『嘘つきの日記 序章』 ... ジャンル:未分類 恋愛小説
作者:桧巳                

     あらすじ・作品紹介
結構嘘を毎回つくというとこは、ちょっと自分を重ねました。嘘を肯定する事で生きている主人公と正直すぎる自分に嫌気が差して、嘘つきな主人公の虚言症に興味を持つ男とのお話。今の人間は、嘘を否定するのに立場で嘘を利用するのが多いです。散々嘘を否定しながらも、自分の立場が変わると嘘を肯定する人間。あえてそんな人間に染まっていない2人を書きました

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私はよく人を騙す。嘘が口から絶えない。本当の事は話そうと思うけどそれでもやはり私の口から出る言葉は、嘘ばかり。何気ないことでも嘘をついて人を欺く。それは私の中で『嘘』が正当化されてるからなのだろう。正当化する事が私の嘘に対する唯一の神に対する崇拝なのだ。神なんて私は信用しない。
梅雨が明けたか明けてないかも判らぬ微妙な気象予報の日々。
テレビの着飾ったアナウンサーは
「今日の東京は、午前中は気温も高く晴れ間が続きますが、午後からは局地的な雨が降る模様です。傘の準備をしておいたほうが良いでしょう。」
なーんて言ってる。
この人だって嘘つきでしょ?私と同じだよ。天気予報なんて当たる方が珍しい。『傘の準備をしておいたほうが良いでしょう。』って日本国民に対する気遣いが見られる。
みーんな嘘つき。
だからこの世の中なんて正しい事なんてなんもない。正しい事がどれかなんて誰も判断できない。だからこそ私の虚言は正当化されるんだろう。
テレビを消して、レースのカーテンを開けた。暑くなる予感のする日差しが注ぐ。
太陽はもう昇り始める。

午前7時

白い雲は青空に妙に合わないくらい消えそうな存在で、まるで私の存在みたい。
なーんてちょっと感傷に浸っちゃいながらも制服に着替えをする。まだあまり着慣れないブレザーの制服は細身の私には少し大きいかもしれない。成長期の娘の胸は大きくなることもなく、ポツンとあるだけ。あー何でこんな今日は悲観的なんだろう。
バッサリ切ったショートの髪はまだぎこちない。鬘のように私の顔に不自然だった。
そして鏡の前で自分の顔と対峙する。父にも母にも似ずこの顔。
外は晴れてるのに、こんなに私は悲観的。生きてたら何が起こるかわかんない、なーんて言う人生も、16歳にもなれば人生のリズムもローテーションも分かり始めるのだ。

午前7時10分

「いってきまーすって誰もいないー」
これが私の玄関を出る時の挨拶。もう大分慣れてる。
外を出ると、どうも日差しが強くて一瞬立ち眩みした。日の光が白すぎて気持ち悪い。雀何かは呑気にチュンチュン鳴いちゃって、お向かいの家は子供たちが通学のため一斉に家から出てきた。黒いランドセル、赤いランドセル、野球のチームバックを持った高校生、みんな一緒に
「いってきまーす」
「行ってらっしゃい」
お母さんの暖かい木漏れ日のような声。私はこの挨拶のやり取りの中に、嘘は唯一ないと思う。この家族は青い空が良く似合う。
早く、早く雨よ降れ。
降ってこんな家族、濡らして。そう思う私は悪者何だろうか。いや違う。
悪者とは善人の行いを妨害する事で、私の行いはそんな下品じゃない。
きっと、自分も青い空が似合いたかったんだろう。自分も、『行ってらっしゃい』って
一言行って欲しかったんだろう。僻みからの思考だ。
嘘は人を傷つけないし、僻みは偽善者ぶらない。
そうまた強く思う事で自分の虚言を肯定できる素晴らしさは私にしか分からないんだろう。
こんな変な性格だから、男性経験とか性的経験はないとは言えないけどでもやはり
「お前って嘘つきじゃん。最悪。」
なーんて。別れ際に言われるもので。そんなの私だって知ってますよ。
長年連れ添った友達とか、ただのクラスメイトにでさえ
「嘘つき!!瑞貴何て死ね!」
なーんて。毎回言われる。そんなの友達じゃない。
私の虚言を理解してくれる人何ていないから友達もいない。
結局いつも一人で。でも私には唯一嘘をつく為にいる存在の男がいる。

「おー畑野。ちーっす!」
私と違ってやけに青空が似合う男。体育系とは程遠い男だけど、体育の通信簿は毎回2らしいけど、それでも青空が似合う男。

午前7時50分

2006/07/01(Sat)00:58:59 公開 / 桧巳
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■作者からのメッセージ
私自身、嘘つきです。
日々、嘘三昧。
だから人の嘘も見破れます。
みなさんはどんなとき嘘をつきますか?
この話でみなさんが、嘘に対して興味を持ったら、うれしいです。

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