『ペルパの暴険』 ... ジャンル:ファンタジー お笑い
作者:幾人                

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 私はペルパ。勇者である。
 こう見えて、一昔前に一世を風靡した記憶があるのだが、この間連れられていった王立図書館に、私の記録はひとかけらもなかった。いやあるにはあったのだが、それは勇者になる前、別にどうでもいい話題でしかなかった。
 何日、否、何週間かかけて書物に洗いざらい目を通した結果、
……はここで蛮勇を一さじ……
……、へんくつ者は国さ帰……
……今年度からペナス産の……
……赤く塗ったルーマニア……
……が疾走するパーキング……
……ロマノック最高裁では……
……されている高齢化社会……
……の臭かった大財閥では……
……ゴシック式好物はザク……
……メッポロスキキキと目……(『未完! 料理百万選』より抜粋)
 このように記されている本を見つけた。
 私は興奮した。なんだ、ちゃんとあるじゃないか、と。
 けれど嫁は首をかしげて微笑むばかりで、ちゃんと相手にしてくれなかった。
 彼女の言い分はこうだ。
「勇者って、料理本で語られるべきではないと思います」
 なるほど、確かにその通りである。
 なら勇者とはいかなる書物によって後世に語り継がれるべきなのか。
「有名どころだと、やっぱり叙事詩とかじゃないでしょうか」
 そう、神話とか書かれているヤツだ。
 私は反論した。
 神話というのは所詮作り話に過ぎないと。
「この世に神などおらず、魔もなく、全ては人のみが生み出した幻想に過ぎない」と、そう、言ったのだ。
 嫁は我が真言に言葉を失ったようだった。
 唖然、という言葉が似合った。
 ともかく私は、私の武勇譚を書き記せる書体を考えた。適当なものが見当たらなかった。
 何せ今まで勇者は単体で描かれることなく、全て神話やら伝説やらに組み込まれていたからだ。
 そこで私は、ある結論に至った。
「勇者とは偉人。偉人とは伝記によって、その偉業を伝えられる」と。





















* これから書くことは、全て真実です。本当です。













〇 出生

 十二月二十五日。
 粉雪の降る聖夜。
 後、勇者として名を轟かせることになる赤子が生まれたのは、王都から程遠い村の、馬小屋の藁の中だった。
 聖母の名はフィロナ。実に頭の悪い女だ。
 父はおらず、処女妊娠、そして出産にいたった。
「まぁ、なんてかわいらしい男の子なのかしら」
 その赤子は、万人が感涙に溺れ死ぬような神聖さの持ち主だった。
 赤子は頭が大変よかったので、生まれながらにして喋ることが出来た。
「僕の名前はペルパ! 頭のいい男の子さ!」
 かつぜつもバッチリだ。
「まぁなんて頭がいいのかしら。きっとこの子は、世界を救う■■■(上から塗りつぶされている)勇者になるでしょう!」
 その夜は、丁度天使とかも降りてきた。六枚の翼を持ってるやつもいた。
 で、なんかラッパみたいなので聖歌を吹いた。
 みんなで彼の出生を祝った。無礼講だといって、酒も飲んだ。
 食べるものがなかったので、ペルパは不思議な力で石をパンに変えて振舞った。それだけでは酒のつまみに足りないと、捕鯨船に乗って鯨も取ってきた。勇者に時間的不可能はなかった。桜吹雪とかも舞っていた。嘘じゃない。
 ペルパは生まれてきて、よかったのだ。


 ペルパは、何の問題なく、すくすく大きくなった。
 ペルパは歳を重ねるごとに賢くなった。脳みその重量は二〇〇〇グラムを越えた。
 フィロナはだんだん老化現象が進んで、ボケていった。
「なぁペルパよ、めがねはどこに置いたかね?」
「はぁ、母上は馬鹿だなぁ。ほら、ここに」と自分のポケットの中から取り出してあげた。
 フィロナが無くしたモノがどこにあるのか、ペルパだけはいつだって知っていた。
 賢いペルパはみんなからも愛された。
 同い年のやつらは、みんなペルパと一緒に遊びたかったし、先生はペルパに物を教えたがった。
「この問題が分かる人はいますか?」
 そう尋ねられると、馬鹿なみんなは誰も答えられなかった。
 でも、ペルパは答えられた。
「九×九=八十三!」
「わぁ、ペルパ君は頭がいいですねぇ」
 先生はいつもペルパを褒め称えた。
 尊敬の眼差しだった。
 いっつも先生は、ペルパに付きっきりだった。
 ペルパは特別だった。
「当然ですよ、だって僕は頭がいいですもの」
 ペルパは頭がよかったが、しかし決してそのことを驕らなかった。
 いつも謙虚に生きる、凄いヤツだったのだ。
 ペルパはみんなに好かれた。
 人気

(ここから数ページ、滲んでいる)

 彼らは、ペルパを無視しなかった。
 彼らは、ペルパをキモイとか呼ばなかった。
 彼らは、ペルパを仲間外れにしなかった。
 彼らは、いつも石を投げてこなかった。それにペルパは石をパンに変える力を持っていたので、全然大丈夫だったんだぜ。
 フィロナはペルパの兄とペルパを、決して比べなかった。
 ペルパの兄は決して、弟をいじめたりしなかった。
 そう、おれは生まれてきて

(以後白紙)



一 聖剣

 それはさておき、大きくなったペルパは王都に出かけた。
 二三日前から彼にだけ「王都に行け」という天の声が聞こえたからだ。
 彼は選ばれし者だった。
 間違いなく勇者だった。
 背中に勇者の痣とかあった。青痣じゃない。嘘じゃない。
 パンフレットを頼りに、王都を練り歩いた。
 決して迷子になって、市民の協力なんて仰がなかった。
 そして発見した。
 岩につきたてられた聖剣を。
『これ、聖剣です』と確かに、看板にそう書いてあったから間違いない。
「えー? これが聖剣? マジで?」
「うわっ、ショボーイ!」
 観光客も聖剣を抜こうと挑んだが、抜けるはずがなかった。
 だって彼らは勇者でなかったから。
 だって勇者であるペルパが抜く予定だったから。
 ペルパが聖剣の前に立つと、絶対、いやホントに雰囲気変わった。神々しいものへと。
 抜けるのは決まっていた。
 ペルパが聖剣の柄を握ると、力を入れていないのに、ひとりでに聖剣は抜けた。たぶん、静電気とかの力を応用した超スーパーハイテクニカルテクノロジーなのだろう。
 それを見た観衆は、拍手喝采とかコルク発射、上等な酒樽割ったりとか、とにかく勇者の誕生を称えた。
「勇者様!」と男が。
「勇者様!」と女が。
「勇者様!」犬までも。
 ペルパは優雅に手を振って、それに答えた。
 その姿はたいへん白亜の町並みに映え、格好良かった。ステキだった。ロマンス。
 モデルとして勧誘されたほどだ。
 国家を代表して王さまも出てきた。
「君は勇者だ」
 ペルパは公的に勇者と認められた。
 みんな彼を崇めた。
 貴族や大商人は、大変に美しい娘達を差し出して、勇者の祝福を受けようとした。
 勇者は特殊なオーラを体中から放出しているのが慣わしでペルパもそれに違わなかった。
 このオーラがあると、絶対に死なないから。
 そう、ペルパは無敵だった。
 ペルパの冒険が始まるのは、ここからである。



二 ドラゴンスレイヤー

 ペルパは本当の勇者だったので、レベル上げなんか必要なかった。
 レベルなんていう物差しは、凡人にあてがわれるものであって、天才は、どんなに馬鹿共が頑張っても到達しえないステータスとか秘技とか必殺技を持っていた。彼がやろうと思えば、デコピンで大地をも砕くことが可能だった。月までもひとっとびだ。
 すぐにボス戦に挑んだ。
 ボス、といえば竜だ。
 ペルパは竜を探した。
 すると、いた。
 魔国領と王国領を隔てる中央山脈の、奥深いところに、竜はいるとの話だった。
 ペルパはすぐに討伐しにいった。
 竜は本来神聖なものであるはずだが、その竜は違った。
 その竜はたいへんに悪い竜で、周辺の村々を襲っては、人から金銀財宝を奪い、苦しむ姿を見て楽しんでいた。嘘じゃないと信じたい。
 だから殺してもなんら悪くなかった。
 宗教裁判にだって、かけられる心配はなかった。安心だ。
 ペルパは、その類稀なる明晰な頭脳を上手い具合に有効活用して、攻守ともにパーフェクトな竜を追い詰めていった。
 地形を上手く利用した。
 気候だって、当然こちらの味方にした。
 だってペルパは勇者だったから。
「あぁ、何てお前は頭がいいんだ」
 竜だって認めた。これは本当だ。
 そう、ペルパは頭がいい。
 だって勇者だったから。
 そんなペルパに、もはや勝てないと、竜は戦闘を放棄した。
 それで竜の罪が許されるわけではなかった。
 ひとつ言っておきたいのは、竜は結構いいヤツだったということだ。
 彼はペルパの頭の良さに本当に気がついていて、色々褒めてくれた。
「今までよく一人で生きてきたな」とか、みんなに愛されてきた勇者にとって意味不明なことで、小一時間ぐらい頭を撫でてくれたし、
「強いな、本当に。それに優しい」とか、当たり前のことを、何度も何度も、しつこくなるくらい(悪い気はしなかった)言った。
 だが、竜は悪い竜だったのだ。
 周りの人間みんな、口を揃えてそういっていたから、真実だ。
 ペルパは勇者だったので、竜を殺した。
 返り血を浴びたり、飲んだりして、ペルパの勇者度は拡大に増加した。
 頭のよさもあがった。脳みそも三〇〇〇グラムを突破した。
 そう、ペルパは、誰からも認められる勇者になったのだ。嘘じゃない。



三 新大陸

 今、世界には大陸がひとつしかないと言われているが、あれは嘘だ。
 なぜなら勇者であるペルパが、実際に新大陸に至ったから。
 ペルパはいつも正しいから、間違いない。嘘じゃない。
 ちゃんと船(添付されている図1より、船の全長は五キロに及ぶそうだ)を借■■■■■(上から塗りつぶされている)王さまから無償で譲り受け、何万キロの大海を越えて、その大陸にたどり着いた。
 あー、えと、その、なんだ。
 そう、その大陸は空に浮いていた。
 本当だ。
 ペルパは勇者だったので、空を飛ぶことも朝飯前!
 足の裏のジェット噴射で、たやすく大陸の土を踏んだ。
 その大陸は、機械で出来ていた。ピコピコそこら中で、何か楽しそうにランプが点滅していたし、機械で出来た人とかも、普通に居住していた。
 機械人間は、機械のくせに人の言葉を喋ることが出来た。
 なんか銀色のスーツ姿の人もいたが、趣味が悪いと感じるのは凡人だけ。
 勇者のペルパは、「学ぶ点の多い異文化だ」と彼らの存在を認めてあげた。
 ペルパはただ頭がいいだけではなく、ふところも深かったのだ。
 もちろん無償だ。何か受け取ったわけではない。
 彼らはたいへん優しかったので、「寝ているだけでいいよ」と言ってくれた。
「まだ明るいのに寝るんですか?」
「それがわれわれの文化なのです」
「寝るには少々硬いベッドですな」
「それがわれわれの文化なのです」
「なんで……囲んでるんですか?」
「それがわれわれの文化なのです」
 ぷしゅ、と奇妙な音とともに、ペルパは別の場所に飛ばされていた。
 寝なさいといっておきながら、急に外に放り出すなんて、けしからんやつらだと今なら思えるが、その時のペルパは、どうしてだろう、放り出されたその場所が、愛おしくてたまらなかった。
 その場所は、どこまでも広がる草原だった。
 日差しは柔らかく、そよ風が吹いて、快かった。
 そこには優しく微笑んでくれるフィロナがいた。
 決して蹴り飛ばしたりしてこないペルパの兄もいた。
 決してペルパを仲間外れにしないクラスメートや先生もいた。
 今まで会って来たたくさんの人が、その場所にいた。
 みんなでバーベキューしていた。
 肉や野菜、どれをとっても勇者ペルパは食べ飽きた、超高級品ばかりだった。
 ペルパは勇者なので、別に食べたかったわけではない。
 けれど和を乱してはいけないと考慮し、おいしくいただいた。
 後、大きな木もあった。ハンモックが吊ってあった。
 バーベキューで腹を満たした後、そのハンモックで眠った。
 それは勇者ペルパにとって、当たり前の光景であるはずで、何故涙を流し崩れ落ちたのか、その場所で暮らしたいと思ったのか、さだかではないが、ペルパは勇者だったので、「まだ私には護るべき世界があります。そこを護ってから、きっと帰ってきます」と勇者らしく格好いいことを言って、その場所を離れた。
 ペルパは馬鹿なことをした。
 ペルパは勇者で、いつも正しかったが、このときばかりは間違っていた。
 その場に留まっていれば、たらふく肉が食えたというのに。
 脳が腐るほど惰眠をむさぼれたというのに。



四 ある漫画との出会い

 けれど、実は間違ってなんかいなかった。
 その場所にはある漫画がなかった。
 その場所を離れることによって、ペルパはある漫画と出会うことが出来た。
 そうその漫画こそ、
『勇者だよ、全員集合!』
 であった。
 これは、いい。
 一読どころか、千読の価値ありだ。
 たいへんに面白い。
 秀逸だ。
 引き込まれる。
 ついでに、ちょうどこのころ、嫁であるアテュナに出会った。
 彼女の頭上には、角が二本生えているのだが、これは彼女の趣味らしいので、そっとしておいてあげた。魔王族の血を濃く受け継ぐ者だけにこの角は生えると彼女から聞かされたが、コスプレの設定に興味はなかった。
 アテュナは、たいへん惚れっぽい女だった。
 なんというだ、出会ったばかりだというのに、一目惚れして、ペルパに求婚したのだ。
 ペルパは勇者だったので、モテモテだった。
 だから、アテュナの申し入れは断ってもよかった。
 だがペルパは、甲斐性がありまくりだったので、何人といわず何十人も嫁を持つことが出来た。この時すでに、ペルパにはよりどりみどり、何万という嫁がいたが、彼は、絶倫だったし、勇者だったので、その血を残すという義務があった。だから、アテュナの求婚を承諾した。
 ペルパは、何万度目の初夜を体験しようとしていた。
 別に慣れたものだったので、興奮なんかしなかった。これは本当だ。
 ペルパは勇者だったので、町の遊女にたいへんに気に入られていたのだ。
 だからとっくの昔に童貞は卒業していた。
 ペルパはアテュナの体に触れようとしたが、止められた。
 アテュナは意味不明なことを言った。
「私は構いません。ですが、お父様が認めた人でないと、きっと殺されてしまいます」
 彼女は色々建前を並べた。
 喪失することを恐れているのかと思ったが、どうやらそうではないらしかった。
 要約すると、「交わる前に山脈を越えたところにある自分の国に連れて行ってくれ」だ。
 こうしてペルパは新しい冒険に出発することになったのだが、それより既刊の『勇者だよ、全員集合!』のほうが気になるだろう。
 書店で調べた結果、なんと、そのときにはすでに『勇者だよ、全員集合!』は一〇〇巻を越える超大作と化していたのだ。
 幸運なことに、全巻そろっていた。こんなに面白いのに、抜けている巻がないあたり、王城近くの本屋は品揃えが抜群だ。
 店の主人が「止めておけそれは地雷だから」と忠告してくれた。
 なるほど確かに彼の言い分ももっともだ。
 漫画は終わらないところで終わらないと、訳が分からなくなる傾向があるから。
 ペルパは悩んだ。
 金は腐るほど持っていたが、ペルパは勇者だったので、模範を示さねばならない。
 無駄使いは出来なかった。
 日銭を稼がないといけないほど、決して貧しくなどなかった。
 だがアテュナはせっかちさんだった。
 頭のいいペルパがウンウン呻って解決案を思索していると、アテュナがものすごい形相で「急がないと、ほら、そこに、追っ手が来てますよ! もう、まったく、これですか? これ買えば連れて行ってくれますね?!」と、ペルパの代わりに勇者全集を全て買ってくれた。
 そう、彼女は妄想家であったが、同時に金持ちだったのだ。当然ペルパほどではないが。
 ペルパは誓った。彼女の剣になろうと。
 嬉しかったわけじゃない。
 勇者の責務だ。
 こうしてペルパは、アテュナを彼女の国に連れていく旅に出るわけであるが、そちらより勇者全集の件を記さねばなるまい。
 本屋店主が「地雷だ」といった勇者全集。
 本屋店主はうそつきだった。
 勇者全集は、全然地雷などではなかった。
 それどころか巻を重ねるごとに、ヒートアップしていったのだ。
 初めのうちは、本当の強さとはなんなのか、護るべきものとはなんなのか、人は何故生まれてきたのか、主人公クロウが人との出会いの中で考えていくという、なかなか面白いストーリーだったが、十巻を越えた時、世界に散った七つの宝玉を探して旅をし始めてから、さらに面白くなった。なんと七つ宝玉を集めると、願い事を一つ叶えてくれるという、斬新な切り口だった。荒々しく脈動し、所々下絵のままの絵も、勇者全集の特徴の一つだろう。
 凄い。ただその一言だった。
 ペルパは個人的に十六巻「それでも世界は俺のもの」、四十五巻「パンパローグ出陣せよ」、九十八巻「ハラショー」が好きだ。
 エマアロフスクが田園生命体パトラシュゥと戦い、天に召されたのは、泣いた。
「マッスルヴォディは、あそこだ」という台詞が、かなり格好よかった。
 冒険のほうは、まぁ何事もなく終わった。特筆することはない。
 唯一驚きだったのが、アテュナの父親も、頭に角が生えていたことだった。
 コスプレ趣味は、受け継がれていた。



五 その後

 ペルパは勇者らしく、世界を護って死んだ。
「護りたい世界があるんだ」と格好いいことも、もちろんいった。
 ペルパは、世界に破壊と混沌と秩序と再生をもたらす超激破壊神ヴィンヴィロヴィッチを倒すため、手に入れた最強無敵聖剣アスベストと三十四次元、通称“ドブルドーモニョ”に攻め込み、見事倒したものの、ハーゲンダッチオニスオン効果の影響に見舞われ、存在律からリッコロンヴァロスになって、ズラッバロ、ヂュヂュゴソス、ヌモノンデヤを取り戻すことに成功したものの、再び大地を踏むことはポロッポクッコソ。
 世界中の人々は、彼の偉業をたたえた。
 各地にペルパの像が建てられた。
 学校にだって、頭のいいペルパの像が建てられた。
 一番凄いのは、故郷に建てられた像で、その大きさは天に届くぐらいあった。正直畑耕すのに邪魔だと思うのだが、ペルパを溺愛する人にしてみれば、飢えとかは、どうでもよかったのだ。
 フィロナも、兄も、かつて学校で一緒に学んだ仲間たちも、ペルパの偉業をたたえた。
 そして謝った。彼に。
 勇者ペルパは、いいよと許してあげた。
 ペルパはただ頭がいいだけではなく、ふところも深かったのだ。
 優しかった。愛されて当然だ。嘘じゃない。




 ペルパは死んでしまった。
 すると世界は再び悪い方向へと傾き始めた。
 だが、彼の平和への意思は、彼の娘に受け継がれていた。
 そう、後に勇者となるリリュナである。
 リリュナは、ペルパの頭のよさとともに、たいへんな美貌の持ち主だった。
 世界中の美男子が、彼女に求婚した。当然おれの目の黒いうちは許さない。
 リリュナは、見ているものを幸せにするアウラを、大量放出していた。
 マイナスイオン、カリスマ性。そして頭のよさ、磁力、美貌。
 そうだよリリュナ、お前は完璧なんだ! ちょっとコスプレ趣味がアレだが。
 すると頭の悪い民衆も、彼女の下に集まった。
 リリュナは政治手腕も、完璧で、たちどころに新興国が出来上がった。
 頭首たるリリュナは父親ペルパを敬愛して止まなかった。
 だから国の名前も「ペルパ大帝国」とした。
 ペルパの名は永遠のものとなった。




 彼の魂は救われた。
 本来あるべきところに帰り、バーベキューをおいしく食べながら、惰眠をむさぼり、勇者全集を一日中読むことが許された。
 新刊だって、みんなより先に読むことも出来た。
 殺してしまった竜も、いた。でかくて邪魔だったが、その場所は竜よりもでかかったので、なんら問題なかった。決して肩身狭くして生きる必要は、もうないのだ。
 ペルパは別によかったが、アテュナがさびしいだろうと思って、たまに彼女とも色々話した。するとアテュナがいないと、ペルパも■■■■(上から塗りつぶされている)ペルパはどうでもよかったが、一緒に暮らすことにした。
 幼いリリュナも、一人では生きていけないので、当然一緒。
 フィロナも兄も、クラスメートも、先生も、仲間外れはかわいそうだったので、一緒だ。
 冒険した仲間も当然一緒。
 結局みんな一緒になった。当たり前のことだ。嘘じゃない。
 だって勇者だから。




























六 さらにその後

 ペルパは転生した。嘘じゃない。そしてその後、宇宙から飛来した大隕石を粉砕すべく

(以後の頁は意図的に切り取られている)

2006/05/06(Sat)06:46:37 公開 / 幾人
■この作品の著作権は幾人さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 こんな勇者、いてもいいと思うんですよ。


※初めのほうの、
……はここで蛮勇を一さじ……
……、へんくつ者は国さ帰……
……今年度からペナス産の……
……赤く塗ったルーマニア……
……が疾走するパーキング……
の部分。縦によくみると、ペルパ君にうれしいワードが出てきます。ここの掲示板の仕様で、ずれてしまいましたけど。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。