『死神が舞い降りたこの街で・第二話(2)』 ... ジャンル:リアル・現代 ファンタジー
作者:rathi                

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第一話「病院と消毒液の匂いの中で」

 これから小説を書かねばならない……。小説を……。

                   『文豪・谷崎潤一郎』の遺言



――死ぬの、どうなるのだろうか?

 過越乙乃(すぎこし めりの)がそう疑問に思うようになったのは、十歳の時に交通事故で父親を失った時からだった。
 相手は大学生で、コンパで一気のみコールをBGMにたらふく酒を飲み、千鳥足のまま乗車した。時速100キロ以上を出しながら市内を爆走し、横断歩道を渡っていた父親を轢き殺した。即死だったという。苦しまずに逝けたのが、せめてもの救いだったのだろうか。
 家族全員での夕食、GWでの家族旅行、裕福でもなく貧乏でもなかった普通の幸福に、終焉は唐突に訪れてしまった。
 それが、強いトラウマになった。しかしその反面、死について強く考えるようになった。愛情と憎しみは似たもの同士とはよく言ったものだ。
 輪廻転生しているのか、極楽浄土から見守っているのか、神に仕える身分になったのか、或いは幽霊になってまだ彷徨っているのか。
 死後の世界については、時代、土地柄、国柄、宗教によって全部違っている。どれもこれも本当かも知れないし、どれもこれも嘘っぱちなのかも知れない。
 死は誰にでも訪れる。事故、自殺、病死、老死、日常の皮一枚めくれば、そこは死に満ちている。
 だからみんな、死について考えるのだ。死んだら、どうなってしまうのか。死んだら、自分はどこに行くのか。それは、誰の為でもない。ただ自分が安心したいが為に、苦しみも悲しみもない空想の世界を作り上げるのだろう。みんなで、神を祀るのだろう。
 しかし、1+1=2のような世界共通の答えは存在しない。結局、それは実際に死んでみなければそれは分からないことなのだろう。しかし、死んだ人は帰ってこない。答案用紙を渡しても、書いてはくれない。
 ただハッキリしているのは、父親はもうこの世には居ないということ。あの日々は、もう帰ってこないということ。

 あれから七年が過ぎ、父親が居ない生活にも慣れた。しかし、今度は――。



 数学の教師である赤星先生が、黒板を叩きながら妙に甲高い声で因数分解の大事さを熱心に語っている。
 赤星先生はビートルズを彷彿させるような髪型――つまりはマッシュルームカットをしている為、生徒の間ではキノコ先生と呼ばれている。歩くと胞子を振りまくだとか、松の木から生まれてきただとか、かくれんぼしててもブタが居れば見つけられるだとか、本人の知らない所で様々なエピソードが生み出されていた。
 過越の席は後ろから二列目の為、教室内をほぼ一望出来る。あくびを噛み締める人、熱心に聞く人、教科書をバリケードにして眠る人と、実に様々だ。
 かくいう過越は、あくびを噛み締める人に部類していた。今は六時限目。これが終われば、今日一日のノルマは達成となる。
「いいかぁ!? お前らぁ!? この虚数をだなぁ、ここを……こうやって……こんな風に……」
 カツカツとチョークを鳴らし、丸やら矢印やらを書き込んでいく。教師は大きく分けて二つあると過越は考えている。理論派と、感覚派だ。この教師がどちらなのかは、言うまでもない。
 熱をあげればあげるほど動くが激しくなっていく為、辺りからは小さな声で、「また胞子が飛んだよ……」とか、「今年は豊作だなぁ……」とか聞こえてくる事が多い。その度に、過越は笑わないように我慢した。
 やがてチャイムが鳴り響き、キノコ先生は赤い碁盤縞のハンカチで汗を拭きながら、教室を出て行った。
 前の方から、「キノコ先生良い感じで炊き上がっていたなぁ……。秋だし、食べ頃じゃないか?」という声で、教室内は爆笑の渦に包まれた。無論、過越も。
 にやけ顔のまま、ぽつぽつと生徒が立ち始めた。部活組はまだ残業が残っている所為か、ほとんどが気怠そうな顔をしていた。一方明るい顔をしているのは、帰宅部の面々だ。過越も帰宅部だが、その顔は部活組よりも深刻そうだった。
「今日はお見舞い?」
 聞き慣れた声に、過越は左に視線を向ける。案の定そこには、もはや見飽きた顔があった。
「ご察しの通りだよ、キツネ」
 過越は荷物をまとめながら答えた。それにキツネと呼ばれた眼鏡を掛けた女子は、
「アンタも大変だねぇ」
と、ため息混じりに返した。
 キツネこと新美南吉(にいみ みなよ)は、過越と幼馴染みである。家も二戸隣と非常に近く、幼稚園からずっと一緒だ。
 髪はミドル・ショートで、眼はあだ名と反し、少し垂れている。なのにキツネと呼ばれているのは、お稲荷様と好物が同じ為だ。
 スタイルが良く、こざっぱりとした様子の所為か男子に人気がある。その辺は過越も同意するが、顔もモデル並だと言う意見にはどうしても賛成出来なかった。幼少の頃からこの顔と付き合っているのだから、見飽きた自分の顔のように、悪いとも良いとも思えないのだ。
「そういうキツネは? 画材を持ってないけど、部活には行かないの?」
 南吉は美術部に所属している。部活に行くときは必ずロッカーにある画材を持って行く筈なのだが、今持っているのは紺色の鞄だけだった。
「いんや、今日は行きたい所があってね。これこれ」
 そう言って財布から取り出したのは、今開催している美術館のチケットだった。
「あー、それね。誰のを展示してるんだっけ? ゴッホ? ピカソ?」
「それ、明らかに絵を知らない人の発言だよ……。ヒントはこれ」
 南吉は片手を高々と掲げ、後ろに顔を向ける。
「……自由の女神?」
「どっちの?」
「どっち? 東京かアメリカかってこと? どっちも同じだろうに」
「あながち間違いでもないのが嫌だなぁ……。正解は、『民衆を導く自由の女神』ね。一応、ドリーの言う自由の女神の原型というか、元になったのがこれなのよ」
「ほぅ、なるほどねぇ」
 さすが美術部、という所だろうか。過越は感心して頷く。しかし、気になるのが一点。
「それはさておき、頼むから僕……いや、俺をドリーと呼ばないでくれ」
「いいじゃない。世界で一番有名な羊の名前よ? 名誉に思わなきゃ」
 過越がドリーと呼ばれるようになったのは、中学からだ。同級生の男子に、いつも眠そうな眼をしているからお前の前世は羊だ、と良く分からない理屈を言われ、それが転じていつの間にかドリーと呼ばれるようになっていた。
 もっとも、高校に入ってからはそう呼ばれることはなかったのだが、今年――二年生になって南吉と同じクラスになってから、またそう呼ばれるようになった。原因は勿論、南吉がそう呼ぶからだ。
「ドリーはドリーでも、ドリー・ファンクとか言われないだけマシじゃない? きっと、ウィーって馬鹿にされてたと思うよ」
 南吉は再び手を掲げる。ただし今度は、親指、人差し指、小指を立てて。
「そりゃスタン・ハンセンだ。ドリー・ファンクはイチバーンの人だよ?」
 そう過越に指摘され、南吉は手を挙げたまま固まり、気恥ずかしそうに手を降ろした。
「えー……あ、そうそう。だから、『民衆を導く自由の女神』の人よ。誰だか分かった?」
 南吉は無理矢理話を戻した。分かり易すぎる誤魔化し方だ。
「知らないよ、絵は詳しくないし。……ゴッホ?」
「少なくともゴッホではないよ、ドリー君」
 南吉はにんまりと笑う。これでおあいこだ、と言っているようである。
「ドラクロワよ、ドラクロワ。聞いたことない?」
「のらくろ?」
「犬じゃねぇーっての。古いよ、ネタが。今日日の高校生が出す名前じゃないよ、それ」
「知ってるお前も似たようなもんだよ」
「そりゃごもっともで」
 南吉は唸ったままチケットを見つめ、
「いや、今日ドリーの予定が空いてるなら、一緒に行こうかと思ったからさ。面倒臭いとか舐めたこと言ったら無理矢理連れて行こうかと思ったけど、まぁ、お見舞いならしょうがないか」
「明日は?」
「残念。今日で終わりなのよ。昨日誘えば良かったなぁ」
 残念そうに言いながら、そのチケットを財布に戻した。
「おば様に伝えておいて。早く元気になってくださいって」
「了解。ついでに今日あったことも全部話しておくよ。スタン・ハンセンとドリー・ファンクを間違えたバカが居たって」
「ゴッホしか知らない美術オンチに言われたくないわね」
 南吉が席から離れ、他の女子を誘っているのを横目に見ながら、過越は筆記用具と小説しか入っていない鞄を持って教室を出た。

→  

 過越は、一度家に帰ってから病院に向かうことにした。少しだけ遠回りになるが、目立つよりはマシだと考えたからだ。病院の中での学生服というのは思いの外、人の眼を惹く。
 電車に乗り、母親が入院している街で降りる。駅から徒歩十分ほどなので、見舞いで通うには便利な距離だった。
 霧島病院。それが、母親が入院している病院の名前だ。市内では一番大きな病院で、大きな病気になると大概ここに回されてくる。
 この病院の周りにはコインランドリー、コンビニ、本屋と、入院するときには非常にありがたいお店が取り揃えてある。寿司屋もあり、退院した人を狙っているように見える。
 過越は病院の中に入る。病院独特の匂いが過越の鼻孔をくすぐる。一度も入院はしたことがないが、何故か奇妙な懐かしさを感じた。
 詳しくは分からないが、この病院はそれなりに古いらしい。少なくとも、母親が学生の時にはこの病院が既にあったという。その所為もあってか、壁の隅や床の隅は薄汚れており、柱もそれ相応の古さが感じられた。だが、過越はこのぐらい丁度良いと思っている。
 映画やドラマでよく見る、出来たての病院――まるで絵に描いたような真っ白い壁や床には、奇妙な恐怖感を感じるのだ。寒々しいというか、人の手が一切加わっていないその不自然な白さが、過越は嫌いだった。
 エレベータに乗り、五階(実際は四階)で降り、いつもの部屋――325号室の部屋をノックする。
「入るよ」
 白い扉を開け、過越は病室の中に入る。
 母親は去年から入院しており、その時は違う個室に居たが、半年ほど前からこの個室に移動された。
 個室の面積は三畳ほどで、住むには狭すぎるが、入院するには十分な広さだった。部屋の中は当たり前のように白で統一されており、青色のカーテンがいやに栄えて見えた。もっとも、カーテンも白かったのだが、味気なさ過ぎるので過越が看護士に頼んで変えて貰ったのだ。窓の外には紅葉の樹があり、赤々と紅葉(こうよう)している。
 過越はベットの脇にある丸イスに座り、
「母さん。今日はね、南吉と絵の話をしたんだ。知ってるだろ、アイツが美術部だってのは。それでさ、南吉が美術館のチケット持ってて、誰のを展示するんだ、って僕が聞いたんだよ。そしたらさ、『民衆を導く自由の女神』の作者だって言うんだよ。母さんは分かる? 分かるわけないか。僕と同じで、ゴッホとピカソぐらいしか知らないもんね。ドラクロワとか言う伯爵みたいな名前の人が書いたんだってさ。良く分からないけど。あ、そうそう。その後アイツ、スタン・ハンセンとドリー・ファンクを間違ってたんだよ。母さんは……分かるかな? スタン・ハンセンはウィーの人だよ、ウィーの」
 そう言って、過越は南吉がやったように手を掲げて実践して見せた。
 しかし、母親は答えない。答えてくれるのは、短い電子音とオシロスコープのような波線だけ。もう半年前から、母親は何の反応も示さなくなった。
 母親の病名は、肝臓ガン。しかし、比較的発見が早く、手術すれば治るレベルだった。入院してから一ヶ月ほどで手術が始まり、その後定期的に手術が行われていった。順調に思われていたが、事態は急変し、母親の病気は悪化していった。
 だがそれでも、治る見込みはあった。ただそれには、それ相応の対価が必要だった。
 母親は、それを拒否した。理由は、父親が残していった保険金を、全て使ってしまう訳にはいかなかったからだ。
 それがあったからこそ、過越と母親は金銭面では苦労することなく生活できた。そして今こうして母親が入院できているのも、そのお金があったからこそである。それが無くなってしまうのは、生命線を絶たれるに等しい。
 しかし、過越は母親を説得した。全て使ってでも、生き残るための手術をしようと。貧乏で苦労することになっても、死ぬよりはマシだと。母親が死ぬのは、凄く嫌だったから。
 それに対し、母親は弱々しい笑顔を浮かべ、こう答えた。
<手術しても……お母さんはもう長くないわ。分かるもの、自分の身体ですから。乙乃には、これ以上苦労を掛けたくないの……。父さんだって、文句は言わないはずよ。いいえ、言わせはしないわ。だからお願い。最後くらい……母親らしい事をさせてちょうだい>
 それから三日後、母親は意識を失った。そしてこの半年間、一度も眼を覚ますことはなかった。
「外を見なよ……母さん。紅葉が綺麗だよ。入院してから……もう……一年が経つんだよ」
 こうして話しかけるようになったのは、担当医にそう言われたからだ。外部の刺激が、母親を深い眠りから救うことが出来るかも知れないと。
 それから過越は、ほぼ毎日母親に、昔あった出来事や、今日あったことなどを話し続けた。
 映画のような、奇跡を信じて。
 
 ※

 冷たい風が過越の頬を撫でる。それで、深い微睡みから眼を覚ました。
 どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。母親の布団には、寄り掛かった後がハッキリと残っていた。
 外を見ると、既に暗くなっていた。部屋から零れる光に照らされ、闇夜に浮かぶ紅葉が不気味で、美しかった。
 時計を確認すると、面会時間はとうに過ぎていた。来てから今の時間まで、誰一人として母親を訪れなかったことがふと寂しく感じる。
 友人も、肉親も、初めの二〜三ヶ月は定期的に訪れていたというのに、今では三週間に一度見るかどうかぐらいにまで減ってしまった。
 別に、それを咎めるつもりはない。ただ、悲しいだけ。
 みんなが、母親の事を見捨ててしまったようで。まだ死んでいないのに、死んでしまったかのような扱いを受けているようで。もう……遠い存在になってしまったようで。悲しくなるのだ。
 しかし、それが何となく分かってしまう自分が、一番悲しかった。
 顔を上げると、窓が開いていた。首を傾げながら、過越は立ち上がる。最初から開けてあったのか、と疑問に思いつつ。
 窓に手を掛けたとき、青いカーテンがふわりと揺らいだ。
「え……?」 
 ふわり、ふわりと、視界の隅で黒いカーテンが過越の脇を通っていく。反射的に、過越は振り返った。
 先程過越が座っていた近くに、少女が立っている。頭には水色のバンダナをし、まるで闇を彷彿させる黒い衣を羽織っていた。髪も黒く、バンダナ以外は全て黒で統一されていた。そして右手には、少女の身丈ほどはあろうかという大きな鎌が握られている。
 その格好、その大きな鎌。連想できるものは、一つしかない。

――死神が、舞い降りてきた。

 死神は母親に向かって、ゆっくりと、そして深々とお辞儀をした。
「初めまして。私は、『蒼ざめた馬に乗りし者達』。貴女を、迎えに来ました」
――迎えに来た?
 この少女が死神だとして、母親を迎えに来たというのなら、それは……つまり、
――死ぬのか……母さんが?
 母親の身体から、蛍の光のようなものが沸き上がってくる。やがてそれらが集まり、母親の形を成した。
 幽霊……というには何かが違う。霊魂、と言った方がしっくりくると、過越は思った。
「遅かったわね。待っていたわ」
 半年振りに聞く母親の声。柔らかな口調で、安心できるその声は、何一つとして変わっていなかった。
 背中越しに見える母親の顔は、今の顔よりもだいぶ若返っていた。過越は、その顔をよく知っている。まだ父親が生きていた頃の――幸せだった頃の顔だった。
「覚悟は……もう出来ているようですね」
「えぇ、もう半年前からね」
「分かりました。安心してください。痛くは……ありませんから」
 死神は大きな鎌を壁に寄り掛け、両手で水色のバンダナを外した。長い黒髪が、ふわりと風でそよぐ。
――止めさせないと。アレを止めなければ、母さんは……きっと死んでしまう。
 そう思ったが、身体は動かなかった。恐怖ではない。邪魔をしてはいけないと、感じてしまったからだ。今この場に漂う空気が、今目の前で行われている神聖な儀式が、過越を拒んでいた。
「これは、私からの餞別です。暗い夜道を、セントエルモの火のように照らしてくれます」
 死神は、先程外した水色のバンダナを母親の頭に結んだ。さながらそれは、幽霊が付ける額烏帽子のように。
「貴女が言えなかった言葉、最後に言いたかった言葉……。この世に別れを告げる、遺言はありますか?」
 死神がそう聞くと、母親はついと視線を上げ、何もない空間を見つめる。
「そうね……」
 誰に言うでもなく呟き、母親は振り返った。視線が重なった。
「母さん……」
 過越は呆然とした様子で呟いた。しかし、その声は母親の耳には届かなかった。
 母親は感慨深そうに見つめた後、困ったように笑い、正面に居る死神に視線を戻す。
「あの子の……乙乃の枕元に立って言ってやってちょうだい。もう充分に面倒を見てもらったから、後は好きなように生きなさい。あなたはまだ学生なんだから、勉強して、遊んで、恋をして、思いっきり楽しんでちょうだい。あなたを縛るものは、もう何もないのだから。悲しまないで。母さんはもう充分に生きたわ。あなたに面倒を見てもらえて、幸せだったわ。身体には気をつけなさい。母さんの歳より早く死んでは駄目よ。天国で……父さんと一緒に見守っているから」
 遺言を告げ終えた母親は、満足そうに小さく頷き、頭を垂れ、祈るように跪いた。
――あぁ……母さん……そんなことを言わないでくれ……。これから先も、いくらだって面倒を見てやる。だから……そんな悲しいことを言わないでくれ。
 父親が死んだときでも、母親は決して自暴自棄にならず、過越を悲しませまいと絶えず微笑んでいた。昏睡状態に陥る直前まで、微笑んでいた。
 それが、消えて無くなってしまう。母親が、居なくなってしまう。僅かに残るこの温もりも、消え去ってしまう。
 あの部屋に一人では、寂しすぎる。二人分の遺影なんて、飾りたくない。だから、だから、
――死なないでよ……母さん……!
 今すぐ走り出して、母親を抱きしめたい衝動に駆られた。抱きついて、ただ泣きじゃくりたくなった。まるで、子供のように。
 死神は黒い衣の端を掴み、両手を大きく広げた。一歩前に踏み出し、両手で小さな輪を作り、黒い衣で母親を包み込んだ。
「らりほー。安らかに、眠るように逝きなさい」
 黒い衣の中で、淡い光が心臓の鼓動のように瞬いた。徐々にその光は弱まり、黒い衣は再び闇に染まる。やがて黒い衣の上から、淡い光が――蛍達が静かに上っていく。
 過越は直感的にそれを感じた。それが、命の光なのだと。母親の魂が、今まさに天に昇ろうとしているのだと。
 蛍達は天井まで上っていき、やがて壁の向こうに消えていった。
 過越はもはや染みしか見えなくなった天井から、ベットに視線を移した。母親は、未だに布団の中で眠っている。先程と何も変わっていない。心電図も、いつもと同じ短い電子音を発している。変わったのは、過越が母親を見る眼だった。そこにはもはや、いつか起きてくれるだろうという希望の眼差しは無い。
――もう……もう……。
 母親は、
――眼を覚まさないんだ……。
 過越の中にあった何かが、ふっと抜けていくような感じがした。言葉にはし難い、特別な何かが。
 死神は母親に一礼をした後、大きな鎌を手に取り、ふわりと窓に向かって飛んだ。
 黒い衣を風になびかせながら、窓の縁に乗る。死神は振り返り、初めて過越に視線を向けた。
「今聞いた通りです。貴方は、貴方の好きなように生きてください。それが、貴方の母親の遺言です。言葉の意味をよく噛み締め、そして、大事な人が死んだという事実を、ちゃんと受け止めてください。花と同じで、はかない存在であることを知ってください。……もう、枕元に立つ必要はありませんね」
 それだけを告げると、死神は窓の向こうに向かってふわりと飛んだ。
「待って……!」
 過越は慌てて窓に駆け寄った。たなびく青いカーテンを手で掻き分け、窓から顔を出して外を見た。
 雲の間から漏れる月明かりが、空を飛んでいる死神を照らし出す。身丈ほどもある大きな鎌を持ち、闇夜によく見た黒い衣をなびかせているその姿は、まさに死神そのものだった。
「待ってくれ……! お願いだ……!」
 遠のいていく死神に願っても、もはや無駄だった。この距離ではもはや聞こえはしないだろうし、聞こえたとしても待ってはくれないだろう。
 過越は死神の飛んでいく方向を見定めた後、半ば走る勢いで病室を出た。出てからは、本当に走った。
 正面玄関から出ようと思ったが、この時間では既に鍵が掛けられている可能性が強かったので、過越は非常階段の内鍵を開け、外に出た。
 乾いた金属音を激しく鳴らしながら駆け下っていく。しかし、一番下にある扉は開かなかったので、フェンスの隙間に無理矢理身体を通して脱出した。
 立ち止まって一度呼吸を整えた後、死神が飛んでいった方向に向かって走り出す。
 追いかけなければならないと思った。――いや、そう感じた。あの死神を追えば、今までずっと疑問に思っていた事の答えが、分かるような気がした。
 過越だけではない。多くの人が抱える、最大の問題。

――死ぬと、どうなるのだろうか?
  
 ※

 空を飛ぶ死神を追い続けて、もう三十分近くは走り続けている。
 死神の飛ぶ速度はあまり速くはない。滞空時間もそんなに長くはなく、時折屋根に降りては再び飛ぶという行動を繰り返している。飛行しているというよりは、跳躍していると言った方が正しいように感じた。
 母親が入院するまでは、過越は陸上部に所属しており、長距離を専門にしていたので、このぐらいの距離を走ることには慣れていた。更に長距離のリーダーを張れる程の実力があり、速度だけで見れば過越は死神に勝っている。しかし、相手は障害物が一切無い直線距離で進んでいるので、迂曲しながら走っている過越では付いていくのがやっとである。
――追いつかない。
 死神が止まらない限り、この距離を縮める事は出来ない。何とか食らいついてはいるものの、時機に過越の速度は落ち、見失ってしまうだろう。
 それでも、過越は走り続けた。聞かなければならないことがあるのだ。他の誰でもない、あの死神に。
 死を司る神――死に最も詳しい死神なら、その答えを知っているはずだ。全世界共通の、1+1=2になるような、誰しもが納得するような答えを持っているはずだ。死んでしまった母親が、どうなったのかが分かるはずだ。けれども、
――その答えが、
 遠い。
 心が砕け始めると、頭が、手が、足が、身体全体が、それに賛成してしまう。諦めてしまえ、と。
 腕や足が、鉛を付けられたように重い。視界がぼやけ、呼吸のリズムが狂ってくる。やがて身体全体が痺れ始め、自分自身の肉体ではないような錯覚を感じる。
 苦しい。ただ苦しい。今抱えている問題など、どうでも良い気がしてくる。――いや、もうどうだって良い。捨ててしまえ。そんな疑問など。元より、答えなど存在していないのだ。これは、人の業なのだ。生まれたときから背負う、重い重い問題なのだ。そして、死ぬ間際までその答え合わせはない。たかだか十七歳に解けるような問題ではないのだ。きっとそう。だから、例え今諦めたとしても何の問題もない。そうだ。だから、だから――。
――でも、知りたい。どうしても、知りたいんだ。
 それだけが、過越を支えていた。
 団地から随分と離れた公園に差し掛かった所で、きぃん、と耳鳴りのような音が聞こえた。
「うっ……」
 ややあってから、急に耳が圧迫されていく痛みを感じた。まるで飛行機にでも乗ったようだった。
 それで急に調子を崩し、足がもつれ、前のめりになって倒れていく。しかし、すんでの所で踏ん張り、地面とキスをするのは避けることが出来た。
 だが結局、半ば崩れ落ちるようにして地面にへたり込む事になった。立ち止まった瞬間、凄まじい疲労感が襲ってきたからだ。もはや立つことはおろか、呼吸ですら満足に吸うことが出来ないほどだった。
 かなり苦しいが、妙に懐かしく感じた。何故だろうと疑問に思ったが、何て事はない。大会でただがむしゃらに走りきった後の、疲労感と満足感にまみれたあの感覚に似ていたからだった。
 ある程度調子が落ち着いてから、過越は座り込んだまま空を見上げた。当たり前だが、もはや死神の姿はなかった。完全に見失ってしまった。とは言っても、仮に見つけたとしても、もはや追いかける体力も気力もないが。
 辺りを見渡すと、小さなライトに照らされた大川公園というプレートが眼に付いた。地面はコンクリートで舗装しており、木や植物もあるが、手摺りのようなバリケードで一応中には入れないようにしてある。過越の近くにある公園とは全くタイプが異なっていた。見慣れないタイプの所為か、おのぼりさんのように妙にそわそわしてくる。
――違う。
 そうではない。このそわそわ感は、嬉し恥ずかしといった類のものではない。不安……というには何か違う。遅刻して、しんと静まりかえった教室に入ってきてしまった時のような、そんな据わりの悪さに似ていた。
 夜道でおっかなびっくりに、居もしない幽霊を探すようにきょろきょろと辺りを見渡す。――いや、居る気配はする。それが死神なのか、それとも単なる近所の人なのかは分からない。だが、何だか嫌な感じがした。
 呼吸も完全に落ち着き、体力もある程度回復したお陰で、何の苦もなく立ち上がることが出来た。長距離をやっていたお陰か、体力の回復は早い。
 いつでも逃げられるように後退しながら、四方に視線を巡らす。
「あ……」
 右方に群生している木々の間から、自然色に全く馴染んでいない水色が見えた。居る。あそこに、死神が居る。疑問の答えが、あそこにある。
 急いで捕まえに行きたかったが、そこまで回復はしていなかった。笑う膝に渇を入れながら、少しだけ急ぎ足で水色のバンダナを目指す。
 やがて木々が晴れ、死神の姿がハッキリ見えるようになった。憩いの場とでもいうのだろうか、ベンチが等間隔に円形に配置しており、中央には何もない大きな空間があった。中心点より少し奥の場所で、死神は空を見上げたまま立ち止まっている。顔には、何の感情も見られない。
――僕を待っていた?
 そんな気がした。そうでなければ、あの死神があそこで立ち止まっている理由がない。
――行こう。答えがそこにあるのなら。
 小さく頷き、過越は大きく一歩踏み出した。
 がさり、という草を掻き分けるような音がした。思ってもみなかったことに過越は酷く驚き、とっさに木の後ろに隠れる。
 続いて聞こえてきたのは、人の声のようなもの。そう断定できないのは、ぼそぼそと小さく呟くような声が複数聞こえてくるからだ。
 死神が過越の方を見た。一瞬視線が交わったが、すぐに違う目標物に向けられていた。
 人だ。白いパーカーにジーパンという至って普通の格好をしている。後ろ姿しか見えないが、同い年かその前後ぐらいだろう。近所の人だろうか。
 もう一人現れた。薄緑のツナギを着ており、腰にはハンマーなどの工具がぶら下がっている。作業中にこちらに来たような有様だった。髪は白髪が多く混じっており、四十代か五十代ほどに見える。
 更に、もう一人、二人、三人とどんどん増えていく。ものの数分の内に、十人以上がこの場に集まってきた。
 死神はそれらを見た後、眼を細めた。呆れかえっているように見える。
 ガラガラと、台車のような音が遠くから聞こえてくる。徐々に音が大きくなっていく事から、こちらに近付いてきているのは確かだった。
 その音など意に介さず、集まってきた人々は死神を見続けている。一方死神は、動揺している素振りもなく、冷ややかにそれを受け流しているように見えた。
 やがて、音の発信源がこの憩いの場に現れた。それは、銀色のジェラルミン製キャリーバックを引きずる音だった。持ってきた男の腰ほどの高さがあり、厚みもある。一般的に見るタイプより、かなり大きい。
 左の方で、男はそのキャリーバックを開けた。
 過越の位置からでは中身は見えなかったが、集まってきた人々が今度はそのキャリーバックに群がっていく。
――何をしているんだ?
 微かな声と、無機質な金属音が時折聞こえてくる。
 一人が――青年が、その場から離れた。その手には、白い布のようなものと、鉈を手に握っていた。――いや、あれは映画で見たことがある。確か、ククリという刃物だ。青年の肘から手首程の長さがある刃が、街頭の光を反射してぎらぎらと光った。
 そして青年は、握られていた白い布を広げ、それを頭に被った。
――何なんだ……それは?
 異様としか言い様がなかった。白い布の正体は、頭巾だった。頭をすっぽりと多い、アメリカの白人至上主義団体――KKK(クー・クラックス・クラン)を彷彿させるような格好だった。白い頭巾には黒い線が複数描かれており、また後ろには膝ほどまでに垂れ下がっている二本の布があった。そこにも黒い線がそれぞれ描かれているのだが、波線のようなその線は、蛇を連想させる。
 初老の男もまた同じ格好をしていたが、その手には腰にぶら下げているものとは比べものにならないほど大きなハンマーを持っていた。
 先程は気づかなかったが、女も混ざっているようだ。若い女の手にはサバイバルナイフが、腰が曲がっている老婆は鉈を手にしている。
 皆白い頭巾を被り、各々の獲物を手にした人々は、先程の位置に戻り、死神に視線を向けた。
――何が……何が起ころうとしてるんだ? いったい、何をしようとしているんだ?
 目の前には、不気味な異世界が広がっている。異様な集団が、武装し、死神を取り囲んでいる。あまりにも異常な状況の為、夢か、悪い冗談のようにしか見えなかった。
 しかし、誰かがそう言ったように、いつだって最悪な状況はタチの悪い冗談か悪夢のように、現実感が酷く薄い。
 ぎらぎらと光るナイフ。
 誰かを殺すためだけに作られたククリ。
 蛙のように潰されそうな大きなハンマー。
 それらを見ている内に、過越の中に沸々と恐怖が湧いてきた。
 過越にとって怖いのは、あの異様な格好をした集団ではない。人を殺すためだけに集められた武器でもない。唯一絶対的な存在感を放つ、死だ。死だけが、この現実感のない光景の中でも、やがて現実として訪れてしまう。
 それだけが、酷く怖かった。
「また貴方なのですか、ウワバミ」
 死神が、こちらを向いたままそう言った。突然のことだったので、過越は驚いて息をのんだ。
 革靴のような足音が聞こえてきた。それは、過越の方に徐々に近付いてくる。過越は身をかがめ、草むらの中に身を潜めた。やがて、目の前を黒い物体が通り過ぎていく。
「当たり前だ。お前を消さない限りは追い続けてやるよ、死神」
 過越はほんの少しだけ顔を出し、その声の主を見た。
 背中だけしか見えないが、背広を着ている。一瞬、普通のサラリーマン――この場に居る時点で、もはや普通ではないのだが――かと思ったが、短髪で金髪と白髪が混ざったような特徴ある髪型だったので、そう呼ぶのには強い違和感を感じた。
「諦めなさい。私は、死神です。決して消えることのない、絶対存在。それを携えている私を、死なす事が出来ると思いますか?」
「あぁ……確かにな。死は絶対だ。だけどな、死神。お前も例外じゃない。お前も……死ねる存在なんだよ」
 サラリーマン風の男は、一歩前に出て、右腕の袖を捲った。
 刺青のようなものが見える。蛇のような波線もあれば、大小様々な円、見たことがない文字などが複雑に描かれている。
 男は拳を強く握る。筋肉が膨張するのと同時に、刺青のようなものがぼんやりと青白く光り出した。
「喜べ。俺がお前を死なせてやるよ」
 場に緊張感が走る。各々が戦闘態勢に入り、死神ににじり寄っていくコンクリートの音が聞こえてくる。味わったことのない気配――強い殺気が過越の肌に突き刺さってくる。
――やめろ……やめてくれ……。
 怖かった。次の瞬間にはもう、死体が出来上がってしまうのではないかと思うと、震えるほどに怖かった。
――何をするつもりなんだよ……。
 寄って集って、あの死神を殺そうとしている。それで、何がどうなると言うのだ。
――お願いだから……やめてくれ……。
 あの死神が死ぬことも、あの不気味な集団が死ぬことも、酷く嫌だった。死を見るのが、嫌だった。
 大声を出して、この殺し合いを止めてやろうかと考えた。夜とはいえ、大声を出せば人が集まってくるだろう。凶刃がこちらに向かってくる事になるかも知れないが、その時は走って逃げればいい。何でも良い。とにかくこの殺し合いを止められるなら、この笑う膝を殴りつけてでも走ってやる。
 決心を決めた過越は、木に手を掛け、一歩前に出る。
 その時、死神が視線をこちらに向けた。視線がかち合った者同士でしか分からないような、ほんの一瞬だけ。
 しかし、それに気づいたサラリーマン風の男が、こちらを振り向いた。
 逆光になって顔はよく見えない。少し痩けた輪郭がぼんやりと分かる程度だった。
「一般人か……? 悪いが、今は集会の最中なんだ。これから悪い蛇を裁かにゃならんのでな。血が嫌いなら、すぐに帰れ。嫌いでなくても、そこのククリに血を吸わせたくなかったらすぐに立ち去れ」
 青年は手に持ったククリを喉元にあてた。首を切るぞ、という脅しなのだろう。
「ちくしょう……何が集会だ。寄って集って、あの少女を殺そうとしているだけじゃないか!」
 男は眼を見開き、酷く驚いた。
「何……? お前……見えるのか?」
「うるさい! 大声出すぞ! 警察呼ぶぞ! 臭い飯食いたくなかったら、こんな馬鹿げたことは止めろ!」
 対抗するように、過越も声を荒げて脅した。殺人未遂とまではいかないにしろ、あんな物騒なものを所持していれば、確実に銃刀法違反で逮捕されるだろう。
「もう一度聞くぞ。お前は……この後ろに居るヤツが見えるんだな?」
 その問いに、過越は反射的に死神を見た。物言わずとも、それが答えとなった。
「なるほど……『箱の結界』の中に居たのも納得がいく。大方、死神を追っている途中で、運悪く巻き込まれちまったんだろ」
 図星だった。動揺が顔に出ていたのか、男は口端を歪めてにんまりと笑う。
「最も、俺らにとっては運が良かったわけだがな。ご同類だよ。お前と同じ、『十三恐怖症の患者』なんだよ」
 ざわり、と周囲が騒ぎ出した。顔は見えないが、目線や身体の動きで動揺しているのが分かる。
――十三恐怖症の患者?
 患者、と付くからには何かの病気なのだろう。恐怖症。つまり、病的にそれを怖がっているということ。
――数字の十三を病的に怖がっている患者?
 数字の十三は、主に不吉な意味でしか使われていない。十三日の金曜日は、ジェイソンが出てくる映画として有名だが、本当はキリストが死んだと云われる日だ。そう、数字の十三が意味するもの。それは、つまり――。
「そうはさせません」
 死神の声。同時に聞こえる、男の悲鳴。ハッとなってそちらを見ると、死神がその大きな鎌で、ハンマーを持った初老の男の背中を切り裂いていた。
――ちくしょう!
 最悪な事態に発展してしまった。それだけは防ごうと決めていたのに、結局殺し合いが開始されてしまった。
 初老の男が、殺されて――いなかった。死神が切り裂いたのは、服だけだった。切り目から見える肌には、傷一つ付いていない。
 死神は宙を舞い、黒い衣をたなびかせる。ひらり、ひらりと。同時に宙を舞う、二枚の紙。――いや、元は一枚だったのだろう。紙に書かれた箱の絵が、真っ二つに割れていた。
「邪魔をするな、死神ぃ!」
 サラリーマン風の男は再び強く拳を握りしめる。すると、刺青は先程よりも強く青白く光った。
 男は握りしめた拳を広げ、こちらに向かって飛んできている死神を鷲掴みするように、勢いよく腕を振るう。
 死神はそれに対し、鎌の外側の部分を男に向け、迎え撃った。
 男の右腕は弾かれ、金属音のような無機質な音が響き渡る。同時に、右腕の青白い光りは消え去った。
 死神は過越の前に舞い降り、
「逃げますよ」
「え?」
 答える間もなく、黒い衣で包んだかと思うと、抱きかかえられるようにして一緒に飛んだ。
「うわぁぁぁ!?」
 景色の流れ方が急激に変わり、味わったことのない浮遊感が過越を襲う。人は未知の体験に恐怖感を覚えるというが、まさにそうだった。
 死神は過越を抱えたまま、生い茂っている木の上に突っ込んでいく。
「あ……」
 先程、死神が切ったのと全く同じものが、枝の先に貼られてあった。
 死神は大きな鎌を振るい、それを同じように真っ二つに切った。
 すると、急に身体が軽くなったような気がした。――いや、ここで感じたあの圧迫感が無くなったのだ。解放された、と言ってもいい。
 死神は木の幹に足を掛け、強く蹴った。
 高く、高く飛んでいく。
 華奢な身体だというのに、過越の重さなど意に介さないようだった。これも、死神の力というわけだろうか。
 遙か上空から見下ろすと、先程居たあの憩いの広場には、もう誰も居なかった。
「暴れないでくださいね。貴方は、まだ死ぬ予定ではないんですから」
「あぁ……」
 未だに何が起こったのか理解できず、生返事を返すのがやっとだった。
 ある程度落ち着いてきた所為だろうか。今頃になって、秋の夜風が急に肌寒く感じた。これだけ高く飛んでいる所為もあるのだろう。
――コイツは、寒くないのだろうか?
 ふと、そんなことを思った。そしてすぐに、否定した。この少女は、死神なのだ。死を司る神様が、寒さを感じるのもおかしな話だろう。
 けれど、服越しに伝わってくる体温は、暖かかった。
 
 ※

 かれこれ十分近くは飛んでいただろうか。いくつかの屋根を経由した後、死神はビルの屋上にゆっくりと舞い降りていく。
 汚れた貯水槽に、ビニールテープで補強されたフェンス。変色しきったベンチに、秋風と戯れる枯れ葉の山。掃除はおろか、数年間誰もここを訪れていないのでは、と思うほど寂れていた。
 ここが廃ビルかどうかは定かではないが、辺りには大小様々なビルや店が建ち並んでおり、車の音に混じって微かに電車の音が聞こえてくる。駅が近いのかも知れない。
 死神の足が地面に着くのと同時に、抱きかかえられていた手は離され、急に訪れた重力に対抗できず、過越は不恰好な体勢で落下した。
「痛たた……。雑な扱いだなぁ……」
 受け身を取った所為で、掌に擦り傷を負ってしまった。血が滲み出てくる。
「助けてあげたんですから、文句は言わないでください」
 死神の言うとおりなのだが、何とも釈然としない思いが込み上げてくる。
「後は自力で帰ってください。駅も近いですから、問題はないでしょう。それでは」
 簡潔にそう言った後、死神は屈んで飛ぶ体勢に入る。
「え? す、ストップ!」
 飛び立つ寸前で、過越は慌てて死神の腕を掴み、何とか引き留めることが出来た。
 今ここで逃げられてしまったら、何のために追いかけてきたのか分からなくなってしまう。
 ほんの少しだけ宙に浮いていた死神は、驚いた顔――能面のように表情はほとんど変わっていなかったが、驚いたような雰囲気を出していた――をして、掴まれている手を見つめていた。
「いろいろ聞きたい事があるんだ。頼む」
 過越の頼みに応じたのか、手を掴まれているので止む終えなくか、死神は再び地面に足を付ける。
「教えてくれ。母さんは……母さんは本当に死んだのか? そして……母さんは……どこに行ったんだ?」
 淡い光が母親の身体から現れ、そして上っていくのを思い出す。
 しかし、死神は過越の問いに答えない。視線も合わせようとはせず、俯いたままだ。
「手……」
「……は?」
「私の手を……掴んでる……」
 死神の視線を追ってみると、握ったままの手に注がれていた。過越は慌ててその手を離し、
「引き留めるのに必死だったんで、ついうっかり……。悪い。ごめん」
 死神のタブーに触れてしまったかと思い、頭を下げて謝った。考えてみれば、神様に頼み事をするなんて酷くおこがましい事だし、ましてや触れる――どころか掴んで引き留めてしまったのだから、何らかの処罰が下されてもおかしくない。
 どんな罰が下されるのかと悪い考えを巡らせるが、死神は何も答えない。
 そっと顔を上げてみると、死神は過越の腕を見つめたまま、顎に手をあてて考えていた。手の形と俯き加減が、どこかの探偵によく似ていた。
「腕を捲って見せてもらえますか?」
 思わず、眉を顰めてしまった。それに、いったい何の意味があるのだろうか。言われるがまま、過越は右腕の袖を捲って見せた。
「もう片方もお願いします」
 探偵のような格好のまま、死神は言った。
 過越は首を傾げつつも、左腕の袖も捲った。両腕を捲っただけだというのに、かなり寒い。
「……結構です」
「何か……あったのか?」
 捲った袖を戻しながら、過越は怖々と訪ねた。
「いえ、何もありません」
「はぁ……」
 結局何がしたかったのか分からず、過越はため息混じりの返事をした。
「それで……私に聞きたい事とはなんですか?」
 どうやら聞こえていなかったらしい。過越は胸に手をあて、軽い深呼吸をし、少し緊張した趣で再び問う。
「母さんは……本当に死んだのか? そして……どこに行ったんだ?」
 死神の表情が微かに変化する。たが、何を思ったのかは、読み取ることは出来なかった。
「言った筈です。貴方の母親は――いえ、母親の魂は、既にこの世にはありません。肉体と魂は常に二つで一つ。どちらかが欠ければ、それは死を意味しています。貴方はそれを、その眼で見た筈です。そして感じた筈です。母親の、死を」
 死神の言うとおりだった。過越は、その現場を見て、ハッキリと母親の死を感じた。あの病室に横たわっているのは、もはや古い抜け殻でしかない。きっと、天に昇るには、重すぎるのだろう。
「そう……か……」
 あまりショックを受けなかった事が、過越にとってショックだった。今こうして、誰よりも死に詳しい死神からハッキリと母親の死を告げられたというのに、あぁやっぱりな、という諦めの思いが一番強かった。
 父親が交通事故で死んだときは、ショックが大きかった。それは、突然その不幸が降りかかってきてしまったからだろう。でも母親は、ガンという病気に犯され、約一年間を掛けて緩慢に死んでいった。一年というのは、短いようで長い。その一年で、母親の死に対して心構えが出来てしまっていたのだろう。
 約半年間、眼を覚まさない母親の側で、過越はずっと看病し続けてきた。徐々に弱っていく母親を、ずっと見てきた。助かって欲しいからこそ、眼を覚まして欲しいからこそ、ずっと話しかけてきた。でも、心のどこかでは思ってしまっていたのだろう。
――助からないんじゃないかと。……死ぬんじゃないかと。
 無意識のうちに、歯を強く噛み締めていた。
 悔しかった。悲しさよりも諦めの方が強いのが、悔しかった。
「そうです。ちゃんと受け止めてください。その事実を拒否するのは、死者に対する冒涜です。何もしても……死者は蘇る事なんてないんです」
「そう……だな。母さんは……死ん……死んだんだな……」
 そうだ。母親は死んだのだ。言葉にすることで、それがより実感できた。酷く、嫌な気分ではあったが。
――でも、でも……。
 まだ諦めきれない自分がいるのも、事実だった。
「じゃあ……答えてくれ……。死者は……死んだ母さんはどこに行ったんだ?」
 死神はまたしても微かに表情が変化した。今度は読み取れた。それは、
「……分かりません」
 微かな動揺だった。
「分からない……?」
「そうです。私達の仕事は、昇り逝く魂が道に迷わないよう、街灯に火を点すだけ。死する道への案内人ではありません。いわば、点灯士と同じです」
 おかしな話だと思った。死神すら知らない逝く先を、まるで自分たちが知っているような言い方ではないか。
「何で知らないんだ? 送り先を知らないのに、母さんの魂を見送ったってのか?」
 それは、住所をデタラメに書いた封筒を投函するのと一緒だ。着いた場所を知っているのは、その封筒と、受け取った相手だけ。
「えぇ、理解が早くて大助かりです」
「ちくしょう……、馬鹿にしてるな。逝き先も分かりゃしないのに、何が安らかに逝きなさいだ。職務怠慢もいいところだ」
「いいえ、そうあるべきなのです。私達が知ったところで、どうなるというのですか? 死者に対して出来ることは、悲しむことでも、怒ることでもありません。その死を受け止めてあげることだけです。なまじ逝き先を知ったとしても……何も出来ない自分に、ただ不甲斐なさを感じるだけです」
 僅かに眉を顰め、少しだけ怒気が籠もった口調で死神は言った。死神でも怒るんだな、と見当違いな事をふと思った。
 死神の言うことは、道理が通っている。間違ってはいないと思う。けれど、
「しょうがないじゃないか……。悲しいものは、悲しいんだよ。僕はそんなに強くない。死を真っ正面から受け止められるほど……人間が出来ちゃいないんだ。今までずっと側に居た人が、どこか遠くに行ってしまうなら……せめて、その逝き先ぐらいは知っておきたいんだ。何も出来なくたっていい。それだけで……良いんだ」
――そう、それだけで良い。
 別に、人類最大の問題を解きたいわけではない。使命感だとか、宗教的問題を解決したいわけでもない。ただ純粋に、母親と父親の逝った先を知りたいだけ。
――二人が無事一緒になれたかを、知りたいだけなんだ。
「それでも……私は知りません」
 死神は顔を伏せ、僅かだが下唇を噛んでいた。申し訳ない、といった素振りである。
「話はもう終わりです」
 居たたまれなくなったのか、死神は過越に有無を言わさず飛び上がった。
「待ってくれ! 質問はまだある! どうして僕を助けたんだ? あいつらは何者なんだ!?」
「助けたのは、これ以上面倒が増えるのは御免だからです。何者なのかは、知る必要はありません。貴方の母親の遺言を、破るわけにはいきませんから」
――遺言を破る?
 その答えを探ろうと脳内の回路が活発に動き始めたが、弾き出された答えは全く異なるものだった。
「助けてくれて……ありがとう」
 言い忘れていた言葉。どんな理由があったにせよ、助けてくれたことには変わりない。
 ふわり、ふわりと黒い衣をそよがせながら、死神は隣のビルに舞い降りる。こちらを向いて、ほんの少しだけ笑ったような気がした。
「それは、最初に言うべき言葉ですよ」
 そう言ってから、死神は闇夜の中に溶け込んでいった。


 家に帰ると、留守電には伝言が十数件録音されていた。全て、医者や家族、それと南吉からの、母親が死んだことを告げる伝言だった。
 涙は……出なかった。 



第二話「火葬場と商店街の日常の中で」

  ランプの灯りを大きくしてくれ。暗闇の中を通って家に帰りたくはない。

                        『短編の名手・オー=ヘンリー』の遺言

 ※

 三日後、葬儀は火葬場の隣で行われた。
 葬儀会場はあまり広くはない。入り口の真正面には花祭壇があり、椅子は左右に――まるで卒業式のように、真ん中に通路が空けてあった。その狭さに比例し、椅子の数も少ない。左に十五席、右に十五席と計三十席ほどしかなかった。だがそれでも、空席がちらほら見られる。
 数分前に訪れた和尚は、花祭壇に飾られている白黒の母親に一礼した後、数珠を鳴らしながら立ったまま念仏を唱え始めた。座って木魚を叩くのが正しい形かと思ったが、そうでもないようだ。
 この念仏が無事母親をあの世に送るための儀式だとしたら、全くの無意味だ。もう既に、母親は死神の手によって送り届けられたのだから。
 やがて念仏は唱え終わり、司会進行の人が最後の手向けとして、焼香をするように過越に促す。
 過越は花祭壇の前にある椅子に座り、備え付けの線香に火を点す。そして、鉢のようなものに突き刺した。
 緑色の線香は熱した鉄のように赤くなり、白い煙をゆらり、ゆらりと揺らがせる。白い煙を吐く度、線香は灰に替わっていき、徐々に短くなっていく。まるで命の灯火のようだと思った。
 過越は母親の遺影を見た後、拝んだ。長い間拝んでいたが、結局何も言葉は出てこなかった。ありがとうも、さようならも、言えなかった。
 続いて席を立ち上がったのは、南吉の父親だった。中学、高校と柔道をやっていたらしく、かなり体格が良い。
 線香に火を点し、拝む。丸まったその大きな背中を見て、父親の葬儀をふと思い出した。
 思い返してみると、父親の葬儀の時も、今回と同じように南吉の父親と母親が葬儀の手続きや手伝いをしてくれた。ただ、仲が良いからという理由だけで。
 過越の父親と南吉の父親は、中学、高校と同じ学校だったらしく、南吉の父親は先輩だったらしい。何がどうなって知り合ったかは分からないが、お互い馬が合い、よく連んでいたという。
 卒業後は共に地元を離れることになったが、偶然にもここで巡り会うことになったそうだ。
 それ以来、過越家と南吉家は家族ぐるみで付き合うようになり、親睦を深めていった。記憶にはないが、幼稚園に通う前から南吉とは遊んでいたのだという。
 父親が死んだとき、葬儀中に一番泣いたのは過越の母親ではなく、南吉の父親だった。巨躯を揺らし、大粒の涙を流しているその様を見て、過越はどうしてこんなに泣いているのだろう、と疑問に思ったのを思い出した。
――そういえば。
 随分と前の所為か、それとも思い出したくないだけか、葬儀中の記憶は酷く朧気だ。しかし、あまりにもインパクトが強かった為、今も鮮明に覚えているシーンがあった。
 
 あの時、父親を轢いた大学生は葬儀に来ず、代わりに現れたのは弁護士だった。顔は忘れたが、銀縁眼鏡を掛けていたのは覚えている。
 誰だって被害者の葬儀には来たくないだろう。過越の母親はそれを重々承知の上だったらしく、取り乱すことなく、淡々と語る弁護士の話を聞いていた。
 ただ一人を抜かして。
 南吉の父親は、どうしてソイツはここに来ないのか、と弁護士に詰め寄った。弁護士は冷静に、その代理人で私が来ました、と答えた。
 しかし父親は、それには納得せず、轢いた大学生をここに来させるように何度も何度も激しい剣幕で言った。
 後で聞いたのだが、飲酒運転で轢き殺してしまったことも許せないが、それ以上に許せないのがこの葬儀から逃げた事だったそうだ。代理人を立てたのが、何よりの証拠だろう。白黒になった過越の父親に向かって、泣きながら土下座でもすれば多少は許せたかも知れない、とも言っていた。
 弁護士は封筒を取り出し、それを南吉の父親に渡した。それは、加害者からの詫び状だった。本来であれば被害者の妻に渡すべきものなのだろうが、この場を収めるためにそうしたのだろう。
 南吉の父親は乱暴に封を切った。中には一枚の手紙が入っており、ワープロで印刷された素っ気ないものだった。
 型通りのお詫び。弁護士に言われるがままに書いたのが、丸見えだった。
 誠意が伝わってこないその文章に、南吉の父親は酷く怒り、代理人である弁護士の胸ぐらを乱暴に掴んだ。
 その時南吉の父親が言った言葉は、今も心に残っている。
「人の命を……なんだと思ってんだ!?」
 嗚咽の混じった声で、南吉の父親は弁護士に問うた。
 弁護士は何も言わず、無抵抗だった。動揺した様子も見られなかった。嫌な表現ではあるが、こういった場に慣れているのだろう。
 南吉の父親は鬼の形相で睨み続けたが、深いため息をはいた後、胸ぐらから手を離した。そして、崩れるように椅子にへたり込んだ。
 弁護士は胸元を直した後、焼香をあげ、過越の母親に深く頭を下げた。それが、代理人としての役割なのだろう。それらを終えた弁護士は、静かに会場を去っていった。
 過越の母親は、先程よりも落ち込んでいる南吉の父親の元に行き、
「……ありがとう御座いました」
 そう言って、深くお辞儀をした。

 過越の母親も、きっとそう言いたかったのだろう。愛した人をどうしようもない理由で殺され、葬儀に本人は現れず、しかも反省の色も見られないのだから。でも、言えなかった。言う勇気がなかったのかも知れない。
 それを、南吉の父親が代弁した。――いや、結果的にそうなっただけで、それは本人の言葉だったのだろう。南吉の父親にとって、大事な親友だったのだ。怒るのは、当たり前だ。
 しかし、その当たり前の事を、いったいどれだけの人が出来るだろうか?
 仲が良かったというだけで葬儀の準備を手伝い、理不尽な理由で死んでいった親友のために涙を流し、無念を晴らすかのように怒る。
 大人げないだけだ、とせせら笑う人も居るだろう。しかし、過越にとってこれは、酷く尊いものだと感じている。
 誰かのために泣き、怒り、笑う。そんな大人になりたいと、過越は思っている。だからこそ、南吉の父親を心の底から尊敬していた。
 全員分の焼香が終わり、司会者が火葬場に移動するよう指示する。本来であればこの後、過越が集まってきた人への謝辞を述べるのだが、言うべき言葉が何も見つからなかったので、飛ばしてもらった。
 参列者は足取りも疎らに、火葬場に移動していく。
 過越も立ち上がり、葬儀会場から出た。出入り口の所で、南吉と視線が合う。
「あ……」
 南吉は何かを言おうとする。しかし、上手く言葉にならなかったのか、俯き、酷く悲しそうな顔になり、急ぎ足で火葬場に行ってしまった。
 元気だしなよ。落ち込んでても何もならないよ。いつもの南吉なら、こんな風に言ったかも知れない。しかし、本当に心配して言った言葉でも、親しい人を――肉親を亡くしてしまった後では、嫌に空々しく聞こえてしまう。それが分かっているからこそ、南吉は何も言えなくなったのだ。
 正直なところ、過越にとってそれはとても有り難い配慮だった。今は、慰めの言葉なんて要らない。腫れ物を扱うように、そっとしておいて欲しかった。
 火葬場も近付いてきた頃、南吉の父親が過越の肩に手を乗せ、
「困ったことがあったら、頼ってくれ。一人で悩むな。どんな些細な事でも良いから……相談してくれ」
 そう言って、一足先に火葬場の事務室に入っていった。最後の手続きを取りに行ったのだろう。
――ありがとう御座います。
 心の中でそう言った後、深いお辞儀をした。あの時の母親の気持ちが、何となく分かったような気がした。

 火葬場は思っていた以上に古かった。木造で、一部にはレンガが使われていた。正面には大きな玄関があり、多めに飛び出た軒下は、神社のそれを彷彿させる。扉の枠組みは木で作られており、嵌め込まれているガラスは少し歪んでいた。右手には休憩所のような小さな部屋があり、そして左手には、銭湯のような長い煙突が飛び出している部屋があった。
 建物の向こうは樹が生い茂っており、青空しか見えない。その所為でそびえ立つ煙突が、嫌に栄えて見えた。
 しばらくして、その煙突の先から煙が吹き出てきた。
 青空が、灰色に染まっていく。
 燃えているのだろう、母親が。
 母親だった、古いぬけがらが。
 この場に居る全員が、それを見上げていた。過越も、南吉も、名前も知らない親戚も。
――母さんは、今、僕を見守っているのだろうか? 父さんと一緒に、笑っているのだろうか?
 やがて砂になっていくその灰を見つめながら、ふと、そんなことを思った。
 答える者は居ない。けれど、そうであって欲しいと、心の底から願った。

 ※

 耳元で静かに鳴る、時計のアラーム――『星に願いを』で、過越は眼を覚ました。昔は、古典的にジリリと鳴る目覚まし時計を使っていたが、隣からクレームがあった為、今のタイプに切り替えた。鳥のさえずりのように小さな音だが、慣れてしまえばなんてことはない。
 母親が死んでから、一週間が経った。学校公認で休めたのは五日間で、残りの二日は単なるサボりだ。
 何となく、誰とも会いたくなかったのだ。同情の言葉も、それを避けた会話も、聞きたくなかった。
 出掛けることもなく、ただだらだらと番組を見て、寝るだけ寝ていた。時折、母親の事を思い出してはへこんだり、死神を思い出しては、あれは本当に現実だったんだろうかと疑問に思ったりもした。
 不思議なもので、そんな腐った生活を送っていたら、いつの間にか心の整理がついていた。悲しみは残っている。けれど、学校に行けるぐらいは回復していた。
 立ち上がり、布団を押入の中に仕舞う。面倒だが、畳を腐らせるわけにはいかない。
 台所に行き、トースターにパンをセットする。それから洗面所に行き、顔を洗う。
 母親が死んだからといって、生活には何の変化もなかった。変わったのは、心情だけ。
 一年前から、過越はこのアパート――2LKの公営住宅に住んでいる。一人暮らしには、広すぎる部屋。しかし、母親が生きている時は、あまり広さは気にならなかった。いつか帰ってくるだろうという思いが、そうさせていたのかも知れない。
 今では、不必要だと思うほど広く感じている。起きて半畳、寝て一畳というように、一部屋あれば充分だった。現に、もう一部屋はほとんど使っていない。
 香ばしいパンの匂いが漂ってくる。跳ね上がってくる前に、手動で取り出した。ブルーベリージャムを塗り、それを頬張りながら牛乳を飲む。
 学生服に着替え、鞄を手に持つ。時計を見ると、いつもより少し早かった。
――今日も病院に行かないと。
 そう思ってから、自分のおかしな思考に気が付いた。病院に行く必要など、もう無いというのに。
 別に現実を否定しているわけではない。葬式もしたし、何よりこの眼であの現場――天に逝く姿をハッキリと見てしまったのだ。
 朝起きて、布団をたたみ、朝ご飯を食べて学校に行く。今まで通りの日常だ。あまりにも日常過ぎる。日常過ぎて、母親が死んでしまったことを忘れていた。――いや、生きているように思えた。何の変化も、見当たらないのだから。
――いや、変化はあった。
 父親の仏壇に添えられた、母親の遺影。それが、この部屋で唯一変わったもの。唯一、母親の死を物語る物。
「行ってきます、父さん。……母さん」
 良くも悪くも、ほんの少し日常が変化したのだと、その時実感した。

 ※ 
 
 一週間振りに訪れる学校は、何も変わっていなかった。
 過越の肩ほどしかない緑色のフェンスで囲まれ、それに沿って松の木――誰に聞いたわけでもないが、松ぼっくりが落ちている事からそう推測しただけだが――が生えている。
 東門から見えるグラウンドでは、野球部が朝練を行っていた。バットの小気味よい音が聞こえてくる。何となく、清々しい気分になった。
 いつもより少し早い所為か、自転車置き場にはあまり数がなかった。人も、かなり疎らである。
 玄関口に向かうと、見知った顔がいくつかあった。
 見知っただけの友人は、久しぶりと当たり障りのない朝の挨拶をし、親しい友人は、元気を出せよと励ましの声を掛けてくれた。
――なんだろうな、この感じ。
 妙な違和感を感じる。壁……とでも言うのだろうか。見えない何かが、友人達との間にあった。
 この一週間で、何かが変わってしまったのだろうか?
 それとも、このたった一週間という短い月日で、疎遠になってしまった友人と同じように、何か心境の変化があったのだろうか?
――違う。
 変わったのは、自分。過越自身。他は、何一つとして変わっていない筈だ。
 母親が死んだという事実。死神に会い、奇妙な集団に殺されかけたという事実。それが、友人と自分を分け隔てているもの。
――壁を作っているのは、
 他ならぬ、自分自身。いつの間にか、心の壁が出来上がってしまっていた。
――ちくしょう。
 心の中で、舌打ちをした。
 過越は、その厄介さを知っている。これが出来上がってしまうと、いくら自分の手で取り除こうとしても、決して崩れない。
 ベルリンの壁と同じだ。一人の力では壊すことが出来ないし、無理に突破しようとすれば、酷く痛い目をみることになる。
 七年前にも――父親が死んだときにも、それを味わった。
 死とはいったい何なのか。小学生でそう考える子供など、いったいどれくらい居るだろうか。少なくとも、過越の周りには誰も居なかった。
 それが、過越と友人を分け隔てた壁。距離を置かれてしまった理由。
――また……待たなくちゃな。
 ベルリンの壁が、崩壊するその日まで。

 ※

 赤星先生の授業が終わり、放課後になった。
 過越は無意識のうちに、手早く荷物をまとめ、立ち上がっていた。朝そう思ってしまったのと同じく、病院に行こうと。
――もう……行かなくていいんだよ!
 自分の不甲斐なさに、腹立たしくなった。
 母親は死んだ。肝臓ガンで、病死した。分かっている。分かってはいる。しかし、その事実を、心のどこかでは否定している。
 だから無意識のうちに、さも母親が死んでいないような振る舞いをしているのだ。
――母さんは死んだんだ。あの死神の手で、天に逝った。ぬけがらとなった身体も燃やされた。もう母さんは居ない。何処にも居ない。居ない。居ないんだ。もう……本当にもう……何処にも居ないんだ。
 だけど、寂しいし、悲しいことには変わりはない。

 ※
 
 そのまま帰るのも嫌だったので、過越は適当にぶらついてから帰ることにした。
 とは言っても、この辺でぶらつける場所といえば、帰り道の途中にある商店街ぐらいしかない。自炊の為に頻繁に寄っているので、結局いつもと大して変わらないコースとなった。
 この商店街は、『潤目(うおめ)通り商店街』と呼ばれている。随分と変わった名前だが、昔この辺では潤目鰯の干物の産地だったらしく、その名残でこの名前が付いたと云われている。
 しかし、その名に反し、魚屋は一軒も無い。魚嫌いが多いのかどうかは不明だが、元々あった魚屋は潰れ、スーパーでしか買えなくなってしまった。
 本屋、工具屋、ゲームセンター、レンタルビデオ屋、などなど店の種類は豊富で、余程特殊なものでなければこの商店街で全て済ませられる。付近の住民問わず、過越と同じように帰り道に寄る学生も多い。
「……何やってんの、ドリー」
 だから、こうして南吉と鉢合わせするのも、偶然でも何でもなく、寧ろ必然のような気がした。
 ゲームセンターのUFOキャッチャーで、見たこともないアニメの人形を取ろうとしたが、失敗した。欲しくもないが、悔しくて四〜五回ほど挑戦した。小銭が無くなったので、両替しに行こうと振り返ると、変な眼で見守っていた南吉にバッタリ会ってしまったというわけである。
「珍しいね」
「まぁ……たまには、ね。気晴らしだよ」
「ふぅん……。男の子って、気晴らしでこういうのに手を出すのか……。それとも、ドリーが特殊なのかな? 意外とオタクなんだねぇ」
「え、あ? ……いや、違う違う!」
 南吉が珍しい、と言ったのは、どうやら過越がゲームセンターに来ている事ではなく、このやけに露出度の高いアニメの人形を取ろうとしている事なのだと、遅れて気が付いた。
「別に誤魔化さなくても……。悪いことじゃないんだし」
「頼む……本当に違うんだ」
「そう? 別にどっちでも良いけど……」
 確かに悪いことでもないし、嫌悪する事でもないのだが、なんだかあらぬ疑いを掛けられているようで嫌だった。痛くない腹を探られるとは、まさにこのことだろう。
 言うことがなくなったのか、南吉は『新入荷』と書かれたポスターに寄り掛かり、携帯を開いた。
 微妙に気まずい雰囲気を感じながらも、過越は一度両替した後、欲しくもない人形の為に、UFOキャッチャーをやり続けた。
 欲しい人形の為ならまだしも、これではドブに金を捨てているようなものである。無駄遣いの極みだ。今使った金を夕食に回せば、焼き肉ぐらいは食べられただろう。そう考えると、無性に悔しくなった。同時に、馬鹿馬鹿しくなった。
 UFOキャッチャーを止め、過越はその場を離れた。もう少し気晴らしに相応しいゲームはないかと、行く先も決めずにぶらつきだす。
 横目で南吉を確認すると、携帯を見つめたまま何かを操作していた。多分、メールだろう。
 過越は、携帯を持っていない。嫌いだとか、面倒臭そうだとか、そういう理由じゃない。単に、お金が勿体ないと思っていたからだ。自宅に電話はあるし、資金的にも少々辛いところがあった。
 しかし、非常に嫌な言い方だが、今では家計を圧迫していた母親の入院費は無くなっている。携帯を持つぐらいの余裕は出来たので、過越も近々契約しようかと考えていた。本当に必要なのかどうかは、今の段階では今ひとつピンと来ない。だが、持っていれば、いずれ必要不可欠な存在になっていくのかも知れない。もっとも、テレビの受け売りだが。
 ガンシューティングがあったので、過越はそれをプレイする事にした。舞台は江戸時代ぐらいで、襲いかかってくる妖怪を銃で撃退していくゲームだ。
 画面に向けて銃を構え、過越はひたすら敵を撃っていく。現れる妖怪に標準を合わせ、トリガーを引く。ただ、それだけの単純な作業。しかし、不思議な事に、どんどん頭がまっさらになっていった。思考回路は完全に止まり、その行為だけに集中していく。
 突然出てきた敵に不意打ちを喰らい、敢えなくゲームオーバーになってしまった。
 銃を所定の場所に戻し、過越は深いため息をはいた。頭にリセットがかかった、とでも言うのだろうか。もやもやした気分が、多少は晴れていた。
 次の場所に移動しようとすると、南吉がいつの間にか背後に居た。思ってもみなかったことに、過越は声を上げて驚く。
「そんなに驚かなくたっていいじゃない」
 どうやら、別に驚かせようとして後ろに居たわけではないようだ。ただ単に、今のプレイを見ていた、ということだろうか。
「あぁ……悪い。いや、でも声ぐらい掛けてくれよ。妖怪じゃないんだ。気配を消して後ろに立つ必要もないだろうに」
 南吉は何も言わず、代わりに唇を尖らせて答えた。拗ねているようにも見える。
――あれ……?
 一瞬、酷く懐かしい気分になった。理由は分からない。ただ、どこかでこの感じを味わっている。懐かしいと感じているのだから、それは確かだ。しかし、結局それは思い出せなかった。
「俺は出るよ。……じゃあな」
 充分気晴らしは出来たので、過越はゲームセンターを出ることにした。そのまま家に帰ろうと思ったが、確認しなければならないことが残っている。
 自動ドアから外に出て、すぐに後ろを振り向いた。すると、付いてきていた南吉が、驚いてたじろぐ。
「な……何よ……」
 やはり、というべきだろうか。ここで会ったのは偶然かも知れないが、今は明らかに追ってきている。――いや、もしかしたら学校からずっと付いてきたのかも知れない。
 どうして追ってきているのか、過越はその理由を尋ねようと思った。しかし、どう切り出したら良いのか分からず、質問文は喉仏を通過する前に消えてしまった。少し前までは、こんな事などなかったというのに。
 あの日以来、過越と南吉はまともな会話を交わしていない。別に仲が悪くなったとか、そういうことではないのは、過越にも分かっている。しかし、微妙に気まずい雰囲気になっているのも確かだった。
――あれ……?
 再び襲いかかる、郷愁。視界に覆い被さってくる、古ぼけたフィルム。焦点の合っていない映写機のように、輪郭のない映像が音もなく流れ続ける。
 教室の中。開いている本。青い空。蝋燭の灯火。白黒の父親。闇。そして、子供の頃の南吉。次々の映像が浮き上がってきては、消えていった。それらはランダムなのか、それとも関連性があって映し出されているのか、分からない。ただ確かなのは、記憶の回路が繋がってきている。徐々に徐々に、そして着実に。
 脳内でハレーションが起こり、身体に微弱な電気が流れていく。
――あぁ、そうか。
 思い出した。そうだ。南吉の、この変な行動は前にも味わっている。今と同じだ。七年前――父親が死んだときのも、こんな風に付いて回ってきていた。
 その理由は――。 
「……悪い。また……お前に変な心配を掛けたみたいだな」
 苦虫を噛み潰したような顔をして、過越は言った。

 父親が死んだとき、過越は周りに壁を作り、死についてずっと考えていた。難しい顔をして、空の遠くを眺め、『死後の世界』などの怪しげな本を読み漁っていた。
 当然クラスでは浮ついた存在になり、直接的なイジメは無かったが、気味悪がられたり、無視されたりというのは多かった。
 多少傷ついたりもしたが、別に仲好し小好しをする気など毛頭も無かった。
 死とは、孤独なのだ。人は誰しもが、孤独に死んでいく。大勢の人達に見守られていたとしても、結局逝くのは自分一人。そう本に書いてあっただけなのだが、言われてみると、確かにそう思えた。
 クラスの中で、過越は孤独だった。――いや、孤独になった。死が孤独ならば、孤独もまた死に繋がっているのではないだろうか? そう、考えた。
 死とは、居なくなること。存在しなくなること。クラスの中で無視されている過越は、果たしてここに居るのだろうか? 存在していると言えるのだろうか?
――やっぱり、死は辛いんだろうか……?
 想像が出来なかった。人生の経験が足りないのもあるし、何よりも計算式のようにハッキリとした答えが、何一つとしてないのだ。
 人は答えを求めたがる。過越も、その例外ではない。疑問が疑問であるのは、きっと嫌なのだろう。答えを求め続けるのは、人の性なのかも知れない。
 ただ、今分かるのは、このクラスの中では過越は孤独であるということ。死に、とても近い状態であるということ。
 その時に、死の片鱗を味わった気がした。父親の、気分を味わうことが出来た気がした。
 それは、酷く曖昧なもので、眼には見えない靄のようなもの。確実にあると分かっているのに、何処にあるのかが分からない。だからこそ、酷く怖い。酷く、恐ろしい。
――父さんはどうなの? 今……どんな気持ちなの?
 空に向かって、白黒の遺影に向かって、墓に向かって、質問してみた。答えなんて返ってこないと知りながら。
――死ぬの、どうなるの?
 疑問は疑問を生み、迷路のように複雑化していく。過越は、出口のない死の迷路に完全に迷い込んでいた。辿り着く先は、袋小路しかない。
 このままずっと、出口のない迷路で彷徨っているのだろうと過越は思った。そして、クラスの中で『死んでいる』状態が続くのだろうと思った。
 それでも良い。この答えが、見つけられるのなら。父親が、どうなってしまったのかが分かるのなら。
 死を、知ることが出来るのなら。
 いつ頃からだったろうか。南吉が、過越の後を付けてくるようになったのは。
 気が付けば、南吉は後ろに居た。木の陰から見ていたり、電柱の陰から見ていたりした。偶然かと思っていたが、三日以上続けば誰だってそうだと確信するだろう。
 幼稚園からずっと一緒だったので、小学校に入ってからも仲良く遊んでいた。父親が、死ぬ前までは。
 死についていろいろと考えるようになってからは、特に誰とも遊んでいなかった。遊ぶ気が、湧かなかったのだ。どうせ遊んだところで、残るものなど何もない。死が、全てを消し去ってしまうのだから。この身体も、想い出すらも。
 遊んで欲しいのだと思っていた。幼稚園でも、小学校でも、何だかんだで南吉とは一番の友達だからだ。
 しかし、面倒だったので無視していた。しばらく放っておけば、その内諦めるだろう。別に自分が遊ばなくても、他に友達は沢山居るのだ。人気者の南吉なら、遊び相手に困ることはないだろう。そう、思っていた。
 だがしかし、南吉は過越の後をずっと付いてきた。何を言うでもなく、ただじっと見るだけ。それが、一ヶ月近く続いた。
 過越は耐えきれなくなって、付いてくる南吉を捕まえて、問いただした。どうして付いてくるのか、と。何の為に、何をする為に、と。
 南吉は、泣きながら答えた。
「だって……不安なんだもん……。乙乃が……どっかに行っちゃいそうで……もしかしたら……死んじゃうんじゃないかって……!」
――……あ。
 過越は、そこで初めて気が付いた。自分が、死を求めている事に。死に、魅了されていた事に。
 父親が死んだとき、過越は死が酷く怖かった。しかし、それと同時に強い興味を覚えた。父親は、どうなってしまったのだろうかと。死ぬと、どうなるのだろうかと。
 誰かに聞いても、本を見てもその答えは載っていない。知りたければ、それを実際に体感してみる他になかった。
 だからだろうか。自分自身が、孤独を願ったのは。死を、味わってみたいと思ったのは。
 擬似的とはいえ、死を体感した事。そして、それが続けば良いと思っていた事。それらに、酷く戦慄した。
「嫌だよ……乙乃が居なくなるのは……嫌だよ……」
 泣きじゃくる南吉。それを見て、死の正体がほんの少しだけ分かった気がした。
 酷く、悲しい事象。
 これだけ悩んで分かったのは、たったその一つだけ。しかし、それだけでも充分だった。
 それで、死にたくないと強く思った。誰かを悲しませるのは、嫌だったから。
 急に怖くなって、過越も泣きだした。何故急に怖くなったのかは、よく覚えていない。ただ何となく、怖かっただけなのかも知れない。
 過越の涙が、南吉の涙が、壁を崩していく。二人を分かつベルリンの壁は、泣き止む頃には、もう跡形も無くなっていた。
 
 それ以来、過越は死について深く悩むことを止めた。南吉のお陰もあって、孤独から抜け出すことが出来た。
――僕は……馬鹿だな。
 また一人で壁を作って、その中で閉じこもろうとしている。今度は母親の気分を知ろうと、自ら孤独になり、擬似的な死を体感しようとしている。
 そしてまた、南吉はそれを止めようとしてくれている。
 もう既に、壁は出来てしまった。それは、揺るぎない事実だ。自分自身の手ではどうにも出来ないし、無理に崩そうとすれば、酷い怪我を負ってしまう事もある。
 だからといって、その壁の中に閉じこもってはいけない。また……孤独になるだけだ。もう一度死の迷路に迷い込んだら、抜け出せないかも知れない。
 今目の前には、南吉が居る。でもその間には、壁がある。二人を分かつベルリンの壁がある。でも――、
「なぁ……一緒にラーメンでも食べないか?」
 壁の向こうに居る南吉に、協力を求めることは出来る。二人でこの壁を、また崩そうと。


>続

2007/06/24(Sun)18:53:20 公開 / rathi
■この作品の著作権はrathiさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ども、思いの外今回の量が多くなったrathiです。

今回はそれなりに楽しく書けました。
のっている……って程でもないですが、ぼちぼちスムーズに。
今回で更に主人公の死についての考察が掘り下げられたかなぁーと思ったり。

他のキャラクターの存在感が異常に薄いのは仕様です。すんません。
展開上、どうしてもこうせざるを得ないもんで……。
勿論、これから出番は増えていきますよ、えぇ。

さてはて、いつの間にやら100枚近くになってきました。
前よりは短くなると思うので、生暖かい眼で見守っててください。
何でも良いので、感想もらえると更に馬力がアップします。

ではでは〜

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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