『地に堕ちた 悲しき悪魔 1〜2話』 ... ジャンル:ファンタジー 未分類
作者:みさき                

     あらすじ・作品紹介
これは、神に縛られた、悲しき暗殺者達の物語。神は・・・・どうして彼等を愛してやれぬ・・・・?愛と憎悪は紙一重・・・・・・神と悪魔は紙一重・・・・・

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地に堕ちた 悲しき悪魔


小さな町の裏路地にある小さな店。
スパーク・クラッシュ
それは俗に言う『なんでも屋』


からん・・・・・からん・・・・・・
スパーク・クラッシュの扉が開いた。

「いらっしゃいませ。」

店の中は、カウンターで半分に区切られていて、こちら側には大きな椅子が三つ。
向こう側には小さな椅子、レジスター、物凄い量の書類の入った棚。
小さな椅子に十五歳程度の少年がちょこんと座っていた。
「いらっしゃいませ。
なんでも屋『スパーク・クラッシュ』へようこそ。ご用件をお伺いします。」
少年は真っ黒なマントとフードをかぶり、顔は見えなかったが、にやりと笑う口元は見えた。
店に入った男はびくりと体を震わせたが、一枚の写真を取り出した。
「暗殺の依頼だ。この男・・・・・・スーカリア・カースという○×会社の社長だ。
・・・・・・この男を殺してほしい。」
「・・・・・・・了解しました・・・・・・・」

少年は棚から書類を取り出すと、真っ白な紙の上に羽ペンで「暗殺」と書いた。
その横に魔方陣のようなモノを書く。
そしてその魔方陣の部分を破った。
「・・・・・暗殺任務の場合、その暗殺の理由をお聞きかせいただかねばなりなせん。
 お教え願えない場合は、他の同業者にご依頼下さい。」
少年はそう呟く。
「・・・・・そうはいかねぇ。この近くではお前が一番の殺し屋だと、裏の世界にゃ響いてる。
理由を話そう。」
少年は理由を聞いた。
どうやらこの男は裏で大きな取引をしたが、このスーカリア・カースという男に邪魔をされるとの事だった。
取引の現場を抑えられ、写真があるので強請られる事もあったらしい。
少年は頷く。
「それでは、この二枚の紙に名前を記入してください。」
少年に促され、男は魔方陣の紙と暗殺と書かれた紙に自分の名前を書く。
少年はばさりとフードを脱いだ。
絹のような赤い髪が肩口に流れている。
顔を見るとかなりの美形だ。真っ黒な瞳が二つ覗いている。
少年は指をかりっと噛み、指先から流れた血を魔方陣に垂らす。
そしてカウンターの下からナイフを取り出し、男に差し出した。
「・・・・・・なんのつもりだ?」
「私の店では、暗殺任務の場合の条件は、二つ。
一つは『理由』、もう一つは『契約』です。」
「・・・・・契約・・・・だと?」
「はい。 簡単に約束を破られては困りますので、契約、誓いをして頂きます。」
「ちっ。面倒くさい・・・・・」
「フフフ・・・・これがこの店のしきたりです。」
「そうかよ・・・・・で?どうすれば?」
「先程渡したこのナイフで傷を作り、血を魔方陣にたらしてください。
 それで 契約完了です。」
男は指を切り、血を流し、魔方陣に落とした。
ポゥッッ
魔方陣が光る。
「よし。 契約完了。」
少年の声に反応するかのように光は消えた。
「金額は後払いで結構ですよ。 一週間後、またいらしてください。」
少年はフードを被りなおし、立ち上がって書類を懐に入れた。
男は出て行くときに
「オイ。テメェの名前は?」
と言った。
少年は  くすっ と笑い・・・・・

「エンヴィー(嫉妬/envy)・・・・・・と申します。」

「クククッ・・・・嫉妬・・・・か・・・・・ また来週来るぞ、エンヴィー・・・・・・・」
「はい、お待ちしておりますよ。  あ、それと・・・・この魔方陣の紙は貴方様がお持ちください」
「ほう・・・・・」

「約束を破れば・・・・・必ずや天罰が下りますよ・・・・・・」

男は笑いながら出て行った。
少年、エンヴィーは後ろのドアを開けた。中に入る。

中には ハボック(破壊・大荒れ・混乱/havoc)と
      ラース(憤怒/wrath)が笑って座っていた。
ハボックは茶髪でエンヴィーと同い年の少年だった。
目つきが悪く、指で小さなナイフを弄んでいた。
ラースはピンク色の髪でエンヴィーより二つ下の少女だった。
ピンク色の髪を三つ編みに結っていた。
「久しぶりの暗殺任務だ。ライフルとナイフを用意しとけ。俺は弾丸を買ってくる。」
ハボックとラースは静かに頷く。
エンヴィーは町に出て、弾丸などを買い集めた。

あっという間に・・・・・闇が町を襲う・・・・・・
夜十一時・・・・・・・
「作戦開始。」
エンヴィーの声にハボックとラースは頷き、三人は町の裏路地を通り 一つの豪邸にたどりついた。
「ここが・・・・・カースの家らしい。 やるぞ・・・・・・・・・」
エンヴィーとハボックは庭の中に潜入し、ラースはセキュリティーシステムを解除する為、
豪邸の横の管理センターに潜入した。


「・・・・セキュリティーを切るのはいつも私の仕事なのよ・・・・・」
ラースは溜息をつくと、管理センターのチャイムを押す。

ピンポーン♪

夜にはにつかない音が響いた。
中から一人のいかつい男が出てきた。

「はじめまして それとも・・・・・さようなら?」

ラースはにっこりと微笑む。
腰から長細い針を取り出し、男の首に針をつきさした。
「ぐ・・・・・あっ!!」
男はうずくまり、息絶えた。
「急所使いのラース・・・・・・裏のコードネームなんて知らないわよね・・・・・」
ラースは綺麗に笑うと、中に入る。
中でまた、五人ほど殺した。
ラースは血にまみれた手でキーボードを叩く。

カチャカチャ・・・・・・

「あらら・・・・結構なセキュリティーなのねぇ・・・くっそー・・・・あとちょっとなのにぃ・・・・・」
ピーーー・・・・・・
「・・・・・この程度かぁ・・・・うぅん・・・・ちょこっとだけね・・・・」
ラースは意地の悪い・・・しかし綺麗な笑みを浮かべながら 携帯を取り出した。

PIPIPIPI☆

『はい、こちらエンヴィー。』
不機嫌そうなエンヴィーが出た。
「あら、不機嫌そうね。」
『当たり前だ、いつまでかかっている。 セキュリティーの解除はおわったのか?』
「もちろんよ。 でも長くはないわね・・・・せいぜい一時間が限度ダカラ、
 せめて五十分程度したら 任務失敗でも帰ってきなさいよ。」
『お前・・・・・また失敗なのか?』
「失敗じゃないわよ 失礼ね。 こっちのシステムが難しすぎるのよ。だいたいねぇ・・・・・・」
『あーーはいはい・・・・・わかったわかった。 説教はあとで聞くから・・・・じゃ、ラースはそこで待機、三十分して俺達が帰らなかったら 手伝いに来い。』
エンヴィーはそれだけ言うと切ってしまった。
ラースは溜息をつくと携帯を腰に戻した。
キーボードと携帯は、ラースのものではない血でまみれていた。
ラースは狂った笑いを浮かべ、ベチャベチャと舐めた。
ラースの顔は血にまみれていた。


エンヴィーとハボックは庭に潜入した
エンヴィーは裏口の鍵を叩き壊し 中に潜入を試みる。
ハボックは木から窓に飛び移り、窓を静かに壊した。

エンヴィーは豪邸のパソコンを開く。
「大手会社の社長のパソコンだからぁ・・・・・・裏の事情がわんさかわんさか・・・・v
裏にいくらで売れるかわかんねぇよvvvv笑いが止まんねぇ・・・・・・・www」
 エンヴィーはにやにや笑い、中身をCDROMに移す。
エンヴィーは いい性格のようだ。お客の前では猫をかぶっているが。
「あぁ・・・・・そういえば・・・・・今日来たお客の名前・・・・ちゃんと見てなかったケド・・・・・
 あのヒトこのスーカリア・カースに弱み握られてたんだっけ?
 大体こんなお偉いさんは・・・・・大事な情報はパソコンに入れるタイプなんだよなぁ
 しかも油断して、パスワードなんか・・・・・・ホーラ・・・・・かけてないvvvv」
エンヴィーはついでにこのデータも写し、中身をすべて消す。
「これでゆすれば もう少し金額がつり上がったりして・・・・・・wwwww」
エンヴィーはしばらくパソコンの前で笑っていた。


そのころのハボック。
「ふぅ・・・・・社長のくせにえらく弱かったな。護身術でも習えばいいのになぁ・・・・」
ハボックは、もう口聞かぬ男、スーカリア・カースに微笑む。
右腕に持っている日本刀を鞘にしまい、血塗れのまま、階段を駆け下りる。
下にはCDROMを持ったエンヴィーが笑いながら立っていた。
「そっちは?」
「・・・・・・おわった」
二人はふぅ・・・・と息をつく。
時計をみると、まだ十分しかたっていなかった。
「今回の仕事はけっこう簡単だったな。」
「ああ・・・・じゃあ、最後の仕上げ・・・・・する?」
二人は笑うと、腰の竹筒から油を出し、床に撒く。

そのまま外に出て、マッチを取り出した。
そして・・・・・・・・・・・・






一週間後
例の男がやって来た。
カウンターには、エンヴィーが座っていた。
「おいガキ!!」
「エンヴィーです。」
「エンヴィー!俺はスーカリア・カースを殺せと依頼した筈だ!なのに何故家まで燃やしたんだ!」
「そのほうが、証拠隠滅しやすいからですよ。」
「ふざけるな!!おかげで取引の証拠写真も闇の中だ!誰かに渡したかもしれないのに・・・」
「・・・・・・・・」
「なんとか言ったらどうなんだ!」
男はエンヴィーの襟首をつかみ、床に叩きつけた。
「私が受けた依頼は・・・・・スーカリア・カースを殺せ・・・・というものだけです。
 その他のコトはお聞きしておりません。」
「このガキっ!!!」
男は腰からナイフを取り出した。
「こんな奴に金を払ってたまるか!死ね!!!」
ナイフはまっすぐエンヴィーに落ちた・・・・はずだった・・・・・・
男はうごけなかった。
懐から、何十本もの黒い腕が出て、男の体に纏わりついていたのだから。
懐には、あの魔方陣があった。
「『契約違反』・・・・・・・だ。連れて行け。」
エンヴィーがパチリと指をならすと、一瞬のうちに、腕は男を引き込んだ。
エンヴィーは残された魔法陣を拾うと、バラバラに引き裂き、マッチを擦って燃やした。



「言ったでしょう・・・・・?『契約を破ると・・・・・天罰が下りますよ・・・・・?』」
エンヴィーは黒い微笑をし、マントを翻す。



町の裏路地の小さな店。
そこには・・・・・・三人の悪魔がいる・・・・・・
         そんな噂を・・・・・貴方はもう聞きましたか?
                嫉妬と破壊と憤怒の・・・・・・悪魔が・・・・・・・・・









地に堕ちた 悲しき悪魔 2


小さな町の裏路地にある小さな店。
スパーク・クラッシュ
それは俗に言う『なんでも屋』

からん からん

「こんにちは。」
スパーク・クラッシュの扉が開いた。
扉の向こうから蒼い髪と瞳の青年が人懐こそうな笑みを浮かべてやってきた。
「こんにちは。」
エンヴィーも、一応の笑顔を浮かべて頭を軽く下げた。


ぱたん
ドアが閉まり、店内のランプだけが二人をぼんやりと照らす。

「何しに来た。」

ドアが閉まった途端、エンヴィーが不機嫌そうに顔を歪めた。

「せっかく、俺が遊びに来たのニ。」

蒼い髪の青年もへらりと顔を緩ませて笑った。


「うるせぇよ      ダーク(闇/dark)」


「酷いナァ…でも、エンヴィーは変わってないね。安心した。そのクチの悪いトコロも。ゼンゼン。」
「ふん。てめぇのふざけた言葉遣いも全然変わってねぇな。」
「しょうがないデショ?コレは癖ダヨ?キミの言葉ヅカイと一緒。」
「けっ。」
ダークは勝手に椅子に座り、エンヴィーの飲みかけだったコーラを一気飲みした。

彼はのほほんとしているが、実は彼もなんでも屋の店長だった。
山を越えた所にある大きな町のなんでも屋『ストーム・エンジェル』の店長。
エンヴィーとは同じ暗殺所『水神』で育てられた同士であり、小さい頃から生死を共にした親友だった。
仕事の関係などで今は離れてしまっているが、ダークはちょくちょく仕事をサボり、エンヴィーに会いに来ていた。

「また仕事をサボったのか?」
「ウン。デモ、そんなにシゴトないカラネ。」
「…嘘くせぇな…」



二人は久々の再会にくすくすと微笑みながら、話を再開した。
「それで?今日は何だ?唯遊びに来たってワケじゃないだろ?」
「…ナンデそう思うノ?」
「お前、ぴりぴりしてるから。いつもはもっとボサーっとしてるだろーが。」
「ふふ…適わないナ、エンヴィーには。もっとゆっくり話しテモ良かったのダケド。」
「ふん。」
「コンド手合わせシテね?」
「ああ。…って、とっとと話せよ。」
ダークはまたニコニコと微笑んだ。
「んー。ハボックとラース ニモ聞いてホシイな。ちょっと大きな仕事の件ナンダ。」
「…ああ。」
エンヴィーは立ち上がるとカウンターの一部を取り外し、ダークを中に招き入れた。
カウンターの奥の扉を開け、中に促す。
中にはいつもの通りハボックとラースがいた。
「あ、ダークさん。」
「お久しぶりね。元気?」
二人は特に驚きもせずに、淡々とした挨拶を述べていく。
「ウン。二人とも元気ソウで安心シタ。ラースちゃんもかわいくナッタしね。」
「ちょっと、それって昔はかわいくなかったって事?」
「ソンナ事言ってないヨ?被害モウソウでしょ?ね、ハボック。」
「……ああ。」
そんな話をしながら四人は椅子に深く腰掛けた。



「ソレデネ、今回俺が来たリユウってのハ、コレ。」
ダークがひらりと一枚の紙を取り出した。
それはエンヴィー達も良く見知った『契約書』
「実は俺のマチの近くに魔獣がタイリョウ発生してるトコロがあってね。
退治の任務を請け負ったんダケド、やっぱりオレ一人じゃキツくてね。
ソレデ、キミ達に助力を頼みにきたのサ。」
その言葉にエンヴィーは顔を歪める。
「は?お前の武器は毒薬爆薬なんだから、薬まいて一掃しろよ。」
「ん……アイツラには毒は効きにくいンダヨ。」
ダークはにっと困ったように笑い、目の前でパンッと手を合わせた。
「オネガイ!コノ任務断っちゃうト、俺のヒョウバン、ガタ落ちだよ!助けて!!」
切羽詰ったような物言いに、三人は顔を見合わせる。
そして了承した。
ダークは見かけによらずしつこいので、簡単に諦めないだろうし、この数週間仕事もなく体がなまっていたので丁度良かった。






エンヴィーは、なんとなく何時もと違う感じのする親友を見つめながら、優しく微笑んだ。







次の日
四人は簡単なしたくを済ませ、ダークの町に向かう。

「まずは、あの山ヲ、越えヨウ。山中には少し開けたところモあったカラ、休憩デキルよ?」

ダークはにっと笑い、近くの山を指差した。


四人はあまりしゃべらずに、長くうねった山道を越える。
かなり足場の悪い場所で、ただ行くよりもかなり疲れるが、四人は常人よりは ましな体力を持っていたので、ダークの予定よりも早めに進む事が出来た。
それから数時間歩いた時、少し広いところに出た。
丁度疲労もたまっていたので、そこで休憩を取る。
ゆっくりと座っていると、ラースがダークの腕を引いた。
「ねぇ、ダークさん。あとどれ位でつくの?」
「ん?モウチョットだよ?多分。」
そう言いながら、荷物から水筒を取り出した。
「お茶持ってきたカラ、飲む?」
「やったぁ!私ノドからから!」
ダークはにっこり笑って、持っていた紙コップに少しずつお茶を注いだ。
ハボックとラースは喉の渇きから、一気に其れを飲み干し、
エンヴィーは少量を喉に通し、
ダークはお茶の入った紙コップを強めに握り締めていた。

「どうしたの?ダーク……さん……」

ずっとうつむいたままのダークを不信に思い、ダークの顔を覗き込んだラースが、ふらふらとしながら地面に倒れた。

「ッッ!!」

そしてそれを見たハボックはバッとライフルを構えたが、がくりと膝をつき、大量の血を吐いて倒れた。

二人が倒れたのをぼんやりと眺めていたエンヴィーは、ゆっくりとダークを見る。

「どーゆー事…かな?」

エンヴィーは腰のナイフを握り締めた。
隙あらばいつでも彼を殺せるように。

ダークはゆっくりと顔を上げた。
そしてゆるく微笑んだ。

「さすが、だな。無味無臭の毒薬だったのに、一口しか飲まなかった。」

喋り方は随分を変わったが、これがダークの、エンヴィーにしか見せない本当の顔だった。


「なんで……一気に飲んでくれなかったんだ…?」


ダークは悲しそうに笑った。


「飲めば直ぐ…あの世に逝けたのに…」



「質問に答えろ、ダーク」
エンヴィーが鋭い眼光で睨みつけた。



「指令・・・・さ・・・・」




「暗殺所『水神』のマスターからの…ね。」
「ふぅん・・・・じゃあ、お前は俺達を売った訳だ。」


二人の間に沈黙が流れたが、沈黙を破ったのはダークだった。

「ああ……お前は…俺の手で…殺したかった…
     例え俺がこの任務を断ろうとも、他の『水神』の奴らがお前を殺しに来ていた
        『水神』の奴らが何人も来ては、いくらお前でも勝てっこない。そう思ったから…」
「だから…か……」
エンヴィーはナイフを鞘から抜き取り、素早くダークにとばした。
ダークは避けようともせず、ダークの右腿にナイフがグッサリと突き刺さる。


「でも、お前が俺達を殺した理由はもう一つあるだろ?」


エンヴィーのその言葉にダークは体をぴくりと強張らせた。
そして、『水神』の修行時代、ダークが毎日呪文のように繰り返していた言葉を言った。







「『俺は、いつかこの『水神』を消す。こんな地獄、世界にあっちゃいけないんだ。
だから、きっと強くなって、ここのマスターを殺してみせる……きっとだ……』」







『水神』・・・・それは、大きな一つの暗殺所でもあった。
子供のうちから親から離され、人を殺す術を体にしみつける。
もちろん、簡単なコトではない。
毎日の修行は恐ろしく辛い。
自分の体が自分のモノではない錯覚すら覚える。
週に一度は能力テストがあり、テストで合格したものは、
テストを失格した者を殺さなければならない。
数時間前まで、仲間と、信じあっていたモノを。
同じ釜の飯を食ったモノを。
そう、ソコは生と死が、『水神』の子供達を襲う・・・・


地獄だ・・・・・・



「マスターを殺すには、なるべくマスターに近い存在でなければいけない。
お前は俺達を殺した手柄を使って、二級神になる気だろ?」
『水神』には一つ一つ階級があり、
一番下が七級神
一番上が一級神
何か大きな手柄を立てれば、ひと階級上がり、使える武器なども増え、マスターからの忠誠も厚くなる。
そして暗殺者達を育て上げ、まとめているのがマスターだった。
三級神からは『水神』から離れ、独立しながらマスターを支えなければいけない。
しかしその代わり、外の世界で暮らせる。
まぁ、数ヶ月に一回は報告の為に帰らなければならないのだが。
皆、嫌でもマスターに身を捧げ働かなくてはならない
『水神』の暗殺者の子供には、各地から連れてこられたものや、
戦災孤児、もともと『水神』で生まれたもの、といろいろいるが、
エンヴィーとダークは親に売られて無理やり暗殺者にさせられたせいか、
マスターへの忠誠心はかなり薄かった。
こんな場所があるから自分達は売られたのだと。
二人は此処から出たいという目的の為だけに必死にがんばった。
エンヴィーは最初から諦めていた。
「救われることはないだろう。」と
しかしダークは決して諦めなかった。だからこそエンヴィーは彼に惹かれたのかもしれない。
エンヴィーがここまで必死に頑張れたのは彼のおかげかもしれない。



「俺は最初から、何となく罪悪感を覚えていたんだ。」
「……俺にか?」
「ああ。最初はエンヴィーが俺に協力してくれると言ってくれて嬉しかった。
エンヴィーのことは好きだったから。
でも、俺ひとりの願いの為にお前や、お前についてきてくれたハボックやラースを巻き込んで…」

「だから、コレは俺のけじめでもあるんだ。お前を殺すことで、俺は……」
「…………じゃあ、殺せよ。


お前が、本当に、マスターを殺せるなら。俺を殺せ。その罪を背負え。そしてその分、生きろ」


「エン・・・・・」


「お前は優しいから。俺と違って。だからきっと俺の頼みを無視しないと思うし、
優しすぎるから、俺を連れて行ってマスターを殺すなんて出来ないと思う。
こんな日が、いつかは来ると思ってた。だから、俺は逃げないよ。

そのかわり



絶対生きろ。


そして……地獄を……『水神』を消してくれ。



俺のかわりに。」




スパンッッ




綺麗な音が響き、赤い水が弾けた。
ダークの右腿に刺さっていたナイフは今、エンヴィーの額に刺さっていた。
エンヴィーもダークも、泣いていた。
今まで幾千幾万の人間を殺してきた暗殺者の
最初で最後の

涙だった。


そしてその静寂が破られることもなく、ダークはそのまま振り返らずに山を降りた。









死んだ  死んだ
                悪魔は死んだ


でも、闇はまだまだ生きている。


闇が生きるにゃ光がいるさ。


闇は仲間をあつめてゆくさ



光を求めて・・・・・・



さぁ・・・いくさ。

2005/11/22(Tue)18:42:45 公開 / みさき
■この作品の著作権はみさきさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
けっこう滅茶苦茶な設定多いかもしれません・・・・
でも『水神』のコ達に、愛だけは込めています。
エンヴィー達は死にましたが、
ここからダークがいろいろします(笑)
とりあえずひとりぼっちのダークをどうにかしないと・・・・

こんなアホな作者で嫌気がさすかもしれませんが、
どうかおつきあいよろしくおねがいします。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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