『「SURIRU-01 昔野村」1章』 ... ジャンル:ミステリ
作者:ちゃーしゅうめん                

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「SURIRU-01 昔野村」
01−神崎はじめ
 俺、神崎はじめは真夏の東京の暑さに思わずうんざりしていた。今日の最高気温は35℃、まだ6月に入ったばかりなのにこの天気。今年の夏の先がおもいやられる。俺の仕事は東京大学、物理学の教授だ。日本でも有数な科学者のひとりに選ばれる名誉な教授、とでもいっておこうか。前出した『物理の世界へ』と言う本も書きしかもその本は今週のベストセラー。海外進出も目指している。なにもかもが、充実したこの大学は俺にとって見れば最高の楽園だった。ふー。と、おもむろに机の上に置いてあるリモコンをとり、エアコンのスイッチを入れる。ブオーと、エアコンが鳴り響くと俺は新しい本を書くため机の奥からノートパソコンを取り出し、スイッチをいれ作業に入る。
 その時、勢いよく奥の扉が開いた。
「やっぱ。暑いねー。」
ドアの向こうにいたのは明るいテンションで白衣を着た女、杉山友香だった。杉山は俺の助手であるが、そのハイテンションでいつも困っている。前なんか、買ったばかりのパソコンを壊すし、酷い時にはお茶の葉と乾燥剤を間違いて入れられたこともあった。そんな性格なのだが、俺のいる東京の大学ではトップクラスの実力を持ち俺が一番目をつけている研究員でもある。
「見てくださいよー。」
と杉山が言うと、後ろに担いでいた米俵を見せた。
「その米俵どうしたんだ?。」
「よくぞ聞きましたね。うちの近くの町で行われる東京暑いの我慢大会に優賞したんですよ。いやぁ。今回は本当に辛いかってねー、もう死にそうでしたよ。」
 東京我慢大会とは、100℃のサウナの中で暑い暖房着を着てどれだけ長く耐えれるかと言う過疎寸前の町にある村おこしの行事である。その行事を見つけた杉山はここ何年間、優勝をたもっていた。
「教授にはあげませんよ。」
と、笑いながら俺にもう一回こめだわらを見せた。
こんな、暑い日よくやるな。と心の中でそう思う。
 だが、あの米俵。ジャパンな人間の俺にとってあんがい欲しい一品だった。あの、もっちりとした米は少しでもいいから分けて欲しいというのが半分本音である。だが、杉山の性格から見て到底くれるわけがない。
「いやー。いい天気だねー。」
と、俺が言うとあっさりとその言葉を返した。やはり、俺があの米を欲しがっていることがばれたのだろうか。東京大学名誉教授といわれた俺だが、実を言うと金遣いが荒いとよく言われる。最近ではカップラーメン生活を毎日していた。右手につけているロレックスがそのカップラーメン生活の原因だった。給料は100万円ぐらい貰っているが実際のところ、月を15日すぎたところで俺のお金はすぎてしまう。あー。お金が欲しい。そうすれば、こんなひもじい思いなんてしなくてすむのに・・・。
そんな、ことを考えているうちに時刻は4時を迎え、はと時計が鳴り響いた。
「私、帰りますよー。」
と、杉山は自慢げに米俵を背中に担ぎドアを開けようとした瞬間、「ッキャ」と大声で叫んだ。
「そんな、大声出してなんかあったのか?」
俺がそう聞くと杉山は急いで俺の後ろに隠れた。
「化け物。」
と、杉山は呟きおびえる。ゴキブリかなんかか・・・。と、俺は思いドアの奥を見る。ドアの向こうには大きな男が立っていた。顔は、隠れて見えない。
「すみません。」
と、男から小さな声がして軽くお辞儀をする。男の顔は、ごついコンクリートのような顔をしていて髪は半ば白くなっている。ギザギザのTシャツを着てボロボロのジンズーをはいていた。体つきは、山男のように筋肉質でそして2メートル近く身長がある。
「神崎先生ですか?」
男は、そういうと俺は「はい、そうですが・・。」と言った。
「助けてくだせぇ。」
男は突然そう大声で叫んだ。

02−依頼

突然、来た男を落ち着かせソファーに座ってもらった。杉山は米俵を奥のほうに隠し、お茶と茶菓子を俺と男の分を用意する。男は、「いや、いいですよ。」というが、杉山は「遠慮なくどうぞ。」と言い机の上に置く。
 俺はお茶を一杯、飲む。杉山は俺の分の茶菓子をバリバリと隣で食べていた。
「で、家の研究所に何のようですか?。」
俺が、そう聞くと男はこういう。
「あの・・。私(わたくし)の名は、斉藤五郎と申します。今回、『化学の世界へ』という本をお書きになっている本の最後の後書の、文章を読んでこちらに来ました。先生は後書で『化学で証明できないものはない。人が死ぬのも、自分が今こうして生きているのも、超常現象もすべて化学で証明できるのだよ。この本を読んでくれたみんなに、心から感謝する。化学について疑問、または不安、もしくは優秀なる科学者、神崎教授のファンの方は神崎教授に何でも聞きなさい。お便り、または訪問まってるよー。東京大学、物理課まで・・』と、おしゃっていたので私はここに着ました。」
斉藤は身体に似合わず、女口調でそう言うと俺は思わず笑いが出る。まあ、笑ってはいけないと思い俺は「で・それでなんのようです?。」と聞いた。
「お尋ねしますが富士山ろくの奥にある昔野村と言うのはご存知でしょうか。」
「知りませんが・・。」
「普通は、知りません。その村は地図にも載っていないほど小さく、しかも交通も十分ではありません。ですから、長年その村を訪れるものは誰一人いませんでした。」
「それで、その村がどうしたと。」
「しかしその村では、土地、文化、を守るためこの村を出てはいけないという神様のおきてがあるのです。ですが、私その村を出てしまって不安でしょうがないんです。先生は物理でこういった事も調べているとお聞きしたので・・。」
そう斉藤が言うと突然、茶菓子を貪り食いながら杉山はこういった。
「大丈夫ですよ。そんな文化、捨てた方が楽でいいですよ。」
「はあ。そうでしょうか・・。」
斉藤はまだ不安げに重い口を開けてこういった。
「実をいいますと、この村から出た住民はたくさんいるんです。しかし、全て神の裁きにあい1週間以内に皆、死んでいます。最初の人は崖から転落死。次は事故死、そしてその次が病死と言ったように逃げた人は毎年、死んでいるんです。私、もう4日近く村から離れています。
どうか、助けてくださいませ。」
「・・・・。いや・そんなことを言われても俺には仕事が残っているし・・。」
そう、俺が言うと斉藤は持ってきたバックの中から封筒を取り出す
「この封筒には100万とちょっと入っています。もし、自分が助かればさらに40万追加します。」
「100万。」
俺は、思わず息を飲んだ。100万あれば贅沢三昧できる。もう、カップめん生活とはおさらばできるのである。このチャンスを逃してはいけない。俺は心の中でそう思った。
「引き受けましょう。」
俺は、何も考えずそういった。すると、斉藤はよろこんだ顔をし明日、10時ごろに村に案内すると言った。斉藤はドアに顔をぶつけるがそのまま気にせず部屋を出た。

03−山道

深い富士山ろくを無謀なまでにバギー(車)で突き進んでいた。車内はガタガタとゆれ、俺と杉山は思わずイスから落ちた。
「斉藤さん。本当にあるんですかー。」
杉山がそういうと、斉藤は「あと少しで」と言う。富士山ろくの奥地に入るにつれて、神崎は不安を感じるようになった。行く行くにつれて同じ風景しか見えないからである。
「あー。あれ、なんだろー。」
と、杉山が窓のほうをさしている。俺も、少し気になり杉山が指を指している方向を見た。そこにあったのは木にロープが取り付けられている風景だった。あれは・・。と思い、斉藤に「止まってください」と言った。すると、斉藤は「なんで?」と言いたそうな顔をした。
 俺と杉山は、バギーから下りてさっき見たロープのところまで歩いた。不自然なまでに木にぶら下がっているロープは、不気味でしょうがなかったからだ。だが、このロープ元々、輪になっていたらしくつなぎ目のところが少し切れていた。俺の頭の中に浮かんだのは、首吊りだった。まさか、と思い周囲を見渡すと携帯電話が一つ落ちていた。まだ、それは真新しい。俺は一様、着信履歴を開いた。つい一週間ぐらい前に一通の着信がありそれから何も残ってはいない。おもむろに、メール機能のところに決定ボタンを押す。すると、一通の送ってもいないメールが入っていた。そこには、こう書かれている。「死にたい。」と一言だけが。俺は、恐ろしくなり携帯電話を投げ捨てる。
俺は杉山を連れ、一目散に逃げようとした。
「どうしたのー。教授?」
と、杉山が俺にいうが俺にはまるっきり聞えてはいなかった。その時、俺は右足にかさばるものを感じた。それは、女性の右手だった。胴体、顔、足はなくただ右手だけが足についていた。
「いやぁぁぁあぁぁ」
俺は、女性のようなかん高い声を発すると斉藤が異変に気付きバギーから降りた。
「どうしたんです。先生!。」
と、斉藤が駆け寄る。
「女・・せ・いの・・手が・・。俺の足に・・。」
俺は、おびえながらそういうと杉山と斉藤は右足を見た。
「キャァー」杉山が叫ぶが、斉藤はなんの怖いような顔をせずその右手を手で払った。
「大丈夫ですよ。」
と、斉藤が言う。
「アレは・・・。」
と俺はおびえたようにそういう。
「私は、村から出た事があまり無いのでよく分かりませんが、トウキョウとかいう街からよくこのヘンで自らの命を絶つ行事をやる人がいます。私は全く持ってよくお分かりにならないのですがー。こういった、文明が今のこの国であるのでしょうか?。もしかして、古くから伝わるいけにえっていうやつでしょうか・・」
斉藤がそういうと俺は息を飲み、杉山はその場の地面に倒れた。斉藤の話だと、人の死体をクマなどの肉食動物が食べて美味しい内臓や足などの肉を食べるのだという。だいたい、近くには肉食動物が食べ残したまずい手と顔があるという。
「なんなら、顔も探しましょうか?」
「いや。いいです。」
俺はそういった。


2005/06/12(Sun)07:43:00 公開 / ちゃーしゅうめん
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■作者からのメッセージ
2章は、当分、書く暇がないかも・・。

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