『私とカメムシ』 ... ジャンル:リアル・現代 お笑い
作者:ぐぐ                

     あらすじ・作品紹介
ある女の子とカメムシのお話

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 そう、それは春休みの終盤。たくさんの人がスタート地点に立ちドキドキワクワクしていたそんな時期。当然私も例外ではなく、もうすぐ来る新学年の始まりにドキドキワクワクしていた。まあ、そんなドキドキワクワクのせいで課題の事はすっかり忘れていたのだけれど。

 その日私はいつも通り一日中遊び呆け、勉強時間なんてゼロ時間だぜ!イェーイ!といったノリで一日を終えようとしていた。
「お風呂に入ってすっきり爽快! さぁ、あとはもう寝るだけだよん!」
 そんな痛い独り言を堂々と言ってのけ、私は自分の部屋のドアに手を掛けた。しかしその時、何かの気配を感じた。誰かが部屋の中にいる……。 ゆっくりとドアを開ける。……しかし、誰もいない。
「誰か居るのか! 隠れてないで出て来い!」
 と、まぁ今の台詞はかっこつけただけである。よくドラマとかで言ってるよね。一回言ってみたかったんだっ。しょうがないよ。ドキドキワクワクだもんね。
 さっきまでの警戒心はいつのまにかどこかに吹っ飛び、私は寝るためにベットに近づいた。
「ななななななぬっ!」
 なななんと! あろうことか、これさえあれば十秒で寝付けるという私の大事な低反発枕ちゃん。 略して、ンパちゃんに! こいつだけは避けて通りたい虫、ベスト3に入る、あいつが! 茶色くてなんかカクカクしてて強力な悪臭を放つあいつが! 通称ヘクサムシ、正式名称カメムシ、ついでにあだ名は、へっ君。 が、
 引っ付いているではありませんかああああああああああ! 
 何としてでもこいつを私の大事なンパちゃんを汚されないために追っ払ってやらなければ! しかし、どうやって…… そうだ! 私の大親友に相談してみよう! きっといいアドバイスをくれるに違いない! 
 そう思い立った私は大親友のみっちゃんに電話をかけることにした。もちろんあいつからは目を離さずに。 

「あ、もしもしみっちゃん? グッドイブニング!」
「……何?」
「相変わらずクールなんだからっ。もぅっ」
「……切っていい?」
「うわぁ、待って待って! 今大変なんだよ! へっ君が部屋に現れてさ。ねぇ、どうすればいいと思う?」
「そんなもんガムテープに包んで捨てればいいでしょうが! いちいちそんな事で電話してくんなよ! アホか! もう切るから。おやすみ」
「え、ちょっ、待っ」
 ピッ、ツー――
 
 最近みっちゃんが冷たいのは気のせいだろうか。うん、気のせいだ。気のせいのはずだ。大丈夫、これくらいでへこたれる私ではない。大丈夫、大丈夫。っと! こんな事している場合じゃない! はやくあいつを追っ払わなければいけないんだった! よしっガムテープをとりに行かないと! 
 パランランプルルルペロ〜ン♪
 そこに一通のメールが届いた。みっちゃんだ! 
「ガムテープで包んだらちゃんと密封しないと臭いもれるよ。まぁがんばって。」 
 素っ気無いメールだけど、私は確かにそこにみっちゃんの愛を感じた。ありがとうありがとう、みっちゃん! ガムテープは密封だね。分かったよ!
 私はンパちゃんの上にいるあいつの姿を確認して、ものすごい勢いでガムテープをとりに走った。多分今までの人生の中で最速だっただろう。部屋に戻った時、あいつはまだしっかりとンパちゃんの上に陣取っていた。
「ハッハッハ。覚悟しろへっ君め! 貴様のような分際でンパちゃんの上にのるなんて百年早いんじゃ! トリャーーーーーー!」
 大げさな掛け声と共に私はあいつにガムテープを貼り付けた! だが、ここにきてどうやって包めばいいのかが分からない。
 このあいつが引っ付いているガムテープをひっくり返さなければならないのか……? ということは、あいつの腹を見なければならないのか……? 何本もの足でもがいているであろうあいつの腹を……!? 無理だ。絶対に無理だ。想像しただけでも鳥肌が立つ。あぁ、何故私をカメムシの居ない世界に生んで下さらなかったのですか、お母様。……でも、このままこいつを放置するわけにもいかない。チッ、やるしかないのか…… みっちゃんからの愛のメールを読み返し、私は覚悟を決めた。そうよ、ガムテープは密封よ。
 
 自分の鼓動が聞こえた。すべての動きがスローモーションに感じた。私は息を止め、あいつが引っ付いているガムテープをひっくり返した。

 すると、そこには! やはり想像したとおりのあいつが。もがいている。何本もの足でもがいている。も・が・い・て・い・る! なんていうか、そう、気持ち悪いねっ
「ももももぎゃいてぅわああああああああああああああ!」
 既にカメムシを包むどころではなく私は素晴らしいほどの奇声をあげながらカメムシ付きのガムテープを無我夢中で投げ、思い切りしりもちをついた。もう、半べそである。というかちびりそうである。

「あんた何やってんのよ、さっきから。近所迷惑でしょうが」
 後ろを振り向けばなんともたくましいお母さん。今はあなたが天使に見えます。
「何そのガムテープ。あぁ、カメムシね。さっさと捨てればいいのに」
 母はカメムシの腹を見ても動じずパッパと包んでゴミ箱に捨てた。たった数秒で母とカメムシの戦いは終わったのである。私はただただ母に向けて拍手するしか出来なかった。このときほど心から母を尊敬したことは今までなかっただろう。

「あんたもさっさと寝なさいよ。あと何時間かすればもう始業式なんだから」
 そういって母は部屋から出て行った。そうか、もう始業式なんだ。あと三日後くらいに思ってたよ。はは、私ももう高校二年生か……
 すっかり拍子抜けしてしまった私はフラフラと電気を消し、ベットに入った。しかし、
「くさっ」
 憎きカメムシはしっかりと悪臭をンパちゃんに残していた。おかげでいつもなら十秒で眠れるのに、臭すぎて寝付くのに一時間ほどかかってしまった。コンチキショー 
 
 
 そのまま私が始業式に遅刻したのは言うまでもない。そして私がカメムシ恐怖症になったのもこれまた言うまでもないだろう。

2007/04/08(Sun)21:49:54 公開 / ぐぐ
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