『消失 〜それは大切な日々〜  第一話』 ... ジャンル:リアル・現代 恋愛小説
作者:天宮                

     あらすじ・作品紹介
光と明日美。二人は幸せだった。ささやかな幸せがいつまでも続くと思っていた。しかし、それはある日を境に、音も無く、静かに崩れていく。明日美と大切な日々を消し去っていく……

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私はただ走る。彼の元へと。約束したあの木の元へ。どんなに時が経とうと二人は一緒だと、私たちが約束した、あの木の元へ。私は信号を無視し、歩いている人とぶつかりそうにもなる。構うものか、と私はひたすら走り続けた。そして、この街で一番大きな公園の奥にある雑木林の向こうのそこに私はたどり着いた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
呼吸を整えてそこを見渡す。そこにはとても大きな桜の木が聳え立っていた。その風格漂う姿は今も昔も全く変わっていなかった。今は、もう夏で花は散りすっかり葉桜になってしまったけど、春にはとても綺麗な花が咲き誇る桜の木。二人の大切な思い出の、約束の場所。でも彼は、そこには居なかった。
「はぁ、はぁ、やっぱ居ないか…」
最初から分かっていた。いつもの様なやけに明るい声は聞こえない。私は桜の木の元に崩れ落ちた。そして改めて理解する。彼はもうこの世には居ない。
「ぐすっ…嘘…つき。 光のバカ……逢い…たいよ…」
一陣の風が吹いた。春を追い払った強い風が。それとともに木の葉は大きく揺れる。そして……






                消失 〜それは大切な日々〜  第一話「はじまり」

まずは自己紹介から。俺の名前は滝咲光(たきざきみつる)一応大学3年の21歳。今からお話しする事は、俺が体験したある一人の少女との別れの話である。











当時の俺は所謂『落ちこぼれ』と呼ばれていた。学校の先公と、自分の親からも。テストの点数は平均以下、有名な進学校にとっちゃ異物以外の何者でもない。まぁ、退学にならなかったのは、学校の寛大な処置と親の経済力が魅力だったからに他ならない。親は俺を一度だってまともに見てはくれなかった。たまに口を利くと思ったら、
「あら、あんた居たの?」
それだけだ。俺には二つ下の妹が居る。出来の良い妹で顔も良い性格も良いの、超完璧人間の自慢の妹だ。親が見ているのは妹だけ。親は妹に関してだけ金を使うことを惜しまなかった。俺には、必要最低限の服と学用品一式しか買ってくれなかったのに、と妹を恨んだときもあった。だが、あいつが悪いわけじゃないのは知っていたから、嫌いになれなかった。家では話しかけてくれるのは妹だった。妹もガキじゃないから、気付いてはいただろう、何度か、
「お父さん達にあたしから言おうか?」
と言ってきた事があった。その度に俺は、妹をなだめた。お前は心配しなくて良いと。
所で、なぜ、落ちこぼれと呼ばれている、この俺がこの有名進学校には入れたのかというと、あいつの存在があったからだ。そいつとは、小学校時代からの親友で名前は、神谷秋穂(かみやあいお)頭が良くて、顔も良くて、背も高く、運動神経も抜群。極めつけは喧嘩が強い。神谷とは、小学1年の時に理由も忘れるようなふとした事で喧嘩になった。神谷曰く、後にも先にも俺に鼻血を出させたのはお前(俺)が初めて、だそうだ。そんな事はどうでもいいが、これが俺と神谷の出会いである。昨日の敵は今日の友とはよく言ったものだ。それで、なぜ俺がこの学校に入れたのかというと、中学3年の時に神谷が、
「おい光。 お前何処の高校を受けるつもりだ?」
と言う、皆も一度は聞かれたことのある台詞を言われたからだ。この時の俺の学力でいける高校はほぼ皆無で、しかも親が高校に行かせてくれるのかも怪しいところだった。しかし、神谷の薦めで補欠合格者特待生制度(補欠合格者の中で今後改善の余地の見られる学生に与えられる制度。だがその待遇は一般合格者となんら変わりない。入学金などが少し低くなる程度)のあるこの高校に行くことに決めたのだ。もちろん並の努力ではいけない高校なので、俺は朝も昼も夜もぶっ続けで勉強をし、何とか神谷の言っていた、補欠合格者特待生制度で入ることが出来た。
そして俺は、そこで彼女に出会うことになる。彼女の名は朱鷺明日美(ときあすみ)
彼女、朱鷺明日美は安海学園(あうみがくえん)ナンバー1の超美女である。容姿端麗、文武両道、才色兼備、と全てが完璧に揃った超完全人間である。俺と明日美の出会いは高2になって直ぐだった。俺は、神谷の助けで、何とか進級をすることが出来、2年のクラス替えのときに彼女に出会った。出会ったと言っても、彼女の噂は何度か耳にすることがあったし、何より学園の超有名人だから、嫌でも彼女は目に入った。それから席が隣同士だった俺と明日美は、何度か話すようになり親しい関係になっていった。二年に進級して1週間ほどが経ったある日、俺は彼女に神谷を紹介した。
『こいつはな。俺の最高の親友なんだ』
って言ってな。神谷は、恥ずかしいから止めろ、と言っていたが俺は、本当のことだろ、と言って気にせず笑っていた。明日美も笑っていた。その後、昼休みになってから明日美が、小さな女の子を連れて俺たちのところへ来た。
「この子、あたしの親友なんだ」
と言って紹介したのが、月城彩(つきしろあや)明日美に並ぶ学園ナンバー2のこれまた超美少女である。その日を境に俺達は、4人一緒に行動することが多くなった。後から、神谷に聞いたところ、この時あいつは月城に一目惚れをしていたらしい。ちなみに、月城の身長は153cmだそうだ。神谷が181cm。お前ロリかよ……
それから、俺達は4人で行動することが多くなった。昼飯から遊ぶ時まで、俺達四人はいつも一緒だった。4人で遊び始めた日を境に、俺は少しずつ変わっていった。勉強も三人がちゃんと教えてくれたし、遅刻だって明日美達が朝迎えに来てくれるようになってからしなくなっていった。そして二学期の期末テストで、俺は学年別ランキングで4位に入ることが出来た。もちろん、一位二位三位は、明日美、神谷、月城、の三人である。そのときの俺は滅茶苦茶喜んでいた。これで落ちこぼれ呼ばわりもされなくなると、先公達も俺の評価を変えてくれると。しかし、クソ野郎はクソ野郎だった。担任の野郎は、俺になんて言ったと思う? クラス全員の目の前で『カンニング野郎』呼ばわりしやがった。正直俺は、殺してやろうかと思って席を立とうとした。その時、前の席にいた神谷が突然立ち上がって、担任の胸座を掴んで、思いっきり叫んだ、

2006/04/20(Thu)00:03:49 公開 / 天宮
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■作者からのメッセージ
こんちわ、天宮です。少し追加…ちょっと休憩です
改めて再投稿の『消失』ですが、話はもちろん設定が大きく変わってきています。新生『消失』をお楽しみください。
あと、御意見、御感想、御指摘、バシバシどうぞ。お待ちしております。
では、また後ほどお会いしましょう。

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