『未定 第一話』 ... ジャンル:ファンタジー 異世界
作者:momo                

     あらすじ・作品紹介
簡単な魔法さえ使えない王子がある出来事により冥界からよびだした老騎士と旅をする物語

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王国の首都コルシスタンスは今日もいつもとかわらない朝を迎えた。
東西南北それぞれの方向からのびる大通には、品物が溢れそれを求める人々が全国各地からあつまっていた。
そんな様子をこの国の王子ハリアニャは眺めていた。
「外に出たい」
十五歳になるいままで、1回も城の外に出たことが無いハリアニャの頭のなかはそのことでいっぱいだった。
ハリアニャは窓を離れ、自分のベッドの横にある本棚に向かった。
天井まで届くその本棚には先代の王達が愛読したという本がいくつもあったが、ハリアニャには興味が無い事だった。
ハリアニャはその中から一冊の赤い本を取り出した。
手垢にまみれ、ぼろぼろの本を持ったハリアニャは窓のそばにおいてある椅子に腰掛けた。
椅子に体を沈め今まで何回も何回も開いたページを見る。
そこには今ハリアニャが最もしたいことが書かれている。
浮遊術≠ニ書かれたその項には、空に浮かぶ男の姿と細かい文字で説明がされていた。
「心を落ち着け、意識を足に集中させよ、か」
そのとおりにしてみても、体は浮かない。
今までのことでわかっていることだった。
何か間違っているのではないかと先生に聞いても、いくら調べてもこれ以上のことは必要ないらしかった。
あきらめて本を放り出し、ハリアニャはまた外を見た。
ハリアニャの部屋の前を数十人の子供達が教師と共に飛んでいる。
こっちに向かって手を振っている子供もいた。
その児童を教師が慌てて取り押さえ、ひきつった笑いを見せた。
――がお咎めなしとわかると上のほうへソソクサといってしまった。子供達もその後に続いた。
教えてもらいたかったな、とハリアニャは思った。空を飛べればこの部屋から抜けだせるからだ。
しばらくその子供たちのいた場所を眺めていると、そこに小さな黒い玉が浮かんでいるのが見えた。
パリパリと紫色の光を出しながら、その玉は大きくなっていった。
直径3メートルになろうかと言う時、その玉はパンと国中に響き渡るくらい大きな音をだして消えた。
思わず耳をふさいだハリアニャの目の前には、裾がぼろぼろの黒いローブを着た大男が立っていた。顔には深いしわが刻まれ、隙間から除く体には無数の切り傷や刺し傷があった。
「――ッ!?」
思わず後ろに飛びのくと、そのローブの大男はいった。
「お前がハリアニャだな?」
低く冷たい声が男の口から発せられると、ハリアニャは体がいうことを聞かなくなって入る事に気づいた。
「……そうだよ」
やっとの思いで言葉を搾り出すと、男の顔が不気味にゆがんだ。
「そうか、あいつの情報に間違いは無かった」
男の言ったことの意味がわからず、困惑するハリアニャをよそに男はクックとのどを鳴らした。
そうして、ローブの隙間から腕をだしハリアニャの胸に当てると低い声でなにかをとなえ始めた。
危険だと思ったときには男の手から黒紫色の光が発し、ハリアニャを吹き飛ばしていた。
木刀で殴られた、いや大槌で殴られたような衝撃が胸に走った。
本棚に激しく体を叩きつけられたハリアニャは、次の瞬間盛大に咳き込んだ。
「まだ生きているとは……」
男はふわりと窓を乗り越え、ハリアニャの元へ迫ってきた。
「苦しかろう?今すぐ楽にしてやる」
不気味な笑みを浮かべ、男はさっきと同じ言葉を唱え始めた。
「げほっ……ちょっとまってくれ! あ、あんたは一体何者なんだ!? なんで僕のい、命を狙う!?」
ハリアニャの悲痛な叫びはその部屋の中に空しく響いた。
「もうすぐ死ぬんだ。 神に祈る時間をやろうか?」
男はまたクックとのどを鳴らした。
その時、ハリアニャは一冊の本を握り締めている自分に気づいた。
夢中で開いたページには『冥界』の二文字。
どうせ死ぬなら少しくらい抵抗してやる。
ハリアニャは側に転がっていたインクの瓶をつかみ床に円を描き始めた。
ただの円ではない。様々な形が組み合わさってできた円だった。
「冥界の扉を開くつもりか? 無駄な事を……」
いびつだが円を描き終えると、ハリアニャはその本に描かれてある事を読み出した。
難しい言葉が多くて読みづらい。もっと勉強しておくんだったとハリアニャはいまさらながら後悔した。
ようやく最後の行にさしかかろうとした時、男の体がぶわっと横に広がった。
「いかん……時間が無い」
男の体は霧のように広がり続けている。
「……死んでもらおうか」
男の手がハリアニャの顔の前に近づく。
その瞬間、ハリアニャは
「開け!……冥界の扉!!」
と叫んだ。
床に描いた円がパッと黒く染まり、それが部屋中に広がる。ところどころからこの世のものとは思えないような不気味なうなり声や叫び声が聞こえた。

2005/11/13(Sun)20:12:06 公開 / momo
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■作者からのメッセージ
電車の中でチクチクと創っていたのがこれです。
まだ文法や描写などわからない部分が多くありますので、感想、アドバイス等頂けたらうれしいです

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