医者はこんなにはっきりとものをいうものなのかって思ってた。もう少しましな告知の方法があるんじゃないかって……だけど、それは当然のことだったんだな……
『……これはますます一般には知られていないことなのですが、法律上……この病気の末期患者は一切の人権を、失います』
医者はマスクに隠れた顔を歪めて続けた。あたかも刑執行人のように……酷薄な笑みを浮かべて……
『正確には正常な判断能力を失うか、否かというところで判断されますが……完全に獣となった時、患者は人間としての権利を失効します』
医者はもはやはっきりと、獣という言葉を口にしていた……。
『馬鹿な!!』」
さすがに叫んだよ。そうとも、これは人間の尊厳に対する挑戦でしかない。あたかも中世の差別社会に迷い込んだみたいじゃないか。
狼男……。
途端に中世、という言葉からそれが連想されて、ぼくは身震いした。今ぼくがかかっている病気は、まさしく狼男のそれではないか……。
医者の白衣が妙にまぶしかった。医者はお気の毒ですが、と平坦な声で言って続けた。
『もちろん、判断能力の欠如や身体の奇形によって人権が失われるなどということはありえません……しかしこの病気の末期患者は……生物学的に完全に別個の生物となりまして……』
『違う!ぼくはずっと死ぬまで人間だろ!人間として生まれてきたんだ、変わることなんてありえない……』
憲法の条文がぐるぐるぼくの頭をめぐっていた。でもそれはぼくの手助けにはなりそうもなかった……。
『……幸い、苦痛も無く緩やかに記憶を失っていかれるでしょう……その点では脳死と同意義だと考えてくださって結構です……。』
記憶を失ったら、ぼくはぼくでなくなってしまうのか。肉体がそのあとも存在したって、ぼくはその肉体ののちのちを心配しなくてもよいのか……。考えると何も分からなくなって、ぼくはゆっくり肩を落とすしかなかった。
『……当病院では、最後まで万全なケアをさせていただきます……。ですから、残りの人生のことをゆっくりお考えになっては』
ぼくはゆっくりうなずいて、ただ、うなずいて……。
それからの生活は、一種の監禁生活だったよ。食事はいいものが出るし、何でも取り寄せられる。でも外部との接触は一切禁じられてて……。出版社の方にも、折り合いがすんだみたいだった……。そんなわけで、辛い治療、いや一種の人体実験を除けば刺激のない毎日だった。そんな環境でぼくは毎日を腐った頭でのろのろと過ごしていたんだ。
右腕の方はだんだんひどくなっていって……。そのうち、全身に転移すると、聞かされた。絶望と無気力のはざまで、ぼくはなるべく何も考えないようにしていた。
……でも、君の姿は脳裏から消えなかった。
もう一度会って、せめて別れだけでも告げたい……。でも、こんな状態になったぼくを、君は受け入れてくれるだろうか……。悩んだ。毎日そればかり考えていた。感情と感情のせめぎあいで、ぼくの心は壊れそうになっていた……。
そして、脱走した。
食事のときの一瞬のすきを突いてね……。長い間の入院生活にもかかわらず、不思議とはやく走れたんだ……。そう、まさにぼくは獣になっていっているのかもしれない……。
それで、あとは君に連絡を取って、ここに来たというわけだよ」
……長い話がようやく終わると、彼女はうっすらと涙を浮かべていた。それはおびえているのか、それとも悲しんでいるのか……。
ひどく長い沈黙の後に、ようやく彼女は口を開いた。
「ウンベルド氏病……あはは、何それ。そんなの聞いたことない。あなた、その病院にかつがれているんじゃないの?」
「そんなことをして、向こうはどんな得をする?入院費だって無料なんだよ。だいたい、この異常な腕は事実なんだ……」
「どうして!」
彼女は叫んだ。これ以上ない声量で。初めて聞くような調子で。
「どうして、あなたじゃなきゃ、いけないの……」
それから彼女はテーブルにつっぷして、泣いた。何かが崩れていくような、深い深い泣き声だった。
ぼくは彼女の肩を抱こうと思ったけれど……あの薄汚い右腕がぼくの行動を阻んだ。ぼくはただ黙って見ているしかなかった。
本当に、辛かった。
だから、代償行為としてだったかも知れない。ぼくは人間としての最後の痕跡を、彼女に見せる気になっていた。
「……あのさ、これ」
ぼくは持ってきたカバンの中から原稿用紙の束を取り出した。長く入れっぱなしにしていたため、随分よれよれしている。
「あの別荘で書いた小説だよ。できれば、読んで欲しい」
彼女は泣き疲れた眼をこっちに向けた。それから無言で、原稿を受け取り読みだした。
……居心地の悪い時が流れた。緊張とも違う。怯えとも違う。もっとなんだか、底に沈殿していくような気持ち……。ぼくは苛立っていた。でもそれは、不思議といやなものではない。
どうしてわざわざ病院までこの原稿を持ってきたのか……。ぼくは自分の行動が不思議だった。でも、彼女に見せてしまうと、それはパズルのピースのようにうまく現実に合っていた。
手持ちぶさたで、ぼくはずっと飲み残しの紅茶を眺めていた。紅茶の表面はかすかに渦を立てて動いている。
……どれだけ経っただろう。彼女はふう、と息をつくと原稿用紙を置いた。その頬に新たな涙の筋を発見して、ぼくは狼狽した。
「……なに、これ」
彼女は気の抜けたような声を出した。
「……陰謀なんて、まったく出てこないじゃない。これじゃあ、私の私生活記録だわ」
ぼくは静かに言った。
「久しぶりに君と長い間離れていたから。陰謀なんか、どこかへ吹き飛んでた」
「……まったく、あなたらしいなあ」
彼女は笑いをこらえるようにして言った。それを見て、ぼくは密かに安心する。
「趣味とか行動パターンとか……よく覚えてるわね。あなた、私のストーカーかしら」
まあね、とぼくは笑って言った。
「……ううん、それだけ長い時間を一緒に過ごしてきたんだよね……」
彼女はそう静かに言うと、原稿を持って、狼狽しているぼくの横に座った。
「ああ、長かったな」
ぼくは狼狽を隠して、そうしみじみ言う。
長い時間だった。本当に、この3年間は長く充実した時間だった。
いろいろな思い出がぼくの頭を過る……。
春。ぼくは彼女と出会った。
夏。ぼくと彼女はいろいろ話した。
秋。初めてぼくらは自覚した。
冬。ずっと一緒にいた。
それからの、一瞬が永遠のような3年間。
ぼくは。
その時何を考えていたのだろう。
彼女の隣で、彼女の何を愛していたのだろう。あまりにも長く居て、考えもしなかったことだけれど。
でも、その気持ちははっきりとあって……確固たるものとして幾度も自覚してきて。
そう思った瞬間、ぼくは違和感を感じる。
胸の割れ目から忍び寄ってくるような違和感。じわりじわりと侵食するおぞましい疑惑の渦。
愛していたなら、今のぼくは何をしている?なぜ彼女から奪う必要があるんだ?
彼女と一緒にいて、ぼくは何を考えていた?
ぼくは彼女の幸せのために生きていこうとしたのではなかったのか?
どうしてそんなことを忘れていたのだろう。
奪って生きるなんて、ぼくは何者だというのか。どうしてぼくはここにいる。大人しく去れば、彼女はいつか幸せになれただろうに。
彼女の幸せが、人間だったぼくの唯一の願いだった。
彼女の幸せが、ぼくが彼女の前にいていい理由だった。
どうしようもない激情に胸をかき毟られて、ぼくはのたうつ。そうして、己を保つためにわずかに残った心の中で喚く。
否!彼女への愛は、博愛ではないのだ。
ただ幸せを願うなど、それこそ真に彼女を愛していない証拠ではないか。
結局、愛は所有欲に結びつく幻想の楼閣でしかなく、ぼくはそれに準ずる他ないのだ。
それに、ぼくはもはや人間ではない。自分の行動の正当性は、自分が決める。
ただ残った愛を元手に生きていくことが、ぼくに残された道だった。
そう思うと気は楽になった。
奪い、所有しろ。そうしてぼくは生きる。
愛に準じながら、もの言わぬ獣になって、もがきながらでも生きる。
……かすかに隣の彼女の香りが漂ってきた。ぼくは幻想から覚めて、体をわずかに弛緩させる。
ややあって、彼女がぼそりとつぶやいた。
「ほら、この最後のほう。ひどく字がゆがんでるけど、これ病気の右腕で書いたの?」
「……うん。病院でこっそり。会いに行く前に、なんとしても完成させたかったから」
「そっか……」
あとは静かだった。久しぶりに味わう快い空気にぼくは酔いしれた。
陳腐だけれど、そばにいるだけで良かった。
けれども、言わねばならなかった。
そうしないと、気持ちに区切りをつけられないから。
最後の罪悪感を解き放って、ぼくはもう愛に身を捧げよう。
「……ぼくはね、実はこの小説を書いたことに罪悪感を感じているんだよ。こんな汚れた腕で、君のことを書いてしまった。ひょっとすると、これは天罰なのかもしれない……」
「何言ってるの」
彼女はぼくの眼を見て少し怒ったように言う。……今日は狼狽させられてばかりだ。
「そんなのどうでもいい。私は、嬉しかった。そんなどうしようもないこと言っちゃ駄目だよ。あなたの腕は……汚れてなんかない」
彼女はゆっくり、しかし迷わずにぼくの右腕に触れた。ぼくは思わずそれを払おうとしたけれど、彼女の強い瞳に射すくめられて動けない。
一瞬のためらいの後に、彼女は長袖をまくった。
黒い獣の腕が外気にさらされる。
びくんびくんと、蠢く。
ぼくの胸に去来する絶望。
もし……彼女にまで拒絶されてしまったら。
でも、彼女はもう怖がらなかった。彼女の長い髪が腕にかかり、頬が押し付けられる。

「……うん、あなたの腕だわ。間違いない」

瞬間、世界が止まったかのように感じられた。
涙が……ぼくの眼にあふれ……。
己の強い感情に打たれて、ぼくは動けなかった。
彼女はぼくを認めてくれた。その事実がぼくを突き動かす。
予期していなかったわけではない。しかし、ぼくは思っていた以上に嬉しかった。
どうしようもなく醜い獣に、これから変貌していくというのに。
なのに。
ぼくは今愛されている。
それはぼくそのものが愛されているという確かな証左だった。
再び、さっきのよりずっと美しい時が流れる……。このまま永遠に過ごしたいと思わせるくらいに、静かな何かがぼくを満たしていた。。
幸せだった。どうしようもなく、悲しいくらい、幸せだった。
……ならば、その幸せはどこから来たのだろう。
そう考えて、ぼくは慄然とした。
これは、いまのぼくが、感じてもいい感情ではないのではないか。
どうして幸せなのか。
愛されているからじゃないか。
彼女に、愛されているからではないのか。
でも、この愛はぼくの考えていたものと同じなのだろうか。所有欲の延長として愛は存在しているのだろうか。
反芻すると、答えはすぐに出た。
違う。断じて違う。
その否定の声は、自分の外に漏れていたとしたらさぞかし悲痛なものになっただろう。
所有だと?愚かしい。
そんな一方的なものが、こんなに人を幸せにするもんか。
向き合って。幸せを願って。ただそばにいること。
二人でいることが愛だった。
なのに、ぼくはさっきまで何を考えていたのか。
ぼくは二人で生きるつもりで。
しかし己のみによって生きることを考えていたのだ。
なんという矮小。
なんという卑屈。
与えることもできないぼくが、何かを奪うなどあまりにも愚かしかった。
一人で愛を決定づけ。一人で何もかもを決めて。
あまりの愚かさに、ぼくは心で泣く。とつぜん道の果てに放り出されたような孤独感。
そしてやみがたい後悔の念。
どうして、どこで間違えたのだろう。ぼくはなぜこんなにも失わなければならなかったのか。
……すべては他でもない、ぼくのせいだった。
今、すべてを受け入れてくれた彼女に、ぼくは何かを返さなくてはならなかった。
……でもそれすらぼくには許されていない。
悲しみは去って、ぼくの胸には深い泥の塊だけが残っていた……。

愛しています。
でもそれには遅すぎたようです。

ぼくは静かにうなだれ、獣の腕を優しく彼女から取り上げる。そうして、沈黙の中に心を浸す。
その時だった。
視線の先に、白くこじんまりとした置物が入ったのである。
それはソファの下に、ぽつんと取り残されるようにして転がっていた。
ぼくはそれを恐る恐る左腕で取り上げ、そうして黒い獣の腕で、白い置物を擦る。愛おしさが立ち上がってきて、やがて泥の塊を覆い隠した。
やっと存在に気付けた、小さな充足感。それは決断するのに十分な重さだった。
ゆっくりと頭を振り、ぼくは静かにごめんといって立ち上がる。
彼女ははっとして、ぼくの腕を引いた。かすかな力がぼくを止める。
そうして、彼女は昔のようにぼくの手を取り、細くささやく。
「行っちゃだめ……行っちゃだめよ……」
かすれた悲しい声で。
人間の、声で。
「……ぼくは、もうすぐ人じゃなくなるんだぜ。君の事も何もかも忘れて、唸りながら這いまわるだけの生き物になるんだよ?」
「そんなの、構わない。ここに、住んで。ずっと一緒にいるの」
決意のこもった声に、ぼくは決心がぐらぐら動くのを感じた。
人間が、ぼくに残った僅かな人間がもがく。苦しむ。
「でも……」
「だめよ、許さないから」
そうして沈黙が訪れた。
長い間、ぼくは考えていた。
ぼくはどうすればいいのか。ぼくは……ぼくは……。
しかし、やはり答えはたった一つだった。
自分以外に目を向ければ、こんなにも簡単なことだったのだ。
そんなことに迷う時点で、ぼくは愚かだった。
「……わかった」
「ほんとに?ほんとに居てくれるの?ずっと?」
「ああ、約束する」
それだけで、彼女は顔をくしゃっと歪めた。
「きっとだよ……もう私を、おいてかないでね……」
「ああ、約束する」
ぼくは優しく彼女を座らせた。
「じゃ、切れた煙草を買いに行ってくるよ」
ふっと彼女の表情をかすめた疑惑を見て、ぼくは静かにかぶりを振る。
「ぼくは、今まで一度も嘘をついたことがないだろ……?」
彼女は、それだけで、たったそれだけでほっと安心したようにうなずいた。
こんなに信じてくれるなんて。
ぼくには余りにも勿体ないことなんだな。
「じゃあ、ビールでも用意して待ってるね……」
何も疑わずに、彼女はそう言って笑う。
ぼくは彼女に向って微笑み返し、それから静かに部屋を出る。
コーヒーポットが静かに湯気を吹いていた……。


 秋の夜は、しんしんと底まで冷えていた。暗い闇を、少ない電灯の明かりがかすかに照らしている。静かな冷気に身を震わせ、ぼくはもう一度アパルトマンを見つめた。
……もう二度と戻らない場所。
さぁっと雨が降ってきた。それは、彼女の部屋を見つめるぼくの眼に容赦なく入ってくる。
路面が濡れて、月明かりに幽かに映える。遠くからかすかに、巣を目指す鳥の鳴き声が聞こえてきて。
そうして、ぼくの胸にあるのは罪の感情だけだった。
……ウンベルド氏病は、伝染病なのだ。
めったなことでは移らないけれど、ごくごく低い確率で感染するらしい。
ぼくは、病気を彼女に移そうとして来ていた。
長い間一緒にいれば、移るだろうと、そう思って。
「ぼくは、なんて人間なんだ……」
いや、違う。こんなことを考えるぼくはもう人間なんかじゃない。彼女と対等になろうとこんなことをするなんて。彼女も獣になれば、ずっと一緒にいられるなんて考えて……。
今では、自分が病気にかかった理由もはっきりと分かっていた。
ぼくは、ぼく一人でいるために獣への道を選んだのだ。
ぼくは声にならない叫びを押し殺して、ゆっくりと闇に向い歩き始める。
さようなら。おやすみなさい。
身を低くかがめて……。
あたかも獣のように……。

2007/12/27(Thu)20:02:57 公開 / 山名春秋
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はじめまして、山名と申します。
この中編は、だいぶ前に「小説家になろう」様の所に投稿したものですが、よりたくさんのご意見をいただき今後の参考にしたいので、このたび投稿しました。
どうぞ忌憚ないご意見をお願いいたします。めちゃめちゃに酷評してやってください。
他の作品は、「小説家になろう」様の所にいくらか置いてあるので、よろしかったらそちらもどうぞ。(こういう宣伝はいいのだろうか……)

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