『月冴えて願う〜Teens blues』 ... ジャンル:リアル・現代 未分類
作者:エリコ                

     あらすじ・作品紹介
 すさんだ生活をしている十七歳の栞(しおり)が、様々な環境で生きている同世代との関わりの中で、理想と現実、うねぼれと自己否定の間を揺れ動き、やがて「まっとう」に生きようとするまでの物語です。

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 他人に無関心な理恵が珍しく真剣な顔でやめときなよ、といった。そのことを考えると重い気持ちになった。理恵とアイスクリームを食べたあと別れた。ゲーム喫茶「ピエロ」でポーカーをやりながら矢井田を待っていた。
 店に入ってきた男が一万円札を出しながら
「鍵を開けてくれよ」
といった。マスターがカウンターから出て窓際まで歩いていった。テーブルの裏を覗き込み、キーを差し込んだ。男が札を投入口へ流し込んだ。
「ここで勝ったためしがねえな」
とつぶやきマスターを見上げた。
「矢井田さんが勝ちましたよ」
と答えながらマスターがカウンターへ戻ってきた。
「あの人はここの用心棒じゃねえか。細工してるんじゃないの、え?」
「もうすぐ来ますよ」
男の顔が緊張したように見えた。
 矢井田の名前をきくと気持ちが高ぶった。おまけのように付いてくる重い鬱憂鬱な気分の深刻さには気づかないふりをした。これを恋愛感情なのだと思っていた。
 矢井田が店に入ってきた。ポーカーゲームをやっていた男が立ち上がって会釈をした。その男は矢井田と比べると貧相なチンピラにしか見えなかった。
「栞ちゃんだっけ?」
と矢井田がこちらに視線を向けていった。
 マスターが透明な液の入ったグラスをカウンターに置いた。その前に矢井田が座った。すぐ近くにあるその頑丈な肩を横目で見た。
「会うのは三回目だ。そうだよな」
本当は五回目だったが、うんとうなずいた。
「前に会ったのは、益田ビルの地下のスナックだな。あんときのアレ、またやりたいか」
矢井田のつま先が合図するようにかかとに触れた。
「悪いことを教えちゃだめですよ」
マスターが冗談のような口ぶりで、しかし真顔でいった。
「もう大人の女だよ。なあ。前は明美も一緒だった。今日はふたりきりだ」
また足が触れた。
 明美が矢井田と寝ているのではないかと思っていた。矢井田は明美に紹介された。
 矢井田は一杯だけ透明な液体を飲んだ。そっけなく席を立ち、店を出ようとするのを追いかけた。
「栞ちゃん」
呼び止めるような咎めるようなマスターの声が背中に聞こえた。
 店を出ると、矢井田がポケットから小さな袋を取り出した。白い粉が袋の中でさらさらと動いていた。
 二人でラブホテルに入った。粉を水に溶かしたものを注射された。それからセックスをした。何もかも、この世の全てが大きいサイズになった。悲しいことも怖いことも消えてしまったような気がした。
 深夜に矢井田に起こされて「帰れ」といわれた。椅子の上に投げ出したGジャンを着ていると、裸のまま起きだした矢井田が五千円札を差し出した。受け取って街に出た。
 ふたつ、依存するものが増えた。超えてはならない境界線を飛び越えた、と思った。この年の夏、十七歳になった。

 ネオンだらけの裏道から、一階にゲイバーが入っている雑居ビルの角を曲がり細い路地を抜け、町のメインストリートに出た。まっすぐ歩いていると童顔の男たちから何度も声をかけられた。
 自宅の近くの歩道に明美がしゃがみこんで煙草を吸っているのが見えた。遠目で見ると中年女のようだった。通りすがりにそういうと「十八だよ、こう見えても」と笑いもせず答えた。
「あたしを待ってたの?」
「ここで誰を待つのさ。あんたしかいないじゃん」
明美の鼻から煙が吹き出した。
「太った?」
いつもより顔が大きく見えた。
「それより部屋に入れてよ」
 家の裏に回って庭のプレハブのサッシを開けた。明美が先に上がり込んだ。
「いいなあ、あんたの部屋。親から離れててさ」
明美は薄いカーペットの上に胡座をかいた。灰皿を真中にして向かい合った。窓から静まり返った母屋が見えた。雨戸が締め切ってあり、取りつくしまがないように見えた。
「今日は静かだけど、いつもは親父の暴れる物音や声がうるさいんだ。次の朝、窓から覗き込んで母親が生きているのを確認するわけ」
明美は相槌の代わりにくわえ煙草のまま鼻を鳴らした。時計を見ると午前二時だった。
「寝ようよ。どうせ寝にきたんでしょ」
明美は毛布ひとつに包まり、ベッドの端にうずくまる姿勢で目を閉じた。
 国道77号線からひっきりなしに車の通り過ぎる音が聞こえた。頭の上のライトを消した。布団に潜り込んだが眠れなかった。矢井田の姿ばかり思い出していた。
 目を覚ましたとき、日が高くなっているのがわかった。もう少し寝るつもりで横になった。明美が動く気配を夢うつつで感じた。起き上がって電気ポットのスイッチを入れた。昨日入れたままの水を沸かし、一つしかないカップヌードルを明美と分け合って食べた。
「クラブビーにでも行こうか」
あくびを噛み殺しながら明美がいった。
「聡史の顔が見たくなったね」
「まだ生きてるかな、あいつ」
煙草に火をつけながら明美がスローモーに立ち上がった。
 駅前の飲食店が並ぶ通りの手前でメインストリートを横断した。繁華街が途切れる角まで歩いた。コンクリート剥き出しの古い雑居ビルが建っていた。歩道には「喫茶クラブビー」という雨晒しの看板が立てかけてあった。
 その店内は粗大ゴミを集めて即席にこしらえたように薄汚れて雑然としておりカビの匂いがした。カウンターとして使っている細長いテーブルの脇を抜けて奥の小さなアーチをくぐると、ダンスホールのように広くなっていた。昼間は喫茶、深夜から明け方までパブになるそこには、得体の知れない複数のグループが四六時中たむろしていた。
 頬骨の張った田中という支配人がこちらを向いて「来たのかい。こっちにお座り」と手招きをした。
「聡史は来てる?」
「寝てるよ」
田中が指差す方を見ると、長椅子からはみ出た大きな足があった。明美に続いて立ち上がり歩きかけたとき、二人の女が側をすり抜けていった。
「聡史くん」
聡史の足を触り、揺り動かしながら鼻声を出した。
「十五歳の彼氏って、この子?」
「そう。見てよ、この顔」
端正な顔立ちの目を充血させて聡史が起き上がった。なめられないようにしているオールバックの髪をかきあげた。女が聡史を抱きかかえた。
「おれ、十六になったよ」
舌足らずの幼い声が聞こえた。女の体に隠されて表情は見えなかった。
「聡史と遊びたかったのに」
「あのお姉さん、これから店に出るんでしょ。すぐ解放されるよ」
聡史は夜九時から朝六時までこのパブでボーイの仕事をしていた。
「九時まで何時間ある?」
「4時間ぐらい。マコっちゃん呼んでカラオケ行こうか」
明美が誠に電話をかけた。
「栞に代わる?」
代わってよ、という誠の声が聞こえた。
「もしもし、栞だけど」
「時間かかるよ、これから仕度するから」
と誠はいった。
「いいけど、女装して来るなよ。してきたら絶交だよ」
電話を切ると明美が笑っていた。
「女装してきたことあんの?」
「三日ぐらい前に待ち合わせしたの。あいつスカート穿いて、化粧して、カツラかぶって来やがってさ」
「いいじゃん」
「夜八時の『つぼ八』にあんなカッコして現れたら恥ずかしいよ。店の客が全員見てた」
女たちが笑い声をたてながら側を通り帰っていった。
「何の話?」
聡史が椅子の背を跨ぎ割り込んできた。何日も眠っていないような表情をしていた。
「マコっちゃんがオカマだっていう話」
「そんなの、みんな知っている」
聡史の笑顔は幼かった。彼が今居る場所も境遇も酒も煙草もオールバックも、その笑顔と不似合いだった。
 誠は上から下まで白い服を着てクラブビーに現れた。カビ臭い出入り口を四人が一列に並んで行進した。外に出ると救急車のサイレンが聞こえた。聡史を先頭に繁華街に向けて歩いていった。自動車の走る音が大きくなり、焼肉の匂いがした。
 飲食店の並ぶ通りに一つだけある古着屋とレンタルビデオ店の間の道を入った。町で一番安い、という看板が掲げてあるガラスドアが左手にあった。カラオケという文字が豆電球で囲まれていた。
 一室に通されてから明美と聡史が流行りの歌を交代で歌った。誠が隣で膝を叩いてリズムをとっていた。
「栞さん、歌わないの?」
「うん」
誠は少しの間考えるような表情をして
「君が矢井田さんと一緒に歩いているのを見たんだ。あの人は本物のヤクザだよ。近づかないほうがいいと思う」
といった。
 誠は町外れに建っているストリートハウスを知らなかった。明美と二人でそこに出入りし小遣いを稼いでいることも、矢井田がその店を裏で仕切っていることも話していないから、知らないはずだった。
 明美が踊りながら誠に近寄り、手を引いた。
「ヤバいよね。わかってるんだ。今ならまだ、やめられる」
誠は明美と歌い始めた。入れ替わりに戻ってきた聡史の視線に目を伏せた。自分がどんな表情をしているのかわからなかった。
 カラオケ店のカウンターで割り勘の金を寄せ合っていると、覚えのある声が聞こえた。紺色の制服を来た理恵が立っていた。同じ高校の男女が数人一緒にいた。理恵は仲間と階段を上っていった。
「あいつ、気づいてたね。おれたちのこと」
「制服を着ているときは話しかけないっていうルールがあるの」
と明美がいった。
「あたしたちとも遊ぶけど、高校は卒業するっていってた」
「学校なんか行ってるやつの気が知れねえ」
聡史はそういいながら外へ出た。
 聡史は中学もろくに行っていなかった。卒業してからはバーテンやパブのボーイをして日銭を稼ぎ暮らしていた。父親はほとんど自宅に居ることはなく、本当の母親は何年も前に家を出て行方が知れなかった。家事をしない父親の愛人と、その息子の幼い弟が同居人だった。
 行く当てもなく裏道を歩いた。ドクロの絵が落書きされたシャッターの前を通りかかった。いつもこのシャッターは閉じられていた。なんの店なのかは誰も知らなかった。理恵と出会ったのはこの場所だった。
「ここで胡座かいてたんだ。夜中こんなとこにいるから、学校なんて行ってないやつだと思ったよ」
 理恵と二人で明け方までシャッターにもたれかかって話した。共通の遊び人仲間や、短い周期で代わっていくあちこちの店舗とその従業員の噂を話した。理恵とは行きずりのような友達だった。会うたびにお互いにこれっきりかもしれないと思いながら遊んでいた。
 クラブビーに戻るため、聡史が片手を上げて「バイバイ」といった。パチンコ店と中華料理屋の間の細い路地に入っていった。
「聡史についていこうかな」
自分の部屋には帰りたくなかった。
「誠の店に行くよ、あたしは」
明美が誠の肩に後ろから両手でぶら下がりながら言った。
「じゃあ、あたしは聡史のとこいく」
「金あんの?」
「明日、ストリートに行くから」
「じゃあ、明日ね」
 明美より華奢な誠の体がふらついていた。明美の大げさな笑い声が通りに響いた。
 クラブビーに戻ると、聡史が入り口近くのカウンターに立っていた。ボードにビール瓶とグラスを置いていた。「来たの」と笑った。
 幼い少年と気を使う苦労人が同居する笑顔が好きだった。その顔を見るたび、彼の手のひらに自分の手を重ね、二人で暖まれたらどんなに心強いだろうと思った。
 一人で隅のボックスでビールを飲んでいた。聡史が通りすがりに「おれんちに来る?」と訊いた。うん、と答えているうちに、聡史は支配人に呼ばれ忙しそうに離れていった。
 気づいたとき、椅子に頭をつけて眠っていた。
「もう五時だからあがるよ」
と聡史に起こされた。
 二人で外に出た。街の建物の縁取りが、まだ夜の名残の青色に染まっていた。鳥の鳴き声が聞こえた。空は白くなっていた。
 店の裏に回ると、錆びた薄緑の自転車が置いてあった。聡史はそれに跨り「後ろに乗って」といった。
 日中にはあふれかえっている雑多なノイズはなく、自転車を漕ぐ音しか聞こえなかった。顔にあたる風が澄んでいるを感じた。
 木造の大きな家の前に自転車が止まった。古いこげ茶色の引き戸を開けて中に入った。聡史の後を追って歩いていく廊下の右手が長方形の中庭になっていた。その周りを廊下が取り囲んでいた。短い廊下を曲がり長い廊下を歩いていった。左側のいくつかの襖の中に人の気配は感じなかった。聡史が突き当たりのドアを開けた。十畳ほどの広さの部屋だった。奥の窓辺にベッドがあり、下に大きなクッションがいくつも積み重なっていた。
「誰もいないの?」
「あっちにおばさんと弟がいるよ」
ドアの方を指差した。
「おばさんとは気まずいから会わないようにしているんだ。弟はおれのことが大好きなんだ。よく遊びにくるよ。今はまだ寝てると思うけど」
「いいなあ。あたしも弟が欲しいよ」
クッションの上に体を投げ出した。
「おれは寝るよ」
聡史はベッドに寝転んだ。
「眠くないの?」
「眠たい」
「じゃあ、ここで寝ていいよ」
聡史がベッドの端に体を寄せ、布団を開けてくれた。そこにもぐりこんで横になったまま向かい合った。
「睫毛が長いね」
「おれの顔、女みたい? 玲子さんが言ってた」
「玲子さんって、昨日の女の人?」
「そう。彼女なんだ」
聡史は目を閉じて微笑んだ。
「玲子さんは優しい?」
「優しいよ」
「よかったね」
心からそういった。
 すぐに聡史は寝息をたてた。健康ではないと思われる甘い匂いの息が顔にかかった。カーテンの隙間から漏れた日光が彼の輪郭を照らした。
 聡史の部屋では眠れなかった。
 ベッドを揺らさないように起き上がり部屋を出た。入ってきた廊下を同じようにたどって外に出た。日差しが強くなっていた。通学の小学生が列を作り前を横切った。太陽が眩しくて下を向き、自転車にベルを鳴らされた。
 大通りのバス停でバスが来るのを待った。
 バスの中で、明日になったら「何か」しよう、と思った。「何か」は具体的には浮かばなかった。
 バスを降りて自宅に近づくと怒鳴り声がした。父の声ではなかった。怒鳴る男の他に静かに話す男の声がした。
「こう何度も約束を破られるとね、うちも厳しく対応せざるをえないんですよ」
よく通る低い声だった。かすかに母の声が聞こえた。
 玄関を通り過ぎ、家の裏に回りこんで低い垣根を跨いだ。サッシを開けて自分の部屋にポーチを置いた。庭をつっきって母屋の縁側で中を覗いた。引き戸を開け静かに中に入った。
 トイレに入ったあと、キッチンに行き冷蔵庫をあけた。オレンジジュースとプロセスチーズの小さいのを手にとった。この数日、ろくに食事をしていなかった。なにか食べないといけない、と思っていた。冷蔵庫の上の食パンを袋ごと持ち居間を出た。自分の部屋に戻り、乾いた口の中に放り込んだ。
 布団に入ると少し安心した。娘の朝帰りなど気にする余裕もなくなっている母の暗い顔が瞼の裏に浮かんだ。父は今日も仕事をボイコットしているはずだった。母に当り散らす声が聞こえないのは、玄関にいた二人の男のせいに違いなかった。
 夕方、ストリートハウスの駐車場に立っていた。明美を待っている間、矢井田が今にも現れそうで怖かった。自ら求めてしまう後ろめたさが背中に張り付いていた。
 明美の姿を見るなりいった。
「ここで探そうよ」
「じかにやるの?」
「うん」
「怒られるよ」
 駐車場に車が入ってきた。明美の腕を引き、その車に近づいた。若い男が二人乗っていた。
「一万円なんだけど」
車の窓を覗き込み、話しかけた。
「そっちも?」
男の一人が明美を指差し「そっちはちょっと」と断るしぐさをした。
「五千円でもいいよ」
と明美がくわえ煙草のままいった。
「いや、いい」
男が話を打ち切るように手を振った。もう一人が「じゃあ、僕はこっちと」と手を伸ばしてきた。
 断った男は「オレは店に入るよ」と車を出た。明美も歩き出した。
「断られるのは慣れてるから。あたしブスだし」
「どうするの?」
「店で客つかなかったら、マスターに買ってもらう。金ないんだ」
「後で、誠の店に行かない?」
「たぶん行くと思う。先に行っててよ」
明美はそういうと背中を向けた。車の中で、男が貧乏ゆすりをして待っていた。
 人気の無い工事現場で抱かれた。無理な姿勢で我慢をした。
 駐車場に戻り、金を貰って車から出た。体中が痛かった。今日は矢井田に会わずにすんだ、と安堵した。しかしすぐに、会わずにいたら忘れられてしまうという不安が押し寄せてきた。
 少し離れた場所からバスに乗った。日が落ちたばかりの時刻だった。「最終です」と運転手はいった。ストリートハウスは町の中心から最も外れにあった。
 額を窓ガラスに付け外を見た。寂しい界隈から次第に住宅が多くなった。やがて店が増えてくると、歩道を歩く人の数も多くなった。全ての人が、歩いていく先に正しい目的を持っているように見えた。
 繁華街に近づき、書店の手前でバスを降りた。いつも一人のときだけここに来た。文庫本のコーナーに先客がいた。振り向いた彼女は「栞ちゃん」と笑顔を向けた。中高生の男子も女子も憧れる制服を着ていた。セーラーの襟がクリーム色のカーディガンを縁取っていた。真っ直ぐな髪が肩で揺れていた。「高田」と呼び捨てにしていた中学時代とは様子が違っていた。
「ちょっとお話しない?」
高田が上を指差していった。
「二階でお茶が飲めるの」
「うん」
高田は人懐っこい笑顔のまま先に歩き出した。
 書店の中に階段があった。二階に上がったのは初めてだった。広いフロア−に薄いグリーンのテーブルと椅子が並んでいた。窓際の席に向かい合って座った。
「久しぶりだね。小学校からの親友なのに、全然会えないね」
「前に電話で話したとき、塾とか習い事で忙しいって言ってたじゃん」
「うん、忙しいんだ。もう進学の準備が始まってるの」
高田はこちらに手を伸ばし肩に触れた。
「高校、やめちゃったの?」
「うん」
目を逸らして紅茶のカップを持った。
「栞ちゃん変わったねって今井さんとかが言ってた。見かけたんだって」
窓ガラスの縁を歩く蟻を眺めていた。しきりに高田は腕時計を見始めた。別れるとき「また会おうね」と彼女はいった。


2006/09/23(Sat)19:48:06 公開 / エリコ
■この作品の著作権はエリコさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 文体が一定のリズムになるように考えながら書きました。それと物語が面白くなることが両立できればいいんですが、これが一番の課題です。
 なにより、この文章が小説になっているのか、客観的な意見をよろしくお願い致します。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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