『朝、目が。』 ... ジャンル:リアル・現代 ショート*2
作者:六花                

     あらすじ・作品紹介
ぽかりと抜け落ちる日常。明日が必ず来るとは――限らない。

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 朝、目が覚めた。

 うるさく鳴るヒヨコの形の目覚まし時計を叩いて黙らせた。
 目を擦りながら、制服に着替えた。制服のリボンは細長い紐状で少し結び難い。
 昨日のうちに用意しておいた鞄を持って、台所に下りた。机の上に置いておいた課題を取りに、一度部屋に戻った。
 台所ではお母さんと妹が朝ごはんを食べていた。
 トーストとハムエッグだった。
 鞄を置いて自分の椅子に座った。
 台所のテーブルは四人がけで一つ空いていた。残る椅子に座るはずのお父さんはいなかった。仕事が忙しいのだと、昨日も今日もいなかった。
 お母さんが私の分のコーヒーを入れるために立ち上がった。
「お父さん、今日も遅いのかな」
 今日は早いはずよ、とお母さんが答えた。
 トーストにバターを塗った。ハムエッグには塩コショウをかけた。
 お母さんがコーヒーを差し出した。
 私が愛用しているマグカップじゃなかった。
「お母さん、私のカップは? 」
 何言ってるの、そんなものないじゃない、とお母さんが言った。
 可笑しなお姉ちゃん、と妹が自分の愛用のマグカップでコーヒーを飲みながら言った。
 付けっぱなしのテレビで、どこかの女子高生が飛び降りをして今も意識不明の重体なのだといって、司会者が『最近の命を軽視する風潮は……』と嘆いていた。
 天気予報を見た。今日は晴れだった。
 朝ごはんを食べ終わった妹が今日は日直だからと、先に家を出て行った。
 アンタも早く食べなさいとお母さんが言った。
 トーストとハムエッグを食べた。バターを塗りすぎたトーストは少し油っぽかった。
 お客様用のコーヒーカップでコーヒーを飲んだ。
 すこし量が物足りなかった。
 食べ終わると、家を出て学校へ行った。
 学校は歩いて15分で着いた。
 同じクラスの子と挨拶をした。
 教室でなんの役に立つのか分からない授業を受ける。今日は昨日よりも五ページも教科書が進んだ。
 授業が終わった。
 比較的親しいクラスメイト達と一緒にお昼ごはんを食べた。
 昨夜のトレンディードラマを見た?と訊かれた。見ていないと答えたら、つまらなそうな顔をされた。
 食べ終わって、午後の授業が受けた。すごく眠かった。
 寄り道していこうという友達の誘いを断って家に帰った。
 家には誰もいなかった。
 制服を脱いで、私服に着替える。脱いだ制服はハンガーにかけた。
 何もする気がなくて、ベッドに倒れこんだ。
 使っていたはずの愛用のカップの事が気にかかった。
 どんな柄だったか思い出せなかった。
 それでいいの?、と誰かが言った気がした。

「だって、思い出せないんだもの」

 誰かにそう答えて、目を閉じた。

















 朝、目がさめた。

 うるさく鳴るヒヨコの形の目覚まし時計を叩いてだまらせた。
 目をこすりながら、制服にきがえた。制服のリボンはほそ長いひも状で少し結びにくい。
 昨日のうちに用意しておいたかばんを持って、台所に下りた。机の上に置いておいたかだいを取りに、一度へやに戻った。
 台所ではお母さんと妹が朝ごはんを食べていた。
 トーストとハムエッグだった。
 かばんを置いて自分のいすに座った。
 台所のテーブルは四人がけで、残るいすに座るはずのお父さんはいなかった。仕事が忙しいのだと、昨日も今日もいなかった。
 お母さんが私の分のコーヒーを入れるために立ち上がった。
「お父さん、今日もおそいのかな」
 何言ってるの、そんなものないじゃない、とお母さんが答えた。
 おかしなお姉ちゃん、と妹が言った。
 トーストにバターをぬった。ハムエッグには塩コショウをかけた。
 お母さんがコーヒーを差し出した。
 私が愛用しているマグカップじゃなかった。
 付けっぱなしのテレビで、どこかの女子高生が飛びおりをして今もいしき不明の重体なのだといって、司会者が『最近の命をけいしするふうちょうは……』と嘆いていた。
 天気予報を見た。今日は晴れだった。
 朝ごはんを食べ終わった妹が今日は日直だからと、先に家を出て行った。
 アンタも早く食べなさいとお母さんが言った。
 トーストとハムエッグを食べた。バターをぬりすぎたトーストは少し油っぽかった。
 お客さま用のコーヒーカップでコーヒーを飲んだ。
 すこし量が物足りなかった。
 食べ終わると、家を出て学校へ行った。
 学校は歩いて15分で着いた。
 同じクラスの子とあいさつをした。
 教室でなんの役に立つのか分からない授業を受ける。先生の顔が知らない顔だった。
 今日は昨日よりも五ページも教科書が進んだ。
 授業が終わった。
 ひかく的したしいクラスメイト達と一緒にお昼ごはんを食べた。
 昨夜のトレンディードラマを見た? ときかれた。見ていないと答えたら、つまらなそうな顔をされた。
 食べ終わって、午後の授業が受けた。すごく眠かった。
 寄り道していこうという友だちのさそいを断って家に帰った。
 家には誰もいなかった。
 制服をぬいで、私服に着替える。ぬいだ制服はハンガーにかけた。
 何もする気がなくて、ベッドにたおれこんだ。
 いたはずのお父さんの事が気にかかった。
 どんな顔だったか思い出せなかった。
 それでいいの?と誰かが言った気がした。

「だって、思い出せないんだもの」

 誰かにそう答えて、目を閉じた。














 あさ、目がさめた。

 うるさくなるヒヨコの形のめざましとけいを叩いてだまらせた。
 目をこすりながら、せいふくにきがえた。せいふくのリボンはほそ長いひも状で少しむすびにくい。
 昨日のうちによういしておいたかばんを持って、台所に下りた。机の上においておいたかだいを取りに、一度へやに戻った。
 台所ではお母さんがあさごはんを食べていた。
 トーストとハムエッグだった。
 かばんを置いて自分のいすに座った。
 台所のテーブルは四人がけで、いすは二つ空いていた。妹はいなかった。
 お母さんが私の分のコーヒーを入れるために立ち上がった。
「お母さん、あの子は? 」
 何言ってるの、そんなものないじゃない、とお母さんが答えた。
 トーストにバターをぬった。ハムエッグには塩コショウをかけた。
 お母さんがコーヒーを差し出した。
 私があいようしているマグカップじゃなかった。
 付けっぱなしのテレビで、どこかの女子高生が飛びおりをして今もいしき不明のじゅう体なのだといって、司会者が『さいきんの命をけいしするふうちょうは……』となげいていた。
 天気予ほうを見た。今日ははれだった。
 アンタも早く食べなさいとお母さんが言った。
 トーストとハムエッグを食べた。バターをぬりすぎたトーストは少し油っぽかった。
 お客さま用のコーヒーカップでコーヒーをのんだ。
 すこしりょうが物足りなかった。
 食べおわると、家を出て学校へ行った。
 学校は歩いて15分で着いた。
 同じクラスの子とあいさつをした。
 きょうしつでなんの役に立つのか分からないじゅぎょうを受ける。先生の顔が知らない顔だった。
 今日は昨日よりも五ページも教科書がすすんだ。
 じゅぎょうが終わった。
 ひかく的したしいクラスメイトたちといっしょにお昼ごはんを食べた。名まえは思い出せなかった。
 昨夜のトレンディードラマを見た? ときかれた。見ていないと答えたら、つまらなそうな顔をされた。
 食べおわって、ごごのじゅぎょうが受けた。すごく眠かった。
 よりみちしていこうという友だちのさそいをことわって家にかえった。
 家にはだれもいなかった。
 せいふくをぬいで、しふくにきがえる。ぬいだせいふくはハンガーにかけた。
 何もする気がなくて、ベッドにたおれこんだ。
 いたはずの妹のこと気にかかった。
 どんなかおだったか思い出せなかった。
 それでいいの?とだれかが言った気がした。

「だって、思い出せないんだもの」

 だれかにそう答えて、目をとじた。

















 あさ、めがさめた。

 うるさくなるヒヨコのかたちのめざましとけいをたたいてだまらせた。
 めをこすりながら、せいふくにきがえた。せいふくのリボンはほそながいひもじょうですこしむすびにくい。
 きのうのうちによういしておいたかばんをもって、だいどころにおりた。つくえのうえにおいておいたかだいをとりに、いちどへやにもどった。
 だいどころにはだれもいなかった。
 じぶんでトーストをやいてコーヒーをいれた。
 だいどころのテーブルはよにんがけで、いすはみっつあいていた。
 トーストにバターをぬった。バターをぬりすぎたトーストはすこしあぶらっぽかった。
 つけっぱなしのテレビで、どこかのじょしこうせいがとびおりをしていまもいしきふめいのじゅうたいなのだといって、しかいしゃが『さいきんのいのちをけいしするふうちょうは……』となげいていた。
 てんきよほうをみた。きょうははれだった。
 おきゃくさまようのコーヒーカップでコーヒーをのんだ。
 すこしりょうがものたりなかった。
 たべおわると、いえをでてがっこうへいった。
 がっこうはあるいて15ふんでついた。
 しらないことあいさつをした。
 きょうしつでなんのやくにたつのか分からないじゅぎょうをうけた。せんせいのかおがしらないかおだった。
 きょうはきのうよりも五ページもきょうかしょがすすんだ。
 じゅぎょうがおわった。
 ひかくてきしたしいクラスメイトたちといっしょにおひるごはんをたべた。なまえはおもいだせなかった。
 ゆうべのトレンディードラマをみた? ときかれた。みていないとこたえたら、つまらなそうなかおをされた。
 たべおわって、ごごのじゅぎょうがうけた。すごくねむかった。
 よりみちしていこうというだれかのさそいをことわっていえにかえった。
 いえにはだれもいなかった。
 せいふくをぬいで、しふくにきがえる。ぬいだせいふくはハンガーにかけた。
 なにもするきがなくて、ベッドにたおれこんだ。
 いたはずのおかあさんのことが気にかかった。
 どんなかおだったかおもいだせなかった。
 それでいいの?とだれかがいったきがした。

「だって、おもいだせないんだもの」

 だれかにそうこたえた。
 じゃあしかたないね、とだれかがいった。
 それは、わたしのこえだった。








 おやすみなさい、とわたしがいった。



















 ――――付けっぱなしのテレビで、飛びおりをしてずっと意識不明だったどこかの女子高生が今日亡くなったのだといって、司会者が『最近の命を軽視する風潮は…』と嘆いていた。























 朝、目が。


















2006/01/08(Sun)23:57:38 公開 / 六花
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■作者からのメッセージ
初めまして。六花と申します。
改行が多いのと、必ず「〜た」で終わるのはわざとですが、他にもおかしい表現とか気になる箇所とかあると思いますので、よろしくご指導くださいませ。

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