『一つの光から(孤独から改名)』 ... ジャンル:恋愛小説 リアル・現代
作者:梅宮                

     あらすじ・作品紹介
新しいキャラ登場です。最後の方でなんか変な方に進むと感じた人はすいません。全然変な方には進ませんません。そこはどうか誤解のないように。

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
俺の名前は橘 竜。
そこらへんにいそうなごく普通な少年
だが、俺は皆とはちがう…
孤独、そんな中に俺はいた。
俺には家族がいない。
家族は中学のときに俺の目の前で俺一人を残して全員殺されてしまった。
そんな一人残った俺を親戚の人達は誰も引き取ってくれ無かった。
ひとつ理由を上げるならば親が駆け落ちしてできた子供だからだろう。
そんなことは俺にはどうでもよかった。
学校でも特に居場所も無く一人屋上で時間をつぶしていた日々。
そんな俺はいつのまにか人を好きになるという感情ををどこかにしまい込んでいた。
俺には人を好きになればなるほどどこかにできた心の穴が広がっていくと思ったからだ。
そんな事を思いながら、遠めの学校に通い始めた。
その場所で自分の存在という形を0からまた創りはじめてみようと思ったからだ。
そこで、一人の少女に出会って…俺の人生が大きく変わり始めてきた。

第一話 出会い
あの人との出会いは、俺のあの一言から始まった。
入試当日
日差しが差し上る朝、俺は緊張のあまりまったく眠れなく、朝早くに目が覚めてしまった。
まだ十分時間があったが、俺は何故かいてもたってもいられなくて、早めに受験をする学校へ向かった。
その行動が、俺の人生を大きく変えていく第一歩でもあった。
俺は、電車に揺られてこれからのことを考えていた。
受験という言葉より頭の中でぐるぐる回っている言葉があった。
孤独、そんな言葉が俺の頭の中から離れていかない。
もう、なれているはずなのに…。
学校に着く頃には、まだ誰もいないと思っていた。
しかし、校門の前の付近まで行ってみると一人の少女の影が見えた。
俺は彼女を見つけると、彼女に見つからないように隠れようとした。
だが、様子がおかしく彼女は何かを探している見たいだった。
そんな光景を見ていて、何故か彼女が可愛そうになってきた。
俺は勇気を出して彼女の方に歩き出した。
初めて自分から女の子に声をかけようとしていた。
手は汗で濡れていた。
彼女はしゃがんで見つからずに頭を抱えていた。
いつのまにか、彼女の前に立っていた俺は、勇気を出して声をかけてみた。

「あ、あ、あの…な、何か…さ、さ、探してい…りゅんですか?」

声は震えて声も裏返っていた、自分でも何を言ってるのかわからないほどだった。
俺の声に気づいた彼女は、立ち上がって俺の方を振り向いた。
近くで見た彼女はどこかあどけなさが残っているが、綺麗な髪をしていて美人だが可愛さもある。
そんな彼女が俺をみる瞳には涙で少しばかり潤んでいた。

「う、うっ…あの…私の受験票しりませんか?」
「じゅ、受験票!?…落としたの?」
「う、うん」
「あっ! まだ時間があるから俺も探すの手伝うよ!」

俺が生まれて初めて女の子とまともに話した会話。
会話ともはいえない内容だったが俺にとっては、すごく長い時間が過ぎていくように感じた。
緊張していたけど、受験票をなくしたと聞いてから驚きの方が大きく緊張もどこかにいってしまった。
時計を見てまだ時間があることを確認した。
俺は、そういったとたんに後ろを向いて走り出した。

「あ、あの…行っちゃった…」

何かを言いそうになった彼女の言葉がまったく耳に入っていなかった。
どこらへんで落としたかも聞かずに俺は何故かあるところに向かって走っていた。
ただ当ては無かったが、あそこに行けば何とかなると思ったのだ。
たどり着いた場所は駅だった。
俺はここから学校までの道を探す、というありきたりな行動しか思いつかなかった。
ただ俺ができることといったらこのくらいしできなかった。
駅を出て花壇や川の淵、歩道橋の下など落ちていそうな場所をくまなく探してみたがそんなにすぐには見つからない。
刻々と時間が過ぎていく中、俺はだんだんと学校の近くまで近づいていった。
腰が痛くなってきた俺は空を見上げるように背伸びをした。

「……・あっ!!」

俺が見上げた先には木に引っかかっている一枚の紙を見つけた。
丁度近くに彼女がいたので呼んで木に引っかかっている紙を指差した。

「…? あっ! あった!!」

彼女は見つけるのに時間がかかったが、見つけたとたんに子供のように無邪気にはしゃいでいた。
そんな彼女を見て俺はうれしくなって少し笑っていた。
俺は高いところは苦手だが彼女に木に登らせるわけにはいかない。

「ちょっとこれ持ってて下さい」
「う、うん」

鞄を彼女に渡して木を上り始めながら俺は関係ないことを考えていた。
あの子の名前なんていうんだろ、そんなことを思っていた自分が馬鹿らしくなってきた。
結構高いところまで上ってきた所でやっと受験票を見つけた。
その頃、下では野次馬が木の周りに何人か集まっていた。
枝が折れないようにそっとのかって手を伸ばす、枝がみしみしなり始めた。
後もう少しなのに、指先は紙にかすっているのだが取れない。
俺が乗っている枝は今にも折れそうだったが、一歩前に進むと受験票に手が届いた。
受験票を手にとった瞬間“バリバリ”と嫌な音がした。

「!!!」

勢いよく俺が乗っかっている枝は根元から嫌な音とともに折れて道路に向かって落ちていく。
木から落ちてくる黒い影が道路に落ちて目の前の大型トラックにひかれて弾き飛ばされていた。

「キャーー!!」

彼女と周りにいた野次馬の女性の悲鳴が道路に響き渡っていた。


第二話

トラックにひかれていった黒い影の破片はそこらじゅうに散らばっていた。
だが何か様子がおかしいことに周りも気づいてきたみたいだ。
悲鳴を上げていた女性達は黒い影の正体にやっと気づいた様子だ。
道路に落ちていった黒い影が俺ではなく折れて落ちていった枝ということを。
そんな、俺は少し上の方にあった枝にぶら下がって下の様子を見ていた。
あの時受験票に手が届いて手にもった瞬間に枝が折れたので少し時間しか動くあいまがなかった。
俺は立とうとしたときに上の枝にぶつかった、痛さのあまり頭を抑えるつもりが木を間違えて掴んでしまい今こんな状況になっている。
俺は下に下りようと受験票の持っている手を木から離してしまった。
その瞬間、いたずらかのように少しの風が吹いた。
受験票は風に乗って流れてされていく。
俺は、すぐ木から飛び降りて受験票を追いかけていく。
それにきずいた彼女は俺が大丈夫だったところを見て安心してる様子だった。

「あっ! ちょっと待って…」

俺は受験票を追いかけていることにきずいた彼女は俺の後をついて走ってきた。
だんだん風に乗って流されていく受験票はこのままでは危なかった。
その先には橋があり、下には大きな川があった。
後もうすこしで届きそうで届かない場所で風に流されている。
後ちょっとなのに、そんな事を思っているが手は思うように届かない。
追いかけているうちに俺は橋の手すりにぶつかった。
もうこれ以上は進めない。
ちょうど風もやんできた所だったが、もう手遅れだった。
どうしようと迷っているうちに、受験票は川までひらひらと落ちていく。
俺はある決断をした。
橋の手すりの上に上った。
俺はこういうのは苦手なんだが…。
もう足はがくがくと少しばかり震えていた。
もうここまできたんだからと覚悟を決めた。
川に浮かんでいる受験票めがけて思いっきりジャンプした。
普通だったらここで叫ぶはずなんだが…。
意外と冷静になってジャンプしている最中にそんなことを考えていた馬鹿な俺。
ザブーンととてつもなく大きい音がした。
橋から川まで10メートルくらいの高さがあった割には川の方は意外と浅かった。
俺はすぐ立ち上がり受験票の流れていった方を向いて歩き始めた。
最初は走っていこうと思ったが、水の抵抗が大きくて走れなかったし、他にも右足に違和感を感じていた。
俺は、転がっている石に何度も躓きながらも歩きつづけた。
人の為に何かをすることなんて今まで無かったのに…何で急に…。
そんな言葉が頭の中にこだまするかのように何度も繰り返されていく。
だんだんと受験票に追いつくにつれて気が遠くなっていくような感じがした。
気のせいだと思っていた…。
もう体中びしょ濡れで周りからも何か騒ぎ声が聞こえてくるような気がした。
もう、そんな事を気にすることもできなくなってきていた。
やっとのことでたどり着いた。
受験票を拾ってそれを彼女のいる橋の方に見せるように手をかざした。

「へへ…ひ…拾いましたよ」

やっとのことで手に取った受験票がうれしくて涙が目ににじみ出てきた。
何でだろう、人の為に何かをするって言うことがこんなにうれしいことなんて思えるなんて。
そんな感情が今までもっていなかった俺はそんな俺がうれしくなってきた。
最初は、太陽で眩しくて周りが見えなかったがだんだんと周りの光景が見えてきた。
周りには、たくさんの人たちが俺のことを見守っていた。
俺は最初に彼女のいるところを探した。
橋から左の方向に彼女が笑顔で走りながらこっちに手を振ってくれていた。
俺は受験票を拾ったことより生まれて初めて女性に手を振ってもらったことの方が今はうれしかった。
彼女の方に歩きながらも、だんだん視界がぼやけてきて右足にも痛みが出てきた。
丁度彼女が川の縁についた頃には俺もつく頃だったが、その頃になると右足の痛みがよりいっそう強くなってきた。
痛みをこらえるために、下唇を噛んでいたので切れた唇から血が出てきて口の中は血の味しかしなくっていた。
やっとの思い出彼女のとことまでたどり着いた俺は川から出た瞬間右足に激痛が走った。

「うあっっ!!」

そのまま俺は、前のめりに倒れこんでしまった。
地面が砂利で倒れたときに体中のあちらこちらにあたって痛かった。

「きゃっ! 大丈夫!?」
「平気です…っつう!!」

ここで彼女に心配させるとこの後が困るので平気そうに装うとしたが足の痛みが結構酷くなってきた。
何とか立ち上がれたが、まともに歩けそうに無い。
俺が持っていた受験票を彼女に差し出した。

「あっ、そうだこれ…濡れちゃったんですけど…ごめんなさい」

あの時、自分の不注意で風に飛ばされて川に落ちてしまったことがショックだった。
俺は、彼女の顔が恥ずかしさと情けなさで見れなかった。
彼女は俺の差し出した手を両手で優しく握ってくれた。
そんな俺は、初めて女性が手を握ってくれたことで緊張で頭の中はパニック状態、体は硬直していた。

「そんな、謝られても困りますよ…もとは私がなくしたのが原因なので」
「で、でも…お、俺は…」
「気にしないで下さい…まだ使えますから」
「は、はい…」

そういった彼女は、俺の手から受験票を受け取った。
彼女の手が離れてもまだ彼女の手のぬくもりが感じられて、とても暖かかった。
そんなやり取りをしている間でも、右足には激痛が走り、頭がくらくらしてきた。

「そういえば…時間…大丈夫ですか?」
「えっ、あっ本当だ」
「先に行ってください…俺は後から行きますから…」
「で、でも…」
「お、俺の…ペースに…合わしていると…遅れちゃいますから」
「わかりました…必ず来てくださいね」
「は、はい…」
「ありがとうございました」

そういって彼女は俺のお辞儀をして走り出していった。
俺は、初めてこんな人の為になるようなことをしていなかった。
初めて、女性にお礼されたのもそうだが人の為に頑張った事がとても気持ちがよかった。
彼女の姿が見えなくなったと思った瞬間、体の力が一気に抜けて頭の中が真っ暗になって気が遠くなるような感じがて前のめりに倒れてしまった。


第3話

「ここは…」

俺が目を開けたときそこには意外な光景があった。
俺の家…何故…でも何かが違う。
そんなことを考えていた俺は後ろから来た意外な声に驚かされた。

「そりゃ、そうだろうな…ここは3年前のお前の家なんだからな」

えっ!なんで俺がもう一人…。
後ろに立っていたのはもう一人の俺だった
確かに俺に似ていたが顔が少し怖い…あいつは誰なんだ。

「俺か…俺は俺だよ…つまりだな俺はおまえ自身だって言うことなんだよ」

急にそんな事を言われても何がなんだかわからない。
つまりあいつは俺で、俺はあいつ…なんなんだいったい。
まったくわからず座り込んでしまった。

「でっ!なんでお前がいるわけなんだ」
「説明しなきゃわからんか…まったくめんどくさい主人だな」
「主人…?」

俺はあいつの言った主人ということが気になった。
主人ということはここは俺の世界か…んなわけないわな。
そんな事を冗談交じりで考えていたが思わぬ返事が返ってきた。

「まぁ…平たく言ってみればそうだな」
「……」

何か馬鹿げたことが聞こえてきたよ…とうとう俺も壊れたかな。
というよりなんで俺(?)は俺の考えていることがわかるんだ。

「ああ!もういいから俺の話きいてろよな!」

うわぁ…なんかすごくえらそう…俺と一緒の顔してるくせに。

「要するにだなここは…お前の心の中なんだよ」
「俺の心の中?」

なんか、漫画でよくありそうなこと言い出したよ。

「そう、普通の人間なら人格は二つある…表向きの自分と欲望でできた自分これが普通…お前の場合は三つの人格がある」

ややこしいことになってきそうだな…。
何で俺に三つも人格があるんだ。

「あの時までは、もともと俺とお前の二つだけの人格しかなかったんだ」
「あの時って…もしかして中学のときのあの事件…」

思い出しただけでも,鳥肌が立ってくるあの事件
俺にとってぬぐってもぬぐいきれない、忌々しい過去でもある。

「あのときから、お前にはもう一人のお前ができた…それが中学時代ののお前なんだ」
「要するにあのときの事件から俺は人が変わったって事?」
「まあそうだな…普通の奴は普段は表向きの人格が出ているはずなんだがお前の場合は…表向きの自分いわゆる今のお前が新しくできた超引っ込み思案なお前が出てたんだよ」

あぁ,確かにあいつの言ってるとおりかもしれない…。
でもなんで今日は表向きの俺が出てるんだ。

「それは…彼女に会ってから超引っ込み思案なお前がだんだん本来の表向きのお前に変わってきたからなんだよ」
「でっ!今はその超引っ込み思案な俺はどうしてるの?」
「あそこにいるよ!」

あいつが指差した先には、檻に入っている一羽の鶏がいた。
…鶏!なんで…なんで鶏なの…。

「知らないのか…鶏はチキンだろ…いわゆる臆病者って意味だよ」
「ああ、なるほど」
「でも…あいつがいつまた俺たちを支配するかわからないぞ」

支配?なんで…俺たちって鶏に支配されるほどよわっちいのかな。
わけわからなくたってきたよ…受験の方もどうなってるかわからないし。

「しょうがないだろ…あの時にできた心の穴があいつなんだからよ」
「心の穴?」
「そう、あのときのショックが相当酷かったらしいからな、半分くらい心に大きな穴ができちゃたんだよ」
「へー」

何を言ってるのかまったくわからなかったが一応返事は返しといた。

「今はお前がここの支配者だからな、お前が頑張らないと俺たちがあの中に入れられて当分俺たちは表に出れないからな」

俺が頑張らないとなんていわれても、何したらいいんだ。
そんな事を考えながら頬ずえをつこうとした時には、手の感触は無く体が透けていた。

「お、おい…なんだよこれ」
「ああ、そろそろ意識が戻る頃だな…あいつに支配されないように頑張れよな」
「頑張れよな…何ていわれても,何すればいいんだよ」
「別に普通に生活してればいいんだよ…あまりあの事件のこと思い出して生きる気力とかやる気だけはなくすなよ。 いいな!」
「わ、わかったよ」

なんで、俺が俺に怒鳴られないといけないんだよ。
だんだん足の方から消えていきとうとう顔だけになってしまった。

「そうだ!彼女との接触は意外といいかもしれない」
「えっ! どう…い…う…」

あいつの言っていることをちゃんと聞けづに俺は消えてしまった…。

「んっんん〜」

俺は魘されながら目を少し開けてみたそこには…
白い天井が見え、あたりは白で統一されていた。
俺は起き上がろうとしたが足が動かない。
俺は恐る恐る上体を起き上がらせた。

「げっ!」

俺は変な声を出してしまったがそれはしょうがなかった。
いつのまにか病院へ運ばされていたのはいいが、右足が包帯でぐるぐるに巻かれて吊るされていたのだから。
俺は受験のことを思い出して、ベットの横に置いてあった鞄の仲から時計を取り出す。
俺は恐る恐る、時計を見る。
その直後ガチャンんという時計の落ちる音をさせてしまった。

「や、やばい…ど、どどどどどうしよう」

あせりとこれからのことで頭の中はパニック状態。
なんと,時計の針は2時50分をさしていた。
完全に面接終わってるよ…。
俺は半日もここで寝ていたらしい。

「はぁ〜」

俺にはもうどうにもできないことだ…慌てるだけで後の祭り。
深いため息と彼女の手のぬくもりがいまだ残っている。
これからのことを考えると頭が痛くなってくる。
でも、一つよかったことは今回受けたのが前期試験だったこと…後一回後期試験があるだけまだましだ。
だが一発勝負。
それをはずしたら俺の人生はほぼ終わりに近い。
そんな暗くなってる中、ドアをノックする音が聞こえた。

「すいません…入ってもいいですか?」

どこかで聞いたような声だ。
だが今の俺には見舞いに来てくれる人がいるだけでとてもうれしかった。
俺はすかさず返事を返した。

「は、はい…いいですよ」
「失礼します」

返事と同じにドアが少しづつ開かれていく。
入ってくる人を見て俺はさらに驚いた。

第四話

入ってきたのは、なんと学校の制服に身を包んだあのときの女の子だった。
彼女は少し暗い表情で俺の吊るされている足を見ていた。
そんな彼女の顔を見て俺は、自分の情けなさと彼女にあんな顔をさせた自分が嫌になってきた。
彼女は俺の側までゆっくりと歩いてきた。

「あのっ…ごめんなさい!」

そういって彼女は俺に頭を下げてくれた。
でも、今の俺はもう何で謝られたのかもわからずにいろいろな疑問で頭の中がパニック状態だ。
そんな俺に彼女はさらに追い討ちをかける言葉を投げかけてきた。

「りゅうさん…あの…足はすぐ治るんですか?」

えっ…なんで俺の名前…。
彼女の問いにも返事すら返せずにいた。
俺の頭は自分の名前が間違って呼ばれているということも理解できない状態にまでおちいっていた。
そんな壊れ始めていた俺に代わってドアの方から声が聞こえた。

「骨に異常があるわよ…」
「えっ」

そんな声に気づいた彼女は後ろを振り向いていた。
声の主は、二十歳過ぎの看護婦だった。
黒髪でモデルみたいな体型の綺麗な女性だった。

「右足の骨に数ミリのひびが入ってるわ」
「あの…すぐ直るんですか?」

骨に異常があると聞いたときは驚いたが、彼女が心配そうにしてるところを見るととてもうれしかった。
初めて、女の子に心から心配されたことで俺は足の怪我のことなんかどうでもよかった。

「一週間以上はかかるわ」
「一週間以上…よかった、後期試験には間に合うね」

そういって彼女は俺に無邪気な笑顔を見せてくれた。
彼女の笑顔を見た俺は、自分でも顔が赤くなっていくのがわかった。
恥ずかしくて、彼女に見られないように俺はうつむいた。

「なんか、私お邪魔みたいね…じゃあ後でまた診察にくるからね…安静にしてなさいよ」

そういって看護婦さんはいってしまった。
ああ、いちゃったよ…二人にさせないでよ。
駄目だ、同い年の女の子とこんな密室に二人だけで…何はなせばいいんだ。
やばい…顔が赤くなってくるし手なんか汗まみれだよ。
そんな事を考えていた俺の目の前に彼女の顔が覗き込むように現れた。

「どうしたの、顔が赤いよ…大丈夫?」
「んっ…うわっ…あわわ」

急に現れた彼女の顔に驚いて俺は、のけぞるように後ろに引いてしまった。
今、俺の状況っていったいどうなってるんだ…どうしたらいいの。
これまでこんなにも女の子との接する機会も無かったのに、彼女とあってから…。
そんな事を考えていた俺を見ていた彼女は楽しそうに笑っていた。
な、なんで笑ってるんだ…俺のどこかおかしいのか。
俺は何だか不安になってきた。
俺の不安は彼女の一言でなくなった。

「りゅう君見てると面白い」
「えっ…なんで」
「だって見てると弟みてるみたいで可愛いんだもん」

はっ…弟…かわいい…!!
なんで、何がどうなってるの…お兄ちゃんみたいならわかるけど、弟っていったい。
どう考えても、俺より彼女の方が年下みたいだと思うけど…
でも、可愛いって…男として女の子に可愛いといわれるのはちょっと…。
わあああぁ…女の子がわからない…何を考えているんだ。
そんな頭の中がパニック状態の俺をよそに彼女が話しかけてきた。

「りゅう君、ごめんね」
「えっ…」
「私のせいで入試にもいけなくなっちゃって、それにこんな怪我もさせちゃって」
「えっ…あ、ああ…いや…その、えーと…き、気にしなくても…ま、まだ後期もあるから」
「う、うん」

頭の中が整理がつかないときに話しかけられたので返事も何を返せばいいのかわからずに何を言ったのかもわからなかった。
俺には今入試も怪我のこともまったく気にもならなかった。
今の俺にはこの一瞬がとても楽しくてうれしくて何ていえばいいのだろう…言葉に表せないこの気持ち。
彼女と話してると家族と暮らしていた昔の自分を思い出してくる。
そんな時、彼女が何かを思い出したようだ

「そうだ…後期また同じ学校にするの?」
「えっ…う、ううん…そのつもりなんだけど」
「よかった…あっ、別に気にしないでね」

気にしないでねといわれても…気になる。
なんか、最初に会った頃の彼女のイメージが違うな。
もっと、おとなしいと思ってたんだけど…無邪気で子供みたいだな
彼女を見てると、綾と重なる。
そんな事を考えていてぼーっと彼女を見ていた俺。
それにきずいた彼女は不思議そうに俺を見ていた。
そんな静かな間に踊る大捜査線のテーマ曲が流れた。
彼女はあわてて携帯電話を取り出した。

「ごめんね、ちょっと電話がきちゃった」

そういって彼女は電話をもって部屋を出た。
着信メロディーが…。
俺は、彼女が他の女の子とは何か違うような気がしてきた。
どこか気が抜けたような感じがして大きく背伸びをしていたとき、扉が開いた。
彼女は、初めて部屋に入ってきたときのようなくらい表情を浮かべていた。

「あのね…そろそろ帰ってこいって言われたちゃった」
「えっ…あ、あそうか
「だから…ごめんね…もっとりゅう君と話したかったけど」
「あ、あの…」
「それじゃあね」

彼女は俺の言葉をかき消しながら部屋を出て行ってしまった。
結局、名前のことを言い出せなかったな。
そんな、落ち込んでる俺をよそに扉が開いた。
入ってきたのは彼女だった。

「忘れてた…私の名前言ってなかったね」
「霧沢晴香…これからよろしくね」

彼女は笑いながらそういい残してまたいってしまった。
結局自分の事はいえるまもなかった。
これから…どういういみなんだろう。
そんな意味も無いことを俺は悩んでいた。
緊張が途切れてのどが渇いてきた。
俺は松葉杖をついて部屋をでた。


第5話

翌日
俺は昨日、彼女が帰ってから再検査をすませて病院を後にした。
治療代と入院費は払ってあるといわれて払わずにすんでよかったが。
誰に払ってもらったのか聞いてみると、三十前後の若い男性が払ってくれたらしい。
そんな人は見覚えがまったく無い…いったい誰なんだ?
そんなことは今はどうでもよかった。
俺は一晩たって、昨日の自分に起こった出来事がまるで夢ように感じた。
だけど…彼女の手の感触、会話、笑顔、全部はっきりと覚えている。
はっきりとは覚えているが…やっぱり本当に自分に起きた出来事なのか今までの自分と比べると想像もできないことばっかりだった。
彼女と一緒にいた間、時が過ぎていくのがこんなにも早いとは…今までで人といることがこんなに楽しくこのまま時間が止まってくれればいいとは思ったことは無かった。
あとになって俺は彼女ともっと話したりすればよかったと思っていたが…そんな事を思っていても俺は人との接触は今まで皆無に等しかった。
中学から三年間、まったく人と話した事が無い俺が…しかも男の子ともまったく話したことも無い俺が女の子と話すなんて大人の階段をまたいで一気に数段上に上がるようなもんだ。
俺は高校に入ったら男の子に声をかけて、普通に話すことができるようになってから遊びに誘って…と段々と一歩づつ進歩しようと計画表まで作っていたのに、女の子としゃべるなんて俺にとっては計画表にも無いような未知なる聖域まで行くぐらいの場所にある。
そんな自分勝手な言葉が頭の中に途切れんばかりと浮かび上がっていた俺は、朝ご飯を食べていたことをすっかり忘れていた。
今俺が住んでるのは、古いマンション…昔住んでいた家は、親戚に没収された。
八畳しかない無い部屋にトイレとお風呂、それに押し入れだけで荷物を置くとあんまり自分のいる場所が無い…だから友達なんか呼ぶとあんまり座るところが無い、呼べないというか呼ぶ人さえいない。
誰も俺のことを世話をしてくれる人はいない。
今も自分で食器を洗っている手がいつのまにか止まっていた。
家賃や生活費は少しばかり奨学金をもらっているがたりないので2つ、3つバイトをしている。
バイトといっても中学生だから雇ってくれる場所も少なく、給料も少ない。
だから遊ぶお金なんて無く、ゲームも全部売り生活費に変えテレビも電気代節約のためあんまり見ないように心がけている。
そんな生活が続いていたせいか、友達の話題にも入れず段々と距離があいてきて、中1の二学期には完璧に一人孤独になっていた。
中1からそんな苦悩な生活が続いていた俺は今ではこの生活があたりまえになってきて、料理、洗濯、掃除と普通の主婦より完璧にこなせるようになってしまった。
この生活は今は嫌いではない、少し楽しい…けど、何かが足りないんだ…何か。
今の俺には、その何かは見つけられないような気がした。
いつものように学校へ行く支度を整えた俺は家を後にする。

「いってきます」

そういつも誰もいない部屋に俺は呼びかける。
習慣…中一の頃からずっと忘れずに必ず言ってきた。
最初の頃は何度も泣いた。
自分の孤独さと悲しみ、あのときの恐怖で帰ってくるたびに涙がこみ上げてくる。
止まらなかった…拭いても拭いても止まらない…この涙が嫌になってきた。
誰もいないはずなのに…いってらっしゃいって言葉が返ってきそうな気がする。
だけど、そんな言葉は返って来ない…ただむなしく俺の言葉が部屋に残るだけ。
今も昔も変わらない…涙は枯れるほど流したけど、どこか孤独さはいつまでたっても変わらない。
一人さびしく学校までの道を歩いていた。
まわりの景色が新鮮に思え俺は初めてこの道を歩いたような気がした。
今までうつむいたまま歩いていたからわからなかった。
今は頭を上げて普通に歩ける…やっぱり彼女とあってから俺変わったのかな。
そう自分でも思えるようになってきた。
何処か心のもやっとした部分が段々はれるような感じがした。
自分から変わらないと…決意した俺は校門をくぐって玄関へ歩いていく。
だけどいざ教室に入ると緊張してくる…誰も俺に目もくれずに俺の目の前を通り過ぎていく。
昔の親友が俺の前を通りかかった。

「お、おはよう」

俺は勇気を出してそう言ってみた。
彼は何も無かったかのように通り過ぎていった。
やっぱり声が小さかったみたい…あのときに比べればこんなのたいしたこと無いのに。
だけど言い出せない…声がのどに詰まってうまくしゃべれない。
結局ため息をつきながら自分の席について、ぐったりと机の上に覆いかぶさった。
ボーとしていると、やっぱり彼女のことが頭に浮かんできてしまう。
彼女の事を考えると少し困る。
自分でも顔が赤くなってくるのがわかって少し恥ずかしい。
周りが急に静かになり始めたので俺はバッと顔を上げた。
いつのまにか、数学の授業が始まっている。
数学の先生が何やら黒板に問題を書き始めた。
黒板に書かれた問題は、図形の基礎の応用20問…復習をしてればすぐ解ける問題のはずだ。
なんだ…簡単じゃないか、ただ少し問題に工夫されてるだけだからすぐわかるかな。
俺は、すぐとき終わり頬杖をついて窓の外を眺めていた。
すぐ終わるだろうと思っていた矢先に、周りからざわめき声がちらつき始めた。

「おい、これわかるか」
「何これむずかしいよ〜」

そんな文句の声が段々と多くなってきた。
なんか…すぐ終わりそうにも無いな。
俺はすぐ次に進む事を望むのは諦めて待つ事にした。
結局あれから十分がたっていっこうに最後まで問題が皆終わってなさそうだ。
時間が来たのでいったん止めさせた先生は黒板の問題を解かせるために手を挙げてる人を指していった。俺は手を挙げた事が無い…三年間一度も。
段々と黒板の問題に答えが書き込まれていくのをただ俺はボーと見ているだけだった。
だけど最後の一問だけが残っている。
誰も手を挙げないで、先生の問いかけにも誰も手を挙げない。
誰か答えてくれよ…時間が刻々と過ぎていく。
しょうがない…これも自分を変えるためだよな。

「はい」

小さな声で返事をして俺は手をゆっくりと上に挙げた。
そんな俺を、先生もクラスの皆も驚くような顔で見ていた。
こっちみないでよ…だから手を挙げたくないんだよな、人に注目されるから。
クラスの皆の視線を避けるように、低い姿勢で前にいそいで歩いていく。
黒板にたどり着いたがこっちの方が余計緊張する。
チョークを持って問題を解いている最中、手は震え、体中汗で濡れて、背中に嫌な視線を感じる。
だからここにくるのは嫌なんだよ。
文句をいいながらも問題を解いていき、来たときと同じような姿勢で席に戻る。
皆の視線がこっちに注がれているようで恥ずかしく顔を上げられない。
そんな俺をよそに急にクラス全体が騒ぎ始めた。
少し気になった俺は、顔を上げて周りを見てみた。
皆は俺のほうを見て何か話している。
な、何…なんで皆こっち見てるの
何処からか聞こえてきた会話が俺の不安をかき消した。

「すごいな橘、頭よかったんだな」
「噂では学年三位にはいつも入ってるらしいよ」
「へ〜そうなんだ」
「いつも、暗いし頭悪そうになのに」
「人は見かけによらないってよくいうじゃん」

うわああぁ、人が黙ってるからって言いたい放題に言っちゃって。
でもよかった、少しは俺の事見直してくれたと思うけどな。
皆に注目されるのは嫌だけど、もうちょっと積極的になってみよう。
結局、俺は放課後まで二度目の手を挙げることは無かった。
ホームルームの後、誰もいなくなった教室を後にしようした。
出口の近くでロッカーにぶつかり中に入っていた雑誌を落としてしまった。
拾うとしてしゃがんだ俺は雑誌に書いてある事に目を疑った。
なんの雑誌だかわからないが、そこに載っているのは彼女だった。
霧沢晴香とでかく名前が乗っているのだから確かに本人に間違いない。
でも…いったいなんで彼女が…彼女はいったい何者なんだ?

第6話

家に帰る途中あの雑誌の事が気になってしょうがなかった。
なんで彼女が雑誌に載っているんだ…芸能人?それともモデルなのか?
俺が知ってる事は彼女の名前と年齢、顔ぐらい、他は何も知らない。
知りたくても人に聞くなんて恥ずかしくてできない。
何でって聞かれたら返答に困るからだ。
そんな事ばかり考えているうちに、いつのまにか家の前に立っていた。
鍵を鞄から取り出して鍵を開けたつもりが、逆に鍵がかかってしまった。
えっ…鍵が開いてる。
朝はちゃんと鍵はかけたつもりなんだけど…んっ。
中からがさがさと物音が聞こえてきた。
誰かいる…どうしよう。
自分の体から血の気が引いてくるような感じがしてきた。
泥棒…俺の部屋には金目のものなんてないし、第一こんな古いマンションに入り込むわけがないんだけど。
中の物音が聞こえなくなってきた。
緊張と怖さで体が動かせない…というよりは動けない
警察呼んだほうがいいのかな…もしかしたら鳥か猫が入ったのかもしれない。
どうする…ここで警察呼んだら皆集まってくるよ。
注目される、そんなの嫌だ。
でも怖い…けど人に注目されるよりはまだましだ。
体は緊張で汗ばんでいるのが自分でもわかってくる。
手も震えていて思うように動かせない。
ドアノブを両手で掴む…心臓の音がはちきれんばかりに大きくなって聞きた。
両手を右にゆっくりと回す、ドアが少しずつ開いてくると同じに中の様子が見えてきた。
覚悟を決めて一気にドアを開けてみたが中には誰もいなかった。
恐る恐る一歩ずつ中に入ってみるがいつもと様子は変わらない。
気のせいだと思って気が抜けた瞬間、トイレから水が流れる音がしてきた。
誰かいる!…どうしよう。
警察に通報しないと…でも体が言う事を聞かない。
トイレのドアが徐々に開かれていく、とあの時の光景と恐怖が頭の中を支配していく
中から出てきたのは謎の少女だった。
俺より少し年下で中2くらいの元気そうな女の子だった。
誰!…何でここにいるの?
彼女を見て後ずさりしてしまった。
それを見た彼女は少し怒ってこう言い出した。

「何で驚くの!」
「私の事忘れたの? ひどいよー」

そんな急に現れて私の事忘れたの何ていわれてもこっちが困る。
半分泣き顔になってきた彼女。
慰めようとしようとするが何をしたらいいのかあたふたして結局何もできない。
そんな窮地に立たされている俺に彼女が変な事を言い出した。

「千夏だよ本当に覚えてないの? 中学になったら一緒に暮らしてくれるって約束したじゃない」

えっ…俺が…一緒に暮らす!
俺がそんな大胆というか積極的なことを女の子に言える筈がない。
第一に千夏なんて女の子、身に覚えがまったくないのだから。
もし仮に言ったとしてもここじゃ暮らせないだろう。
本当にいったのなら責任とんないとじゃないか。
あぁぁぁ…もう何がなんだか意味がわからない。
本当に俺が言ったのか…人違いじゃないのか。
最近、頭の中が整理がつかないほどパニック状態になってきている。
壁にもたれかかりながら彼女に質問をしてみる事にした。

「あ、あのさ…本当に、俺が言ったのか?」
「うん…悟君が小学校一年のときに中学生になったら一緒に暮らしてくれるって言ったじゃん」

えっ…悟君!
人違いだよな…俺は竜だぞ。
人違いだと思って安心して段々力が抜けてきた。

「あ、あのさ…いいにくいんだけど俺…その…えーと…何だ、悟って名前じゃなくて竜っていうんだけど」
「えっ…昔神奈川に住んでて、東京に引っ越した同い年の悟君じゃないの!!」

何か遠まわしないい方してるなこの子。
やっぱり違った…よかった。
一時はどうなるかと思ったよ。

「あ、うん…全然違う、一個もあってない」
「えーどうしよう、人違いでした」
「すいませんでした」

そういって彼女はいそいで荷物をまとめて勝手に俺の家を出て行った。
最初から最後まで自分のペースで話しを進めて結局どっかいっちゃった。
女の子ってあんなもんなのかな…あの子だけが例外かもしれないけど。
何かまた、あの子にあいそうな気がする。
もうそんな考えることなんてめんどくさくなってきた。
彼女のせいで寿命縮めたかもしれない。
緊張と怖さが一気に途切れてどっと疲れがこみ上げてきた。
おぼつかない足取りで部屋の半分を占めているベットまで歩いていった。
ベットに身を預けるように倒れこんだ。
疲れた…今はゆっくりと眠りたい。
目をゆっくりと閉じていくと同時に深い眠りについた。
あれからどの位眠っていたのだろう。
まだ夢に出てきてしまう。
三年前のあの忌々しい事件が。
その夢を見ると必ず同じところで目が覚めてしまう。
実際に今も今までと同じように同じところで目が覚めてしまった。
俺はその夢から目が覚めると永い眠りから覚めたような感じがする。
あたりを見渡すとすっかり暗くなっていた。
時計のある方向を振り向くと時計の針は8時をさしていた。
長く眠っていたような気がするが、あれから2時間しか眠っていない。
あの夢を見た後はいつも体がだるくてすぐやる気が起こらない。
だが自分でやらないとご飯さえ食べられない。
あの夢を見つづける限り俺はやる気がおきずに高校にいっても中学と同じ事の繰り返しになってしまう。
仕方なく体を起こして台所へ向かう。
食事は自分で作るようになってきてかなり上達してきたと思う。
最近では残り物の材料でご飯が作れる用にまでなってきた。
冷蔵庫の中身はいつも少ないが一人で生活してる俺には充分だ。
昨日の残りの材料が残っているはずなのだが、冷蔵庫を開けてみると何も入っていない。
えっ…何で。
そんな疑問が一枚の紙で消えた。
なにやら紙が冷蔵庫の間に挟まっている。
なにやら女の子が書きそうな文字が書いてあった。
何々…『お腹すいてたので、勝手に食べちゃいました。 怒らないでね(ハート)』
……なんじゃそりゃ!
こんな事できるのここにいたあの子だけだよ!。
どうするんだ夕飯、買い物行く気力もないし出前なんかお金がかかっていやだし。
あぁぁ…お腹すいて力が出なくなってきた。
そんな窮地に立たされたときにインターホンが響いた。
動くまもなくドアが開かれて誰かが入ってきた。

「おじゃましまーす」

聞き覚えのある元気な声が響いてきた。
あっ…あの子だ…いまさらなにしに着たんだろう。
俺のところまで走ってきて意味わからない事を言い出した。

「一回きりの救いの女神参上!!」

な、何だ…とうとう壊れたか。
そんな事を言いながら意味がわからない行動を取っている。
彼女の態度が急に変わった。

「さっきはすいません」
「えっ」
「冷蔵庫の中を勝手に全部食べちゃって、そのかわりに」

そのかわりになんだよ。
そういえば何か手に袋みたいなの持ってるな。
あれなんだろう…気になる。
今はもう彼女の言葉より袋の中身が気になってしょうがない。

「そのかわりに、お弁当買ってきてあげたよ」

そういって彼女は俺に持っている袋を渡してくれた。
中身を見るといろいろとお弁当が入っている。
よかった…救われた。
ある意味本当に、救いの女神だね。
早速テーブルにいって弁当をあけて食べ始める。

「本当は、かってくるきはなかったんだけど事情があってね」
「事情?」
「あっ…気にしないで」

俺の問いに慌て始めた彼女。
何か裏がありそうで怖い。
でも今はそんな事はきにならなかった。
彼女が弁当を買ってきてくれた事がうれしかった。
そんな彼女が恥ずかしそうに言い出した。

「あのさ、竜君…」
「年上の人に君付けは失礼なような気がするんだけどな」

小さな声で呟いてみたがやっぱり聞こえるはずが無いと思っていた。
彼女はあわててた様子で言いかえてきた。

「すいません、あの竜さん…もしよかったら」
「そ、その…え、えと…と…と、泊めてくれませんか?」
「えっ…な、なんで…まままた急に…って…えー!」

何がどうしてこうなったのかまったくわからずに頭が壊れそうになってきた。
口の中に入っていたご飯も勢いのあまり噴出しそうになってしまった。
もしかして…ご飯って泊めてもらうために買ってきたのか?
俺が考えていた事が的中して同じ事言い出した。

「ご飯買ってきたじゃないですか…一日でいいので、おねがいします」
「私泊まるところないんですよ…女の子を一人野宿させてもいいんですか」
「もし、襲われたわ一生うらみますよ…それでもいいんですか」
「あっそうだ、私の事はちなつちゃんでも、ちなちゃんでもちなつ様とか好きなように呼んでいいよ

酷い…まるで脅しじゃないか。
でも女の子なんて泊められないよ…眠れなくなる。
この場合仕方がなかった…ある意味命の恩人だ、泊めるしかない。
ちなつ様はさすがにないだろ…ちなつちゃんで言いか。

「わ、わかった…とと、泊めるよ」

小さな声でいったがちなつちゃんには聞こえているらしく喜んではしゃいでいる。
ちなつちゃんは早速お風呂に入ると言い出した。
勝手にお風呂場まで言って、覗いたら殺しますよ、と恐ろしい事を言っている…ちなつちゃんなら本当に殺しそうで怖い。
ご飯を食べ終わる頃、ちなつちゃんがお風呂から上がってきた。
今食べ終わった俺に一言、

「竜さん、食べるの遅いですね」

一番気にしてる事をあっさり言われてしまった。
ショックを受けたままごみを捨ててお風呂に入る事にした。
湯船に使ってるときに、そういえば女の子が入った後なんだとおじさんくさい事が頭に浮んでいた自分がむなしくなってきた。
体もあったまってきてからお風呂から上がった時はなんだか眠くなってきた。
頭を拭きながら部屋に戻ると、最悪の事態が待っていた。
いつのまにか、パジャマに着替えてベットで無防備に寝ているちなつちゃん。
どうする俺…この後俺の取る行動はやはりあれしかないな。
俺は無気味に笑ってしまう。

2005/09/04(Sun)15:56:09 公開 / 梅宮
■この作品の著作権は梅宮さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
言われたところは直せるところは一応直しました。
ぶんのことなんですけど、すごく長いプロローグにしようかなと思ってます。 
最初についてた文の主人公のことなんですけどそれは後の方でうまく出せるように隠して行くつもりです。
いろいろと感想ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。