『脳内ハウス』 ... ジャンル:異世界 リアル・現代
作者:東西南北                

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「脳内ハウス」



俺の頭の中は、常に素晴らしいシステムになっている事を教えよう。
俺の頭は、思ったものが全て手に入る。
まあ、夢でしか味わえないがな…。

俺が、あれが欲しいと思えば、夢の中に用意された部屋に、欲しいと思ったものが手に入る。
パソコン、ゲーム、TV、なかには子供に悪影響を及ぼすものまで入っているから、全てはいえないけれど…。

聞いてて、うらやましいとおもたっろう。
現実では何も買えない貧乏生活だが、頭の中はセレブ、いやそれ以上の生活をしているのだ。

そして、今日も一日の楽しみである夢の中に行くのである。


「おお。今日は最新型のゲームか…。悪くない」
俺はそう夢の中で呟いた。
室内は、綺麗な真っ白な部屋。アイドルの写真や、ソファー、パソコン、漫画など種類多様なものが置かれているが、全て俺が作ったものだ。イコール、タダってことだ。

「満足してますか、主人?」

後ろから声が聞え、俺は振り向いた。
そこに居たのは、ヘラヘラと笑った男だった。

ーだれだ?

俺の頭には、俺の欲しい物しか出てこない。
こんな野郎、欲しいとも思った事は無いぞ。

「誰なの?(俺の名前)?」

隣にいた俺の頭で作り上げた弥生と言う名のキャラクターがそう、俺に呟いた。
歳はやや上に作られた女性キャラクターである。
性格は、穏やかで、アイドルとかぶせため、とても綺麗で美しい。
何よりもいいのは、俺に逆らわない事だがな…。

それよりも、今はこの男が何者かを知る必要がある。

「お前だれ?」

俺は、そう男に言った。

「私ですか?私はこの部屋を作った、オーナーです。私は、主人を喜ばせるために、この頭の中で生まれたものです」

「えー。ありえないよ。ここはね、(俺の名前)が欲しい!って思ったものしか来ないんだよ」
弥生はそう、男に言った。

「ああ。そうだ。あんたなんて、欲しいと思った事はない」
俺は、そう男に言う。二人の顔が男に向かうと、男は動揺したような雰囲気を見せ始めた。
「そ…。そんな硬い事、言わないでくださいよ」
「俺を喜ばすのに、何か意味があるのか?」
「意味?おかしなこと言いますね。意味なんてありませんよ。私は、ただ…。主人を喜ばせようとした、だけなんです!」

男はそう言うと、俺はしばらく黙っていた。そもそも、この頭に部屋を作ったのは俺自身だと思っていた。
この男の話を聞けば、この部屋を作ったのは男だという。
それにしても、変な格好をしている男だ。
全身黒い服を着て、まるで死神のようだ。
綺麗な黒を着飾っていればいいのだが、どす黒い、ゴミ袋を思わせるマントを背負い、ボロボロのこじきみたいな茶色い服をきている。
ここは、俺様の部屋だ。もっと綺麗な格好で入ってくれればいいのに…。

「分かった。この部屋を作ってくれて、ありがとう。でも、その格好はどうかと思うぞ。俺が今から、お前をいい格好にしてやる」
「え!本当ですか、主人!喜ばしく、光栄です」

俺は、頭の中で、男の服装を考える。
そして、30秒後、男は見違えるほど良い格好になった。
黒が好きそうなので、黒いスーツにしてみた。
ピシッと決まったネクタイに、清潔感漂う黒いスーツ。
案外、この男はスーツの似合う男だったのだ。

「なかなかいいではないか」
「はぁ。なんか、申し訳ないですね」
「いや、いいよ。そもそも、君が作った部屋なんだし…」
「では、遠慮なく着ます!!」

男は、テレながら俺に言った。

そして、夢から覚める。



目が覚めると、そこには現実の俺が居た。
何もとりえも無く、何も無い部屋の中。

「ねえ、(俺の名前)? 何時まで寝てるの!速くしないと、学校、始まっちゃうよ」
下の階から、妹、岬の声が聞えた。

「ああ。今行く」

俺はそう呟いた。

俺は征服に着替え、学校へ行く仕度をし、妹と家族が居る下の階へと行く。

「あら、おはよう(俺の名前)」
母、美代子はそう俺に言った。俺も「おはよう」と母に言う。

「そうよ!今、何時なのか知らないの」

妹にそう言われ、俺は壁にかけられている時計を見た。指針は8:00を指している。
すでに妹は、歯を磨いている最中だった。

「あ。やべえ」

俺はそう言うと、食パンを口に咥え「いってきまーす」と、カバンを持ち、玄関に行き、靴を履き外に飛び出していく。
それに続き、妹も同様に外に飛び出した。

現実世界の俺は、中学3年生の何処にでもいるような、何もとりえも無い男子だ。
妹の岬は2つ下の中学1年生。活発的で明るい子。俺とは違い、クラブも通っている奴だ。クラスからの人気も高く、男子からの視線も、俺が見た限りでは暑かった。
母、弥生はこれと言って普通な母だ。まあ、先月、父と愛想がつき別居したのだが…。

「おい。間に合うか?」
俺は妹にそういう。

「まあ、ギリってとこかしら」
妹は息切れしながらそう俺に、言う。

運動部の妹は、ありえないぐらい早い。
小学校のころも、女子なのに男子と混じってサッカーをしていた奴だ。

「おい。俺は遅れるから、先に行け」
俺はスピードを緩めた。

「もう。速く行くよ!」

妹は、スピードを緩めた俺を、無理やり手で引っ張り俺を強引に走らせた。
マラソンで言うデットポイントに、俺はすでに立たされていて、セカンドウインドなんて存在しない。それに比べてどうだ。妹は、まだ笑顔で俺に話しかける余裕がある。

「もう、無理だ」

俺は妹の手を強引に離す。妹も俺に呆れたのか先に走っていった。

ー夢の中では、世界一速いのに…。
などと言う、意味も無い考え方が頭をよぎる。

学校のチャイムが耳に届いた。

これで、今学期10回目の遅刻となった。




「お前なー。しょっちゅう、遅刻すんじゃねぇ」
放課後、職員室に呼ばれた俺は生徒指導の杉谷に怒られていた。
杉谷は目のしわを寄せ、見るもの恐れさせる目つきを俺にする。

「…。すみません」
俺は、ぺこりと謝った。

こんな奴に頭下げたくないという意思もあったが、頭下げなきゃ私立高校の推薦を取り消しにされてしまうので、仕方なく、したのだ。
ムカツク。あー、いらいらする。遅刻しても、意味の分からない読書時間が減っただけだろ。そんぐらいいじゃないか。

俺の頭の中は、すでに餅が膨れ上がって破裂する瞬間のような、とてつもないイラツキが襲う。

「もう、帰っていい」

杉谷はそう俺に言った。

俺は、学校の帰り道。ある事を考えた。今は、いえない。なぜって?、楽しみが減るからな。


家に帰ると、母と妹以外の靴が並べてある。
これは…。
俺は、恐る恐る廊下を歩き、キッチンへと向かう。

そこに居たのは、母と熱いキスを咬ます男がいた。
俺は、ジェットコースターから急降下するような不安に襲われる。

すると、母は俺が居る事に気づき、急いで男とのキスを中止した。

「あ…、みられちゃった」
母は、そう言うと男も向いた。

「おー。君が(俺の名前)君か」
男は驚いた様子も無く、俺に言った。

「もうちょっとしたら、お父さんになる健一さんよ」
母は笑顔で俺に言う。

「お父さんだと!どういうことだ」

俺はそう大声で怒鳴った。
「私ね。結婚するのよ。この、健一さんと」

「ああ。そういうことなんだ。よろしくねー」
まるで、変声機を使ったみたいな声で男は俺に言う。

「俺は認めない!!」


俺は大声でそう叫ぶと二階へとあがった。
「ほっとけばいいの」
と、母は言う。

2006/01/23(Mon)17:56:42 公開 / 東西南北
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