『神様に愛された少年』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:夏樹 空                

     あらすじ・作品紹介
非日常的な内容

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 神を信じますか――――――――
 信じます、でも私が信じているのは女神だけです。
 神を信じますか――――――――
 はい、でも僕が信じる神は死神です。

人はお祈りをする。大切な人が病気になった時、何かに合格したい時、そして何かに勝利したい時。でもそれはあくまで通例であり、尋常な事であり、人はこれを当然の事のように行う。宗教の関係上、その行為が人生の一部であり、生活の全てであると考える人もいるが、それは人が勝手に行っている事だ。神を信じれば天国へ行ける――――そんな陳腐な思想は世界に多く存在する。しかしただ存在しているだけ。何故か?答えは一つ。神は人を助ける気が全くない―――ただ一つの条件を除いて。

 ピアノ演奏コンクール最優秀賞、人権作文「中学生の部」金賞……負けたことが生まれて一度もない人間、神童誠。人は彼を“天才”、“神の子”などと呼ぶが、彼はそうは言わないし、思ってもいない。ただ“運がいいだけ”と。どんな勝負事にも負けた事はない。特別な事は何もしていない。ただ運がいいだけ。彼はこの人生を好いてはいなかった。全く不変のない人生、それでいて普遍ですらない。壁のない一本道、これが彼の人生。しかし彼は気づいていた、女神の存在を。そして彼は気づいた、突如「一本道」に現れた別れ道を………。

 六月十四日、降りしきる雨が地面を打つ。校庭は校庭ではなくなり、校舎は校舎でなくなる。学び舎は外の天気に連動し、騒がしい。窓を打つ雨の音、交じり合う風、遥か遠くで轟く雷鳴の叫び、全てが生徒の好奇心を煽る。授業は授業ではなくなり、生徒は生徒ではなくなっていた――――二年B組を除いては。そのクラスではある特別な出来事が起こっていた。誰もが緊張する瞬間、好奇心が爆発的に沸いてくる瞬間。それは誠の「運」をもってしても避けられない事である。なぜならそれは「運」命の出会いだったから―――

 「はじめまして、大阪から転校してきました。斎藤神治といいます。よろしく…」
少し緊張気味なその言葉は、生徒たちの心を安心感で満たした。彼の風貌から察すると、何か人を寄せ付けない雰囲気を纏っていたから。いつもなら教室が盛り上がる状況だが、豪雨と雷鳴がそれをさせなかった。パラパラとした一貫性のない拍手はかき消される。神治はそれでもかまわないと思っていたし、むしろこの天候は自分のせいとさえ思っていた。彼はいつも“自分には「運」がない”と言う。しかし人はそれを“偶然だ”と言う。この学校では誰もわかっていない――――神治が不「運」を運ぶ男だということに。

 神治は誠の隣に座る。お互いに一言「よろしく」と交わした。これから友達になろうとか、何の部活に入るのとか、そんな言葉は交わさない。代わりに前の席に座っている武田が好奇心をぶつけてきた。「何の部活やるの?」―――神治は部活をやるつもりは全くなかった。自分に「運」がないと思っているから。思い込みかもしれないが、思い込みではないかもしれない。「まだ考えているところ。」と一言。彼は自分から話しかける人間ではなかったが、今回は違った。「君はどんな部活に入っているの?」―――「俺は野球部。」丸坊主の頭を見せびらかし、そう言った。神治は野球に興味がないし、ルールさえも知らない。何より団体競技というものに無縁であった――いや、無縁であるように仕立て上げたのかもしれない。わざと避けて通ってきた道、それが団体競技である。不意に「僕は何にも部活に入っていない。したいことをやっている。」と、誠がぼそっと言う。「したいことって?」思わず声が出た。「自分がしたいことではない。というか、やらされていることっていうのかもしれない。」――――「親がやらせたいことって意味?」――――「いや、神様がね、僕にやらせたいことだ。」――チャイムが鳴った。先生の号令で授業が終わる。生徒たちはそそくさと神治の周りに集まってきた。神治はまだ誠と話したかったが、そうもいかないようだったし、誠はすでにいなくなっていた。神様という言葉が引っかかる。それは僕が信じているような「神」なのか、それともまったく別の「神」なのか、ただの冗談なのかもしれない。その真偽を確かめたかった。「大阪のどこからきたの?」、「学校案内してあげるよ。」―――神治は生徒に連れられて学校を回った。迷惑と感じなかったが、それと同時に感謝も感じなかった。ただ虚無に、無感情に、愛想を振舞う。図書館、実験室、体育館…ほとんど全ての教室に案内された。その中で神治は架空の自分を作り上げた、友好的な転校生を。そしてそれが今後の学校生活において有益なものだと信じていたし、これから自分と自分の周りに起きるであろう不可解な出来事の原因にされないためにもこの行為は必要なことだった。案内人たちは部活のため、解散する。武田は神治に部活も見とけよと言ってきたが、無論、神治にその気は微塵もない。しかし形としては必要だろうと、武田のいる野球部へと足を運んだ。

 負傷者11人。それがは治が野球部に見学に来たときに怪我をした部員の数である。神治は見学に退屈していたのでそれが家に帰る口実になった。彼は知っていた―――それが自分のせいであることに。彼は自分の思ったことがそのとおりになった。自分にとっては幸福だが、相手にとっては不幸なことだけ―――だから不「運」を運ぶ男。

 誠はピアノの教室に通っている。本人は行きたくはなかったし、両親も強制はしなかった。しかし誠はそれをしないと嫌われることを知っていた。だからピアノを習う。


2006/10/24(Tue)22:50:38 公開 / 夏樹 空
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授業中暇だったので書いてみました。
未完成です

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