『Birds are set free 0〜1』 ... ジャンル:ファンタジー
作者:栖                

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
『蒼き空の神に守護されし蒼き世界に生きる者たちよ
我らは鳥と共に歌い鳥と共に生きる
六の魂は我らを常に見守っている
我らは祝福を受けている
命ある者皆で歌おう
いつか空に届くよう
そう我らは蒼き世界に生きている』

プロローグ

燃え盛る炎はすべてを飲み込む。
人々の叫びさえもその轟音にかき消されていった。
人の心に潜む『闇』がそうさせた。
差別というのは新たなる憎悪を呼び覚ます。
やがてその力は大きなモノになる。
だがそれは『光』でも同じこと・・・。
だから王は必死に走った。
城の大聖堂へ。
両手を天へ掲げ力を解き放つ。
王家に伝わる『空の神』の血を。
「王!これ以上無駄な抵抗は止め服従しろ!」
けたたましくドアが開かれ怒鳴り声が響く。
だが王の身体は光に霧散していく。
そして声の主の方を向くと大きな声で、笑った。
悲しみを確かに頬へ伝わせながら。
王の身体は光となった。
なんと光は七色に輝き多くの鳥の姿へ変わった。
そして赤い空へ羽ばたいていく。
「すぐさまあの鳥を追え!一羽も取り逃がすな!」
命令と共に兵士が一斉に動く。
そして王とは違う笑い声が再び大聖堂に響いた。
「これからは虐げられてきた我らの時代だ!」

七色の鳥は一羽も捕まることはなかった。
王の思いを受け継いだ鳥たちは向かった。
この世界とは別の空間にある世界。
人間界・・・地球へ。


第一話『鳥は解き放たれた』

空を飛びたいと思った。
この手が翼であればいいと強く願った。
風に乗って空高く羽ばたければと夢見た。
―鳥籠から逃げ出したかった―
父親が嫌いだった。
広い家が嫌いだった。
軽蔑する目が嫌いだった。
―俺の身体が弱かったばっかりに―

名門校聖林学園。
小学校から大学までエスカレーター式で用意されている憧れの学園。
頭が良いのはもちろんスポーツの方でも有名である。
学園の剣道部。
全国では優勝という冠を手にした。
そして個人で二位という強者がいた。
「今年もいい感じだな!今年も優勝しようぜ!」
そんな声があちこちから飛び回っている。
もちろん実力は優勝ということあってトップクラスだ。
でも一人だけ。
一人だけあせっている人物がいた。
どうしても、どうしても勝つことができない。
勝つことができなければ、一位になることはできない―!
「結城」
突然名を呼ばれ素振りしていた木刀を止める。
汗で頬についた黒髪をすくいながら睨み付ける。
「なんですか、俺には練習が―」
「気持ちはわかる。だがそんなにあせることはないだろう?」
綺麗な顔をした少年の顔は歪んでいる。
「うるっさぃ!ただの顧問のクセに!」
バシンッと盛大な音を立てて床に木刀が転がる。
とにかく、あせっていた。
親友であっても剣道ではただの敵でしかない。
幼馴染であってもその顔はただの挑発の材料でしかない。
―どんなに練習しても勝てないんだ―

「はぁ・・・」
学園の帰り道。
剣道のことになるとどうしても血が上がってしまう。
そしていつものごとく顧問をしかりつけてしまう。
「これも全部お前のせいだ・・・」
昔からの幼馴染であり現在でも親友であり・・・どうしても勝てない相手。
元々聖林学園と争っているといっても過言ではない学園の剣道部期待の星。
だから余計にプレッシャーが重い。
―強く、強くなりたい―

『見つけた―・・・』

パサリと舞い落ちた白い羽。
「は・・・?」
少年の前には鳥がいた。
だが鳥ではない。
輪郭がぼやける。
少年にはその鳥がこの世にありえない色。
真っ白だと思った。
「剣道のやりすぎで熱でも出てるのか?」
柄の間の幻だと思った。
だが頭の中に大きな声が響いた。
『来るよ!』
声を合図に少年は前の光景を疑った。

現すならばバケモノ。言うならば影。

形という形をしていないドロドロとした黒い影。
だか確かに存在していた。
そして言った。
『シネ』と。
影は分散すると蔦のように伸び少年を突き刺さんとする。
「はっ―!!!」
担いでいた木刀を出しなんとか受け流す。
だが影の速さは尋常ではなかった。
普通の人ならば声を出す間もなくめったざしだっただろう。
―足が震える―
少年はちらりと後ろを見た。
先ほどの真っ白な鳥は自分を見ていた。
じっと。真っ直ぐに。

『我名は太陽鳥―お前に力を与える者』

同時にその鳥と同じ真っ白な光に包まれた。
そして少年の意識は途絶えた。
ただ温かい―誰かに抱かれる感覚だけが柔らかかった。





2005/06/12(Sun)12:41:16 公開 /
■この作品の著作権は栖さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めて描いた作品なのでどう書けばいいかわかりませんでした。
少し短くなってしまいましたが、がんばって続けたいです。
『鳥』『自然』『差別』をテーマに置きました。
最初の詩はなぜかナウシカともののけ姫を思い出します・・・。
これからはがんばって少し長い文章になるようにしたいです。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。