『創造主』 ... ジャンル:ショート*2
作者:さるお                

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
 僕は想像することが大好きだ。小さい頃から頭の中で、自分の世界を作るのが至福の時だった。
皆もそんな経験がないだろうか。自分を売れっ子ミュージシャンであると想像して、歌を歌ってみること。はたまた、自分は奸智に長けた泥棒であり、次に盗みの働く家を値踏みしている状況を考えてみたりとかね。
 僕は十八歳の男だ。私立高校に通っている平凡な学生で、卒業を間近に控えている。成績は中の上と言ったところだろ。部活はサッカーをやっていて、毎日がとても充実している。サッカーは小学校三年の頃から始めて、中学では関東トレ選のエースストライカーだった。
 彼女は現在募集中だけど、別にとりたてて欲しいとは思わない。そんな暇があったら、部活に熱中したい。こういうのを部活が恋人って言うのかな。
 僕には両親がいない。僕が中学三年生になったばかりの頃に、父が運転していた車が、酔っ払いのトラックに正面衝突された。同乗者の母と共に即死だったそうだ。
 それからは父方の祖母と同居することになり、祖母の家がある岐阜県へと引っ越すことになった。祖父は僕が生まれる前に亡くなったそうで、僕は祖母と二人っきりで細々と暮らしていた。
 しかし、僕が高校受験を控えた一ヶ月前に祖母も亡くなり、止む無く独り暮らしをする運びとなった。施設の話もあったのだが、人に頼るのは嫌だったので断った。
 高校はスポーツ推薦で、サッカー部が全国大会常連校であるS高を選んだ。僕は一年からレギュラーで、高校三年間で、S高を二回全国優勝へと導いた。最後の大会では得点王にもなった。
 そんな僕をJリーグのチームが放っておくわけがなく、僕は五チームのプロサッカーチームから誘いを受けている。テレビでは連日、十年に一度の逸材だとか騒がれて、僕の動向が話の的になるといった始末だ。僕はこれと言って好きなチームはなく、条件の良いチームに入ろうかと思っている。だが、将来はイタリアセリエAでプレーしたい! これだけは譲れない。
 これからの僕は、日本代表、ワールドカップ得点王とか夢が広がるばかりだ。

 「たかしさん! ご飯よ〜!」
母が呼んでいる。どうやら夕飯のようだ。自分の部屋の和室から食卓へと向かう僕の体は、実に頼りないもので、剥げた頭からは白髪がまた二、三本ヒラリと床に落ちた。

2005/06/11(Sat)00:30:40 公開 / さるお
■この作品の著作権はさるおさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
何となく文を書いていて、書きながら考えて作りました。また、感想を宜しくお願い致します。ご指摘がございましたら、遠慮なくお教え下さい。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。